学校段階間の連携・接続等に関する作業部会(第8回) 議事録

1.日時

平成23年11月8日(火曜日)13時~15時

2.場所

文部科学省16階 特別会議室

3.議題

  1. 本作業部会における検討事項について
  2. 小中連携、一貫教育の成果と課題について(三鷹市及び呉市からのヒアリング)
  3. その他

4.議事録

【小川主査】  では、定刻になりましたので、第8回学校段階間の連携・接続等に関する作業部会を開催したいと思います。まだ委員でお見えになっていらっしゃらない方がおられますけれど、じきお見えになるかと思いますので、始めさせていただきたいと思います。委員の皆様におかれましてはお忙しい中、御出席いただきましてありがとうございました。それではまず、今日の配布資料の確認を事務局からお願い致します。 

【小谷教育制度改革室長】  本日の配布資料でございますが、議事次第にございますように資料1~7、参考資料、それから机上の配布資料として、協力者会議の冊子等を置かせていただいております。不足等ございましたら事務局までお申し付けください。

 【小川主査】 それでは議題に入る前に、前回御欠席の委員が今日お見えになっておりますので、まず事務局から御紹介をお願いしたいと思います。

 【小谷教育制度改革室長】 それでは、臨時委員の委員を御紹介いたします。独立行政法人教員研修センター理事、高岡委員でございます。

【高岡委員】 どうぞよろしくお願いします。

【小谷教育制度改革室長】 続きまして、大阪府教育委員会事務局市町村教育室長、角野委員でございます。

【角野委員】 角野でございます。よろしくお願いします。

【小谷教育制度改革室長】 日本私立小学校連合会会長、清水良一委員でございます。

【清水良一委員】 はじめまして、清水と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 

【小谷教育制度改革室長】 新潟県三条市長、國定委員でございます。

【國定委員】 よろしくお願いいたします。

【小川主査】 では、議事に入りたいと思います。今日の議題は議事次第に書いてあるとおり、1つは、本作業部会における検討事項について、2としては、小中連携・一貫教育の成果と課題ということで、今日は三鷹市と呉市からのヒアリングを予定しています。
 まず、最初の本作業部会における検討事項についてですが、前回の会議で小中連携・一貫教育のテーマに関して、最初の会合であるということで、委員の皆様からいろいろな御意見を頂きました。そして、その御意見を整理して、まずこの部会で検討すべき課題をまとめてみたものが資料2です。
 これから小中連携・一貫教育についてのいろいろな議論をしていくのですが、やはり最初に、この作業部会においてどういう柱で、どういう課題の見通しを持ちながら、意見交換したらいいか、その辺のところをある程度、最初に目途を持ったほうが議論もしやすいのかなということで、前回皆様から頂いた意見を踏まえて、事務局の方で資料2の検討事項案というものを作成していただきました。
 まず最初に、この検討事項案について皆さんから御意見をいただいて、ある程度全員で了解をした上で、今日の三鷹市と呉市のヒアリングに入っていきたいと思います。
 最初に検討事項案について、事務局の方から説明いただければと思います。よろしくお願いします。

【小谷教育制度改革室長】  それでは資料1を御覧ください。資料1は前回の本作業部会における委員の御意見を事項ごとに整理したものでございます。前回御欠席の委員もいらっしゃいますので、確認の意味も含めて御紹介をさせていただきます。
  1つ目の「小中連携の目的設定の重要性」につきましては、3つ目の○にございますように、小中連携の目的について議論する必要について、御指摘がございました。
 それから2つ目の「地域の実情又は地域との連携」についてでございますが、こちらにつきましては1つ目の○にありますように、地域との連携や信頼関係の構築の重要性ですとか、また3つ目の○にありますように、地域の事情に応じた9年間の在り方、中学校区単位で学区や地域の諸機関との関係を踏まえる必要性について御指摘がありましたし、またその次の○にございますように、小中一貫校とする場合、生活圏に近いところで子どもの成長を見守りながらやるのがいい、といった具体的な提案もございました。
 3つ目の「教育課程の在り方」につきましては、1つ目の○にございますように。6-3制はもう今の時代には合っていないのではないか、といった御意見がある一方で、2ページ目の最初の○にございますように、しかしながらカリキュラムを変える、というのは違うのではないか、といった御意見もございましたし、その次の○にありますように現在の実情を見た上で、履修主義と修得主義ですとか、その次の○にございますように、教科ごとのつながりを考えること、といったことについての御意見がございました。
 次は教員に関することでございますが、4つ目の「教員免許、教員養成の在り方」につきましては、2つ目の○にありますように、現行制度の範囲内で教員の研修を充実し、小学校教員の教科指導のレベルを上げる、といった御指摘もある一方で、その次の○にございますように、教員免許制度の見直しが大切ではないか、といった御意見もございました。
 その次の「教員の意識」につきましては、1つ目の○にございますように、小中の教員の学力観の違いについて御指摘がある一方で、次の○にございますように、この小中学校教員の風土や文化の違いを認めることが重要だ、といった御意見もございました。
 6つ目の「教員の負担」につきましては、2つ目の○にございますように多様な人材が参画して小中連携を進めていくことの必要性についての御指摘がございました。
 7つ目としては、「教員の人事交流の必要性」についての御指摘もありましたので、それを掲げております。
 8つ目としては、「学校間連携、交流の必要性」についてでございますが、この中ではITの導入、といったことについての御意見がございました。
 そして最後に掲げておりますように、「中学校の役割」についての御意見もあったところでございます。
 こうした御意見を参考に、今主査からお話がございましたように、資料2という形で事務局の方で本作業部会における検討事項の案を取りまとめてみました。順に見てみますと、1として、「小中連携、一貫教育の目的、効果」ということで、ここではどのような目的を持って取り組んだときにうまく機能するのか、といったこと、あるいは、取り組んだことでどのような効果が期待できるかということを論点として挙げております。
 2つ目の「教育課程の在り方」につきましては、教育課程の区切りとしての学年の区分がどうあるべきかといったこと、あるいは、教育課程上の特例を活用した方が、この目的の達成を図りやすいのか、あるいは、学習指導要領の範囲内においてもその目的の達成は十分に可能かといったこと、さらには、こういったことを踏まえた上で、教育課程に関連して、制度的に改善を要する点があるのか、といったことを論点として挙げております。
 3つ目の「小・中学校教員による乗り入れ指導、教員免許の在り方」についてでございますが、こちらでは小学校教員による中学校生徒に対する、あるいは中学校教員による小学校児童に対する学習指導、生徒指導、部活指導はどのような点において効果的か、といったこと、あるいはどのような乗り入れ指導を行うべきか、またそれを円滑に行うために都道府県・市町村教育委員会はどのように支援すべきか、また教員免許に関連して、制度的に改善を要する点があるのか、といったことを論点として挙げさせていただいております。
 4つ目の「小中連携、一貫教育の推進体制の在り方」としましては、まず推進するに当たり望ましい校内体制とはどのようなものか、といったこと、また教職員の人数は実際、限られているわけですが、その中でどのような工夫が可能かといったこと、そして裏面にまいりまして、5番目でございますが、「校地・校舎、通学区域面の制約を克服する工夫の在り方」といたしまして、望ましい校地・校舎の在り方とはどのようなものかといったこと、あるいは、小中学校の校地・校舎が実際に離れている場合がございますが、そういった場合に生じる課題についてどのように克服していくのかといったこと、あるいは、通学区域の設定上、小中連携、一貫教育を導入しにくくなっている地域について、どのように導入していくべきかといったことを論点として挙げさせていただいております。
 6つ目が、「『地域とともにある学校』づくりとの関係性」ということで、文部科学省として、これから「地域とともにある学校」づくりというものを推進していくべきでございますが、そのための仕組みとして、小中連携、一貫教育を推進する際に配慮するべき事項は何かといったこと、そして、7つ目といたしまして、いわゆる義務教育学校と言われるようなものを新設する必要があるのか、といったことを挙げさせていただきました。
 また、これから作業部会での御審議を進めていただく上で、今は制度がないわけでございますので、今後小中連携だとか、小中一貫教育ということを制度化していくのであれば、用語としてどのような形で定義してくのかといったこと、あるいは、児童、生徒、教職員の方、保護者の意識にも留意しながら御審議を進めていただくことの必要性について挙げさせていただいております。以上でございます。 

【小川主査】 はい、ありがとうございました。資料2の本作業部会における検討事項案というのは、あくまで、前回の議論をベースにしながら、事務局の方で、このような柱が整理できるのではないか、ということで、1つのたたき台として、御提案するものですので、皆さんの方から、更に何かこういう課題が重要ではないかなどということがあればこの場で指摘していただければと思います。どうでしょうか。天笠委員どうぞ。

【天笠委員】 今、主査がおっしゃいましたけれども、基本的に私はこれで進めていったらよろしいのではないかと思います。ただ、資料1の2ページ、4の免許に関わる3つのことが出ておりますけれども、この記述につきまして、前回私はこの1つ目の○に関わるような発言をさせてもらったという記憶があります。その中で、教員養成のカリキュラムに関わって、という部分で小学校と中学校の科目のメリハリをはっきりさせる、というような発言をさせていただきました。その中で、もし教員の「特別部会において」ということですと、これは、私は特に関わっておりませんので、この点については、よく分からないということであります。教員養成の立場からしますと免許法の運用上の問題として、小学校の科目と中学校の科目をハッキリさせろということなのですが、私どもで審議しているこういう全体的な状況からすると、その種の働きかけ等々というのが、果たして適切であるのか、ということ等を問題意識として持ちながら、発言させていただきました。この場でもそういう免許法の運用、あるいはカリキュラム、小中連携・一貫に関わって検討、審議を進めていくことが、1つの課題としてあるのではないか。そういう類のことを発言させていただいたということであります。以上です。 

【小川主査】 ありがとうございました。他に何かございますか。酒井委員どうぞ。

【酒井委員】 すみません。大妻女子大の酒井と申しますが、前回私が発言したこと、再度繰り返すようになってしまうのですが、もともと小中連携は何のためにあるのか。最初のところの議論に出てくるのかもしれませんが、多くの学校で中1ギャップの問題をどうするのか、ということが、かなり大きな問題としてあったのだと思います。そのために何をするのか、という時に、教育課程の問題以外にもいろいろやるべきことがおそらくある。それがこの柱立ですと、どこに入るのだろうというのが、私にはまだよくわからないところでございます。要するにどこで分けても、移行の危機というのは生じるわけでして、その不適応をどうやって支えるのか、といった時にあの様々な手立てをどう使うのか、といった議論もあります。ですから、その観点がどこに入るのか、ということがちょっと私には、これではよく分からないのですが。

【小川主査】 そうですね。確かに。ただし今言ったような点、問題意識については、検討事項の1辺りで、もんでいいのかと思うのですが。この1~7の課題の柱立、分け方が本当にこれで妥当かどうかというのは、当然議論があるところで、皆さんの作業部会での議論の展開次第によっては、またいろいろ組み替えたり、再編成したりするというのは、当然あり得ることですので。その辺は少し柔軟に受け取っていただければと思います。角野委員、どうぞ。

【角野委員】 前回出席しておりませんので、きっとそういう議論がなされたのかなと思うのですが、おそらく1の目的・効果のところの、特に目的に入るのだろうと思いますが、なぜ小中一貫教育をするのか、というセオリーをきっちりと定めた方がいいのではないかと。例えば教育課程と言った時にじゃあ教科指導だけなのか、といった時に、教育課程を幅広で見た場合、おのずとそこに課題が見えてきますから、最終的には教員の授業観であるとか、指導観、あるいは評価観、そういうところに関わってくるかと思いますので、冒頭の目的のところになぜやるのか、というセオリー、そこをはっきりさせたほうが明確になるのではないか、というふうには思います。

【小川主査】 はい、わかりました。他にどうですか。よろしいでしょうか。さて、今のお二人の話は、小中連携・一貫の目的のところはもう少し丁寧に議論すべきだという趣旨の御発言だと思うのですが、他によろしいでしょうか。今のお二人の議論も踏まえて、この柱立と、また先ほど言ったように作業部会の議論の展開を見ながら、必要であれば、組替えや再構成をしながら議論をしていきたいと思います。一応おおよそこういうような検討課題の柱でもって、今後作業部会の審議は進めさせていただくというようなことで、御理解いただければと思います。資料2の検討案は、皆様から御了解いただいたということで次の議題に入らせていただきたいと思います。
 今日は、審議事項2の「小中連携、一貫教育の成果と課題」について、三鷹市と呉市からヒアリングをすることになっていますが、それに先立ちまして、その審議に資するために文部科学省の方で行った実態調査等々がございますので、まずこの資料4、5を最初に説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】 はい、それでは今回、資料2のおおよその御了解をいただいたということで、資料3の方に御用意させていただいているように、今回は特に「小中連携、一貫教育の目的、効果」ですとか、また本日の三鷹市や呉市の中での御発表にもございますが、「『地域とともにある学校』づくりとの関係性」について意見交換を深めていただければ、ということで、それに沿った形で資料4と5を用意させていただいております。
 資料4は、前回ざっと御説明させていただいた小学校と中学校の連携についての実態調査につきまして、関連する部分を抜粋したものでございます。ちょっと飛んで恐縮ですが、4ページ目の1-(13)というところをまず御覧いただきたいと思います。
 こちらは市町村教育委員会に小中連携を進めようとするねらいについて尋ねたものでございますが、「学習指導上の成果を上げるため」というのが95%。「生徒指導上の成果を上げるため」というのが91%。「教職員の指導力の向上につなげるため」とするのが82%ございました。調査の中ではそれぞれの項目について具体的な内容を伺っていないのですが、「その他」として記載されたもののうち、学習指導に関連する事項を拾ってみますと、こちら5ページの四角囲みに書いてありますように、学習習慣を身に付けさせるとか、個別支援を充実させるとか、あるいは生徒数も教師も少ないために、地域と連携することによって子どもたちの学習意欲の向上や普段学習することのできない経験や体験が可能となる、といったことをねらいとしている、といった記述がございました。
 また1枚お捲りいただきまして、6ページ目にございますように、生徒指導に関連する記述といたしましては、小中連携によって、小学校から指導上留意すべき情報が得られて、個に配慮した指導に生かすとか、あるいは小・中間や小・小間、各種関係機関との連携を図りながら、不登校児童生徒の解消とその予防を目的とする、といった記述がございました。
 またその次にございますように、教職員の指導力の向上に関する記述といたしましては、義務教育の9年間を通して児童生徒を育成する、ということに対する教員の意識改革ですとか、教職員としても、子どもの実態が把握できるとともに教育課程の理解及び指導上の参考になるといった記述がございました。
 その次、8ページにその他のねらいを掲げておりますけれども、特別な支援を必要とする子のスムーズな進学ですとか、義務教育9年間を通じてのキャリア教育、あるいは地域の核としての学校の機能を高める、コミュニティ・スクールの効果を高める、といったことが挙げられておりました。
 続きまして、9ページ目に実際の取組の成果を挙げておりますが、こちら円グラフにございますように、実に96%の市町村教育委員会で成果が認められると回答をいただいております。逆に4%が成果が認められていないということでしたが、そちら(注)にございますように、取組を始めたばかりであり、成果の見極めが出来ていないというものも含まれていますので、お取り組みいただいているほぼ全てのところで成果が見られているということではないかというふうに考えております。成果の上がった点といたしましては、「ねらい」では学習指導、生徒指導といった順でございましたけれども、成果となりますと、まず第1に生徒指導上の成果があったとするのが74%、学習指導上の成果があったとするのが58%、教員の指導力の向上というのが50%という数字になっております。
 1枚めくっていただきまして、「ねらい」と同じように「その他」として挙げられているうちの学習指導に関連するものを見ますと、全国学力・学習状況調査ですとか、あるいは都道府県が実施している学力診断テストにおいて、目に見える結果を出しているといったこと、あるいは、学校アンケートの結果において効果が確認できる、といったこと、あるいは、小学校において教科担任制が効果を上げている、といった記述がございました。
 また、その次の11ページですが、生徒指導上の成果に関連するものといたしましては、小学生が安心して中学校に進学できる環境づくりができているとか、学校間の情報交換によって問題行動が減少しているだとか、生徒指導や不登校対策といった形で挙げていただいております。
 また次の12ページでございますけれども、教職員の指導力の向上に関連するものといたしましては、教員が学習の系統性を意識しながら指導計画を立てるようになった、あるいは小中学校の互いの教員の指導観や、教材観、授業観や児童・生徒観の転換といったことが挙げられておりました。
 さらに、「その他」というのが、13ページになりますが、ここでも特別支援を必要とする児童生徒へのきめ細かい支援ですとか、地域の連帯意識の高まりや、学校への協力体制の強化ですとか、保護者の家庭学習に対する意識の高まり、といったことが挙げられております。
 続きまして、ちょっと前の方に戻っていただいて、恐縮ですけれども、2ページ目を御覧いただきたいと思います。
 文部科学省では天笠委員に座長を務めていただきました、こちら机上に配布しております「学校運営の改善の在り方等に関する調査研究協力者会議」といった報告も踏まえさせていただきながら、「地域とともにある学校」づくりというものを推進しているところでございますが、小中連携を推進しつつ、地域との関わりを深めることを目的として取り組んでいる事項について尋ねましたところ、まず上の段にありますように、小学校の2.9%、中学校の2.6%におきましてコミュニティ・スクールに取り組んでいることが分かりました。また小学校の8%、中学校の7.9%で学校支援地域本部による取組が行われることが分かりました。資料5で、皆様御存じだとは思いますが、御確認のためにコミュニティ・スクールですとか、学校支援地域本部について簡単に説明をした資料を用意させていただいております。最初にコミュニティ・スクールでございますが、こちらは保護者や地域住民などから構成される学校運営協議会が設置された公立学校のことでございまして、下の方に書いてございますが、校長の作成する学校運営の基本方針を承認するとともに学校運営に関する事項について校長や設置者に意見を述べることですとか、あるいは教職員の任用に関して設置者を経由して、任命権者に意見を述べることができます。
 次のページにございますように平成23年4月1日現在、コミュニティ・スクールの指定校数は全国で789校となっておりまして、着実に広がりを見せております。先ほど御紹介した報告では、これを、全公立小中学校の約1割、3,000校に拡大するといった目標も提案していただいております。
 それから、この資料の3枚目に学校支援地域本部の説明を用意させていただいておりますが、こちらにつきましても、従来から見られました地域住民の方が学校を支援するといった取組を更に発展させて、組織的なものにするということで、学校の求めと地域の力をマッチングさせて、より効果的な学校支援を行って、教育の充実を図ろうとするものでございます。こちらのポイントとなりますのは、学校側の支援や協力依頼を踏まえて、この地域コーディネーターがボランティア活動の企画ですとか、地域住民等による学校支援ボランティアと学校との連絡調整を行って、様々な学校支援活動が展開されているということでございまして、平成23年度には、上にございますように2,659の本部が全国で活動をしているところでございます。
 恐縮ですが、資料4の方に戻っていただきまして、こういったコミュニティ・スクールですとか、学校支援地域本部による取組の他にも、その他として掲げていただいておりますのが、小学校で13.1%、中学校で13.4%が取り組んでいるということでございまして、具体的には、次のページにございますように、中学校区ごとに地域人材や地域の自然・施設を活用した授業を実施するとか、小中学校ともに地域の伝統芸能に取り組むですとか、あるいは地域主催の幼小中一貫教育研究会を実施したり、地域への授業公開を行ったりする、あるいは、学校関係者評価を同じ評価員で、小中合同で行うといったようなことが、記述としてございました。私からは以上です。

【小川主査】 はい、ありがとうございました。では資料4、資料5も踏まえながら、これから三鷹市と呉市の取組をヒアリングしたいと思います。それを踏まえて、今日の議論ですが、先ほど皆さんで御確認いただいた検討課題案の中でも、今日は少し1の小中連携・一貫教育の目的をどう考えるか、どういうふうな効果が期待できるのか、ということと、あと、6の「地域とともにある学校」づくりとの関係性、この辺りを、今日は最初ですので、やはり小中一貫の目的や、期待される効果のようなところに少し重点を置いて、意見交換できればなと思います。
 当然、三鷹市と呉市の今日の発表の中身は、それに留まらないで、検討課題から言えば2、3、4、5、7のような問題に関係するようなこともあるかと思いますけれども。それはそれとして、時間的な配分としては、できれば1とか6の辺りを少し意識して意見交換できればと考えております。では最初に三鷹市の方からよろしくお願いいたします。

【貝ノ瀬委員】 失礼します、三鷹市の教育長の貝ノ瀬でございます。教育施策担当の松永課長も同行しております。場合によっては実務的、具体的なことについて御質問があればお答えさせていただくということにしたいと思いますので、よろしくお願いします。パワーポイントを使って御説明申し上げたいと思いますのでよろしくお願いします。
 では、御説明申し上げます。まず1番目。コミュニティ・スクールを基盤とした小・中一貫教育、これをちょっと念頭に入れていただきたいと思います。いわゆる小中一貫教育だけをやっているわけではない。つまりコミュニティ・スクールを基盤としている、ということが本市の特色です。これは後ほどまた詳しく出てきます。
 (資料6(以下同じ)・2ページ)これは、三鷹市はあの辺りの位置にあるというものです。
 (3ページ)これは宣伝ですけれども、あのような文化的な施設もあると。
 (4ページ)それから理念と言いますか、学校自由選択制は実施していないということで、これはもう義務教育ですからどこに住んでいても、責任を持って、質の高い教育を保障していくということですね。そして地域ぐるみで、地域全体で子どもを育てると。これは自治基本条例を定めまして、しっかりと市民と約束をしているということであります。
 (5ページ)それから、これは教育ビジョンですが、一人一人の子どもたちに人間力、社会力を付けていくということを最終的なゴールとして目指しているわけですが、これが目的です。ですから、小・中一貫教育も、コミュニティ・スクールも何のためにやっているのか、ということでありますが、いわゆるその裏付けとして、教育ビジョンを持っているわけでございます。
 (6ページ)内容を大雑把に申し上げますと、ああいう4つの柱の中で、0歳~15歳まで義務教育9年間の質の高い教育に責任を持ちますということで、0歳から教育として取り組んでいきましょう、ということをねらいとしています。その中に今、出ておりましたようにコミュニティ・スクールや、小・中一貫教育もその1つとして、ツールとしてあるわけです。
 (7ページ)ですから、先に申し上げますが、コミュニティ・スクールを基盤とした小・中一貫教育。中学校1年での不登校が多いから小・中一貫教育、これも1つの要因ではありますが、それを含めて三鷹の教育の質を向上させていこう、学校の質を上げよう、それが私どものねらいでありまして、一人一人の子どもの人間力、社会力を付けていく、ということの中でこの中1ギャップも解消されていくという取組をやりましょうと、こういうわけであります。
 (8ページ)三鷹市は、人口18万で比較的集約されているところでありますが、小学校15校、中学校7校で構成されております。この小中一貫教育ですが、これは7つの学園。つまり7つ中学校がありますので、7つの学園を構成しています。小学校2校、中学校1校。連雀学園だけが小学校3校、中学校1校です。一部、学区域の変更も必要としましたけれども、ほとんど2つの小学校が1つの中学校に進学するという利点を生かして、1つの学園を構成しているということでございます。
 (9ページ)今なぜ小・中一貫教育なのかと。全国的な課題としては、確かに学習意欲の問題だとか、家庭での学習習慣の問題、それから不登校の問題などが指摘されておりますし、私どものまちも無縁ではありませんが、そのことだけということではなくて、それも踏まえながら、やはりすべての子どもたちの学びと育ちのために、この地域ぐるみで先生方が、小学校・中学校の先生が連携・協働して、一緒にこの9年間という、このスパンで子どもを指導していきましょう。そして、まちぐるみでそれを支えていきましょうということを理念としているわけです。ですから結論的に言いますと、15歳の出口のところで、やはりどういう子を育てるのか、ということに向けてみんなが、先生方だけではなくて、市民も行政も当事者として責任を持って取り組んでいきましょう。こういうわけでございます。
 (10ページ)そしてこの確かな学力と豊かな心を育てる「学び」を小・中学校間で断絶させないという仕組みでございます。この子どもたちの発達段階を考えて、9年間、よく区切りのことが問題になりますけれども、これは各学園で子どもたちの実態に合わせて、その区切りを考えて、そしてカリキュラムを作ってもらっているという現状でございます。
 (11ページ)これは小・中一貫教育の内容ですが、先ほど申し上げましたように、不登校にシフトしたとか、そういうことではありません。教育の全体の質を上げていこう、つまり、今の子どもたちをもっと良くしていこう、ということですので、多様な活動が保障されなければならないわけで、いろいろなことを実施政策の中に入れております。
 まず、学園としての教育課程を編成しています。そして中学校区で学園として、学園の旗とか学園の歌、こういうものも定めておりまして、これは子どもたちや市民の皆さんから公募をして作ったものであります。各学校の単位の行事もありますが、学園の行事もやっておりまして、極々簡単に言えば、小学校の、中学校の先生方が行ったり来たり。子どもたちが行ったり来たり。こういうことをやっているわけであります。つまり物理的に離れたままでありますので、そこを先生方が行ったり来たりということでありまして、教科担任制をやったり、それから小学校1年から英語活動をしております。また部活動も体験的なことを小学生にやらせたりしますけれども、小学校の先生による部活動の指導。よく中学校でサッカー担当の先生が異動でいなくなってしまって廃部になってしまうというようなことがありますが、しかし、中学校単位で学園になっていますので、小学校にもサッカーの得意な先生がいらっしゃるわけで、その先生が部活動を指導して、小学校の校庭でサッカー部を指導するとか、そういう形で、まさに小中の1つの学校ですね。
 (12ページ)そしてこれは段差をなだらかにしていこうということ。確かに「段差があった方が子どもたちのためになる」という議論もありますが、無用な段差はなくてもよろしいということで、私どもはここをなだらかにしていきましょうということで、取組をしております。
 (13ページ)それから、やっぱり肝は9年間の一貫したカリキュラムでありまして、これをどう作っていくかと。最初はやはり教育委員会主導で学者の先生をチーフとして、各教科領域のカリキュラム、スタンダードなものを作りました。現場の小中学校の先生方ももちろん入っていただいて作りました。それを各学校にお渡しして、そして各学校の実情に応じて、学校なりのものを作っていただいて実践をしているということです。この9年間をどうカリキュラムを組むかということで、その学校の特色が、つまり学園の特色が発揮されてくるというわけであります。
  (14ページ)これも繰り返しになりますが、三鷹市の小・中一貫教育は、現行の法制度、学習指導要領を尊重した形で、特区申請というものはございません。当初は6年生を中学校に持っていくという話もありましたけれども、市民の反対がありましたので、それはやめにしましたし、また実際にやってみるとしないほうがかえって良かったということが結果的に言えると思います。
 これは、もう話題提供ですので、皆さんの資料のところにありません。プレジデントという雑誌にこのようなことが出ました。これは週刊誌が勝手に書いているだけでありまして、別に確証を持って申し上げているわけではありませんが。こういう品川区の場合は併設型にしていますので、当然お金が掛かるというこんなような記事。別に自慢しているわけではありませんけれども。まあ、三鷹市は安上がりにできているという、こういう週刊誌の報道であります。これは話題提供ですから、あまり気にしないでください。
 (15ページ)これは先ほど申し上げましたように、小・中一貫のカリキュラムが肝でありますので、この9年間をどう作っているか。これは毎年加除訂正しながら、より良いものを先生方の力で、更新されているわけでありますが、全ての教科、領域に渡りまして、カリキュラムが作られています。紙ベースでいうと大変な量になります。今はDVDに入れられますので、大変便利になっておりますが。(16・17ページ)これは御覧になってもちょっと見えにくいですので。イメージと言いますか、こんなものを見ていただければ。生き方・キャリア教育も、カリキュラムをもちろん持ってやっておりますが、本市の場合のポイントはアントレプレナーシップ教育なのです。これは全部の学校がやっておりますが、これは私も3回に渡って、フィンランドを訪問して、アントレプレナーシップ教育の内容を勉強してきて、実際に実践しております。これは簡単に言うと起業家教育、起こす方のですね。これをこのキャリア教育の中に位置づけておりまして、学校の先生は、会社の経営ですとか、そういったことについては疎い方が多いですので、必然的に地域の方、企業の方が学校に協力していただかなければ学校はアントレプレナーシップ教育ができませんので。そういう意味では非常に有効なものであります。
 (18ページ)これは相互交流でありますが、小中学校の先生方に兼務発令をして、中学校の先生は小学校の先生、小学校の先生は中学校の先生。大体3校になっておりますので、これは発令書ですね。この3校の教員、第七中学校教諭、大沢台小学校教諭、羽沢小学校教諭、全部の学校の先生だと。一人の先生が全部の学校の先生になります。東京都教育委員会は「もう市でおやりになるのなら」ということで快く了解していただいております。
 (19~21ページ)これはいろんな場面ですね、小中学校の先生方の場面であります。やはり小中一貫と言っても、コーディネーター、つなぐ方が必要であります。例えば呉市の場合は、私が最初に小・中一貫教育を取り組む時には、呉市のところを勉強させてもらったのです。二宮先生とおっしゃる先生がコーディネーターとして大変な活躍をしていらっしゃった。ああいう方が是非三鷹でも育ってもらいたいということでコーディネーターを配置しました。これはずっと未来永劫ではありません。一応小中一貫が、形付けられたところまでということで、そのあと、後補充の講師を市費で入れておりますが、やはり相当お金が掛かります。このへんのところについては、ないかたちで小中一貫をやっていらっしゃるところもあるようでありますが、なかなかそうなると先生方の負担が結構ありますし、時間が空いたときに後補充なども、こういったところでやっぱり様々な課題が生じてまいりますので、一定の額をやはり持たなければならない。これは、もし全国的にということになれば、やはり国の方で考えていく必要があるのではないかと思います。
 (22ページ)それから、この特色ある教育活動。7つの学園がありますので、カリキュラムを、小中一貫と言っても学習指導要領に即して、7つの学園がそれぞれ特色ある教育活動をするということによって、学校の質を上げていくということでもありますので、ある意味では競わせておりますが、それぞれに特色を持っております。
 (23ページ)これは保護者の方にアンケートを取りました。市内の8,000所帯の保護者にアンケートを取ったときに、ほとんどの項目について7割以上の肯定的な回答を得ていると。中には90%、つまり、「子どもたちを支えていくということを地域住民と一緒にやるということは、非常に良いことだ」とことについては9割を超えていますね。
 ただ、学力については確信が持てないというようなところがある。それでも70%はいっております。しかし、そこについては私どもも学校の方も、(24~26ページ)示しておりますけれども、これは経年変化を小学校5、6年で見ても確実に上がっているということは言えると思います。つまり、小・中一貫教育、それもコミュニティ・スクールを基盤とした小・中一貫教育は学力向上に資すると。不登校ももちろん減っていくということであります。
 (27・28ページ)先ほど申し上げましたようにコミュニティ・スクールを基盤としておりまして、これは単独で小学校・中学校が教育活動を進めるに当たりましても、やはり教育の方向が地域社会や御家庭と同じ方向を向いていなければ、教育効果は上がりませんので、地域と連携して教育を進めていくということは当然のことだろうと思います。そのときに、きまぐれと言っては言い方が悪いですが、やったり、やらなかったりではなくて、安定的にきちんと仕組みを作り、地域と連携をして、しっかり応援してもらう。そしてしっかりと説明責任を果たすということのために、学校運営協議会を学校に設置し、コミュニティ・スクールとしてやっていくことは小・中一貫教育を前進させるためにも非常に重要なことだということを私どもは確認しているところであります。
 (29~33ページ)これは先ほど資料に出ましたけれどもコミュニティ・スクールの仕組みであります。繰り返しになりますから申し上げませんが、中学校単位でやっておりますので、これは小学校の委員さんと中学校の委員さんが全部同じ方がなっているということが、私どもの特色ですね。
 これはコミュニティ・スクールですね。これはどちらも変わらないと思いますが。学校運営協議会、コミュニティ・スクールは、学校支援ということと、それから学校の運営、課題について協議をしていく、協議機関というこういう2つの柱があります。それを両方やっておりますが、サポート隊は学校支援ということに重きを置いたものでありますが、学校支援のサポーターはこのような数字が出ております。
 やはりコミュニティ・スクールを基盤としたということは、地域ぐるみで学校を支えていくと。それも中学校区単位で。中学校区単位になりますと1つの小学校、1つの中学校よりももっと人材が拡大していきますし、また多様な機関が存在しますので、その中で連携して多様な教育が行われる、というようなことが可能であると言えると思います。
 (34ページ)これも教育活動の中身でありますが、様々な活動をやっております。これは小と中の先生方が協力し、小と中の保護者、地域の方が協力しますので多様な活動や実践ができていくということであります。
 (35ページ)これは当然のことですけれども、先生方同士が出会うきっかけ、チャンスがいっぱいあるわけですから、当然のことながら協力するという姿勢になっていくわけでありますし、この相互の授業交流もやりますので子どもたちの学習意欲が上がっていくということであります。何といっても小学校の子どもたちが、中学校に安心感を持つというようなこともございます。生活指導の面も小と中が連携することによって非常に安定した思いやりの心などが生まれていくということであります。
 基本的に中学校側からすると、中学校でいい実践をしていたとしても、これは小学校から実践していたらもっと良かったのにということだとか、小学校からすると小学校でいい実践に取り組んでいることが、中学に行って発展させたらもっと子どもが伸びていくだろうという、そういうことも言えるわけで、そういうことを具体的に本市の全小中学校で実践をしているということであります。

【小川主査】 ありがとうございました。今の御報告について疑問や御意見もあると思いますけれども、呉市の方の御報告を伺った上で、全体としてそういう時間を設けたいと思います。よろしくお願いします。
 それでは次、呉市教育委員会から、よろしくお願いいたします。

【長谷川委員】 はい、今から呉市の事例を発表させていただきますけれども、三鷹市の中身を今見まして、まさに学習指導要領にのっとって、この小中一貫教育を行っているということなので、中身はだいたい同じような形で進んでいくのかなと思います。
 平成12年度から研究を開始しまして、平成19年度から市内28全ての中学校区で取組を始めました。当時は、中学校28校、小学校54校、合わせて82校で一斉にはじめ、今年で5年目を迎えます。今小学校が統合して44校になりましたけれども、呉市は日本一長い海岸線を持つ市であるということで、非常に遠距離に中学校、小学校が存在する。そういう分離型の学校がほとんどです。2校が一体型。始めた目的は、とにもかくにも中学生の自尊感情を育てようじゃないかと。中学生が荒れていること。しかも中学校1年生になったときから不登校、いじめ、暴力行為が増えたということで、これをとにかく無くそうと。地域の中学生が荒れているということは、小学生にも悪影響を与えるわけですね。小学生はそれを見て育っている。だからその中学生に規範意識をしっかり涵養して、社会性を身に付けさせる。そのためには自尊感情を身に付けさせる。そこで、少子化で、家庭の中で誰も頼る者がいない中学生を近所の小学生と一緒に生活させる環境を作る、つまり、小さい、幼い小学生が中学生に対して「にいちゃん」「ねえちゃん」と慕うような環境を作ってみると効果があった、つまり、中学生に自尊感情が芽生えた。「こういう幼い子がオレたちを慕ってくるのか、そりゃ頑張らなきゃいけんな」というような形で小中一貫教育の成果が表れたということで、今まで取組を進めてきております。だから、学力の向上とか、教職員の指導技術の向上はあくまでも付随したものでありまして、いわゆる中学生の自尊感情を育てていく、小学生と中学生を一体化させるということによって、教師の意識が変わる。自然と学校が落ち着くと学力が上がってくるということです。そういうことで、手探り状態で進めていますが、その状況や成果等も含めて御報告させていただきます。
 今日は呉市の小中一貫教育の要であります学校教育課の寺本課長から報告します。

【寺本学校教育課長】 それでは、よろしくお願いいたします。今日私どもが用意した資料でございますが、お手元に資料7、これからお示ししますスライドと同じもの。それから「呉市は28すべての中学校区で小中一貫教育の取組を進めています」というリーフレット。この2つをお示ししておりますけれども、主にスライドの方を基に説明をさせていただきます。それでは、よろしくお願いいたします。
 (資料7(以下同じ)・2ページ)御覧の図は呉市内の小中学校と中学校区の図でございます。図の赤い丸印が小学校、緑の丸印が中学校、オレンジ色の線で囲まれた部分が中学校区を表しています。呉市は現在28の中学校と44の小学校がございます。呉市では住所地によって通学する小学校と中学校が決まっています、
 (3ページ)それでは呉市の小中一貫教育の導入の経緯を説明いたします。平成10年頃の状況でございますが、いわゆる中一ギャップという言葉に表されるように、中学校に入っていじめ、不登校、暴力行為等が急激に増えるなどと言った状況がございました。
 (4ページ)そこで小学校6年生の児童にアンケート調査をしたところ、勉強に対する不安と人間関係への不安の2つが特に目立っていることがわかりました。この中1ギャップの解消を図るために小中一貫教育を行うことで、児童生徒の自尊感情を向上させることができるのではないか、ということで小中一貫教育の取組を始めました。
 (5ページ)平成12年当時の文部省から、教育課程改善のための研究開発学校の指定を受け、児童生徒の発達に則した小中学校の一貫した教育課程と指導方法の工夫について研究を行いました。その研究を進めていく中で小中一貫教育が中1ギャップの解消や自尊感情の向上に成果があることがわかり、そのことを平成16年全国の研究開発学校と共に中央教育審議会の部会で報告をしました。
  この研究成果を基に呉市では、平成19年度から28全ての中学校区において、小中一貫教育を始めました。そして実践から5年目に当たる今年度、7月28・29日に第6回小中一貫教育全国サミットを呉市において開催し、教師や子どもの姿を全国の関係者に見ていただくことができました。
 さて、呉市が進めている小中一貫教育について具体的に説明します。これはお手元にお配りしておりますリーフレットを開いていただければ、真ん中にございます、ねらいと推進の方針は御覧のとおりです。
 (6ページ)呉市の小中一貫教育は9年間で子どもを育てることを前提に、次の4点を特徴としております。
 1つ目、学習指導要領にのっとっていること。2つ目、全市的に展開していること。3つ目、義務教育9年間を発達段階に応じて4・3・2区分に分けていること。4つ目は中学校区の特色を生かした取組を進めていることです。
 (7ページ)次に4・3・2区分についてです。前期4年、中期3年、後期2年としているわけですが、特に小中一貫教育の目的である中1ギャップの解消ということに重点を置いて指導しています。例えば、小学校に一部教科担任制を取り入れたり、中学校教師による乗り入れ授業を取り入れたりして、中学校に進む準備をこの中期に行っています。
 (8ページ)4・3・2区分の研究開発当時の資料を基に根拠について説明します。最初に身体の発達についてです。このグラフは上側が昭和25年度、6・3制が始まった頃の男子・女子、下側が平成16年度の男子と女子の身長の変化を表したものです。折れ線グラフが身長の推移、棒グラフが1年間の伸びを表しています。
 6歳の時の身長を御覧ください。平成16年度は昭和25年度に比べ、男子が8.4センチ、女子が8.6センチの差が見られます。中学校に入学する12歳では、男子は16.5センチ、女子は15.3センチの差が見られます。また1年間の成長の伸びのピークは、昭和25年は12歳から15歳であったのが、平成16年には、10歳から12歳となり、子どもたちの身体の発達は2年くらい早くなっていることが分かります。
 (9・10ページ)次に心の発達を見てみます。このグラフは小学校1年生から中学校3年生までの児童生徒に対する「自分は周りの人から認められていると思いますか?」という質問の回答の結果を表したものです。グラフの縦軸は1年生から9年生となっていますが、中学生を7、8、9年生と呼んでいます。小学校4年生までは肯定的な回答が多いのに対して、5年生から急に否定的な回答が多くなっています。その中で「思わない」と回答した子どもの割合も増えています。このように心の変化から子どもたちは小学校5年生ころから思春期に入ると考えられます。中期はもともと心の発達と身体の発達がアンバランスな時期ですが、子どもたちは、身体の発達が益々早くなり、非常に不安定な時期であると言えます。
 (11ページ)次に生徒指導上の課題について説明します。これは平成13年度の学年別問題行動の発生率をグラフにしたものです。全国のデータでも同じ傾向が見られますが、中学校入学以後、急激に問題行動が増加しています。しかしよく見ると、5年生になるときにでも緩やかではありますが、増加傾向が見られます。このことは小学校5年生くらいから問題行動につながる要因が潜在的に存在し、それが大きく環境が変わる中学校入学以後に表面化するのではないかと考えます。
 (12ページ)不登校の発生率についても同じ傾向が見られます。思春期の不安定な時期であり、小学校と中学校の接続期である中期の指導を工夫することで、生徒指導上の課題を解決することができるのではないかと考えています。
 このように心身の発達や生徒指導上の諸課題などを根拠として、4・3・2区分が妥当ではないかと呉市では始めました。
 (13ページ)呉市では校舎の立地条件によって、一体型と分離型の2つの形に分けています。一体型とは、校舎が一体となっているものですが、呉市には現在、呉中央学園、警固屋学園の2中学校区があります。残りのものは中学校と小学校が離れている分離型です。一体型の校舎は、今年度工事をして呉市内では初めて小中合同の職員室を設置することができました。そのため来年度、現在校長2人制から、校長1人・教頭2人の体制でいきたいと考えています。
 (14ページ)御覧のスライドは、もう1つの一体型の1校です。黄色い部分を橋でつないだ一体型で、小中それぞれに校長がいる2人制でやっていくことを考えています。呉市ではこのように既存の施設を活用することで、一体型への検討をしています。
 (15ページ)次に学校経営においては、一体型と分離型では特に違いはありません。教育目標、研究主題の共有化を図り、中学校区としての学校経営をしております。子どもたちの交流活動や合同行事では、分離型においては、その回数が限られるため長期休業中の活用などの工夫をしています。
 (16ページ)小中一貫教育を進めるに当たって、家庭や地域との連携は欠かせません。そのためそれぞれの中学校区からは、小中一貫教育である学校のホームページ・研究公開などにより、その教育活動を伝えています。また各学校とも地域に開かれた学校づくりをするために学校評価や学力調査、研究公開等で検証を行い、改善を図りながら取組を進めています。呉市では学校評議員制度の確立や学校関係者評価の充実、例えば、経営目標を小中共通にすること、学校関係者評価委員を小中共通の人になってもらうことで、小中をつないでいったり、地域の意見をしっかり聞きながら地域と共にある学校づくりを推進しているところです。
 次にこれから小中連携の具体例を、少しビデオを流して、見ていただきます。これから紹介する中身は昭和北中学校区と言いまして分離型の校区で、中学校が1校、小学校が2校、児童生徒数が3校合わせて2,000名以上の大規模校です。職員数も100名を超えて、学校間の距離もそれぞれ1キロ以上離れています。このような実態の中で小中連携の具体を紹介します。

(動画上映)

 はい、ということで少し具体のイメージを掴んでいただけたのではないかと思います。
 (18ページ)この昭和北中学校区の取組以外に、これも同じ分離型の中学校区で行っている合同運動会の様子です。小中の教職員が共同して企画・運営することで職員間の絆が強くなり、こうした活動を通じて、小学生にとっては「あんな中学生に自分もなりたい」という希望を持たせることや、中学生が小学生の面倒をみることで、自尊感情の向上に大きな効果があると見られます。
 またこのような合同行事や先ほど紹介した合同授業の乗り入れ授業等について、教員の意識調査をしたところ9割以上が、「効果があった」と回答しています。
 (19ページ)これも取組の1つですが、小学校の取組を中学校につないでいくということで、左は身体の成長や体力、運動能力の9年間の変化を記録している体育手帳です。右は自分が読んだ本を記録する読書貯金通帳です。こうした記録を9年間続けることで、子どもたちは自分の成長を実感することができ、教職員にとっては9年間で、子どもを見て育てていこうという意識が生まれていきます。
 呉市教育委員会では。小中一貫教育を推進していくために次のような取組を行っています。その中から4点御説明します。
 (20ページ)まず小中学校の管理職を対象としたブロック別学校経営研修会を実施しています。小中学校の校長が自分の校種以外の授業を参観することでそれぞれを理解することに役立てています。
 (21ページ)次に小中一貫教育推進コーディネーターです。呉市では各学校に1名のコーディネーターを指名しています。これは定数配置内での指名ですけれども、コーディネーターの役割は大きく2つあります。中学校区内の学校と学校をつなぐこと。もう1つは中学校と小学校外部をつなぐということです。コーディネーターは小学校と中学校を1つの組織として取組を進める下地づくりをしています。
 (22ページ)次に乗り入れ授業をスムーズに行うために、これは市費で小中一貫教育推進加配講師を配置しています。分離型の中学校区では、移動に時間がかかるなど、地理的な制約があり、時間数も限られます。この事業は分離型の中学校に加配講師を措置することにより、中学校の教員が中学校区内の小学校に円滑に乗り入れ授業することができるようにしたものです。本年度は9名が措置され、年間400時間程度の乗り入れ授業を実施しています。
 (23ページ)次に乗り入れ授業に関わって、兼職発令の状況を説明します。呉市では、全ての中学校区で乗り入れ授業や、小中合同授業を行っています。兼職を発令しなくてもTTであれば、乗り入れ授業や合同授業を行うことができますが、単独で乗り入れ授業をするために兼職の発令が必要となります。平成20年度は5校12名でしたが、平成23年度呉市独自の加配講師に加えて、広島県の小中連携加配も配置されるようになり、16校、36名に兼職を発令しています。
 (24ページ)次に市民への啓発ですけれども、平成20年度から小中一貫教育市民フォーラムを行っており、理解が深まっていると捉えています。
 (25ページ)これは先ほど紹介しました今年7月28、29日に行われた第6回小中一貫教育全国サミットの様子です。呉市の小中一貫教育を全国41都道府県から2,126名の参加者に御覧いただくことができました。
 それでは最後に成果と課題についてお話します。
 (26ページ)まず、成果についてです。これは平成21年度に行った小中学生の全保護者、全教職員を対象にした意識調査の結果です。回答数は保護者10,965名、教職員1,144名でございます。7割を超える保護者が小中一貫教育は教育的効果があると感じています。また複数回答で、多くの教職員が小中合同研修会、異学年交流、小中一貫カリキュラムなどの取組に対して、効果を感じていることが分かります。
 (27ページ)次にお示しする成果は、児童・生徒の学力の向上です。広島県では平成14年から小学校5年生、中学校2年生全てに行っている「基礎・基本」定着状況調査というものがございます。その結果ですが、平成19年度呉市が全市的に小中一貫教育を始めた時の5年生の平均通過率です。広島県の平均をゼロとして比較しています。その同じ子どもが、中学校2年生になったときの結果を御覧ください。学力が大きく伸びていることが分かります。また、全国学力・学習状況調査においても、昨年度小中の全ての教科で全国平均を上まわっています。
 (28ページ)最後に生徒指導上の成果です。このグラフは中学校1年生の暴力行為といじめの認知件数の推移です。中学校の入り口である7年生で、生徒指導上の諸課題が減少していることが分かります。
 (29ページ)一方、課題でございます。大きくは次の2点が考えられます。1つ目は分離型の中学校区で乗り入れ授業が9年間を通して、計画的にできるような支援体制です。乗り入れ授業には打ち合わせ時間の確保、人的支援が必要です。また出張するための予算も必要です。2つ目は保護者や市民の小中一貫教育に対する、さらなる理解を図ること。この2点を課題として捉えています。以上、呉市の進める小中一貫教育、そして成果と課題について御説明させていただきました。ご静聴ありがとうございました。

【小川主査】 ありがとうございました。2つとも、非常に興味深い報告内容だったと思います。先ほど事務局から御説明いただいた資料4、資料5、及び今の三鷹市、呉市の報告を踏まえて、少し意見交換をしたいと思います。時間もちょっと予定より短くなって40分ぐらいしかないのですが、一応、先ほどお話したように今日は最初ということですので、検討課題の1とか6ですね、「小中連携、一貫教育の目的、効果」、また「『地域とともにある学校』づくりとの関係性」を少し意識していただきながら、意見交換をしていただければと思います。その他、今の2つの報告内容、非常に豊富な様々な素材を提供してくれましたので、1とか6にこだわらず、どうしてもこの2つの実践についてお伺いしたいというようなことがあれば、まったく構いませんので、御自由に御質問・御意見を述べていただければと思います。どうぞ、清水委員から。

【清水良一委員】 大変興味深い実情を拝見いたしました。ありがとうございました。私は教育委員会が、あるいは私立においては学校法人が「ここのところは」という共通意識の下に、そこさえ飛び越えればできそうなものは何かと考えたときに、高いハードルというのはなかなか難しいところがありますけれども、ここを飛び越えれば、というところをお示しいただければ。そして、皆さんが、全ての方々が当事者意識を持たれて、そして今扱っている子どもたちの質を、教職の質を高めていこう、そういう思いの中にあったときに、できるもの、という実例を今拝見させていただいた思いをしております。貝ノ瀬先生にお聞きしたいのは、7つの学園の中にあって、区切りについては、各学園にお任せをしているというようなお話を頂きましたけれども、私はそれこそ弾力的で自由裁量のある、ありがたい裁量をなさっていらっしゃるのではないかなと思ったのですが、その辺りのところをお聞かせいただきたいと思います。

【小川主査】 御質問について何か他にございますか。幾つかあればまとめてお二人にお伺いするのですが。國定委員どうぞ。

【國定委員】 大変興味深い御指摘を頂きましてありがとうございました。それぞれの要旨についてお伺いしたいと思うのですが、教育活動ということではなくて、子どもたちの目線で見たときに、小中一貫、9年間を意識する場面というのはおそらく小学校の子どもたちから見ると中学生のお兄さん、お姉さんと学校活動の中で一緒になる機会だと思います。その頻度はどのくらいあるのでしょうか。逆もまた然りだと思うのですが、それがその一体校と、分離型のそれぞれの場面場面で、おおよその頻度として、例えば週に何回とか、月に何回とか、というようなレベルでそれぞれ小学校・中学校の子どもたち同士が交流したり、様々な機会を通じて向きあったり、接したり、コミュニケーションを取ったりする機会があるのかどうかということについてお聞かせいただきたいと思います。

【小川主査】 他に質問を受けたいと思いますが、はい、角野委員。

【角野委員】 私のもともとの問題意識が、教員の発想から小中一貫教育はなかなか進みにくいというのが前提にあったのですが、この中で教員が随分と変わっていった、保護者の意識も改革されていった。その中で教員たちが子ども観であるとか、授業観であるとか、教科観、こういう辺りに変化をきっともたらしていると思うのですが、その辺りもし具体的なことがありましたら、お教え願いたいと思います。

【小川主査】 ではよろしいでしょうか。今の御質問等々が小中連携・一貫教育の目的、期待される効果の議論にも関わる内容でもありますので。では、貝ノ瀬委員の方からよろしくお願いします。

【貝ノ瀬委員】 まず、清水委員からの御質問ですが、9年間の区切りを学園にお任せしていると。区切りについては、さっきから出ていますように、資料もありますが2、3、4がいいとかですね、4、5がいいとかですね、諸説あります。しかし、それを教育委員会が「こうだ」というようにして、やれないことはないですが、三鷹の場合でも、例えば22校、7つの学園があっても、地域によって相当子どもの実態が違う。お坊ちゃまのようなところもあれば、すごく野生的な感じのところもあったり。いろいろな発達の様子も違います。いろいろありますから、それは地域が子どもの実態に応じて区切りをしてみてくださいと。そのかわり、ちゃんと保護者も納得できるように説明責任も果たしてくださいというようにお願いしているところであります。
 それから國定委員の御質問ですが、これは子どもたちの目線ということでありますが、これはもちろん、子どもたちのためにやっているのですが、子どもたちは授業で行ったり、来たり。それから行事で行ったり、来たりというのがあります。具体的な回数等は、松永課長にお話ししてもらいますが、先生方も例えば職員会議を月1回は必ず、100人近くなるときもあるのですが、学園でそれをやるとか。研究授業も小学校でやったときは、中学の先生が来て、中学でやったときは小学校の先生が来て、というようにこれも月2回くらいのペースでやったりというふうに、しょっちゅう先生も行ったり来たり。それから子どもも授業や行事で行ったり来たり。合同でやることもあります。そんなことで先生方の意識も相当変わってきている。
 しかし、先ほどの角野委員の御質問にもあったように、これを始めるに当たっての最大の抵抗勢力は学校の先生。保護者は最初ちょっと良く理解できなかったところがありましたけれども。今でもやっぱりわかりますよ、大変だから。間違いを恐れずに言えば、楽な教育改革なんてないですよ。もっと良くしようとすれば、やはりそれだけの負荷が掛かるということです。しかしそれについては、やっぱり教育委員会もできるだけのことをして、先生方と一緒に解決していきましょうということで、私どもは少ない予算の中で後補充の講師を入れたりしてやっています。
 しかし、先生方というのは本来的に「子どもたちのために」ということで先生になっていますから、御自分の勤務のこともあるけれども、やはり子どもたちが実際に喜ぶ姿を見たり、成長していく姿を見ると、やっぱり「やらなくちゃ」とか「やってて良かった」という気持ちにだんだん変わっていくのです。ですから、今はそういう声はあまり聞かず、議会の一部の方たちが、学校を訪問して、「先生方、大変だろう」とかって尋ねるけど、「いや、そんなことありません」って逆に言われて帰ってきたという話をよく聞きます。「生きがいになっています」なんて言われてね。ですから、子どもが良く変われば納得するというのが先生方だと思いますので、そのようにしなければいけないというように心しています。

【小川主査】 小中の交流で一体型と分離型で、頻度がどのくらい違うかということも含めてどうぞ。

【松永教育施策担当課長】 三鷹市の教育施策担当課長の松永でございます。三鷹は全てが分離型でございますので、一体型ということではないのですが、7つの学園で様々な形で小学生同士の交流、それから小学生と中学生の交流、それから教員が行ったり来たりという形の交流、様々にやっております。
 今御質問がございましたのは、子どもたちの交流ということだと思いますけれども、特に小学生と中学生の交流の回数ということですが、全校でというのは学園集会という形ということが、年間1回程度は各学園行っております。多いところで学期に1回やっています。
 それからあとは様々なイベント的な部分での、部分的な何年生と何年生みたいな形の交流ということは、全部合わせるとだいたい月に1回程度は、各学園で何らかの形で子どもたちの交流が行われているというところです。以上です。

【小川主査】 ありがとうございました。それでは長谷川委員、よろしいでしょうか。

【長谷川委員】 まずは、子どもたちはどのくらいの頻度で交流しているかということですが、やはり呉もほとんどが分離型。一体型の方は、異学年交流として、読み聞かせをやったり、国語の時間あるいは総合的な学習の時間で一緒に学んだり、運動も時々中学生が教えるということはあるのですが、分離型はなかなかできません。回数は後から寺本課長から説明しますけれども。学期に数回あるぐらいです。
 ただ中学生の活動をビデオに撮って、小学生に見せる。例えば、運動会の体育祭の行進を、それを撮って小学校に送る。小学生がそれを見て「ああ、すごいな」という。中学生の素晴らしさをできるだけ小学生に伝えていく。クラブ活動、文化祭の様子を伝えていく。あるいは文化祭に招いたりということはありますね。そういったことで、交流をしている。
 教員の考え方がどういうふうに変わってきたかについてですが、これを19年度から始めたときは確かに「一体何をやるのか」ということで教員たちも固まっていたのですが、とにかく自分たちで考えてみろと。「できるところからやってみようじゃないか」と。「こうしろ、ああしろ」は言わないで、小学校と中学校がどのように交流ができるのか、「小学生の授業を見るところから始めてごらん」と言った。そうすると中学校の先生が、小学校を訪ねて行って、授業参観してみる。非常に緻密な、丁寧な指導をしている、「ああ、こういうふうな指導か」というところからスタートして、「これならなんとかいけそうかな」と。「あと事務的な処置はしてやるから」ということで「空いた時間に行ってごらん」という、まずはそういう乗り入れ授業から始まる。そうすると乗り入れした中学校の教師が非常に喜ぶわけです。「よかった、楽しかった」と。それは中学生なんて無表情で、あまり反応しないが、小学校へいくとちょっとした冗談にキャッキャッと喜ぶ。ちょっと専門的な理科の実験でもしようものなら、ビックリしたような表情で反応してくれる。これは面白い。外国語活動で入っていくと、本当に日頃の中学生に見られない表現で喜んでくれるというのがありました。小学校の先生も中学校に行って、そして声をかける。「あなたたち元気でやっている?頑張っている?」と声をかける。そういうところからスタートしました。じゃあ、「何か1つ共通するものを取り組んでみようか」ということで、呉には呉市歌というものがあります。呉市の歌。これを全部の小中学生で共通の歌として「小学生も中学生も式のときに全部歌おうじゃないか」という。小学生、中学生同じ歌を歌う。大きな声で歌います。びっくりするくらい。さらに「仰げば尊し」も一緒に歌おうということで、全部の小中学校で、卒業式のときは歌う。そういう共通の取組から「クリーン作戦も一緒にやっていこうじゃないか」「地域の掃除もやろうじゃないか」そういうところからやっていくうちに、中学校・小学校の先生たちが、「ああこれは本当に、共通して育てていかなければならないな」という思いに自然となっていったような気がします。学校からの先生からの不平、不満は一度も聞いたことがない。実を言いますと。コーディネーターの努力が随分あるのだろうと思いますが、そういう中で、本当に工夫しながら、他の中学校区に負けたくないという思いで頑張ってくれている。今がそういう状況ですね。以上です。では回数について寺本課長から説明します。

【寺本学校教育課長】 はい、小中合同の子どもたちの交流ですが、呉は分離型の学校で、小学校と中学校が一番離れているのは6.6キロというところがあるのです。ですから、やはり地理的に非常に無理な部分があるので、学期に1回~2回程度が平均です。クリーン活動や合同運動会とかも、そのように無理のない形でやっています。それから、子ども同士の交流についても、異学年交流というものをやっているのですが、ここで大事にしているのは、子ども同士の逆転現象が出ないようにすることです。例えば、小学校6年生と中学校1年生を交流させると、小学校6年生の方が体力面とか、学力面でも逆転が起こる可能性がある。だから小学校3年生と中学校2年生くらいとか。そうすると子どもたちが、小学生が中学生を憧れ、中学生が慕われることに喜びを思って自尊感情の育成に効果があるのではないかとに思っています。この異学年交流については、一体型の学校では月に1回程度、分離型の学校でもやはり、先ほど申しましたように学期に1回程度やっているのが、だいたい平均でございます。以上です。

【小川主査】 はい、ありがとうございました。質問者の方、何か御意見ございますか。では、他の方どうぞ。はい、村上委員、お願いします。

【村上委員】 呉市さん、三鷹市さんから大変素晴らしい取組を聞かせていただいてありがとうございました。呉市さんの方にお聞きしたいのですが、教員のアンケートで指導方法の改善意欲が非常に高いということがあります。それに、今日の資料の9ページで、学力の向上について、平成22年度の調査で国語のポイントが4.3ポイント上がっているのですが、一番の要因は何かということと、具体的な取組として何をされているのかについて、お尋ねしたいと思っています。

【小川主査】 よろしくお願いします。

【寺本学校教育課長】 学力向上についてでございますが、小中一貫教育を進める中で取り組んでいることで、まず平成19年の学力調査、実はあまり良くなかったのですね。そのときに小学校、中学校の校長会の方が自主的に学力向上のプロジェクトチームを作りました。それで、例えば、算数科においては、また国語科においては、小中でどういったところを大切にやっていなければいけないかを示し、「学びのすすめ」とか、「学び方マニュアル」というものを作成し、「授業では目当てをしっかりしよう」とか、「必ず褒めて指導していこう」とか具体的な内容をまとめ、各校区で取組を進めました。また、校区で合同の目標を作り、取り組んだこと。それだけではないと思うのですが、そういった動きがあって、こういった学力向上につながったと思います。
 それから、先ほどのスライドでも紹介しましたが、ブロック別学校経営研修会というものをやっています。小中一貫教育を進めるに当たっては、校長のリーターシップというのはやはり大切だと思います。その中で「まずお互いの授業を見ましょう」ということ。それまでは中学校の校長先生が、小学校の授業を見たことがないという方がいらっしゃいました。その中でまず校長がしっかりと異校種の授業を見ていって、学校経営の視点でどのように学力をつけるための授業を見ていくかというようなことを年に3回やります。平成19年から始めました。昨年度からその中の1回に教頭先生にも入っていただいて、まずそういった視点でやっているということ。それをそれぞれ学校の中に返していただいて、それぞれの実態の中でつながってやっていただくということ。それから校区の中では、先ほど紹介しましたように、コーディネーターというものがあります。やはり管理職だけでは駄目で、コーディネーターがしっかりと課題を共有するということが大事だと思います。学力の課題についてもやはり共有する中で、中学校の子どもたちがこういう力がついていないのは、小学校でどんなことを学べばいいか、というようなことをやはりお互いが意見交換をしました。
 全てがどの校区でも具体的になったわけではないのですが。そういった機運があったということでかなり学力の向上も図られてきたのではなかろうかと思っております。

【小川主査】 よろしいですか。教育長さんは何かございますか。

【長谷川委員】 呉市はこの5年間、特にここ最近3年間ですが、教師の指導力の向上ということ以上に、やはり「教育とは人である」と。「人間性のない教師はいくら指導力があっても、子どもたちはついていかない。子どもたちのモチベーションをとにかく上げろ」と。「そのためには笑顔と、それから適切な評価をしてやれ」と。手の挙げ方が素晴らしかったら、その都度「あなたすばらしいね、手の挙げ方すごいね」「いい返事だね」「いい考えだね」「ちょっと答えは違うけどすばらしい、あなたの考え」そういうような、とにかく笑顔で教室に入って、笑顔を絶やさず、そして子どもたちにやってやる。これは小学生でも中学生でも同じなんです。「褒めてやることを徹底しようじゃないか」ということをずっと言い続けています。呉市のキーワードとして「徹底と前進」というのを掲げていますが、そういったことを教師がまず「徹底させろ」と。「笑顔でやる」「評価する」ということを徹底させて、そして学校全体を半歩でも一歩でも前進させなさいと。そういう成果が表れているのだろうと思います。子どもにまずやる気を起こさせる。それにプラスして広島県で進める教育のやり方として、まずしっかり教える、そしてじっくり子どもに考えさせる、はっきり表現させるというこのシステムをとにかく徹底させてやろうじゃないかと。それがいい方向にだんだん定着しつつあるかなという思いであります。特別にこんなことをしているということはないのですが、「人間である」ということですよね教師が。以上でございます。

【小川主査】 ありがとうございました。他にどうでしょうか。では、高岡委員。

【高岡委員】 ありがとうございました。今日お伺いした2つの市のお話は実は、前にも別の場所で伺ったこともありまして、やはりすごいなという、圧倒されるなというのが、正直な感想でございます。それで、前回欠席をいたしておりますので、この部会の流れというのが、どういうことになっているのか、十分理解していないかもしれません。ですから今日は2つの市のお話を伺って、その感想ということしか言えないのですが、これはやっぱり、やるとすごいだろうな、というのが直感的な感想です。やるとすごいと言って、すごいことをやっていらっしゃるところのお話を聞いて、やっぱりすごいな、というのでは感想になりませんので、ちょっと自分なりに分析的に考えてみました。1つは、一貫教育という問題と、地域との連携、この2つがどちらの市にもセットになっている。これは非常に大きいことなのではないかと思います。おそらく小中一貫教育をやるということと、地域連携、地域の力をという、地域の教育力を学校にというその2つは当然のことながら、この小中一貫教育の目的・効果という観点で言えば、何のためにこれをやるか、というとまさに「子どもたちに確かな学力と生きる力を身に付けさせるために」であるし、もっと細かな課題で言えば、中1ギャップの問題、問題行動の解消ということがおそらく細かい課題として明確に意識されているのだろうと思うのです。
 その課題解決とか学校教育目標というものを明確に行政としても持たれながら、各学校がそれぞれの地域の中で、どう教育をしていくかということを考えると、結果、この2つはやっぱりセットでやらなければいけない、というふうに認識された。ここが1つポイントのような気がします。
 先生という観点から言うと、そこにいる先生方もおそらく意識が随分変わってきた。その変えるための装置としてこの小中連携・一貫ということがうまく機能している。確か貝ノ瀬教育長さんがおっしゃったと思いますが、「一貫教育は、それ自体が目的ではなくて、それはあくまでも教育を変えていくための手段である」という。そういうときに「じゃあ手段を使って何を変えるか」というと、元を辿ればやっぱり子どもたちの確かな学力という話になるのですが、その中間のところにやっぱり「教師を変える」ということが、非常に強く意識されている。それが大事なことではないかと思います。
 実は、免許の取得の状況、実態は分かりませんが、養成のレベルから見ると、小学校の先生は、大概、中学校の免許を持っていると思うのです。中学校の教員は逆で、小学校の免許を持っていないことが多分多い。そうなると一貫教育ということによって、ここで教師が動き始めることによって、先生方がそれぞれの学校の先生であるという、まさに制度の中で動いてきている自分たちの行動パターンというものを飛び出して考えなければいけませんから、その専門性という質が多分上がるのだと思います。小学校の教員が中学校に行き、中学校の教員が小学校に行くということによって、制度依存型の専門性の主張から、教職というものが本来持っている、持っていなければいけない子どもの教育のための専門家であるということを、多分どこかで、考えなおさせられる。そういう機能を果たすのではないかと思うのです。そういう意味で教師自身が変わっていくこと。制度依存型の専門性ではなくて、自ら新しい課題を追求していくような専門性を教師が持つというその意識が変わってくれば、絶対子どもの学力は上がってくる。それは当然だろうという気がいたします。
 それともう1つは、両市の教育長さんにお話いただいたのですが、こんなことを言うのは生意気なのですが、私も小さな町でかつて教育長をやったことのある経験で、私の事で言いますと、これで教育行政が実は救われるという側面がある。つまりやることがあると見えるのです。ただ学校を管理していて、学年進行だ、小学校終わったら中学校に行って、小学校の卒業式と中学校の入学式と、もう1つ中学校の卒業式出れば、教育長の仕事って大概終わりますよと。それが違うということが、この一貫教育と地域連携ということを本気になって取り組んだときの行政の役割の変化だと思います。「その町に教育委員会というものがないと絶対困りますよ」ということが、この事業が進むことで住民の中に浸透していく。だから教育行政がそれだけやってくれているのであれば、我々も手伝おうかという地域の教育力が高まってくる。地域の教育力が高まってくれば、学校の先生たちは「素人にいろいろ言われるのは冗談じゃないから、自分たちの専門性も上げなければいけない」というようにまわっていくのではないかなと。そう簡単な話だけではないと思いますが、そういう感想を持ちました。ありがとうございました。

【小川主査】 ありがとうございました。では天笠委員、よろしくお願いします。 

【天笠委員】 ありがとうございました。ずっと話を伺っていて、それによって得られた成果というのでしょうか、不登校ですとか、学力ですとか、1つ1つが大変大切なデータだったと思うのですが。それらを総括して、全体として成果として捉えるとすると、やっぱり掲げられた義務教育の目標ですとか、義務教育の目的への接近というのでしょうか、そういうことがやはり問われることになるのだと思います。呉市のリーフレットにも、義務教育の目標ですとか、義務教育の目的というのが掲げられていたわけで、言うならばこの目標の達成、目的の達成のために、それぞれの市がこういう形で工夫して取り組んできたという、そういう御発表だったと思うわけです。それをこれまで振り返ってみたときに、先ほど高岡委員から教師の専門性という言葉がありましたけれども、これまでですと小学校の教師は、学級経営というところを専門的な基盤にしながら、中学校の教師はそれぞれの教科を専門としながら、それぞれ9年間を分担してそれぞれのところで取り組んできて、そして60年近くやってきたわけです。しかしどうもその分担の仕方とかそういう役割分担の仕方でいったときに、なかなか義務教育の目標に達しきれないような状況が、今大変露になっているような状況であって、それに対して、教師の専門性をもう1度見つめ直してみようというような、そういう試みとして捉えることもできるのかなと思います。そこにおいては、小中の教師の交流ですとか、改めて「小中の先生が持つ専門性って何だろう」というような問いかけ、模索、その取組の中から、やってみてこういう成果が上がっている等々であるかと思います。そういう意味で言うと、改めて義務教育の目標の達成のための新たな試み、あるいはこれまでの取組についてのもう一度見つめ直しへの問題提起というのでしょうか、そういうものがこの発表の中に含まれていたのだと思います。あるいは、今全国で様々に展開されているそういう取組というのが、その辺りにポイントがあるのではないかなと私は捉えて、また今日の発表を聞かせていただきました。どうもありがとうございました。

【小川主査】 ありがとうございました。では角野委員よろしくお願いします。

【角野委員】 質問しかできていませんでしたので、2つの報告をお伺いいたしまして、自分なりの分析的な感想を申し上げます。
 入り口の違いはあるわけですが、角度を変えてみれば、共通部分が大変多い。その1つにそれぞれの市における目指す子どもの姿というものが、表現の仕方は違うのですが、一致しているのではないか。例えば「人間力」「社会力」ということと、「自尊感情」という言葉が出ましたけれども、ここのところというのは共通していると思います。
 平成18年に大阪府で学力調査をしたときに、大阪大学の研究者たちが、学力と何が相関関係があるかという分析をされたのです。その時に小学校は授業態度と学校の取組となったのです。中学校は授業態度が一番直結するのです。中学校の取組は直結しないのです。授業態度のバックにあるのは何なのかと言った時に、自尊感情であって、それが先ほど出ていたと思うのですが、受容感であったり、自己達成感であったり、まわりからの包みこまれるような感覚であると。こういうことがありまして、そういう意味では目指しているところ、義務教育の目指している目的みたいなものが、角度を変えれば共通しているなと思いました。
 それと私は、段差はある程度必要という論を若干持っています。ただその段差が教師の指導観であるとか、教師の子ども観による段差、あるいは授業力による段差であれば、これは即刻解消しなければならない。緩やかな、子どもにとって刺激になる、こういう段差については、双方の学校機能が努力をしながら子どもたちを押し上げ、引き上げるということが極めて重要で、今日2つお伺いしまして、その方法論にはいろいろあると思います。授業のノリであったり、それからそれによって、教員の授業観が変化していく。理科や数学の先生は喜ぶ、英語の先生も元気が出る。ただ中学校の国語の先生が、小学校で国語をすると落ち込んで帰ってしまう。一時的にですよ。それは小学校の国語の指導と、中学校の国語の指導の違い。そもそも、抽象化されてしまっている中学校教育の在り方というのがありますから。
  実は今日のお話を聞いていて、行政の方が様々なその方法を動かす上でのサポートをされている。人的なことであったりとか、例えばノウハウであったりとか、そういう意味ではおそらく学校の中に理念はあってもエンジンがつかない、という感じがありますから、エンジンもつけ備えたなということで、おそらく教員の方々の意識が変わったと。特に中学校の教員は変わりやすいと思います。というのは、「荒れ」は1日でやれるが、取り返しをするのには何年もかかるんです。そういう意味で言うと、やっぱり中学校の先生方の自尊感情もあわせて高まったのではないかというふうに思いました。
 もう1つ、地域のことなのですが、大変宣伝、あるいは周知ですね、大変上手だなと思いました。それと子どもの姿を地域にやはりきっちり見せていると。そういう意味ではアンケート調査等を活用しながら、成果が前に出ていると。そういうことで、さっき私が、「教員の意識はどうですか?」とお聞きしたのは、要はここに尽きるということです。ここのところで教員たちはいろんな授業改善のノウハウも持ったのではないかと。私は、そもそも小中一貫教育の考え方というのは、9年間の教育課程を構造的に理解したもの、これが小中一貫教育を進めるというふうに思っております。小学校と中学校の先生が異文化で対岸からモノを言い合っているという姿から、互いに橋を川を渡ったと、こういうふうな協働の取組と合わせて、補完も裏で、きっとお互いに設置しているのだろうというふうに思いまして、連携というよりは、協働と補完というような印象を受けました。ありがとうございました。

【小川主査】 ありがとうございました。他に御意見がある方。清水哲雄委員と酒井委員、お願いします。

【清水哲雄委員】 この小中一貫教育の目的などを考えて、今日はすばらしい御報告を2つ聞かせていただいたのですが、どうもよく分からない部分があります。貝ノ瀬委員が目的と手段についてきちんと捉えてくださったので、ある程度整理はできているかと思うのですが、例えば小中一貫教育をしないと自尊感情は育たないのかとか、あるいは、小中一貫教育があったので非常に肯定的に捉える姿勢が高まったとか、と言うのがどうもよく分からない。
 最初に呉市の方で発達段階のことをグラフで見させていただいて、間違いなく、身体的な発達が2年ほど早くなっていることは事実でございます。それと連動するような形で、小学校の授業の集中力の低下というのは、5年生から落ち始めているとか、そういうことが起こっているのですが、それを改善するのに小中一貫教育でなければいけない、というところはどうもまだ私個人の中では身についていなくて。この中で議論をしていくことになろうかと思うのですが、つまり、小中一貫教育をする前段階としてやるべきことがあって、それをしないで小中一貫教育の議論をしていいのかなという、そういう疑問を私は持ちました。ただ1つの手段として、大変すばらしい手段だと思っています。是非この議論を深めていただければと思っています。

【小川主査】 最後、酒井委員お願いいたします。

【酒井委員】 どうもありがとうございます。本当にすばらしい実践で、PDCAと言いますか、評価のところがしっかりしているので、実際の効果がはっきりするということを実感いたしました。その上でいろいろ考えていたのですが、今回の御発表は一貫教育とうたわれている部分がありますけれども、ある部分は連携と言いますか、小学校と中学校の連携という要素があり、その中で非常に重要なのが、小学校と中学校の教員がお互いを理解するという、そういう部分が非常に明確にあるのだなと実感いたしました。
 それからもう1つは、高岡先生もおっしゃったことですが、地域との連携なり、いろいろなものがセットとしてこの問題の取組がある。小中連携と言ったときに、どの範囲で議論するかと言ったときに、単純に学校教育の問題だけではなくて、地域全体の、あるいは、そうしたネットワークの中でどう取り組んでいくのか、というそういう大きな問題の提起として、今日は拝見いたしました。どうもありがとうございました。

【小川主査】 ありがとうございました。では最後に、委員の御意見等々、伺いながら貝ノ瀬委員と長谷川委員がどういうふうに感じられたというか、その辺りの御意見を伺って、最後にしたいと思います。貝ノ瀬委員からよろしくお願いします。

【貝ノ瀬委員】 清水哲雄委員さんからの御質問に集約されているのではないかと思いましたが、不登校にしたって、自尊感情にしても、それから校内暴力、いじめの問題、学力の問題にしたって、小中一貫にしなければ解決しないかと言えば、そんなことはない。単独校だってできる。それは、そういう成果を上げているところがありますから。だから個別的なことについて考えたら、必ずしも小中一貫にするは必要ないと思います。
 私どものまちは、小中一貫に敢えてするということ。その時に、コミュニティ・スクールを基盤とする、ということとセットにすることによって、単に個別的な問題についての対策を図るためにやっているのではないですよということです。
 つまり、まちをもっと良くしよう、我が住むまちを。みんながより良く人間的に成長していく喜びを味わっていけるような町にしよう。そのためには教育もよくならなければいけない。「もっともっと良くしよう」ということのために、例えば、先ほど資料説明がありましたが、学習指導上の成果を上げるため、生徒指導上の成果を上げるため、教職員の質の向上につなげるため、つまり教育の質を上げていこうということを総合的に考えたときに、そこの小学校・中学校の先生が連携して、縦にオープンマインドで連携をし、また横、小学校の先生も中学校の先生も、地域の人たちもオープンマインドで連携をして、みんなで「とにかくより良く子どもを育てていこう」というのが最終目的であります。そこに教職員の意識を変えたというのが入っているのですよ。でも、それを全面に出すと先生方が協力してくれるかどうか。はっきり言えば、「先生たちの資質向上になるのだからこれをやったほうがいい」とか、そういう押し付けがましいことは全然受け付けない。そういう話にならない。ですから、そういう教職員の意識改革を含め、そして子どものより良い成長、そして市民の皆さん方、保護者の皆さんが、その当事者意識をもって、また自分たちも学びの場として学校を考え、自分たちも人間的に成長していきましょう。そういうことで、学びの場、拠点として、学校を位置付け、みんなで共に励まし合って、助け合って、そして幸せになっていきましょうという、そういう拠点として学校があるときに、小学校の先生、中学校の先生が、連携をする。学童や地域子どもクラブ、幼稚園も保育所もあればそれも全部連携してやっていきましょうということです。その時に、学校を一生懸命応援してもらえる人たちをたくさん育て、そして増やしていく。と同時に、やっぱりクリティカル・フレンズ、つまり「辛口の友人」としていろいろ御指摘も頂き、そしてより良くやっていきましょう。我が市の場合は、コミュニティ・スクールと小中一貫をセット、これが一番ベストの改革だということで取り組んでいるわけです。教育委員会は、執行機関ですから、市民の皆さんと話し合って「これだ」となれば、とにかく成果を上げるように頑張ると。みんなと一緒にね。そういう姿勢でやっています。

【小川主査】 では長谷川委員、お願いします。

【長谷川委員】 呉市の場合はコミュニティ・スクールに敢えて取り組んではいないわけですが、それぞれ中学校区の地域が非常にしっかりしている。いわゆる自治会連合会ですとか、女性会という組織がしっかりして、強烈に学校を支援してくれる体制があります。
 つまり学校の校長、教頭、あるいは教員と話し合いをもって、そこに保護者、PTAの役員たちが一緒になって、地域と一体化して見守り隊を組織して、常に情報を得ている。それを学校に反映しているということで、校長主体の特色ある学校経営をやっていただこうということです。
 先ほどありましたように呉の場合、いわゆる小中一貫教育をしないと自尊感情は育たないか、小中一貫の前にやるべきことがあるのではないかということでございますが、それは当然のことなのですよ。そうではなくて、小中一貫教育が1つの手段であったと。やってみたら効果があったと。だから小中一貫教育を進めていくということなのですね。今、子どもたちの価値観が情報化社会の中で、猛烈に変わってきている。ところが、学校教育の現場だけは昔からのやり方で、ずっと教育してきているので、どうしても今の子どもたちのニーズに合わないところが出てきて、子どもたちが落ち着かなくなったのではないか、ということも考えられる。だから、システムを変えてみて、先生の意識を変えて、教育の活動の在り方を変えてみたら、意外に効果があった。例えば子どもたちの価値観に対応したのではないかなと考えております。まだまだ今からやらなければならないことはありますが、こういう機会を生かして頑張っていきたいと思います。

【小川主査】 ありがとうございました。他の委員の方もいろいろ御意見等々あるかと思いますが、今日はちょっと時間も過ぎましたので、これで終わりたいと思いますが。私から、最後に一言感想を言わせてください。
 私も最初は清水哲雄委員が御質問されたような意識を持っていたのですが、いろいろ話を聞いていくと、小中連携というのは、小学校・中学校が固有に保有している教育的な諸資源を、効果的に活用する1つのツールとして効果があるなということをすごく感じました。今まで小学校・中学校それぞれの目的があって、その目的に沿ったいろいろな仕組みや運用の慣行というものがあったのですが、小学校・中学校がそれぞれ持っていた教育的な諸資源をなかなかうまく効果的に活用できなかった面があった。それが小中の連携ということで、そういういろいろな制約を破ったり、ルール、慣行を見直すことで小学校・中学校がそれぞれに持っていた固有の教育的な資源をより効果的に活用できるようになったという、そういう、ツールとしての意味というのはあるのかなと感じました。それをさらに超えて、小中を超えたシステムとして考えるかどうかというのは、またそれは次の問題だと思いますが。
 小中連携・小中一貫の目的とか効果等々については、まだまだ議論を深めていかなければならないと思いますが、今日は時間もありませんので、一応このくらいにしておきたいと思います。
 また次回以降も、他の課題についても議論しながら、もう一度小中連携の目的・効果の論議に何度も立ち返るというような議論がどうしても必要かと思いますので、そのように審議をこれ以降も進めさせていただければと思います。
 時間が5分くらい過ぎましたけれども、今日はこれで終わりたいと思います。次回以降の予定について、事務局からお願いします。

【小谷教育制度改革室長】 次回でございますが、11月30日水曜日、13時から15時に文部科学省3階の特別会議室で開催させていただきます。また改めて開催通知により御案内させていただきます。よろしくお願いいたします。それから恐縮ですが、こちらの資料は次回以降も追加して机上資料とさせていただきますので、そのまま机上にお残しいただければと思います。どうもありがとうございました。

【小川主査】 それでは今日の会議をこれで終わります。ありがとうございました。

―― 了 ――

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