学校段階間の連携・接続等に関する作業部会(第6回) 議事録

1.日時

平成23年6月22日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省3階 特別会議室1

3.議題

  1. 中高一貫教育制度に関する主な意見等の整理(案)について
  2. その他

4.議事録

【小川(正)主査】
 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第6回の学校段階間の連携・接続等に関する作業部会を開催したいと思います。
 今日は、お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございました。今日は、上野委員、直原委員、柳原委員、山本委員、そして古川委員が御欠席と伺っております。また、井上委員が途中、11時ごろに退席されると伺っております。
 では、まず議事に先立ちまして、本日の配付資料の確認を事務局からお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】
 本日の配付資料でございますが、議事次第にございますように、資料1から3、また参考資料2点となっております。不足等ございましたら、お申しつけください。

【小川(正)主査】
 配付資料、よろしいでしょうか。
 では、これから議事に入りたいと思います。今日の議題は、前回に引き続いて、「中高一貫教育制度に関する主な意見等の整理(案)について」です。
 前回、意見等の整理(案)を御提案いただきまして、皆様から非常に活発な御意見、議論をいただきました。また、会議終了後にも、この間、各委員からいろいろな追加の意見等々も頂戴しました。
 今日は、前回の御意見及び、各委員から御提出いただきました追加意見も含めまして、再度、この整理(案)を事務局で修正いただきましたので、今日はまた、この修正された案に基づいて議論をしていただければと思います。
 まず最初に、事務局から、その意見等の整理(案)を御説明いただければと思います。

【小谷教育制度改革室長】
 それでは、御説明いたします。本日の配付資料ですが、まず、前回御意見いただきましたことを追記しましたものを、意見の整理を行う上での参考資料として、資料2として用意させていただいております。そして前回の御意見を踏まえて改めた資料1-1、中高一貫教育制度に関する主な意見等の整理(案)と、そして前回からの修正が分かるように、見え消し版として資料1-2を用意させていただいております。今回は、あらかじめ委員の皆様方に資料をお送りさせていただいておりますので、修正点のみ端的に、資料1-2を使って御説明をさせていただきます。資料1-2を御覧ください。
 まず、1ページを御覧ください。これは制度導入時の背景・考え方のところですが、清水委員や河合委員からの御意見を基に、46答申ですとか、導入当時の私学等の状況について加筆をしております。
 続きまして、3ページでございます。3ページの現状のところでは、上野委員や河合委員から402校という数字の評価についての御意見がございました。また私学については清水委員から御意見がございましたので、加筆をしております。
 それから、5ページ目でございますけれども、5ページ目の30行目の丸のところですが、これは小川主査の御指摘を基に例示を追記をしております。なお、この部分に関しまして、委員の皆様方に事前に資料を送付させていただきましたが、本日御欠席の上野委員から1点御意見を頂戴しております。30行目の修正部分の「特色ある教育の展開や異年齢の集団の活動など」というところの「異年齢集団の活動」のところは、異年齢の別々の集団がそれぞれ活動するという意味にもとれるので、「異年齢の生徒間の協力活動」とするなど、意味の明瞭化について御検討ください、という意見を頂戴しておりますので、御紹介させていただきます。
 それから、5ページ目の36行目以下ですが、こちらは主に入学者選抜のところでの議論でございましたが、直原委員や古川委員から御指摘のありました、近年の初等中等教育をめぐる議論の流れについて追記をいたしました。
 あわせて、6ページ目の5行目のところは、公立学校の役割についても触れております。
 続きまして、7ページ目からは、「特色ある教育の展開について」でございます。こちらにつきましては、8ページを御覧いただきたいのですが、最後のところで、上野委員から養成についても記述すべきという御意見がございましたので、こちらでは現在、中教審の教員の資質能力向上特別部会で議論されております内容も参考に追記をさせていただきました。
 続きまして、11ページを御覧ください。11ページは教育課程の特例のところでございますが、ここはまず表現を適正にするよう補わせていただきますとともに、25行目の段落のところにつきまして、小川主査から御指摘がございました連携型につきましても、「特例の拡充について、今後検討が必要である」ということを加筆させていただいております。
 続きまして、13ページ目を御覧ください。13ページ目は、学力差やいわゆる「中だるみ」への懸念に関する部分の記述でございますが、こちらでは清水委員や上野委員から、教員の見方と生徒の見方が異なるという御趣旨の御意見、また学力の意味をもっと明確にするというところについて御意見をいただきましたので、その辺りを加筆させていただいております。
 続きまして、15ページ目を御覧ください。こちらは前回最も御意見をいただいた部分ですが、青木委員から山本委員まで、御出席いただいた全ての委員の皆様方から意見を頂戴したところでございます。それを基に、全面的に書き直しをさせていただきました。
 まず15ページ目の前段のところで、適性検査、学力検査というものについての各教育委員会側の受け止め方を示した後に、13行目からの丸のところでは、前回、青木委員や小川委員、山本委員からございました、適性検査というのは学力検査ではないかといった御指摘を追記させていただいております。
 その上で、28行目から、委員の皆様方それぞれのお立場で、学力検査の実施を許容する考え方、あるいは許容しない考え方、両方の御意見を両面から御指摘いただきました先生方もいらっしゃいましたが、そういった先生方の御意見を事務局で再整理して、それぞれ3点ずつ列記をする形で、両論併記の形で示させていただきました。
 それを踏まえた上での、16ページの27行目からですが、こういった形で意見が分かれることになる論点として、そもそも公立学校における選抜というものをどう考えるのかといったこと、また、入学者選抜の際に、どういったところを対象として検査を行うのが適切かといったことについて、考え方が異なるのだろうということで整理をさせていただきました。その上で、まず、前者につきましては、公立の中等教育学校や併設型の中学校というのは、小・中学校の設置を義務付けられている市町村が義務の履行として設置するものではなくて、あくまで生徒や保護者の中等教育における「選択肢」を提供するために設置される学校であることから、学校が目標や目指す人材育成像、あるいは教育内容等の特色に応じて、これに見合う資質・能力を有する生徒を見極めるための入学者選抜を行うことは許容されてよいという考え方を書かせていただいております。
 その際の配慮事項につきまして、いろいろいただきました御意見を基に書かせていただいた上で、17ページ目の25行目でございますが、ここは、現状の「適性検査」については、こういった考え方を前提として、内容が妥当なものであるかを、各教育委員会によって検証していくことが必要だということ、また、制度上の取扱いについては、こういった状況も判断しながら、改めるかどうかを判断することが重要という形で整理をさせていただいております。
 それから、18ページ目でございます。18ページ目は、古川委員や山本委員から「簡便な入学者選抜」というものについての指摘をいただきましたので、その辺りを追記させていただいております。
 それから、21ページでございます。21ページは、「教職員の配置・交流と教職員の負担への対応」というところで、まず21ページ目の31行目の丸でございます。青木委員から教職員の定数増について御意見が出されましたので、こちらを追記させていただいております。
 それから、22ページ目の15行目のところですが、こちらは上野委員や小川主査から御指摘のございました、教職員の負担についての御意見を追記させていただきました。
 それから、23ページ目のその他の論点ですが、まず各地域における中高一貫教育の整備については、これは入学者選抜の意見での文脈ではございましたけれども、無藤主査代理から、単に私学を模倣するということではない公立学校としての在り方についての御意見をいただきましたので、平成9年の答申をもう一度踏まえる形で追記をさせていただきました。
 それから、地域への影響の30行目のところの丸ですが、これは小川委員から、公私のバランスといったことについて、千葉県の事情なども御紹介になりながら御意見をいただきましたので、その分を追記させていただいております。
 それから、24ページ目でございます。こちらにつきましては、小川主査、河合委員、古川委員、山本委員から、連携型中高一貫教育についての御意見を頂戴しましたので、そういったものを基にして、1項目立てて追記をさせていただきました。
 それから、25ページ目のまとめでございます。こちらにつきましては、まず中ほどのところですが、小川主査から、単に中高一貫教育制度のみの改善ではなくて、高等学校の在り方の検討が大事だと御指摘がございましたので追記をいたしましたし、最後の丸のところは、清水委員から御指摘がございました教育を受ける権利という視点、こちらを追記させていただいております。
 修正は以上でございます。

【小川(正)主査】
 ありがとうございました。
 では、今御説明あった内容について、再度委員の皆さんから、いろいろな御意見をいただきたいと思います。
 前回は、初めての「意見等の整理(案)」の提示ということで、1項目ごとに時間をとって進めたんですけれども、今回は、前回の整理(案)をベースにして、各委員からいただいた意見を、同文書に新たに加筆修正するという形での再度の整理(案)の提案ですので、前回のように1項目ごとに意見をいただくということをしなくてもいいかなと思います。ですから、大きく分けて前半と後半ということで、大くくりで意見をいただければと思います。
 まず最初に、前半ということで、「総論」から始まって、2の「特色ある教育の展開」、3の「教育課程の特例の活用状況とその拡充の必要性について」、そして4の「学力差やいわゆる『中だるみ』への懸念と学習意欲の向上を図る取組について」という13ページまでを、まず一括して議論していきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 皆さんから提出いただいた御意見が、この文書の中にうまく書き込まれているかどうかということも含めて、何か御意見等々があれば、お出しいただければと思います。どうぞ、御自由に。
 事務局のほうで、かなり詳細に加筆修正いただいておりますので、御意見がなければ、ほぼ、この内容で了解ということでよろしいでしょうか。
 では、清水委員。

【清水委員】
 確認ですが、先ほどどなたかから、5ページの30行目の異年齢集団の活動のところはちょっと意味が分かるようにしたほうがいいという御意見が出ておりましたが、そのとおりだと思います。ここは、このままではよくないかなと思います。

【小川(正)主査】
 それは、そのように変えられるんですね。

【小谷教育制度改革室長】
 本日の案について御意見をいただきましたので、本日御紹介した上で、御意見を皆様に御確認いただければと思います。では、そのように修正させていただきます。

【小川(正)主査】
 清水委員、よろしいですか。

【清水委員】
 はい。

【小川(正)主査】
 ほかにどうでしょうか。前回御欠席だった向山委員も、何かあれば。

【向山委員】
 前回の議事録も拝見しましたので、後半の入学者選抜で。

【小川(正)主査】
 はい、分かりました。
 よろしいですか。なければ、ある程度了解ということで。また、後半部分で議論して、最後に全体ということで、戻ってきたいと思いますので。
 では、とりあえず事務局のほうで、皆さんからいただいた御意見を、かなり的確に文書案に反映させていただいたということかと思いますので、一応1から4、13ページまでは、およそ、この内容で御了解いただけるかなと思います。
 では、よろしいでしょうか。
 では、次に、5から9までですね。5の「入学者選抜の在り方」、6の「心身発達の差異や人間関係の固定化を踏まえた異年齢集団の活動」、7の「中高間の教職員の配置・交流と教職員の負担への対応」、あと、8の「その他の論点」、9の「まとめ」というところで、意見をまた伺っていきたいと思います。
 なお、議論に先立ちまして、公立の中高一貫校の入学者選抜について、山中局長から少し御発言があるそうですので、よろしくお願いいたします。

【山中初等中等教育局長】
 会議は会議で御議論いただいて、文部科学省としてコメントしておきますけれども、公立の中高一貫教育校の入学者選抜については、受験競争の低年齢化等の懸念を背景として、学校教育法施行規則で、学力検査を行わないという形になっているところでございます。一方で、多くの公立の中高一貫教育校で、志願者が入学定員を大きく上回っているということも踏まえまして、面接とか、作文とか、あるいは小学校からの調査書、推薦書、こういうものを用いるなど、多様な方法を組み合わせた形で行われており、適性検査という形でも入学者選抜が行われております。これは志願者が上回っているという実態を背景にしたものだと思いますけれども、そういう中で、学校が生徒に求める思考力とか判断力、表現力といった総合的な適性を測るということが広く行われているという実態があるところでございます。
 各都道府県とか、あるいは市区の教育委員会では、学校教育法施行規則で学力検査を行わないとされていることと、それから、それぞれの学校の設置目的ですとか教育目標といったものを、それぞれの県、あるいは市区の議会なりで審議して、設置条例も決めてきたと思いますけれども、そういうものを踏まえながら、それぞれの地域の実情とか実態も勘案しながら、工夫して、何らかの形で適性検査という形で実施しているものと思います。今もそういう形でやっているわけですけれども、これで即、今現在、各地域において、その学校の適性検査の在り方について大きな問題を引き起こしているという状況にはないのではないかと思っているところでございます。
 いずれにしても、各教育委員会において、受験エリート校化とか、あるいは受験競争の低年齢化ということがないように、これは、それぞれ設置している地域においても、そういう批判を招くことがないようにという形で、いろいろと教育委員会、学校のほうも工夫を加えながら入学者選抜を行っているということだと思います。そういうものが一定の年数がたって、今の時点で、いろいろな形で、それぞれ都会であったり、あるいは過疎地域であったり、併設があったり連携があったりという形で、公立の中高一貫教育校というものが設置されてきておりますので、今の段階で、どう考えるかということについて御議論をいただければと、文部科学省として、こう考えているので、こうしてほしいということではないということを申し上げておきたいと思っております。

【小川(正)主査】
 ありがとうございました。
 今の御発言にもありましたように、この作業部会でこの間検討してきた議論に関係して、実は資料3で、皆さんのお手元に配付されているかと思いますけれども、日本私立中学高等学校連合会から、「公立中高一貫教育校の入学者選抜における『学力検査』の取扱いについて」という御意見も、この作業部会あてに提出されております。
 この内容につきまして、清水委員から少し御紹介をいただければと思います。よろしくお願いします。

【清水委員】
 資料3について、若干の補足をさせていただきたいと思います。
 御存じのように、全国の私立中学高等学校は、各都道府県の首長の下に入っておりますけれども、各都道府県ごとに協会を持っておりまして、その協会をすべて束ねているのが、ここにあります日本私立中学高等学校連合会、通称中高連と言っております。私は、そこでの理事もやっておりますので、ちょっと補足をさせていただきたいと思います。
 前回の議論の中で出ました適性検査の件につきまして、今回、ほぼ原案として上げるということでしたので、急遽、中高連としての意見を取りまとめたということになります。
 以前から再三申し上げていたことではありますけれども、実質的に見て、現在行われている適性検査は、明らかな学力検査であるという立場でございます。そうすると、いわゆる違法状態ということになりますので、その件を無視して、この作業部会で、これについてどうこうという意見を言うことが適切かというスタンスで書かせていただいております。
 御存じのように、私が言うのも何ですけれども、昭和22年にできた教育基本法では、教育は直接国民に責任を負いながら行われるべきものであるという文面がございましたが、2006年12月にできた新しい教育基本法では、それがなくなりまして、16条に、教育はこの法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであると変わりましたので、法律ができますと、それにのっとってやるんだというスタンスが明確になったことになります。これがいいことかどうかについては議論になるところですけれども、現在はこうなっているわけで、特に教育関係者は法律を守るというスタンスで生徒を指導しておりますので、そういう意味でも、法律にのっとった動きということになろうかと思います。
 そうしますと、このような、いわゆる学力の捉え方が明確でないまま適性検査、学力検査という言葉が横行しておりますので、この際はっきりと、そうではない、これは明らかな学力検査ではないか、そうすると違法ではないかと、こういうスタンスで話しております。
 問題点の列記は、この作業部会ですべきだと思うんですけれども、それ以上の議論は、ちょっと違う場所でやったほうがいいのではないかと思って、このような形にさせていただきました。是非、お読みいただければと思っております。

【小川(正)主査】
 ありがとうございました。
 今の局長からの御発言とか、今、清水委員から御説明もありました意見書等の内容を踏まえながら、では、今から、5の「入学者選抜の在り方と高等学校段階に進む時点での配慮について」から最後の9の「まとめ」まで、また一括して御意見を伺えればと思います。では、無藤委員、どうぞ。

【無藤主査代理】
 既に申し上げて、ほとんど修文に反映されているのに重なるのですが、先ほど局長から解説がありましたけれど、中高一貫校というもの、あるいはその種の学校というものが広がることは私は望ましいと思いますけれども、前回も申し上げたように、やはり、その開拓者として私立学校が重要な役割を担ってきたわけでありまして、その意義というものを十分に、この報告でも取り上げていただきたいと思っております。
 その上でですが、私、主査代理というまとめ役ということではなく、委員としての意見を申し上げれば、中高一貫校を公立でやる以上、当然ながら学力検査をやってよいと思っておりますが、しかし、その場合に、特に公立学校の使命を考えた場合に、小学校の教育課程を生徒が十分に習得できているということを見るべきものであると思います。
 そうすると、既に手直しのところに入っておりますけれども、学校教育法で言うところの学力の3要件がありますが、その総体をまず押さえるべきであると思います。
 つまり、学力にはいろんな面がありますけれども、その一部だけを取り出して、それのみを試験しようとすると、どうしても問題も難しくなってまいりますし、まさに通常学校で学ぶことを超えて受験勉強せざるを得なくなりますが、そうではなくて、小学校の教育課程で当然学んでいるべきことを総体として評価してほしい。それは、もちろん小学校側も学習指導要領の下で基礎基本の知識、技能はもちろんでありますけれど、思考力やら、学ぶ意欲やら、いろいろな面を充実させようと努力しているわけですので、その辺を十分に見てほしいと思います。
 ですから、入試をやらなくてもいいわけですが、やった場合にも、その総体をしっかり評価した上で、その学校の特色としての何かがもしあるなら、例えば芸術系を特に見たいなら、そこを、その上で評価するということはあると思うんですが、やはり基盤としては、小学校の学力の総体を見るということに力を入れてほしいと思っています。
 それから、もう一つ、小さいことなんですが、25ページの「9.まとめ」のところなんですけれども、この作業部会の仕事ではないとは思いますが、中高一貫教育というものがどの程度広がっていくべきかというのは、公立学校としては非常に難しい問題だろうと思います。つまり、小中学校は当然ながら義務教育ですけれども、高等学校への進学率が仮にどんどん上がって100%近くなったとしても、当然ながら、義務教育を超えて高等学校に進学しない家庭はあり得るというか、あるだろうと思います。そういう意味で、義務教育としての小学校、中学校というものが、しっかりとした学力を育てる環境と教育課程の充実が必要だと思うんですね。
 一方で、公立の特に中高一貫校があまりに広がり過ぎたときに、公立中学という、小学校に通常、残っていると言うとひどいですけれども、あるわけですよね。あまりに一貫校が広がると、現実に一部の地域でそういう弊害が出ているのではないかという気もします。つまり、小学校で非常に勉強ができる子とか、リーダーシップを持っている子とか、そういう子どもたちがごっそりと中高一貫校に行ってしまって、公立中学が非常に、勉強ができない子ばかりという意味ではないんですが、元気がないというか、沈滞しやすくなる懸念があります。
 ですから、それは現実としてどうなるか、また教育委員会でお考えになるべきことでしょうけれども、25ページの最後のまとめで言えば、最後の丸がありますが、「すべての子どもたちが、その能力に応じてひとしく教育を受ける権利を持っており」、その次に入れるべきこととして、やはり義務教育としての小学校、中学校教育の土台をしっかり作るんだと。その上で、中高一貫教育を希望する一部の子どもたち等の選択の拡大を図るという、その順序を明確にしたほうが、やはり文部科学省としては好ましいのではないかと思うわけです。

【小川(正)主査】
 ありがとうございました。
 前半のところは、御意見として、この中にもかなり組み込まれていると思うんですが、後半の25ページのところは少し、今言ったような文章で、配慮した文章にしてほしいという趣旨ですので、よろしいでしょうか。私も同感ですので、よろしくお願いします。
 ほかにどうでしょうか。向山委員、どうぞ。

【向山委員】
 今、冒頭の局長の説明もありましたし、前回の会議の議事録を見ると、前川審議官から、かなり本音の部分で現状の御指摘もありました。現状は適性検査であるけれども、今御指摘もあったように、学力検査的になっているんじゃないかというところも、小学校の現場で見ていてもそう思うし、保護者もかなりそう思っている面もある。
 このまとめ方は、16、17ページでいろいろな意見を踏まえた中で問題点も整理していただいているし、今後の方向性も出していただいているので、私は大変いいまとめ方をしていただいているなという気はします。
 話はちょっと飛びますが、少子化が続いていて、このままでいけば10年後に義務教育の子どもは1割も減っていく。そういう日本社会になっていく中で、一人一人の資質をどう育てていくかというのも国策として大事である。それは国として、それぞれの子どもの幸せも考えるし、いい人材を育てるためには、それぞれの地域とか、あるいは保護者の熱意もくんで、できるだけ選択肢も増やしてやっていくべきだろうと思います。
 ただ、さっき無藤先生が言ったように、これ以上私立や中高一貫校に持っていかれてしまうと、公立中学校の一部でリーダーが足りなくなってしまうと、そういう悲鳴を上げている校長もいます。その辺の地域の状況に配慮することも大事だろうなと思っています。
 まとまりませんが、以上です。

【小川(正)主査】
 ほか、どうでしょうか。
 では、井上委員、そして清水委員ということで、よろしくお願いします。

【井上委員】
 前回の会合でも、この部分について御意見を言わせていただいたのですが、やはり今、向山委員から御意見があったように、まず少子化であるという現状を踏まえた対応が考えられなければいけない。少子化ということは、子どもの数が少ないわけですから、本来様々なかたちで行われる競争といいますか、もちろん競争の中には協調もあって、助け合いもあるというのが前提でありますけれども、そういったものが行われにくくなるということを考えますと、やはり多様な選択肢、チャンスを子供の段階から与えていくということが必要です。ありていに申し上げれば、刺激を与えていかないと、やはり子どもの成長にはつながらない。
 それが結果として、大学に入り、そして社会人になるという局面になると、一気に、今、文科省が進めていらっしゃる大学の国際化や、我々が求めているグローバル人材の育成というところにつながっていって、世界と競争しなければいけなくなってくるわけです。そうなると、そこで一番困るのは、子どもたち、若者本人たちだと思うのです。
 そういう意味で、公平、平等という概念は、もちろん義務教育ですから、踏まえなければいけないと思いますが、やはり、チャンスをつかめる子どもたちには選択肢を拡大してあげるという考え方をとらない限り、日本の将来というのは非常に危ういものになるのではないかと思います。
 私自身も、私立に6年間通った人間であります。確かに、学力やリーダーシップのある者が、1つの学校に集められ過ぎると埋没するという考え方もあるとは思いますが、それぞれ、この6年間の中で自分自身を再構築するということを必ずやることになります。やれれば大体うまくいくのですが、それをうまく指導していけるというのが、多分、一貫校の最大のメリットではないか。要するに、自分がどういうもので生きていくのか。自分が人よりもすぐれている部分、劣っている部分を認識した上で、どれを伸ばしていけばいいのかを考え直すという期間が、多分、高校受験のないこの学校の最大のメリットだと私は思っていますので、そういう意味では、この6年間をうまく生かすような学校の制度というものを、うまくつくり、伸ばしていただきたい。
 その中で、当然、学力を見るのか、適性を見るのかと、いろいろ議論はあるかもしれませんけれども、公立であっても、やはり選抜は行われませんと、先ほど申し上げた子どもたちの意識が変わらないままに、18歳あるいは22歳の段階で厳しい局面に直面するということのないよう、それまでに1つ1つステップを踏んで上がっていくような形の制度の設計をしていただいた方がいいのではないかという感じがします。
 私立の側の御意見も非常によく分かるんですが、やはり学校間でもいろいろな、学力だけではない、進学率だけではない競争というのがあってもいいと思いますし、そういった面では多様な、まさに選抜制度をそれぞれ工夫して作っていただくのが基本なのではないかという感じがいたします。

【小川(正)主査】
 ありがとうございました。
 では、清水委員。

【清水委員】
 度々すみません。
 適性検査の合法性というか、違法性というか、その辺りのことについては、別のところでしっかり議論していただきたいというのが1点目です。その素材提供は、ここの作業部会からやってもよいかなと思っています。
 その上で、次なんですけれど、16ページから17ページにかけて、16ページの後半、26行目、27行目辺りから、意見を踏まえて全部の在り方をまとめてございますが、その中の、17ページの上のところに、「小学校教育において」というのが3行目から書いてございます。ここでは、マル1からマル3のいわゆる学力をバランスよく育む教育活動が行われており、これを損なうことのないように十分留意することが必要であると、こういうふうに書いてありますが、こう書く気持ちは大変よく分かるんですが、こういう力を育むために、教育活動が、もしちゃんと行われているのであれば、どうして選抜が必要になるかと、そういう問題に絡んできてしまうと思うんですね。
 それで、前回も出ましたように、基本的に修得主義ではなく履修主義でずっと動いていますので、どれだけそれが修得されているかということについては、別のチェックが必要になっているはずなんですね。だから、こういうテストの問題が出るはずですから、少し違う書き方のほうがよいのかなと思います。
 なぜ、そのようなことを言うかというと、このままでいきますと、皆様も本当に御存じだと思うんですけれど、新しい学習指導要領に基づいた教科書は、かなり教科書会社が独自性を発揮して書けるようになりました。その結果、ページ数の増加率がどのぐらいか御存じでしょうか。すごいです。場合によっては、1冊が2冊になるというぐらいのサイズになっています。ドリルが中に入って、スパイラル方式だということで、何度も何度も同じようなことが書かれていたり、内容の濃さ、量ともに、70年代の戦後一番難しいと言われた現代化カリキュラムよりもさらにもっと多くなっているんじゃないか。私、正確なデータがないので、裏付けはございませんけど、多分、直感的にはそうです。そのくらい、すごい状況になっていて、これをこなすのは、もう本当に大変だと思います。そうすると、こなすだけです。まさに履修しただけで結果は問わない。こういう状態、現状、もうすぐ生まれるのではないかという、すごい心配があるわけですね。
 そういう中で、こういう文章を見ると、いかがなものかなと、本当に思ってしまうんです。もうちょっと違う書き方があってもよいのかもしれないなと思うんです。

【小川(正)主査】
 ありがとうございました。
 どういう書きぶりがいいのかというのは、これは今御発言いただいた清水委員からも、また後で出していただきながら、少し工夫してみたいと思います。

【無藤主査代理】
 私、実は今回の学習指導要領の改訂で多少かかわりがございましたので、1点だけ解説じみたことなんですけれど、申し上げたいと思います。
 履修主義か修得主義かということでありますけれども、我が国の特に義務教育は、基本的には履修主義と言っていいわけです。それは、例えば落第が基本的にはない。実質的には出席さえしていれば進学し、ほぼ卒業できます。そういう意味では履修主義と言っていいと思いますけれども、じゃあ、以前と比べて、この学習指導要領改訂、10年前、また今回という流れの中で見ますと、履修主義か修得主義かという二分すれば履修主義ですが、履修主義ではありながらも、できる限り確かな学力を身に付けさせる方向を提示してきたと思います。
 特に重要なのは、指導要録に基盤を持つところの教育評価の考え方だと思います。10年前から目標準拠の評価ということを標榜しておりますけれども、それは、つまり学習指導要領における教育課程というものを、どの子どもも確実に身に付けるようにしていこう。そのために、もちろん全員が100%というわけにはいかないので、相当、学力のでこぼこはありますし、小学校でいえば6年間、中学校でいえば3年間ですね。必ずしもうまくいかないケースはたくさんあるとは思いますけれども、できる限り、十分でない場合に、それを補う努力をするということが、私の理解するところの今回の指導要領の基本的な考え方だと思います。
 そのために、目標準拠というのは、教育課程に示されたことの学力がどの程度身に付いているかということを見る。不十分な場合には、できる限り、それをいろいろな形で補おうという意味だろうと思います。
 その結果として、おっしゃるように、バランスよく、どれもを十分に身に付いた子どもばかりだよとは、それはさすがに申し上げられないわけですけれど、確かな学力という標榜をして、この10年間、文科省で御努力されてきて、その成果を基にしながら、今回、指導要領の改訂をしたわけですけれど、その中で、最初の論点に戻ると、履修主義は履修主義ではありますけれど、できる限り、一人一人の子どもの確かな学力を保証しようという実質を作ろうとしていることを、是非御理解いただきたいと思います。

【小川(正)主査】
 では、向山委員、よろしくお願いします。

【向山委員】
 3月末まで小学校の校長をしていた立場から、ちょっと発言させていただきますが、先ほど清水委員御指摘のとおり、教科書が大変厚くなった。平均して25%厚くなったと言われています。算数や理科は33%ぐらい厚くなったんですかね。校長会では、全国2万1,000の小学校長に向けて、幾つか節目の日を設けて、数年前から準備してきたところです。1つ目が7月20日、保護者に1学期の学習評価を配る日。それから10月の上旬、教科書の上巻を終わる時期。そして3月25日、指導要録をつけるとき。それぞれが趣旨に照らして、うまくできるようにということでやってきています。ただ、御案内のとおり、大変分量が増加していることは確かでありまして、それをどう現場の中できちんと習得や活用させていくかということが大きな課題です。
 それで、17ページの、委員御指摘のあったところなんですが、この上から5行目の最後に、小学校教育においてはマル1、マル2、マル3、これをバランスよく育むべく教育活動が行われていると書いてあります。「育むべく」という、1つのこの目標として書いてあるのだから、私は文章上、これで理解できると、そのことを申し上げたかったんです。

【小川(正)主査】
 ほかにどうでしょうか。
 入学者選抜以外のところ、6、7、8、9を含めて、御意見があったら、どうぞ。
 では、河合委員、どうぞ。

【河合委員】
 前回も少しお話しさせていただいて、ちょっと言葉足らずだったのですけれども、必要条件と十分条件という例えでお話をさせていただいたわけですが、今度の新学習指導要領でも、今言われた学力の3要素ですか、そういうことを挙げられているわけですけれども、そもそも、この制度が導入されたときも、そういう意味では、学力偏重とは言いませんけれども、その部分というのが非常に強かった。学力が必要でないということは、私は決して言いませんけれども、それは必要条件であって、本来であれば、小学校課程の中で修得されている。その上で、必要条件として何が必要であったのかということが、そのとき問われたのだと思います。結局、子どもたちが学ぶ力がない、自ら変わっていく力がない、生きる力がないということが、あの当時の非常に大きな課題であったと思います。
 必要条件は、今も当然求めるわけでありますけれども、十分条件が、それぞれの学校が持っているミッションとして本来あるべきである。そこが非常に希薄になっていて、その部分が学力観に合うような、もしくは進学という、その部分で評価されるような、その部分だけに非常にやせ細っているのではないか。
 23ページの「その他の論点」というところで、ここにつけ加えていただいたわけですけれども、これを導入するときに、特色ある中高一貫校の在り方としてというので、一体何が欠けているのかということを、その時点では考えていた。つまり、必要条件は満たしているけど十分条件がなかったから教育に問題があったんだ。その十分条件は何なのかということで、今ここに挙がっているような形のものが述べられた。
 これも、その当時の議論の記憶が十分細かいところまで思い出せているわけではないんですが、こういうこともあるよねというので挙げられた。それから10年たって、今この時点で求められる十分条件は何か、必要条件について新学習指導要領というもので再検討して新しいものが入った。そこで十分条件に目が行かなければ、また再び同じ道に戻る可能性はあるわけなので、私どもがこういうことを導入した、その原点に戻って、今ここに挙げられている、例えば、じっくり学びたい子どもたちの希望にこたえる学校というのは東京大学が選んだ道なんですね。ゆっくりと学ぶというのが東大附属の1つのミッションであると。
 今、考えたときに、これ以外のものも十分条件として、ひょっとしたら欠けているかもしれないということで、必要条件はもう、変な言い方ですけど、満たされているというか、それはもう小学校課程で十分あるという前提で、それを基に、それぞれの中高一貫校が持っている独自のミッション、独自の理念というものに、それを組み込んで、更に十分条件を満たすための、それを適性検査と呼ぶか、選抜のテストと呼ぶかというのは、これは議論のあるところで、慎重にしなければいけないですけれども、その部分については、やはり、その設置者、設置した人たちがきちんと考える必要がある。その部分が少し上滑りして、必要条件のところが、十分条件と必要条件が同じであるかのような形になってくると、そもそも、これを設置したときの理念といいますか、考え方とはずれてくるのではないか。私たちは、もう一度、やっぱり十分条件とは何か、今の教育で、日本がこれから世界に伍していくためにはどうすればいいのか、子どもたちがこんな世界に生まれなければよかったと思わないような、そういう教育をするためには、どういうことが十分条件として必要なのかという、その辺りも、書きぶりとして、この中に含めていただければと。
 これが10年前にはこれだけだったけれども、今、もう一度、この部分について議論して、十分条件とは何か、我々が考える教育の十分条件とは何かということを少し書き足していただければありがたいなと、一委員として思っております。

【小川(正)主査】
 具体的な書き方については、どうするかというのは、またちょっと工夫が必要だと思いますが、河合委員のほうから、具体的に、こういう書き方をしてほしいという、何か文章案があれば、また御提案いただければと思います。

【河合委員】
 はい。やりとりをさせていただきます。

【小川(正)主査】
 ありがとうございました。
 ほかにどうでしょうか。では、小川委員、どうぞ。

【小川(暢)委員】
 前回の議論で課題になりました適性検査についての意見については、こういう修正内容で、私としてはありがたい修正だと思いますが、先ほど井上委員からもございましたように、今、この中高一貫校のステージで、生徒自身が成長していくというか、付加価値を持つための教育をどうするかという議論をやった場合に、ここで挙げられている、この課題とか問題点は、私、私立の立場で申し上げますと、公私の違いとかいう課題を大きく言っているケースが多くて、もう少し、その中高一貫教育のポジティブな面をもっと打ち出して、それをいかに伸ばすにはどうしたらいいかということ。実は、実際オペレーションする立場で言うと、公私の学校間のコミュニケーションとか、いろいろな施策、例えば特色のある教育の行事だとか、それから、そのノウハウとか、教師の交換とか、交流とか、そういうことについては、やはり、どうしても壁がちょっとあるわけですね。
 ですから、ポジティブなことで言えば、その課題をここでは議論する立場ではないのかもしれませんけれども、そういう壁を乗り越えていかないと、本当の意味で、この施策のよさが出てこないのではないかというので、私立はどうしてもちょっとひがんでしまう面が多いことがあるんですが、やはり私立もそこで努力して乗り越えなければいけないので、もう少し前向きに、この企画を生かす特色ある教育だとか、教員の交流だとか、そういうものを本当に生かすために、もう少し公私間のコミュニケーションですとか、ノウハウ交換をもっと積極的にやるべきだというのを、こういう立場で打ち出したほうがいいのではないかと思います。

【小川(正)主査】
 ありがとうございました。
 ほかにどうでしょうか。5から9まで、幾つか重要な御指摘とともに、具体的な文案についても、もう少し工夫してくれというのが数か所ありましたので、これは御発言いただいた委員の方と私と事務局のほうで少し調整して、再度、皆さんに御提示していきたいと思います。
 できれば今日を最後に終わりまして、今出された意見等々については、意見を出された委員の方と私と事務方のほうで調整して、最後の文案を確認して、最終的にまとめということにしたいと思いますので、できる限り、この場で、御意見のある方は出していただきたいんですが。
 では、清水委員。

【清水委員】
 ちょっとまとまらないかもしれないんですけど、なぜ公立も中高一貫教育校を導入するに至ったかという背景などを考えてみますと、日本の高等学校進学率は、全国平均でも90%以上になり、96%ぐらいでしょうか、になっていると。そういう状況の中で、授業料の無償化も図られて、それ以前は義務教育でなくて国民教育という言葉も出たりして、高等学校を実質的な、全国民が通る道だという感覚に大枠捉えてくる道筋の中で、中高一貫教育校という考え方が出たのではないか、なんて考えています。
 そうすると、10年たった、この中高一貫教育校、私立はもっと長いですけれども、それが今後、日本の初等中等教育におけるポジションといいましょうか、どの方向性を持たせているのかということについて、この作業部会としての意見を出してもいいのかな、いや、出し過ぎかなとか思ったりしているんですけれど。
 私自身は中高一貫論者ですので、何としても今の日本に、こういう教育をもっと増やしたほうがいいと思っていますが、一方で、6ページに書いてあるように、公立はナショナル・ミニマムという部分がしっかりありますので、それと地域に根差した多様な理念をそこで打ち出しながら、こういう教育やるからいらっしゃいということをアプローチかけると。その辺りの整合性の問題も、まだいっぱい残ってはいるんですけどね。全体として、やはり世界に冠たる中高一貫教育を日本はやるんだというぐらいの意見を、私は作業部会として出してみるかなと思ったり。それは言い過ぎですけど、ちょっとそういう、教育行政全体の中での方向性みたいなものが一部触れられてもいいのかなと思ったりしながら、これを読んでいたんですが。
 すみません、まとまらなくて。

【小川(正)主査】
 ありがとうございました。
 私も、今の清水委員のお話には、かなり意見を同じくするところがありまして、やはり、中高一貫教育の問題のみで議論するということではなくて、中高一貫教育を高校制度全体の在り方の中でどういうふうに意味付けて、今後それをどういう方向に持っていくのかというのが重要ですので、そういう大きな文脈の中で、中高一貫教育現状評価と今後の課題を検討していくことが必要であると思います。ただ、そうした作業は、今回のこの作業部会の任務をかなり超えたところにあるのかなと思います。
 ですから、今後文科省としても、この中高一貫教育の現状の把握と評価を踏まえた上で、高校制度をどうするかという議論もしていくかと思いますので、そういう議論が行われる場合に、今回の本作業部会の現状把握と問題や課題の整理がそこでまた生かされて、先ほど言ったように、高校制度全体の中で中高一貫教育をどうするかと、そういう議論もまた、その場でやられていくのかなと。そういう期待を込めて、そういう思いというものを、できれば、この最後のまとめのところには少し触れられればなとは思っています。
 そういう趣旨で、前回お話ししたように、9の「まとめ」の2つ目の丸のところに、中高一貫教育制度のみの改善にとどまらず、今後の高等学校制度の在り方を検討する中での視点も重要であるという、この文を少し事務局に入れてもらったということも、そういうことを考えてのことですので、その辺は了解いただければと思います。
 もう少し文章等は工夫する余地もあるかと思いますので、これも、また事務局と相談して、最終文案というものを考えてみたいと思います。ありがとうございました。
 ほかにどうでしょうか。はい、どうぞ。

【向山委員】
 時間があるなら、適性検査でもう一つだけ、すみません。
 教育内容の増加ということと適性検査なんですが、先ほど大変教育内容が増加したという一例で、小学校社会科で見ると、私も指導要領の作成協力者の1人として携わったんですが、今度47都道府県の位置と名称というものを小学校で扱います。
 それで、私ごとで恐縮なんですが、私が大学で学部生に持っている教育経営論という授業の中で、今度これだけ教育内容増えるよと、19、20歳の子たちに、都道府県の白地図を配って書かせたんですよ。するとできが悪いんですね。まあ、うちの学校がそうなのかもしれないけれども。友人の大学なんかに聞いても、やはり、非常にできが悪い。中学、高校でもやっていたんでしょうけれども、ただ、あなたたちね、今度は小学生も、47都道府県の位置と名称をみんな勉強するんですよ、あなたたち教師になるのに、これまでやってきていなかったら、じゃあ、どうするのと、こういう話をしたんです。ちょっと話、長くて恐縮ですが。
 適性検査のほうなんですが、仮に東京の子どもたちの中高一貫校で適性検査のために、今度の大きな地震がありましたという被災の話をし、あなたはこれからどう思いますかといったときに、宮城県や岩手県や福島県の位置と名称というものを、これ、出せば学力になるんですかと、こうなってしまうんですね。もし出さないで、位置というものも示さないで、じゃあ、そこで見る適性検査。それは作問の工夫をすればできないことはありませんけれども、何か今の時点で、子どもたちに物を考える表現力でも、思考力でも見ていくときに、やっぱり不可分でできてくるものがある。これは、前に比べて、学習内容も非常に増やす、修得をし、活用させると、こういう指導要領に転換してきているわけですから、そういうことも見ながら適性をどう把握していくかと、非常に難しいし、ちょっと話がまとまらなくて恐縮ですけれども、内容の増加ということと、中高一貫校でどういう子どもたちを得たいのか。
 これ、普通の高等学校だったら、当然、学力検査で子どもたちも入れてくるわけですから、そのテストがないわけで、それで中学の入り口のところで適性検査だけですよといって学力差がぐーんと開いていってしまったら、これはどうなるのかという。これは非常に教え方も厳しくなるだろうなと、こう思いました。

【小川(正)主査】
 ありがとうございました。
 ほかにどうでしょう。

【河合委員】
 2点ありますが、1点は、この会議についての私の理解として、学校段階間の連携と接続、中高の接続ということで、1つの制度としての中高一貫教育ということについて議論してきたわけですけれども、先ほどの話の中で、この報告書の中にも、16ページの39行目のところに「選択肢」と書かれているわけですけれども、これが導入されたころというのは、教育の選択肢を、総合学科とか、単位制とか、いろいろな制度があって、その中の選択肢の1つとして中高一貫教育というのが位置付いていたので、もし、そこにまで言及するのであれば、この中高一貫教育が導入された背景として、単線型の教育というものに対する反省というか、更に多様な人材を養成するために作る、そのときに考えた制度の中の1つで、それぞれ成果は上がっていると思うんですね。
 それから、私は三重におりましたけど、三重県はテレビのドラマにもなったような、相可高校と言いますけれども、食物調理科でレストランを始めて高校生が調理をするという、それ以外にも夢学園とか、理髪科とか、介護の課程を持つところとか、いろんなものを導入をしたわけで、それなりに評価はある。
 ですので、もし、そういうことについても言及するのであれば、私は、これは、その中の1つである。だから、これだけが非常にイルミネートされてしまうと、何かそのときの選択肢はこれしかなかったような形になると、ちょっと違うかなと。
 ただ、学校段階間の接続ということであれば、これはこういう方法をとりましたということなので、先ほど出たような小中の接続とか、中高の接続とか、今、高大の連携とかもありますけれども、その文脈の、どちらの文脈の中で落とし込むのかということで、多分、読み方が変わってくるかと思いますので、それが1点。
 あともう1点は、これ、事務局にお聞きしたいんですが、15ページの6行目のところに、これはいただいたときにひっかかった言葉なんですけど、「ペーパーテスト」というのが書かれていて、それは何か特別の意味があるのでしょうか。15ページの5行目、6行目のところに、「その一環として、ペーパーテストなどを用いて」という、「ペーパーテスト」という言葉がここで使われているというのは、何か特別の意味があったのか。何かこういうもの自体がステレオタイプな響きを我々の中に出させてしまって、テストなんだ、しかもペーパーテストなんだというふうに、何かそういう意味があったのか。どういう趣旨で使われたのかなと。筆記式によるとかではなくてですね。ちょっと瑣末なことなので、どうかと思ったのですが。

【小谷教育制度改革室長】
 実態として、紙媒体で筆記式によるという趣旨で、分かりやすい言葉で書きました。それが誤解を招くということであれば改めさせていただきます。

【小川(正)主査】
 河合委員、ここは、やっぱりペーパーテストという言葉に含まれるいろんなニュアンスが、ちょっと誤解を招くという趣旨で、変えれば変えたほうがいいという趣旨ですね。

【河合委員】
 と私は思うんですけどね。瑣末なことですけれども、やっぱりペーパーテストしているんだというのと、筆記式のという紙媒体を使ってというのとは、我々が単純に聞いたときに、ペーパーテストで選抜をして、それを学力検査と呼ばないで適性というふうに呼ぼうと、何でだろうと。ペーパーテストしているんだというのは、私どもが議論してきた中では、少し違うかなと思いましたので、ちょっと気になりました。

【小川(正)主査】
 わかりました。ありがとうございました。
 ほかにどうでしょうか。まだ御発言されていない方、志田委員、青木委員、もし何かございましたら。

【志田委員】
 17ページの20行目から先のところの、「例えば」以下のところが、この文面だと、意味が読み取れないような感じがあるので、そこの書きぶりをもう少し工夫してほしい。

【小川(正)主査】
 どうしましょうか。今の。

【小谷教育制度改革室長】
 こちら、前回、小川委員から千葉県の状況なども御説明いただきながらお話しいただきましたけれども、それを踏まえまして、同じような選抜方法を用いるにしても、既存の公立の高等学校が中学校を接続してやる場合と、こういった新しい理念で、こういった学校を作りますということで選抜されるということと、それぞれ設置される学校によって、同じ選抜方法を用いても、保護者の皆さんや生徒の皆さんに与える影響などは違うのだろうと。そういったことも御配慮いただければ、という趣旨で書かせていただきました。

【小川(正)主査】
 ここは、やっぱり、なかなか理解しづらいところで、工夫可能であれば、もう少し工夫してみたいと思うんですけれども。

【志田委員】
 そうしていただければと思います。

【小川(正)主査】
 ありがとうございます。
 青木委員は、何か全体的にございますか。

【青木委員】
 今さらなんですけれども、全体的に子どもに対することのまとめが書かれているんですけれども、この中高一貫教育というもので、公立の場合は、教員が異動することがありますので、この一貫教育で学んだノウハウがいろいろな公立学校に波及していくということも、先生の多様化といいましょうか、いろいろな経験を積むということでもすごくメリットがあるのではないかなと思いましたので、そのようなことというのは何か、どこかに入れられますでしょうか。

【小川(正)主査】
 そうですね。非常に重要な御指摘だと思いますので、少し工夫してみたいと思います。ありがとうございました。
 ほかにどうでしょうか。では、清水委員、どうぞ。

【清水委員】
 要望があります。公立176校の中高一貫校の適性検査の問題を集めることは可能ですか。

【小川(正)主査】
 事務局のほう、どうですか。

【小谷教育制度改革室長】
 期間はかかると思いますが、公表されているものもございますので、そういったものを中心に集めることは可能だと思います。

【清水委員】
 ありがとうございます。一括して、是非見てみたい。特に千葉県をしっかり見てみたいと思います。

【小川(正)主査】
 わかりました。この作業部会で、その作業をするということではないですよね。

【清水委員】
 要望事項です。

【小川(正)主査】
 わかりました。
 まだ残された時間があるんですけれども、前回かなり皆さんから御意見をいただいて、その御意見の内容を今回の案にかなり的確に書き込みましたので、もしも、これ以上御意見がなければ、一応、今回のこの案をベースにして、先ほど、いろいろな方から、もう少しこの辺の文章、こう工夫したほうがいいのではないかという要望がありましたので、それは、先ほど来言っておりますとおり、その意見をいただいた委員と私と事務局のほうで少し調整したいと思います。その上で、最終文案を、再度、作業部会の各メンバーにメール等でお送りして、チェックしていただく、そういうことで、最終の案を取りまとめていきたいと思っていますが、そういう運び方でよろしいでしょうか。

 (「異議なし」の声あり)

【小川(正)主査】
 では、そういうことですので、これ以降の作業については、一応、主査の私に御一任いただいたということで、この後、今日いただいた意見を更に事務局と協議して修正して、この意見等の整理を最終まとめということにしていきたいと思います。何度か皆さんにメール等で、また御連絡が行くかと思います。お忙しい中恐縮ですけれども、その案文をチェックしていただいて、事務局のほうに、また御意見を寄せていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 今後のことについては、そういう形で、作業部会の最終案については、皆さんの御了解を得た上で、できれば7月ごろに初等中等教育分科会に、この作業部会の報告をしていきたいと思っていますので、その辺も御了解いただけるでしょうか。

 (「異議なし」の声あり)

【小川(正)主査】
 よろしくお願いいたします。それでは、そのような運び方をさせていただきたいと思います。
 この間、6回にわたって、この作業部会、中高一貫教育制度について現状把握とその評価、これからの課題ということをまとめる上で、皆さんから大変貴重な御意見をいただきました。ありがとうございました。
 この意見等の整理については、先ほどの手続に従って、7月ごろに中教審の初中分科会に報告して、そして最終的に公表するということになります。今後の中等教育の論議や発展に資するように、この作業部会の報告が活用されることができれば、作業部会としても幸甚かと思います。
 また文科省におかれましても、今後、ここで提案された様々な諸施策については、その施策の実現に向けて必要な検討に当たっていただければと思います。本当に長い間ありがとうございました。
 今後のことについては、また事務局からよろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】
 では、ただ今主査からお話がございましたように、この「意見等の整理(案)」につきまして、本日の御議論も踏まえまして、修正を加えさせていただき、皆様方の御確認をいただいた上で、主査から初等中等教育分科会に御報告いただきます。
 したがいまして、本作業部会でのこの中高一貫教育についての御議論は、今、主査からお話がございましたように、ここで一旦区切りをつけさせていただくということになります。
 次回以降の「学校段階間の連携・接続等に関する作業部会」につきましては、新たに、委員の追加、交代等をしていただきまして、今度は次のテーマで、小中連携についての議論を開始していただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【小川(正)主査】
 最後になりますので、できましたら局長から何か御挨拶いただければと思いますけれども、よろしいでしょうか。

【山中初等中等教育局長】
 非常に集中的に御議論いただきまして、どうもありがとうございました。
 日本の教育の中で、いろいろな選択肢、特色あるといいますか、そういう教育を展開していこうということで、中高一貫教育は、制度的なものとして、1つ大きな枠組みとして始まりました。その後に、今度は、6・3・3といいますか、学制というものについてどう考えたらいいのかという議論も、かなり中教審の中でも行われたところでございます。そうやっていると、次には、小中という9年間、特に小中学校はかなり公立の割合が多くて、設置者が市区町村であるということもあって、ここの中1ギャップといいますか、そういうものに関連しても、あるいは子どもの成長が早まっていると、肉体的、精神的な。そういうことで、この小中をどうするのかが今1つの課題で、いろいろなところで取組が行われております。かなり国としては、6・3・3・4という大きな枠組みに手を付けることは、これはいろいろな意見がございますので、制度としてどうするということについて意見をまとめるのは難しい面がありますけれども、それぞれの地域で、あるいは市区町村、あるいは都道府県レベルでは、子どもの成長とか発達、あるいはどういう子どもたちを、地域を担う、国を担う子どもとして育てていくかということでの取組は、実際上はいろいろな形で動いているということだと思っております。
 そういう意味で、国としてのレベルでは、そういうものについて、どういう形で制度的にこたえられるのかといった点について、今回、まず中高という形でやってきました、この10年間の経験を踏まえた形での評価と、今後どうしていくのかということを議論いただいて、それから小中の議論があり、それを、じゃあ全体で見て、高等教育といいますか、大学に行くまでの教育の在り方をどう考えていくのかという議論に、またつながっていくんだと思っております。
 できれば日本の高等教育も非常に国際的に評価されるようになってもらって、小中高大学と、一貫した形で、しっかりとした、それぞれの社会で活躍し、自立できるような子どもたちを育てていくという教育ができるようにと、そういう流れを大きく作っていきたいと思っております。
 今回、まず中高一貫教育について御議論いただきました。こういう議論をまた反映させながら、日本の教育というものを総体として、どういう形でうまく作っていくのかということに、是非反映させていきたいと思っておりますし、また引き続き御意見といいますか、いろいろな提言、そういうものをいただければありがたいと思っております。
 どうもありがとうございました。

【小川(正)主査】
 ありがとうございました。
 それでは、これで今日の会議は閉会したいと思います。長い間ありがとうございました。

 

―― 了 ―― 

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