学校段階間の連携・接続等に関する作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成22年12月13日(月曜日)13時~15時

2.場所

旧文部省庁舎6階 第2講堂

3.議題

  1. 中高一貫教育校における特色ある教育の展開や教育課程の特例の活用状況について
  2. その他

4.議事録

【小川(正)主査】  では、定刻になりましたので、第2回学校段階間の連携・接続等に関する作業部会第2回目の会合を始めたいと思います。
 本日はお忙しい中、御出席いただきましてありがとうございました。
 それではまず最初に、本日の配付資料の確認を事務局からお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】  それでは配付資料の御確認をさせていただきます。
 本日の配付資料ですが、議事次第のとおりでございます。資料1、2が事務局から資料。3から5が本日お越しいただいております各学校から提供いただいた資料でございます。
 また、机上資料といたしまして、前回各委員会から御指摘いただきました追加すべき資料のうち、こちらの机上資料としてとじ込んでおります102ページと103ページを御覧いただきたいんですけれども、上野委員からコメントのございました中等教育学校における学年別の生徒数の推移と、卒業生の推移を新たにとじ込ませていただいておりますので、御確認いただければと思います。不足等ございましたら、事務局にお申し付けください。
 以上です。

【小川(正)主査】  資料の点よろしいでしょうか。
 では、議題に入る前に、前回御出席の委員も、今日おいでになっておりますので、まず事務局の方から御紹介いただいた後に、委員の方からも一言ずつごあいさついただければと思います。
 まず事務局の方からお願いします。

【小谷教育制度改革室長】  では、まず小川主査のお隣にお座りでございますが、白梅学園大学教授の無藤委員でございます。無藤委員には、本作業部会の副主査をお願いしております。

【無藤副主査】  白梅学園大学の無藤でございます。よろしくお願いいたします。
 私、学習指導要領の改訂に多少かかわりましたので、そこで残された非常に大きな課題として、この学校段階間の連携・接続の問題があろうと思いますので、何かお役に立てればと思います。よろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】  続きまして、社団法人日本経済団体連合会教育問題委員会企画部会長、日本電気株式会社代表取締役執行役員副社長の岩波委員でございます。

【岩波委員】  NECの岩波でございます。というよりは、経団連の方で教育問題委員会の企画部会長をしております。経団連としましては、社会総がかりで人材育成をしていくという中で、経済界としてできることは何かを議論しております。
 委員会の加盟は118社でございまして、企画部会35社でやっております。情報発進、政策提言等々していく中で、出前授業等、自ら実践活動に取り組んでいる委員会であります。
 ちなみに調べてきたんですが、出前授業は件数で194社405授業。それぞれの授業は4回、5回、10回とやらせていただいておりますが、その中で地についたお手伝いができればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】  続きまして、インテル株式会社教育プログラム推進部長、柳原委員でございます。

【柳原委員】  皆様こんにちは。インテルの柳原でございます。
 なぜインテルが教育にというところなんですけれども、先ほどちょっと急に配らせていただいた資料、こちら上下になっている方を見ていただきたいんですけれども、インテルはイノベーションを目指している会社でございます。そしてこれからの世の中は、テクノロジーのイノベーションによってよくなっていくと考えている会社でもございますので、21世紀をよりよく生きる子どもたち、イノベーションを起こせるような子どもたちをたくさん社会に育てていきたいと考えて、教育支援を行っております。
 こちらにありますように、インテルが目指しております21世紀型の教育というのは、教師が教えるから、児童・生徒が自ら学ぶ教育へということのパラダイムシフトを目指しております。それに関係しまして、下の方に教員研修や科学教育支援、高等教育支援などの数々の教育支援の取組をしております。
 世界でやっている教育プログラムですので、ここに呼んでいただいたことで、世界との比較とか、そういう面もインプットできればと思っています。
 もう1つなんですけれども、すみません。2枚目のこちらで。これからの教育というのは、教育関係者の方々だけではなくて、企業の方とか地域の方と一緒にやらなければならないということで、今週の土曜日に日本青年会議所さんと一緒に教育を考えるフォーラムを持たせていただきます。そして文科省様からも、杉浦広報官がお話くださるということですので、是非皆様よろしかったら来ていただければと思います。是非よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

【小川(正)主査】  ありがとうございました。
 では、これから今日の議事に入っていきたいと思います。
 前回の第1回目は、作業部会で中高一貫教育の現状について、皆さんから御意見をいただいて、全般的に議論をしていきました。今回からは、幾つかのテーマ、幾つかの論点ごとに議論いただくということで、今日はその第1回目ということで、特色ある教育の展開と、教育課程の特例の活動状況について議論していただきたいと思っています。
 まず最初に、事務局から現状認識などを含めまして、今日配付の関係資料の御説明をいただければと思っています。その後に、今日は3校の中高一貫学校にお越しいただいておりますので、その3校から特色ある教育や、教育課程の特例の活用等々について各校の取組を御紹介いただきたいと思っています。今日はそういう形でもって進めさせていただきたいと思います。
 ではまず最初に、資料1について事務局から御説明をいただきたいと思います。

【小谷教育制度改革室長】  それではまず資料1について、事務局から御説明をさせていただきます。こちらの資料でございます。
 本日の議題は、先ほど主査からお話がございましたように、中高一貫教育における特色ある教育の展開や、教育課程の特例の活用状況についてでございます。まず平成9年の中教審答申に示された、制度創設時の考え方を御確認いただきたいと思います。その上で、第1回の本作業部会でも御説明しましたような実態調査、その結果、どういう成果が認識されているのか、また課題が浮かび上がっているのかということについて御報告したいと思います。
 3ページを御覧ください。まず制度創設時の考え方でございますが、(1)にございますように、平成9年の答申におきましては、中高一貫教育を導入するに当たって考えられる利点として、高校入試の影響を受けずにゆとりある学校生活が送れること。6年間の計画的・継続的な教育指導が展開でき、効率的な一貫教育が可能であること。そして、6年間にわたり生徒を継続的に把握することにより、生徒の個性を伸ばし、優れた才能を発見できることといったようなことがこの教育内容等にかかわることとして挙げられておりまして、一方課題といたしましては、受験準備に偏した教育が行われるおそれがあることというのが示されております。
 そして(2)にございますように、こうしたことを踏まえた上で、中高一貫教育においては、義務教育段階での基礎・基本をしっかりと身につけさせるとともに、年齢が進むにつれて、多様化していきます生徒の能力や適性、興味・関心、そして進路等に対応いたしまして、生徒の選択を重視した、できるだけ多様な教育を提供することが望まれるとされております。
 その上で、4ページを御覧いただきたいんですけれども、特色ある教育を幅広く効果的に提供していくことが考えられるとして、どのような特色を備えた中高一貫校にするかについては、設置者の判断としておりますけれども、具体的にこの4ページから5ページにわたって記述されておりますように、(a)から(g)までございますが、体験学習を重視する学校ですとか、地域に関する学習を重視する学校等といった形で例を示しております。
 恐縮ですが、一枚戻っていただきまして、3ページの下段でございます。そもそも学習指導要領は教育課程の大綱的な基準になるわけでございますが、教育課程の弾力化等の趣旨を踏まえまして、中高一貫の特色の趣旨を生かす観点から、現在、中高一貫教育においては、学習指導要領上の教育課程の特例が認められているところでございます。それが7ページでお示ししている形でございます。
 選択教科による必修教科の代替、各選択教科の授業時数、普通科における単位数、これが、それぞれの設置が、形態別、共通したものとして認められておりまして、さらに中等教育学校と併設型につきましては、中ほどにございますように中学校と高等学校との指導内容の入替えだとか、それぞれの移行を示しております。
 なお、脚注にございますように、各教科の選択時数拡大の特例につきましては、平成24年度から新学習指導要領の実施により、選択教科の授業時数の定めがなくなりますので、これに伴って廃止されることとなっております。
 この授業時数の定めがなくなることにつきましては、新学習指導要領におきましては、必修教科の教育内容や授業時数を増加することにより、教育課程の共通性を高める必要があることから、選択教科については標準授業時数の枠外で各学校において開設し得るようにしたことによるものでございます。
 次に、では、こういった特例をもって実際どういったことになっているのかということでございますが、第1回でもお示ししました実態調査の結果の中から、特に関係する部分に絞って見てまいりたいと思います。
 まず10ページと11ページを御覧いただければと思います。棒グラフとその特徴を文章で端的に示したものでございます。
 各学校にお尋ねした教育活動の特色といたしましては、国公私立を問わず、生徒一人ひとりの個性。創造性の伸長を重視する学校が多いほか、国立私立では、国際化に対応するための教育を重視する学校。公立では、体験学習を重視、地域の特性を重視するとする学校が多く見られます。
 12ページ以降が、これらを公立、私立別に見たものでございます。
 12ページ、13ページにございますが、公立におきましては、中等教育学校と併設型の約9割が、生徒一人ひとりの個性・創造性を伸ばすことを重視しておりますほか、中等教育学校の7割弱、併設型の半数弱が教育課程をより効率的・効果的に行うことを重視するとしています。
 14ページ、15ページが私立でございますけれども、私立につきましても、生徒一人ひとりの個性・創造性を伸ばすことを重視することとしている学校が非常に多いほか、7割弱の学校が、教育課程をより効率的・効果的に行うことを重視するとしています。
 なお、16ページ目以降が、こちらの棒グラフの各項目につきまして、どういった事柄をされているのかというのを記述いただいたものをまとめさせていただいております。
 丸が書いてございますのが、国公私立を問わず、回答が多かったもの。特に△を示しておりますのは、私立のみに見られた特徴ある回答という形で、ずっと箇条書きでまとめておりますもので、御参考として御覧いただければと思っております。
 続きまして、教育課程の特例の活用状況についてでございます。少し飛びますが、26ページと27ページを御覧いただければと思います。
 特例の内容につきましては、先ほど御説明申し上げましたけれども、幾つかある特例の中でも、国立におきましては、前期課程、中学校での選択教科による必修教科の代替、あるいは、高等学校における学校設定教科・科目に関する特例、後期課程から前期課程への指導内容の一部移行を活用する学校がよく見られます。
 一方、公私立につきましては、28ページから31ページにわたりまして、さらに設置形態別に結果をまとめておりますけれども、後期課程から前期課程への指導内容の一部移行を行っている学校が約6割という形で、多くなっております。
 具体的に32ページ以降に、それぞれの特例の具体的な活用事例、イメージを持っていただくために例を挙げさせていただきました。
 まず32ページが、中学校における必修教科の時数を減じて、選択教科の時数に充てている例でございます。このうち、A中学校としておりますのは、公立の併設型の学校でございます。中学校におきまして、各学年における必修教科の時数を減らして、それらをコミュニケーションという学校設定教科に充てている例でございます。
 次に33ページでございますが、こちらは中学校におきまして、選択教科の時数を拡大している例です。B中学校としておりますのは、公立の中等教育学校ですけれども、通常の時数の上限を拡大いたしまして、第一学年では70単位時間を、第2、第3学年では、105時間をそれぞれ御覧のような教科に充てているといった例でございます。
 続きまして、34ページでございます。こちら例という形ではないんですが、学校設定教科・科目について、卒業に必要な修得単位数に含めることのできる単位数の上限の拡大でございます。現在、この特例を活用いただいております学校が34校ございます。これらの学校にお伺いしましたところ、10単位、つまり特例の上限まで既に目いっぱい拡大して利用されている学校が10校と最も多くございまして、国立で1校、公立で3校、私立で6校で取り組まれておりました。
 続きまして35ページでございます。ここからが指導内容に移行になります。これは中等教育学校と併設型にのみに認められている特例でございます。
 まず中学校と高等学校段階の指導内容の一部入替えの例でございます。お示ししておりますのは私立、私学の中等教育学校でございますが、中学校を社会の公民的分野のうち、経済に関する内容を高校の現代社会の中で指導して、逆に高校の現代社会の政治に関する分野を、中学校社会の公民的分野・政治に関する内容の中で指導するといった例でございます。
 それから36ページでございますが、こちらが中学校から高等学校への指導内容を一部移行している例でございます。この事例は、公立の併設型の事例でございますが、中学校理科の生物に関する内容の一部を、高等学校の理数生物Iの中で実施している例でございます。
 そして37ページでございます。これが一番多かった例でございますが、高等学校から中学校への指導内容の一部移行でございまして、こちらの事例では、公立の併設型でございますが、高校の数学Iの内容の一部を中2へ、数学Aの内容の一部を中3へ移行しているといった例でございました。
 こうした様々な特例を活用した成果が38ページに表としてまとめさせていただいておりますように、特色ある教育課程の編成が可能になったとする学校が多いほか、学力の定着・向上につながっているとする学校ですとか、学習内容の系統性に配慮した効率的な教育が行われるとする学校も多くなっております。
 また39ページにございますように、これらの成果はどの特例の活用によるものかとのお尋ねにつきましては、活用数が最も多い高等学校(後期課程)から中学校(前期課程)の指導内容の一部移行を挙げる学校が最も多くなっておりました。
 さらに40ページを御覧いただきたいのですが、中学校段階における取組といたしましては、選択教科による必修教科の代替よりも、各選択教科の授業時数の拡大の方が成果があったとする学校が多くなっております。
 一方、特例の活用に当たっての課題といたしましては、42ページと43ページを御覧いただきたいのですけれども、最も大きいものは、6年間一貫した指導計画の作成となっております。また、国立と公立では、教員数の確保、持ち時間数の増加を挙げる学校が私立に比較して高くありまして、さらには連携型が一定程度含まれる公立では、中高の教員間での打ち合わせ時間の確保を挙げる学校が私立より高くなっております。
 また、私立では、内進生と外進生との学力差、中高一貫教育用教材の研究・作成を課題とする学校の割合が、国公立よりも高くなっているということでございます。
 公立と私立につきましては、44ページ以降に設置形態別でさらに取りまとめをさせていただいておりますが、こうした調査結果からは、国公立では特例の活用に当たって、教員の確保や打ち合わせ時間の確保といった物理的な側面における課題がございまして、私立においては、内進生と外進生との学力差だとか、中高一貫教育用教材の研究・作成といった教務的な側面における課題を有する傾向があると考えられるところでございます。
 事務局からは、以上でございます。

【小川(正)主査】  ありがとうございました。
 もう1つは、中高一貫教育に関する調査研究ということで、資料2を御覧いただきたいと思います。
 国立教育政策研究所におきましても、こうした調査研究が行われておりますので、今日は続いて、国立教育政策研究所の工藤初等中等教育研究部長にお越しいただいておりますので、この資料2に基づいて、工藤部長の方から御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【工藤初等中等教育研究部長】  国立教育政策研究所の工藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 お手元の資料ですが3枚ございます。よろしくお願いいたします。
 国立教育政策研究所では、平成10年度からこの中高一貫教育に係る委嘱研究等を受けておりまして、その概要と、直近のプロジェクト研究に関するものの一部を御報告させていただきます。
 まず1ページ目でございますけれども、ここに平成10年度以降の中高一貫教育に関する調査研究が、4本並んでおります。上の3つにつきましては、委嘱研究として中高一貫教育の趣旨の普及のために行われた調査研究でございます。
 1は、「中高一貫教育に係る教育課程編成の在り方に関する調査研究」というタイトルでございまして、特にイにありますように、中教審答申で示された7つの特色ある教育活動-体験活動とか、じっくり学習するタイプとか7つが示されましたが-それぞれごとに、どういう教育課程編成の可能性があるかということで、当時設けられておりました特例を活用した事例につきましても検討したということでございます。
 それからウにつきましては、後期課程の学科の種類、普通科、専門学科、総合学科を教育課程に置いた場合に、中高一貫教育としてどういう工夫が考えられるか、その考え方を示したということでございます。
 エにつきましては、各領域等と書いておりますが、道徳教育や特別活動、総合的な学習の時間――道徳教育は形態が違いますけれども、それから進路指導、こういうような領域等に応じた教育課程編成、教育指導の考え方を検討したということでございます。
 それからオは、英米独仏の中等教育の教育課程についての資料収集をしたということでございます。
 この報告書は、各都道府県教育委員会等に配付し、参考にしていただきました。
 それから2番目でございますけれども、これは平成12年度から13年度の研究でございます。「学校運営の在り方に関する調査研究」ということでございます。当時は連携型がほとんどでございましたので、まずイにありますように、29の連携教育校に対して詳細な資料収集をいたしました。その中で、よい事例、工夫された事例等をピックアップしまして、アにありますような学校運営にかかわる諸条件、例えば教育課程、学力の定着、乗り入れ授業の工夫、生徒の交流、これらの点から事例を踏まえた整理をしたということでございます。
 それから3の「中高一貫教育に係る教育課程上の特例の活用状況等に関する調査研究」。この当時は、中等教育学校と併設型にのみ、選択教科及び学校設定教科科目に関する特例のみ設けられていたわけでございますけれども、この特例の活用状況であるとか、それから活用に伴う課題であるとか、今後どんな特例が必要かということを各学校に対して調査したということでございます。
 それからイにつきましては、研究開発学校で教育課程の基準によらない研究開発をしておりますので、これらの学校について特例の参考になるものはないかということで研究をいたしました。全体的な結論から申し上げますと、研究開発学校の研究開発内容は、やや新教科の開発が多うございまして、必ずしもこの特例の参考になるものはあまりなかった印象でございました。
 以上の3つが委嘱研究でございます。
 それから今日は、4番目のものについて少し御報告を申し上げたいと思いますけれども、これは研究所のプロジェクト研究で、平成18年から19年度にかけて行ったものでございます。ただ、後期中等教育の在り方ということで、主に1990年代ぐらいから行われていた高等学校改革にスポットを当てまして、全体的に調査したということでございます。ですから、中高一貫教育については、各都道府県の高校再編の中の一部を占めておるわけですけれども、それを踏まえておりますので、中高一貫教育校を主題としたものではないということで、あまり踏み込んだ調査研究とはなっておりません。
 2枚目、2ページ目を御覧いただければと思います。このプロジェクト研究の内容でございます。上の方は割愛させていただきたいと思います。
 研究の方法としましては、8府県の高校改革担当の指導主事等に御協力いただきまして、各府県の中高一貫教育の取組状況であるとか、県で行った調査であるとか、そういうものをもとに御報告いただいて、まとめたということでございます。
 その結果が3にまとめております。ただこれは、各府県の把握をしたものを整理しているということですので、全国的な動向ではないということで、限界があろうかと思います。
 (1)成果、それから下の方に課題と整理してみました。
 成果の考え方としては、この制度を設置したことによるそれまでとの違い、制度自体の評価ということがあろうかと思います。それからこの制度をうまく生かした取組による成果というのがあるのではないかということで、こういうふうにまとめてみました。
 同じ9年間を通じた、例えばゆとりあるという言葉を取りましても、趣旨を生かした展開をすれば個性の伸長となるわけですけれども、必ずしもそうならない場合、いわゆる中だるみということになります。ですから一つのことが、同じ事柄が指導によって長所になったり短所になったりする性格を持っているということで、アとイに分けてみたということでございます。
 連携型については、地域との連携が深まった。小・中・高の連携の発展、高等学校も含めた連携教育に発展した地域もある。それから進学率の高まりと書いてありますけれども、これは課題の方にも書きましたけれども、進学率が必ずしも高くなっていないところも多いという実態ではないかと思います。
 それから中等教育学校の場合は、新しい学校制度の選択が可能になった。それから学校が新しく一新されたこととか、地域の信頼が高まったと、こういうような指摘もあります。
 それからイですけれども、教員の交流による生徒や授業の相互理解、意識改革、乗り入れ授業による基礎・基本の定着、部活動、こういうことが挙げられております。
 中等教育学校の場合は、例えば規範意識や人間性・社会性を指摘されている府県もございます。
 特色ある学習による個性の伸長、これは学校行事とか部活動を挙げておりますけれども、異校種間、異学年間の活動による個性の伸長とか学力の伸長が指摘されているということでございます。
 課題といたしましては、そこにあります地域の関連につきましては、連携型中学校からの進学者が横ばいであるということを指摘し、それを課題ととらえているところもあるということです。
 それから中等教育学校、併設型につきましては、市町村立中学校への影響を指摘する向きもございます。心配されている向きもあるということでございます。
 3ページにまいります。教育指導面では、連携型につきましては、連携中学校から連携高校に進学する生徒もいれば、その他の一般の高等学校に進学する生徒もいるわけですけれども、教育課程について、もう少し柔軟なものができないだろうかという御指摘があるということでございます。
 中等教育学校、併設型の場合は、いわゆる「中だるみ」の克服を課題として挙げているところもみられます。
 それから一貫教育としての教育課程編成の改善充実であるとか、特色ある教育、特例の活用方法、それから併設型高等学校における外部入学者を含む教育課程の在り方。それから学習が遅れがちな、学力の開きということを指摘されているわけですけれども、学習の遅れがちな生徒への指導を挙げている県もあるということです。
 それから入学者、これは中学校の入学者選抜の在り方ということでございます。
 ウにまいりまして、教員につきましては、人事異動に伴う継続的な取組、共通理解をしていくということであるとか、校務分掌であるとか、中高両方乗り入れ授業をするときの指導方法に関するもの、男女比に偏りが起きているとの指摘もございます。
 条件整備としては、県独自の加配をしてきたけれども、これが財政難でなかなかできなくなっている、県と市町村教育委員会の連携の在り方が指摘されています。
 それから中等教育学校、併設型につきましては、施設の充実等を挙げているところもあるということでございます。
 以上、簡単でございますが、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【小川(正)主査】  ありがとうございました。
 今、事務局と国立教育政策研究所の方から説明いただいた資料1と資料2の説明内容について、ひょっとして質問等々があるかもしれないんですけれども、それは3つの学校からの報告をいただいた後に、一括してお受けしたいと思います。今日はこれから3つの学校の報告もあり、ちょっと時間が詰まっておりますので、3つの報告を受けた後に、全体の質問等々お受けしたいと思いますので、そのように対応させていただければと思います。
 ではこれから、今日お越しいただいている3つの学校からそれぞれヒアリングをさせていただきたいと思います。各校、大体15分ぐらいの報告ということでよろしくお願いします。そして各報告についてそれぞれに質問ということではなくて、終わった後に全体で質問と意見交換をするということにしておきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 ではまず最初に、兵庫県立芦屋国際中等教育学校の楠本教頭先生にお願いいたします。よろしくお願いします。

【楠本教頭】  皆様、こんにちは。兵庫県立芦屋国際中等教育学校の教頭の楠本と申します。本日はよろしくお願いいたします。
 まず最初に、写真に写っております校舎を御覧ください。これは平成18年4月に完成した新校舎でございます。教室には木材をふんだんに使用し、屋上には太陽光パネル、屋上緑化、風力発電など、環境に配慮した構造となっております。
 設置経緯でございますが、平成10年6月の学校教育法の改正に伴い、平成11年4月から中高一貫教育校が設置可能になりました。これを受けまして、兵庫県におきましても、グローバル化、ボーダレス化が進む中、国際化に対応する教育を重視する中高一貫教育校を、ニーズの高い阪神地域に早期の設置を図るという方針が出され、平成15年4月に本校が開校いたしました。今年で8年目にあたります。
 本校の一番大きな特色でございますが、一学年2クラス80名のうち、まず外国人児童が30名、ただし本校の規定では、重国籍を含めますので、正確に申しますと外国籍を有する児童とお考えください。
 2つ目が、海外帰国児童で、同じく30名。こちらは、海外での在留が1年以上という条件のみで、帰国後何年という縛りはございません。
 そして最後に、日本生まれの日本育ちの、いわゆる一般の日本人児童が20名で、それぞれの枠ごとに、面接と作文等によりまして選考いたしておりますが、1、2に関しましては、例年約2倍の倍率、そして3につきましては、20名の枠のところに毎年200名を超える希望者ということで、10倍以上の狭き門になっております。
 教育目標ですが、上にありますような多様な生徒が入学してまいりますので、多文化社会に生きる人間形成を図る、そして個に応じた指導の充実により、基礎・基本の定着と生きる力を培う、コミュニケーション能力・国際感覚を備え、国際社会に貢献できる力を育成する、こういった方針のもとに、異なる言語環境や文化的背景のもとに育った子どもたちが、その能力や適性に応じて主体的に学んでおります。
 続きまして本校の校訓ですが、「Respect Integration Contribution」という英語のみで、参考までに日本語訳をつけておりますが、もともとは英語しかございません。
 それぞれのあらわす意味ですが、お互いの違いを認め合い、尊重し、相手を思いやる気持ちなど、豊かな共生の心を育み、身近な人、あるいは地域・社会に貢献できる人材の育成を目指しております。
 実は、この校訓を生かした取組が、昨年度文科省の方で、「校訓を生かした学校づくり」の推進校全国5校のうちの1校に選ばれまして、昨年度このようなリーフレットを全国の学校に配付されました中に、本校の校訓が紹介されております。
 校歌は、1番と2番が日本語、3番が英語になっております。ただ、よく誤解を受けるのですが、本校はインターナショナル・スクールではございませんので、当然、英語以外の授業は日本語で行っております。
 続きまして生徒の概要ですが、男子に比べて女子が多いという特徴がございます。
 在籍生徒の出身国は、日本を含めて27カ国、帰国生の滞在国を含めますと、実に37カ国にのぼります。
 また、校区は県下全域でございまして、中には2時間以上かけて通学している生徒たちもおります。
 さて本校の教育課程ですが、実は先ほど資料1の中の、中学校Bで紹介されていたのが本校でございまして、前期課程では中等教育学校の特例を生かして、多様な生徒に対応できるような教育課程を組んでおります。
 後期課程は、単位制の普通科で、進路実現に向けて、こちらも多様な選択科目を開設しております。
 まず前期課程、ここでは特に、1年生、2年生の国語の時間で、日本語理解が十分でない生徒のために日本語指導を行っております。総合的な学習の時間の中には、これは後ほど御紹介いたしますが、AI、探求というテーマで、外国や日本の文化を学ぶ機会を設けております。
 先ほど申しました選択教科です。これが本校の特徴でして、1年生では、国語と英語。2年生では国語、英語に加えて社会、数学。3年生では、1、2年生の日本語指導でまだ学習言語として日本語が確立していない子たちのために、応用日本語を設けて、その中で各教科が個別に指導するという支援を行っております。
 後期課程の4年次ですが、もちろんほとんど必履修科目でございます。ただ選択科目の中には、先ほど申しました応用日本語という科目も設けておりますし、総合的な学習の時間の中では、前期課程の、先ほどのAIタイムと、このあとの5、6年次の第2外国語をつなぐという意味で、外国の文化や言語についても学んでおります。
 5年次になりますと、先ほど申しましたように、非常に多様な選択科目を開設しております。日本語理解がなお十分ではないという生徒がいた場合に備えて、日本語研究、漢字研究という授業も開設しております。
 6年次も同様ですが、最初に申しましたように、2クラス80名の生徒がこれだけの科目を選択しますので、ほとんどの授業で5人から10人という小人数指導を実施しております。
 ここからは写真を交えまして、具体的な説明をさせていただきます。
 まず英語の授業ですが、80名を、前期課程は5グループ、後期課程は4グループに分けております。これは、入学後初めて英語を学ぶ生徒もおりますし、アメリカ人、オーストラリア人のようなネイティブスピーカーも入学してまいります。したがって、それぞれの英語力に応じて、十数人のグループで習熟度別授業を実施しているということです。
 続いて日本語理解が十分でない生徒への支援ですが、先ほど申しましたように、1、2年生の国語の時間に、生徒の日本語理解に応じて、初級、中級、上級の3グループに分けて日本語指導を行っております。社会、数学、理科の授業におきましては、今、2名の通訳が写っておりますが、外国語講師がティームティーチングとして入る取り出し授業を実施しております。原則として、これらの日本語支援は、1年生、2年生までとなっております。
 総合的な学習の時間の中のAIタイムと我々が呼んでいるものですが、これは、Ashiya Internationalの頭文字をとっております。今年度は、韓国・朝鮮語、中国語、ロシア語、タガログ語と、この4つのグループをそれぞれ20名が選択し、在籍生徒の出身国の文化や言語を学ぶということで、それぞれの自尊感情、あるいは自己肯定感を育み、豊かな共生の心を培う目的で行っております。この写真は、6月に行われております文化祭での発表の様子です。
 同じ総合的な学習の時間の中で、今度は日本の文化についても体験するということで、華道、茶道という時間も設けております。
 また、1年生のときに、篠山産業高校東雲校の協力のもと、5月に田植え、9月に稲刈りという日本の食文化の基本であります稲作を体験するということを行っております。
 また、体験学習の一つである2年生の「トライやる・ウィーク」におきましては、地域の事業所にお世話になるわけですが、本校の特色を生かしまして、JICA兵庫であるとか、これはインターナショナルスクールの幼稚園の方にお世話になっているところです。
 本校ではボランティア活動も非常に盛んで、地域の知的障害者授産施設や老人ホーム等を吹奏楽部、コーラス部、邦楽部が訪問演奏しております。昨年度、ボランティア・スピリット賞のコミュニティ賞を受賞いたしました。
 それから国際交流も積極的に推進しておりまして、これまでにアメリカ、ニュージーランド、オーストラリアと、これは個人として受入れており、昨年度は中国広東省から2名、今年度もドイツから1名、約1週間ほど受入れました。
 団体としましても、JICA兵庫、JICE、あるいは兵庫県の国際交流協会等と連携しまして、昨年度はベトナムから、今年度はインドから中高生を約20名ほど受入れました。実は急遽だったんですが、10月にはシンガポールの中学生も約20名受入れて学校交流をいたしました。
 このほか、国内外からの視察も非常に多うございまして、昨年度はノルウェー、フィンランドから訪問がございました。今年度も9月にタイ王国から教育省をはじめ、約十数名が来られました。実は今日も、この後兵庫県にトンボがえりしまして、明日の午前中にインドネシアからの教育視察で、約20名をお受けすることになっています。
 本校8年目ということで、2学年、123名が卒業いたしました。非常によく頑張ってくれまして、京都大学、大阪大学等、国公立にもたくさん行ったわけですが、この半数以上が実は理系の進学でございます。早稲田、慶応をはじめとする私立大学、あるいはその他の進路先も見ていただきましたらおわかりのように、本校は校名に国際がついておりますので、よく文系の学校と間違われるんですが、背景が非常に国際的であるということであって、教育内容はすべての進学に、あるいは進路に対応できるようにしております。
 最後になりましたが、前期課程から後期課程への効果的な接続、あるいは6年間を見通したキャリア教育の推進等まだまだ課題はございます。しかし、これからも広い視野を持ち、異なる文化を尊重し、多文化共生社会の実現に向けて、国際社会に貢献できる子どもたちの育成に努力してまいりたいと思っております。
 御清聴ありがとうございました。

【小川(正)主査】  ありがとうございました。
 質問等々あるかと思いますけれども、3つの学校の報告が終わってから一括して受けたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 では引き続いて、滋賀県立守山高等学校の川那邉校長先生、よろしくお願いいたします。

【川那邉校長】  失礼いたします。滋賀県立守山中学高等学校校長の川那邉でございます。
 まず私どもの学校ですが、高等学校は昭和38年、全日制の普通科高校として琵琶湖の湖南地域での中堅進学校として文武両道の校風のもとに開校されました。併設型の中学校ですけれども、平成15年に中高一貫教育校として編成され、中学校各学年2クラス80名です。現在の学校の規模につきましては、高等学校は学年6クラス、うち2クラスが内進クラスです。中学校の方は、2クラス全学年で6クラスということで、学校全体では、中学校、高等学校合わせて960名、24クラスの規模の学校です。私どもの学校の教育目標、校風につきましては、互いの人格を尊重し、協力する心を大切にする「協和」。そして「進取」というのは、主体的に行動できる人間を育てる。「叡智」というのは、一人ひとりの個性を生かし、高い知性を持つ人間を育てる。そういう校風のもとに教育活動を行っております。
 今回、ここでは限られた時間ですので、本校が取り組んでおります中学校での「特色ある教科」につきまして、特にお話をさせていただきたいと思います。
 中学校では、ディベートという教科の指導に取り組んでいます。国語ディベートにつきましては、この写真にありますように、命題を与え、1チーム8名で構成し、賛成、反対それぞれの立場から意見を闘わせます。この写真は3年生での授業の様子です。当然1年生では、順序立てて話す、そして人の話をしっかりと聞き取る、そういうことを積み上げながら、3年生でのディベートの活動につなげております。
 「特色ある教科」を設定することによって、本校での私ども国語科は、狙いとしまして表現力、それから聞く力などの言語の活動力を向上させることを目標にしております。また、中学生段階での論理を組み立てる力を伸ばすことを目標に指導しております。現在、3年生の生徒諸君にとって、この授業は非常に楽しい授業であると聞いております。
 次に英語ディベートです。英語ディベートにつきましては、1チーム4名で構成し、これも中学校3年生段階で、このように英語でディベートを行っております。最初は役割に従い、3年生では80文字程度で英文を完成し、賛成、反対の立場を明確にして、英語で自分の意見を発表する。今年のテーマにつきましては、小学校教育での英語は必要であるかどうかということを中学校3年生に議論させました。
 今年の国語ディベートでは、活発に意見が交わされた論題は、「コンビニの深夜営業はやめるべきである」とか、「カジノは公認すべきである」などです。
 ディベートの授業では、中学生がいろいろと自分の意見を述べ、論を組み立てる学習活動が行われています。
 それ以外の、私どもの特色ある教科につきましては、お手元の資料にも載せていただいておりますが、「サイエンス」です。これは数学サイエンスと言って、1年生から3年生まで週年間35時間を配当し、数学的な考え方、抽象的な思考活動原理を学習するための授業を行っております。
 また「理科サイエンス」につきましては、なかなか授業で時間をとって実験、観察を取り入れることができないため、3年生時に、35時間、特に実験や観察に力を入れて、仮説を立てる、そしてその仮説に基づいて実験観察し、結論を導き出すという科学的な思考力を身につける学習ができるよう心がけております。
 また、「ソーシャルスタディ」という社会科の科目も、特色ある教科として設定しております。これは3年生で35時間授業を行っておりますけれども、特に現代社会、または国際的な視野を身につけるため、できる限り新聞やニュースを教材として扱い、なぜそういうことが世界で問題になっているか。そういう視点をしっかりと育てるように授業を行っております。
 このように本校で実施している「特色ある教科」は、教科書がないわけです。この授業を行うことによって、2つ利点があるということを気がつかさせていただいております。
 1つは中学生段階におきまして、知識理解だけではなくて、表現力、判断力、思考力という活用する力を生徒が身につけることができた思っております。
 それからもう1つは、授業をするために教科書がありませんので、教員の授業力の向上に非常につながっていると思います。ディベートでも、英語のディベート、または国語のディベートでも、3年生でこういう形の授業を展開するためにはどんな指導が必要であるかを教員に聞いてみました。英語の場合、1年生では聞き取りに非常に力を入れている。国語の場合には、順序立てて話をするということに力を入れているということです。いきなりディベート行うことは無理ですので、1年生、2年生の段階を経て3年でディベートを行うために、教員がいかに授業を組み立てるかについて各学年での指導が非常にうまくいっていると考えます。
 特に国語ディベート、英語ディベートにつきましては、複数の教員で担当しておりますので、お互いに悪い点、もっと改善しなければならない点、そういうことを話し合いながら次の時間に取り組んでいるということです。そういう結果、生徒が非常に楽しみにしている授業となり、生徒の学習意欲も向上していると感じております。
 次に本校で中高一貫教育を実践している中で、特に中学校と高等学校の接続につきまして、私自身感じていることをお話させていただきたいと思います。
 中高一貫教育を行うことによって、中高の学習面での接続につきましては、本校は高等学校教員が積極的に中学校の授業に入るという形で、教員の配置を行っております。そのことによって、中学校段階で、どこまで深く学習をするかということが、高等学校教員が十分把握し、高等学校で学ぶ内容をより精選することができると考えております。
 また昨年度中学校3年生を担当して中学校の教員が、高等学校1年生の授業に入るように配置しています。特に英語、数学の教科で取り組んでいます。このことは、生徒にとっては、自分たちの学力、力、理解力を十分把握している教員が担当してくれるという安心感をもって学んでいると思います。
 2つ目は、生徒自身の活動としての「部活動での接続」ということです。一般の中学校では、中学3年生での夏の大会が終わりますとクラブ活動を引退するわけです。本校は、高校入試がありませんので、中学校3年生の夏休み以降、高等学校の部活動に加入します。そのことによって、部活動でのブランク、いわゆる活動しない時期を設けることなく、そのまま引き続いて高等学校への部活動へと接続することができるのです。生徒にとって、部活動は学校生活を生き生きと取り組むことのできる重要な教育活動だと思っております。
 3つ目が、「総合的な学習」です。この6年間の学習を通じて自分の将来について考えさせることができるのです。特に中学校の段階では、上級生から学ぶことができます。1年生であれば2、3年生、または高校生から学ぶことができます。人間探求学という総合的な学習の時間で、学習したことをプレゼンで発表をさせます。優秀な生徒の発表につきましては、下級生にも参加させます。下級生は、来年はこういう発表をしなければならないということ学習させております。生徒の姿を見て学ぶということは、中学生が高等学校へ行ったらどんなことを学ばなければならないか。生徒の姿から、総合学習を通じて「学びの接続」になっていると考えています。また、6年を通じて自分の将来を学ぶことによって、進路実現に意欲的に取り組むことができていると感じております。
 これは1年生でのプロジェクトアドベンチャーという行事の様子です。特に中高一貫教育を行っている私どもの学校につきましては、生徒は50小学校ぐらいから来ておりますので、同一小学校の出身者がクラスに複数いるということは非常に少ないのです。だから、中学校では、まず仲間づくりに力を入れての指導を行っております。
 これは1年生での「地域と私」という総合学習での発表を行っている風景です。
 右側の写真は、職場学習の様子です。滋賀県ではチャレンジウィークという名称で、中学校2年生で5日間の職場体験学習を行っています。この後、私どもはその体験を通して、どういうことを学んだのか、学校の中で発表会を行っております。
 最後に、私自身、中高一貫教育校を任されまして、どういう点が中高一貫のよい部分であるかということを考えまして、3点ぐらいお話をさせていただきたいと思います。
 1つは、中高一貫教育というのは、非常に安心して学べる学校であると思うわけです。その理由は、高校入試がないことが、生徒にとってみると大変大きな安心であると思います。そのことが、私どもの中学3年生が、一生懸命各種の検定に対して挑戦します。例えば、英検2級であれば、中学校3年生段階でチャレンジし、毎年5名程度が合格します。45名から50名の者が、中学校3年生段階で英検の準2級を合格しております。これは高校入試がないということで、安心して自分がいろんな検定に対して挑戦できる。そういう時間的保証があるのではないかと考えます。
 また、読書活動におきましても、県内で最も本を読む中学生だと言われております。滋賀県では、中学生一月平均は2冊を少し切るぐらいである読書量であるのに対しまして、本校では平均1カ月6冊程度、中学生が読むということで、これも入試に振り向ける時間を読書の時間として活用することができるのではないか。現在、来年海外研修を夏休みに、中学校3年生、高等学校1年生に取り組ませようと、募集をかけているわけですけれども、今の中学校2年生は、大変意欲を持って参加したいと言っています。中学校3年生の夏休みに、海外研修に行きたいと手を挙げるということは、やはり高校入試がない、そういうことが生徒が意欲的な活動に取り組めることではないかと思っております。
 第2点目は、生徒間での中高の交流、これが非常に安心につながっていると。本校では、「絆プロジェクト」と言いまして、高校生が、中学生の学習面であったり生活面であったり、そういう悩みに答えるということで、学期に2回程度、マンツーマンでそういうような形のことを行っているのですが、それに中学生も高校生も、大変意欲的にそのことに参加しています。高校生に聞くことよって、自分の生活について安心感を持ちたい、そういうことではないかと思います。
 それから高校生、大体中学生は、高校に行けば非常に期待感もありますけれども、不安感もあると思うのです。だけど、中高一貫の生徒にとりまして、その不安感がない。高校生をよい手本として、自分の将来像を高校生に見ているということが意欲的に学習できる大きな要素ではないか。
 3つ目は、教員との心の安心と言うのですか、そういうものがあると思うのです。高校入試後も、高校入学後も、安心して相談できる中学教員がそばにいると。私どもの外進生徒は、高等学校でいろんな点で悩みますと、やはり出身中学校に返って中学校の先生に相談するのです。内進の子は、職員室に入ってくれば、自分の中学校のときの教員がそばにいるということが非常に安心である。また、保護者からも、内進の生徒の保護者にとってみると、我々が中学校時代にすべてよくよく知っているということで、そういう安心感がある、そういうことを感じさせていただきます。
 簡単ですけれども、以上で発表を終わらせていただきます。

【小川(正)主査】  ありがとうございました。
 それでは最後になりましたけれども、3番目の報告ということで、立命館宇治高等学校の汐崎校長先生にお願いしたいと思います。

【汐崎校長】  失礼いたします。立命館宇治中学・高等学校の汐崎と申します。よろしくお願いいたします。
 私からは、2つのテーマで報告させていただけたらと考えております。1つは、学校の教育の概要と特徴ということで、まずアウトラインを説明させていただけたらと思っております。
 私たちの学校の沿革ですけれども、1995年に立命館大学の付属高校として出発いたしました。その際の教育の柱として大きく3つを中心に学校づくりを具体化してきました。1つは国際化をどういうふうに日本の教育の中で図っていくのか、そのために、英語教育の重点化と第2外国語の導入、帰国生の受入れ。そして2つ目は、情報化時代の中で、どう子どもたちがスキルを身につけて活用できるようにしていくのか。そして3つ目は、大学との接続を生かして、従来のいわゆる「受験教育」と言われる閉塞感のある教育を打ち破って、どのように新たな優位な力をつけていくのか一貫教育・高大の接続教育をどう進めるのか。そういった問題意識で教育を進めてまいりました。
 2000年には、英語によるイマージョン教育を開始いたしました。同時に2000年に立命館アジア太平洋大学が開学いたしましたので、そことの発展的な結合を図りたいということが一つの動機ではありましたけれども、英語のイマージョン教育を開始してまいりました。
 2002年に、文部科学省様のSELHiの第1期の指定を受けまして、英語教育の研究を進めると同時に、新キャンパスに移転しました。
 2003年に中学校を開設いたしまして、今日話題になっております併設型の中高6年一貫教育という形で、新しい教育の発展を図りました。その中で、高校設立の3つの柱を発展させまして、1国際化教育、2統合と卓越の教育、3情報化教育、4貢献の教育という4つの教育コンセプトで、学校教育の柱をもう一度整理しました。また、地域貢献型の事業として、Rits Kidsという小学生を対象にした英語講座も地域の子どもたち対象に始めさせていだたきました。
 2005年にSELHiの第2期指定。
 2006年に京都府にあるということがございますけれども、伝統芸能や、優れた芸術活動、スポーツ活動をしている子どもたちを、中学校から一貫教育の中で育てていきたいという新しいコース、SAコースを開始いたしました。
 2008年に、Advanced Immersionプログラムということで、それまでありましたイマージョン教育を発展させました。これが今年開始いたしました国際バカロレアのディプロマプログラムの教育の開始につながっています。現在は、国際バカロレアのワールドスクールの一員として認定を受けまして、国際水準に立つ教育をどういう形で日本の国内の一条校として実現していくかということを大きなテーマにして取り組んでおります。
 次に私たちの学校の概要でございます。先ほど申し上げましたように、ここにあります4つの柱を教育の活動のコンセプトに据えまして、学んだ力を社会に寄与できる、実践的に貢献できる教育を目指しながら、世界で通用する人間になるためにどういう教育が中等段階で必要なのかということを考えてやってまいりました。
 中学校ではSAコースという、これは20人前後のコースですけれども、それと一般のコース。
 そして高校では、SELコースの中にSIP、AIPというのをつくりまして、これは後で説明させていただきますけれども、英語を非常に重視したプログラムと、一貫コースと言いまして中学校から入ってきた子がそのままカリキュラムを中高で一体化して学んでいくコースを設けています。このコースが6年間の中高一貫の教育になります。
 そして、高校で外部から入ってくる子どももいますので、それは普通コースということで類型を分けております。
 私達は私立学校ですので、規模の問題というのは非常に重要な意味をなします。生徒構成は中学校で大体500名、高校で1,100名、合計1,600人ぐらいの規模になっております。国際生徒、帰国生や海外からこちらに来られている方の子弟は、中学校で80名、高校で212名です。大体2割弱の生徒、国籍で言いますと31カ国ぐらいの帰国生や海外生になりますけれども、そういった子どもたちがともに学ぶ学校になっております。
 私たちは、中学、高等学校、そして大学との一貫教育をどういうふうに進めていくことが、今の日本の教育に貢献できることになるのかということでやっております。そのために、まず中高で基礎力をしっかりつけて、そして大学との連携の中で、発展的に学んでいく、そういう連続的な教育を第一の特徴にしております。
 中学校では、特に、基礎力を鍛える。一番のもとになってきますので、学習姿勢の問題とか、自律の問題であるとか、「個」を確立していく課題を重視しています。それと集団の中で、一人ひとりが役割を果たしたり、集団をつくっていったりする力を中学校の中でしっかり鍛えていく。それと同時に、基礎学力をしっかりつけるわけですけれども、基礎学力のもとになるスキルを、本を読む力であったり、計算する力であったり、情報活用していく力であったり、そうしたものをスキルとして獲得させたい。
 あわせて本物の体験、物づくりをやらせるということで、和太鼓や華道、茶道、米づくり、宇治のお茶を摘むであったり、伝統的な木工技術を学んだりということをさせております。それはすべて、今後彼らが社会に出て行くときの基礎をつくっていくという位置づけであります。
 自主活動や、地域貢献事業等についても同様に取り組んでおります。それを高等学校で深めていく、さらに伸ばしていくということで、高等学校では特に探求する力を育てていくことを重視しております。
 1つは、大学との連携による学びの深化ということになります。法学や国際関係のセミナー、先端科学入門という科目等で発展的な学びを提供し、また、大学の先生方にも参加していただいて、今現在学んでいることがより深い学びとどう関連しているのか、演習や研究、発表形式を取り入れながら授業をしております。
 また、ブリティッシュコロンビア大学の先生方が来て夏休みに授業をするUBC講座といったものもございます。
 それともう1つは、大学だけではなくて、企業の方や社会で活躍されている方の知恵や財産を活用していくことが高校生にとって、非常に重要な学びの内容だと考えておりますのでジュニアアチーブメントのスチューデント・カンパニー・プログラムとか、MESE等に取り組んだり、あるいは企業の方からテーマをもらって課題解決型の学習を授業に組み入れています。例えば昨年ですと、日立製作所さんから、日立の技術を社会の役に立つようにどうやって生かせるかとか、あるいは積水化学さんからエコ型の住宅をどういうふうに考えるか、そういう社会や企業の活動と結びついたところで、生徒達が学んでいかないといけないプログラムを導入しています。また、ボランティア活動を行う講座も、積極的に義務づけてやっております。
 また、探求力の育成という点では、卒業課題を論文として課したり、卒業研究をさせたり、あるいは模擬裁判や模擬国連等に取り組ませています。また、自主的な研究を通じて、社会に成果を問うものや、「グローバルチャレンジ」と名付けた国際型の派遣事業をやりまして、他の国の高校生たちと学んでいることを交流したり、研究発表したりしています。
 実際に高校生が学んだことを何とか社会の中で形にしていくことを、高校生らしくやらせていきたいということでこうした様々なプログラムをしております。
 2つ目の柱は、グローバル社会で活躍できる力を育てるということです。先ほど申しましたSELコースの中に、SIPプログラムとAIPプログラムという2つをつくっております。SIPというのは、そこに行きますと1年間留学をする。そして帰ってきて英語のイマージョンプログラムを受けるというコースです。
 AIPプログラムというのは、国際バカロレアのディプロマを取得するということが基本です。1年生の時に学習指導要領に基づく必須科目等を履修し、2、3年生で国際バカロレアの課程を履修して、そして3年生でディプロマを取得して、海外大学に直接応募できる資格を取得していく。そうしたプログラムになっております。
 外国語教育は、生徒の構成にもよりますけれども、3~4レベルで英語の授業を中学校からずっとやっております。また、実践的な活用を重視して様々な活用機会を学年毎に設けています。
 第2外国語の履修についても、中国語、ドイツ語、フランス語。課外では、韓国語、スペイン語を実施しております。海外研修等は8カ国に分かれて行かせるとか、いろんな形でやっておりますけれどもここでは省略させていただきます。
 それから帰国生、国際生徒の受入れですが、先ほど申し上げました31カ国、292名が今年の実数であります。海外留学や派遣受入れについても積極的にやっておりまして、姉妹校等を生かして、それぞれの国、学校と協定をして派遣・受入れを促進しております。「国際社会最前線」等の講演会を含めまして、国際社会の課題を一緒に考えていく。高校生が、他国の高校生と一緒に勉強していることを交流しあう取組も積極的にやっております。
 後半部分2つ目のテーマになります。教育課程の特色と基準の特例の活用です。これが今日の中心議題だと思うんですけれども、私たちの教育課程の配置のイメージを図で示させていただきました。文科省の必修科目・選択科目、あるいは総合的な学習は、大体私たちのカリキュラムの中ではイメージとして基礎的学力、発展的学力、あるいは個性をどう伸長していくのか等に位置付けています。私たちの学校では、先ほどの学校の教育コンセプトに基づきまして、そこに社会的な力であるとか、人間的な素養であるとか、社会に寄与できる力、国際的に通用する力にしていくためにはどの程度のものが必要なのか等を教育課程に組み入れています。また、新しい価値観に生徒たちが触れて、その理想や夢をどう伸ばしていくのかということが初等中等教育の重要な課題でありますので、それぞれを学校設定科目や特例を活用しながら配置していると御理解いただけたらと思います。
 主なものとして、1つは選択教科による中学校の必修教科を充実させるということ。それから高校履修内容を中学校におろしてきまして、先にしっかり勉強してもらうということで、国語、数学、理科については、高等学校の内容を一部中学校に移しまして勉強させております。
 2つ目は、総合的な学習の時間を活用して、中学校では特に人間的な素養や、自分たちが生きている社会についてしっかり身につけていく、体験的に身につけていくということで、文化体験やものづくりを重視した取組をしております。
 高校生では、特に世界の中で自分たちが生きているという意識、国際的な社会の中で活躍できる力を身につけていくことが重要ですので、そうした意味で、海外研修やボランティア等に取り組ませております。
 3つ目は、学校設定科目による教科学習の深化、深めるという課題です。高大連携や社会連携等を生かして、探求する力を育てていく課題ですが、1つは高大連携科目としてそこにありますような教科を置きまして、学校設定科目として、社系、文系、国際系、理系といった分野毎の科目を置いて、教科学習を深めています。
 発展的な学習でも、私たちの学校では、AP講座と呼んでいるんですけれども、アドバンスド・プレースメント科目という、アメリカの学校の科目呼称と内容を日本的に活用して、何とか大学入門レベルの学習をこの段階で導入できないかということで試行しております。そういう科目を選択科目として設けております。
 4つ目は、国際化教育の推進ということで、その目的のもとで学校設定科目として第2外国語、それから英語の力を伸ばす科目、そして国際問題領域の英語による授業、また先ほど申し上げました国際バカロレアのディプロマプログラムを実施してまいりました。
 国際バカロレアのプログラムについては、私たち、一条校としては日本では3校目ですけれども、物を考えたり、創造性を育てたり、主体的に探究する学びを一貫して行っているといった点では非常に優れたプログラムです。英語でなくても、日本の教育の中に生かせる深い内容があると考えておりまして、こういった内容を日本の教育課程の中に何とか入れていきたいと思っております。
 それから教育課程外の取組も非常に重要ですので、読書や小論文等に取り組んだり、様々な活動に生徒を参加させております。生徒が自分自身で考えてきたプランを学校全体で支援して実現する「夢」プランといったような取組もございます。生徒がここで学んだことが高等学校だけで終わるのではなくて、大学、社会で生きる形で学び続けていくことができるようにしてあげたいと思っております。
 最後になりますが、立命館宇治中・高で育てたいと思っているのは、今3つくらいに集約できると考えております。まず国際社会で活躍できる力を育てることが一つの柱です。アメリカの海外留学生の数値も先日発表になりましたけれども、日本が6位になっています。私たちの学校に留学してくる韓国の生徒や中国の生徒が非常に優秀であるということを見ましても、日本の中高生が今、世界の中で一緒に活躍できる力を育てていくというのは、まだまだ大変な状況にあると思います。そういった取組を強めたいと思います。二つ目は夢をかなえる力を持つ前提、基礎力と専門性を鍛える取組を徹底する。三つ目は立命館スピリットと言っているんですけれども、とにかく挑戦をして、失敗しても自分たちがその失敗から学んで次に工夫していくような、そういうマインドを育てていきたいと考えております。
 最後ですが、今後の教育課程改革で重視したい力としまして、今申し上げたところから出てくることですが、もう一段国際的な通用力を高めていく、そういった教育課程の改革が必要だろうと思っています。
 2つ目は、自立的に学習を続けていく、あるいは創造的に考えていく。学んだことを生かしていく、そういった力をつける、探求する力を伸ばしていく。
 3つ目は、学んだことを実際の社会の中で成し遂げていく力。行動力、実行力につながる挑戦する力、そういったものを教育課程の中にどう入れ込んでいくのか。
 そして最後は、協働する力です。個人の力でできることは限られていますので、人間的な素養をしっかり育てて社会の中で他の人と一緒になって物事を協力してやり遂げていく力。そうしたものが学習を通じて獲得できるような教育課程改革を実現していきたいと考えて、今議論を進めているところでございます。
 以上、ちょっと早口になりましたけれども、立命館宇治中学・高等学校の報告とさせていただきます。ありがとうございました。

【小川(正)主査】  ありがとうございました。
 事務局からの説明と、3つの各学校からの報告、大体1時間半ぐらい連続して、皆さんちょっとお疲れかと思いますけれども、残り30分前後時間がありますので、事務局の説明と、今御報告をいただいた3つの各学校からの報告についての質問や意見等々お受けしたいと思います。
 まず、御質問等おありの方、挙手をお願いします。まず柳原さん、古川さん、そして向山さん、あと青木さんですか、そういう順番でお願いします。

【柳原委員】  新しい取組の御講演、ありがとうございました。すごく興味深く聞かせていただきました。3校の先生方に質問したいんですけれども、一番チャレンジングだったこと、1番難しかったことは何か。それをどう解決されたかを聞かせていただければと思います。よろしくお願いします。

【小川(正)主査】  よろしくお願いします。

【楠本教頭】  失礼します。芦屋国際中等教育学校ですが、現在もまだ解決できているとは言えないんですが、先ほど御説明しましたように、本校には日本語理解が十分でない生徒から、非常に進学意欲の高い帰国生まで在籍しております。したがって、特に後期課程における生徒の学力差に対応する、それぞれの目標を実現するために支援するということで日々努力をしておりますが、なかなか限られたスタッフの中でやり切れていないのが現状でございます。ただ、先ほど最後に申しましたように、その中で1期生、2期生が非常に頑張って、良い成果を上げてくれているといったところだと思います。
 以上です。

【川那邉校長】  守山中学高等学校の川那邉です。今一番難しかったことはということで、やはり6年間を通じて生徒の意欲、モチベーションを上げて生徒を育てるという、ここがやはり我々にとってみると一番苦労するところだと思っております。生徒の中には、やはり6年間の中で、非常に大きな力を発揮してくれる生徒さんもいるのですけれども、中には80名という集団の中で、少し不適を起こす生徒さんもおります。そういう生徒さんについてのケア、そういうことも現在真剣に取り組んでおります。
 あとは、やはり私ども全く意識はしておらないのですけれども、外進の4クラスと内進の2クラスがありますので、どうしても保護者、または生徒さんの立場から、内進と外進というところに少し違いを感じておられることがあるかもしれません。ただし、私どもはなるべくそういうところで差をつけずに、一緒に扱って、学校全体として教育力を上げたいと思っております。
 以上です。

【汐崎校長】  入口のところでいいますと、中学校に入ってきたとき、あるいは高校に入ってきたときに、生徒の学ぶことへの姿勢を変えていく点では、受験というのが一つの動機になって勉強してきますので、それを本当の学びの姿勢に作り変えていくところがまず大事かと思っております。一番難しいと言われるとなかなか難しいんですけれども、大学への接続問題というのは、今中高のところで議論になっておりませんけれども、本当は、高校から大学への接続問題を今日本の教育の中でもうちょっと議論しないといけないのではないかと思います。全然手つかずになっていることが今課題ではないかと考えております。

【小川(正)主査】  柳原さんの方で、今3人の方から返答があったんですけれども、それについてまた何かございますか。

【柳原委員】  ありがとうございます。また後で、ちょっと個別に詳しくお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

【小川(正)主査】  主査の方から追加の質問というので、よろしいですか。今の問題に関係することでもあるんですけれども、先ほど3つの報告で、入試、選抜のところがほとんど触れられていなかったんですけれども、3つの高校、それぞれかなり特色ある取組をされているので、おそらく入試でもいろいろな工夫がなされているかと思いますが、簡単でもいいですので、最初の2つは県立ですのでいろいろな御苦労があると思いますし、私立の方は私立ということもあり、選抜試験をやられていると思うんですけれども、ただコースがかなり多様ですよね。そういう多様なコースに対応して、何か特別な入試の仕組みをつくられているのかどうか、少しお聞きしたいんですけれども。

【楠本教頭】  失礼します。先ほどの発表の中では少し触れさせていただいたんですが、本校の場合は、面接、作文を主な資料として選考しております。ただ日本語が不十分な児童も受験しますので、例えば面接であれば日本語と母語、あるいは作文であれば得意な方を選択できるというような配慮をしております。
 ただ面接、作文とそれから推薦書等は、本当に成績等は一切書かないような形になっておりますので、合格候補者をまず発表して、文科省が言われていますような形で公開抽選を行って、入学者を決めているということです。
 以上です。

【川那邉校長】  滋賀県の公立の中高一貫校は3校あります。適性検査が実施されますが、これは知識、理解によらないということです。適性検査と作文と面接が検査で行われております。
 それから小学校から送られてくる内申書を参考にさせていただいて合否の判定を行っております。合否の判定につきましては、定員80名の80%程度、大体64名程度を入学許可予定者とし、あと残りの16名につきましては、―学校によって違いますけれども、全体の100番程度の生徒を対象に抽選で決定しています。
 以上です。

【汐崎校長】  私どもは私立学校ですけれども、中学校の入試につきましては、国内の入試と国際入試という形で分けてやっております。国際入試の場合は、現地校型の生徒、あるいは日本の教育を受けていない生徒の場合と、日本の教育を受けているけれども海外で長くおられたことを配慮した入試の形と両方とっております。
 中学校から高等学校へは、中学生が基本的に一定の成績をとれば試験なしで中学校から推薦をする形で高校が受入れる形態をとっております。高校生が外から入ってくる場合には、中学と同じように、国際型の入試枠と、国内の入試枠とやりまして入学試験を実施しております。
 以上です。

【小川(正)主査】  ありがとうございました。では、古川委員。

【古川委員】  すみません。古川でございますが、5点ほど。
 1点目は、今座長の方にありました、芦屋国際を除く、中学入学時、あるいは高等部入学時の倍率を今のことにつながって簡単にお願いします。
 それから2点目ですが、授業料が一般の、その県立であれば県立と同様なのか、違うのか。私立の場合は、私立の一般的なのと比べて、立命館の場合はどの程度なのか。
 3点目は、不登校に陥るような生徒、あるいは進路変更、退学というのはないのかどうか。
 4点目は、先ほど滋賀県立守山高校からございましたけれども、昨年12月に文科省から出ます教員の休職者の中でも、最近は中等学校の先生の休職が上がってまいりましたので、その辺で守山以外で大変新しい取組をされています。また授業時数も多うございますので、先生方の御負担もあろうかと思うので、その辺の状況はいかがなものかということ。
 それから立命館の場合は、高大連携で、その上にあります立命館大学にどの程度進学をされるのかについて簡単で結構です。よろしくお願いします。

【小川(正)主査】  ではよろしいですか。よろしくお願いいたします。

【楠本教頭】  倍率は先ほど申しましたので。授業料ですが、これは当然、前期課程は無償。それから後期課程も無償化に伴い、本校も同じく授業料はいただいておりません。
 不登校・退学につきましては、様々な背景を持った子どもたちが入ってまいります。私も昨年着任して驚いたんですが、例えば海外での経験、これが年齢によっては自己のアイデンティティの確立に支障を来す。あるいは日本語も外国語もどちらもハンディがある、ダブルリミテッドという子どもたちです。そういう子たちが精神的な発達の過程において非常に悩みを持つことがございます。したがってどの学年にも数名、やはり悩んでいる子たちがおりますが、スクールカウンセラー等、医療機関等関係をとりながら、何とか続けるよう努力しております。
 教員の休職者はおりません。
 以上です。

【川那邉校長】  まず倍率ですけれども、私どもの学校につきましては、中学校の倍率は、今まで大体平均5倍ぐらいの倍率です。高等学校につきましては、1.2倍から3倍ぐらいの倍率です。
 それから授業料につきましては県と同一ですので、中学校、これは義務教育段階ですので授業料はありません。高等学校につきましては、今年度から授業料が無償化されておりますので、授業料はありません。
 それから不登校の生徒、それから進路変更につきましては、不登校の生徒は、3学年で2名ぐらい、これは不登校傾向のある、30日以上欠席していることを考えて、その程度おります。
 それから進路変更につきましては、これは第1期生、第2期生ぐらいまでは、若干5名ぐらいが、他の学校に対して挑戦する形で、本校への進学を希望しないケースがありましたが、1期生、2期生が高等学校の方で卒業しまして、それ以降、他の学校に対して大きく挑戦する生徒は少なくなりました。ただし、学力的にどうしてもほかの学校に行きたいという形で他の高等学校へ移る生徒がおります。
 それから現在、中学校、高等学校とも休職者はおりません。

【汐崎校長】  立命館宇治中・高です。中学校の入学試験の倍率ですけれども、様々な入試方式がございますので、私たちも推薦方式を基本にとっております。その場合は事前に応募資格といいますか、それを定めておりますので、必然的に倍率は1点何倍という形になると思います。一般入試も含めて全体を突っ込みでいいますと、中学校で大体3~4倍ぐらい。高校で2~3倍ぐらいということになるかと思います。
 授業料ですが、我々就学支援金の措置をいただきましたけれども、学費そのものは92万円ぐらいになっております。非常に負担が厳しいと思いますが、京都の平均的な授業料は65万円くらいですが、様々な諸経費を入れますと納付金が70数万~80万ぐらいの金額になっていますので、それよりも若干高くなっています。
 不登校ですが、中学校、高校でそれぞれ二、三名になると思います。教員の休職者ですが、1名ございます。
 大学進学ですが、私たちは学校そのものが高校大学一貫教育ということを特徴の一つとしていますので、93から94%ぐらいが、立命館大学に進学いたします。学部として進学したい分野がない場合がございますので、他大学進学も出てまいります。
 以上です。

【古川委員】  ありがとうございます。

【小川(正)主査】  古川委員、よろしいですね。
 では、向山委員、質問をどうぞ。

【向山委員】  2つお願いしたいんですが、1つは工藤部長なんですが、先ほど御報告いただいたんですけれども、机上資料の7の11ページ2、四六答申の真ん中あたりで、そもそもこの四六答申では、中学校と高校というふうに、中等教育が短く分割しているために、青年前期の内面的な成熟が妨げられ、十分な観察と指導云々という、これがかなり長い間、おそらくわが国の中等教育の大きな課題だったんだろうと思うんです。今でも課題だろうと思うんです。この視点からの先ほどの部長の報告の中で、長年政策研でやってきているのが、こういう観点からやってきているものがあるのかどうか。やっていないならやっていないでもいいんですが、ちょっとこの辺のことで、もし何かあったらお聞かせいただきたいのが一つです。
 それからもう1つは守山なんですが、一番最後に、安心して学べる学校づくりということで、3つの安心という御報告がありました。なるほどそうだろうと思って承ったんです。これはこれとしてそう思うんですが、議論を多面的に見るために、ちょっと失礼な質問をするんですけれども、こういう安心があるんですけれども、逆の方から見ると、不安はないのかということなんです。それは何かと言うと、例えば高校入試がないことの安心です。これは、高校入試がないことの不安につながらないのか。つまり、多くの子が高等学校受験で受験をしてきているんですけれども、それを受験しないで今度大学受験をするという、一方で見れば安心だけど、一方で見れば受験機会がない、不安につながらないか。
 2つ目も、例えば生徒間の中高の交流、上もいればという。だけれども、逆に言えば小さい中1から見れば、上の高校3年生まで大変大きいお兄さんたちもいっぱいいるわけです。下から見れば、大変集団が大きくなって、そういったところへの不安。大きな、非常に縦の長いスパンで先輩たちもいますから。そういう不安はないのかということなんです。
 3つ目は、教員と安心とあります。中学校の先生が高校へ行ってもいるんですから、それは安心になるけれども、逆に言えば、仕切り直しをして、おれは中学のときちょっとだめだったけど高校に行って何とかしたいという、それができない不安にもならないか。つまり一方の側から見れば安心なんだけれども、一方の側から見れば不安になるという材料はないのかどうか、その辺ちょっと聞かせください。

【小川(正)主査】  では最初に、工藤部長の方からいただいて、その後、これは守山という部分で。

【向山委員】  守山でいいです。

【小川(正)主査】  ほかの高校も、同じような問題がもしもあればということで。

【向山委員】  いいです、時間がないので。

【小川(正)主査】  わかりました。

【工藤初等中等教育研究部長】  この文面は、青年前期の内面的な成熟という言葉があります。それから十分な観察と指導による適切な進路の決定という言葉があります。前段の内面的な成熟というのは、おそらく青年期の発達や成長と、それから中学高校は入試で分断されている、選択しなければいけないことがあろうかと思います。発達、成長と入学者選抜等で中高を分けていることに関しましては、ここ10年で知り得る限りにつきましては、研究所の方では、それを主題にした研究は残念ながら行っておりません。当面新しい制度の普及とか、現状把握を中心にやってきましたので、対応するものは見当たらないということでございます。

【小川(正)主査】  今のお答えで何かありますか。

【向山委員】  今後もしやるかどうか、わかりました。本当は聞きたい。その辺は必要なのかなと個人的には思っているんですけれども。

【小川(正)主査】  では、よろしいですね。

【向山委員】  はい。

【小川(正)主査】  では、2番目の質問になります。最初に守山の方でお答えいただいて、きっと2つの高校にも共通する問題があるかと思いますので、何かあればお話を伺いたいと思います。最初に川那邉さん、よろしくお願いします。

【川那邉校長】  守山高校中学校・高等学校ですが、先ほど申されたように、高等学校の入試がないということの安心と、そして生徒は確かに高等学校の入試がないから中だるみとまでは言えないかもしれませんが、そういう気持ちがあると思います。私どもは、中学校3年生には、自分の中学校での学習はきちっと定着しているかということで、見直しテストといって、これは高校入学のための偏差値を上げてという形と違って、必ずしっかりと自分が学習してきて定着しているかということを2週間に1回ずつそういうテストをしています。そして生徒が十分自分の到達度に到達していることを確認しながらそのことにチャレンジできる、そういうシステムをつくっております。
 それから高校生に対する不安と。私ども校舎の都合で、高等学校3年生と同じフロアに中学校1年生が入るんです。年齢差は非常に。男子にしても女子にしても、トイレや手洗い、洗面所は全部一緒になりますから、そうすると12歳ぐらいから18歳、本当に背丈首1つ違うぐらいの生徒が一緒に生活するんですけれども、中学生にとっても見ると、不安というよりもあこがれ、ああいう姿でということですね。特に内進の生徒の方が、私どもの学校でいろんな点で大きな力を持ってくれているんです。学園祭なんかのイベント実行委員はといってみると、内進の生徒がやがて高等学校に入って、自発的に手を挙げて、我々の学園祭を自分たちでという形で、そういうことはやはり中学校のこの3年間、高校生を見てきて自分もそういう役割を演じたいという、そういう気持ちが強いんだろうと思っております。
 それから教員に対する安心感ですけれども、私は安心感の方が多いと思っております。ただし、先生がおっしゃったように、私は中高一貫の場合に、教科的な接続での、中学校と高等学校の教科担任の交流というのは必要だろうと思いますけれども、例えば中学校1年生のクラス担任が、そのままずっと上がって高等学校3年生のクラス担任までしてとなると、それはやはり生徒の成長もありますし、いろいろ人間的な関係で、生徒もあまりべったりという形よりは、むしろどちらかといえば担当者が変わった方が生徒の力は、生活面では伸びるだろう。だから、教科の面でのそういう一貫はあっても、ホームルーム担任が6年間一緒でなければならないという理由は全くないだろうと思っております。
 以上です。

【小川(正)主査】  ありがとうございました。
 同じような質問で、芦屋と立命館の方、もしございましたら少し簡潔にお願いします。

【楠本教頭】  芦屋国際中等ですが、短く2点だけ。
 1点目は、本校はやはり外国籍の子たちがいるということで、中学校1年生入学時に生徒同士も、教員もファーストネームで呼び合ってしまうんです。その関係が6年間続いてしまうと。ですから、昨年私が赴任したとき一番驚いたのは、高校3年生、6年生に対してヒトミちゃんという呼び方を教員がしてしまうということで、精神的な成熟という観点でいけば、少し甘さが残っているのかなという気はいたしております。
 それから入試のない不安という点に関しましては、進学意識の高い生徒・保護者からの要望もありまして、実は本年度初めて、全国で600校ほど受けている学力推移調査を3年生が11月に受験いたしました。これは実力テストとは少し趣の違うものになっております。
 それから後期課程に向けて、学習面を中心としたオリエンテーション合宿を年度末に企画しております。
 以上です。

【汐崎校長】  1つだけ。安心が不安になるということで言えば、やはり生徒の中だるみ問題というのがあります。このアンケートの中にもございますけれども、私ども大学まで続いていますので大学入学を自己目的にしている段階までは、勉強する動機なり目的があいまいになる可能性がございます。そういった点で、先ほどの柳原委員の質問と重なるかもしれないんですが、一番大事なこと、課題というのはモチベーションの問題です。生徒たちの理想と言いますか、目的意識と言った方がいいのかもしれませんが、自分たちがどんな人生を送っていって、自分の学びがどうつながるのかということを中学生や高校生の問題意識にあった形でどのように提供し続けるのかということが一番大きな問題です。それがうまくいかないときは中だるみという形であらわれてくると思っております。

【小川(正)主査】  よろしいですね。では、青木委員、どうぞよろしくお願いします。

【青木委員】  私の方から3点お伺いしたいと思います。
 まず中高ということで、既存の学校からそのまま併設校ができたり、中等一貫校ができたりしますと、図書館ですとか共有スペースの中に中学生向けの図書、高校生向けの図書が混在するというか、そういう使い分けをどうなさっているかということと、あと発表をお伺いしまして大変成功例ということで伺ったんですけれども、教員の数がかなり生徒に対して潤沢にいらっしゃっていろいろなカリキュラムができているように思いましたので、そのあたりが、生徒に対してどのぐらい先生方がいらっしゃるのか。
 3点目は、資料1のアンケートの方には、先生方の負担が今後の課題ということで出ていたんですけれども、各学校さんで、先生たちは、子どもたちを見るカリキュラムですとかシラバスをつくるについての負担感はどのように解消できていたのかということをお伺いしたいと思います。

【楠本教頭】  失礼します。芦屋国際中等の場合は、本校は単独で、つまり既存のものは関係なく1年生からスタートしたんですが、これは話すと長くなるんですけれども、簡単に言いますと、もともと別の高等学校がある敷地内に本校がつくられました。しかも相手校とは、全日制同士ということですので、図書館だけでなく体育館もグラウンドも教室等もすべて共用ということでいろいろ苦労はしております。
 先ほど見ていただきました最初の校舎が、本校独自の管理棟と、前期課程の生徒たちが入っている唯一の単独の校舎になっています。
 それから教員の人数ですが、2クラス6学年12クラスという小規模校にかかわらず、正規教員だけで34名、それから先ほど申しました外国語講師が8名、日本語講師が5名、それから新学習システム等の加配も含めてですけれどもプラス6名と、昨年から週29時間になりましたが、計19名の非常勤嘱託員がおります。したがって、生徒の授業等にかかわる教員の数は12クラスですけれども、50名を超えている非常にありがたい状況です。
 ただ、教師の負担等につきましては、本校は保護者の中にも日本語が理解できない方もおられますので、すべての通信、プリント類、もちろん生徒用のテスト問題も含めて、毎回いろんな言語に翻訳する必要性がございますので、テスト問題も早く作らなければいけませんし、通信も提出する何日か前には原案をつくって決裁に回してそれから各言語に翻訳をお願いして、ということを毎日やっております。かなりの負担だと思います。
 以上です。

【川那邉校長】  私どもの学校は、建物としましては47年建っております高等学校の一部を使って中学校が成り立っておるということなんです。もともと高等学校は8クラス規模の学校、それが中高一貫が開設されるときに高等学校を6クラスにして、その2つを中学校として、だから高等学校のホームルールがそのまま中学校のホームルームという形になっております。
 図書等につきましては、当然8年たっておりますので、中学生が読むような本と、高校生が読む本はしっかりと整備させていただいております。中学生にとりましては、高校生が読むような少しレベルの高い本があるということが、また知的好奇心を非常に向上させることになっているのではないかと思います。
 教員数につきましては、私ども中学校は教諭が11名、高等学校は教諭が41名ということで、若干1名か2名ぐらい単年度加配をいただいていますが、これは特に他の学校と比較して多い人数ではないと思っております。
 それから中高一貫を行う点におきまして、教員が苦労というんですか、8年たっておりますので、相当教員の方も本校が課せられておる中高一貫教育校として、使命感を持って取り組んでおると思いますが、カリキュラムにつきましても、それから先ほど紹介しました特色ある教科につきましても、やはり教材をしっかり研究し、生徒が楽しく授業を受ける。これは高等学校の方でもそうですけれども、やっぱり質の高いと言うんですか、授業力の向上という形でここ二、三年取り組んでおります。そこが一番苦労のところかなと思っております。
 以上です。

【汐崎校長】  立命館宇治中・高でございます。スペースとしての共有関係ですけれども、限界がやっぱりございます。私たち敷地そのものは13.4ヘクタールぐらいあるんですけれども、施設としては非常に狭あい化しております。中学生が500人、高校生が1,100人ですので、それぞれがクラブ活動をするにしても場所が非常に限られていて、隣接の体育施設等も借用し交代で使っていかないといけない。昼食時間等は時間割を交互にしまして、入れ替えることによって食堂や図書館の利用時間をずらしたり、あるいは下校時間は中学生を早くして、高校生はちょっと遅くして、施設の利用と生徒の通学の負担を軽減したりする措置をとったりしております。
 図書館については、共用であることが非常に幅の広い年齢層に対して様々な刺激を与えることができるという点では、私はむしろ一体になっている方がいいのではないかと考えております。
 それから教員の数ですが、145人おります。ただ、専任、常勤、非常勤とございまして、専任比率を高めるために私たち非常に苦労しております。教員一人当たりがどれだけの生徒を持つのかというST比を基準として定めているんですけれども、なかなか厳しいところであります。
 教員1人当たりに対して17とか18にしていきたいわけですけれども、非常勤、常勤も入れれば10人ぐらいにはなっていると思うんですけれども、専任の比率でいきますとなかなかそこは難しい。
 それから事務職員を入れますと175人という数になるんです。これは私立学校の非常に厳しいところだと思いますが、行政的な仕事も入試等についても全部現場でやっていかないといけないことがございます。例えば国際入試をやりますと、ニューヨークやシンガポール、上海、ロンドンということで、現地に出かけて行って実施しているんです。そうしますとそのための入試問題や実施体制が必要になります。国内でもやらないといけない。中学生も同様にやります。そうするとそれだけでも教員はかなりの負担になっていると思いますし、労働時間等も含めまして、現場には大変な思いをさせているだろうと思っております。
 中学校・高等学校を一体化していることによって、それぞれの体制を合理化できる部分とやはり独自に中学校なら中学校で手厚く体制をとっていかなければいけない部分と両方あらわれてくるんです。そうしますと、そのことを私たち私学としてどうやって保証していくのかという点では、経営上の問題と教育内容をよりよくしていく問題とバランスをとりながらやっていかざるを得ないことがございます。この辺は私立学校で学費をできるだけ抑えながらと言いましても、一般的には非常に困難な状況にあると思っております。

【小川(正)主査】  青木委員、よろしいでしょうか。
 もうちょっと予定の時間を過ぎてしまったんですけれども、どうしてもこの点だけは言いたいとかお聞きしたい方はございますか。

【上野委員】  はい。

【小川(正)主査】  では手短によろしくお願いいたします。すみません、時間ちょっとオーバーですけれども、もう数分、延長をお願いします。

【上野委員】  大変御苦労されて、立派な活動をされております。特に県立の2つの学校の先生にお伺いします。ああいう活動をする場合に、それぞれの現場の先生方の、例えば国際感覚なり、生徒を指導するために必要な知識と言いましょか、そういう側面での力量もかなり必要だと推測されます。そのときに、今の2つの県立の学校では、特別に先生方を選んでなっていただくということが可能なんでしょうか。

【楠本教頭】  人事については非常に答えにくい部分もあるんですが、本校は1年目、2年目、3年目と、先ほど申しましたようにまっさらな状態から始まっておりますので、どんどん新しく先生方が入られている状況で、本校を希望して来られた方がたくさんおられます。そういう方はもちろん国際教育に関心の高い方でございます。ただ高校籍は県立学校で教職員課人事ですが、中学籍に関しましては、やはり市町の教育委員会ということで、少し難しい部分があるようです。これから出ていくものが当然増えてきますので、そのときの県市交流等が課題ではないかと思っております。

【川那邉校長】  今おっしゃられたことと同じ問題があるんですけれども、高等学校につきましては、県立高校の人事で担当していただいております。本校を希望してくださる先生方、県内の先生方も多いと聞いております。ただし、地教委との関係がありますので、県立守山中学校に、県立の先生方が希望して赴任できる数が非常に少ない。
 それから中学校は、地元の地教委の人事によって編成されますので、なかなかそこら辺が思うようにいかないところがあると思います。
 ただし本校の場合は、中学校の教員免許を持っている高校の先生が、これは教科が限られているわけですけれども、自分から進んで中学校の方へ、高等学校の先生が3年勤めて中学校の方へ、中学籍になりたいとおっしゃる先生方も何人かおられまして、内部の方でそういう人事をお願いして編成していただいていることがあります。そういう先生方がおられるということは、本校にとってみると非常に力強いことであると思っております。

【小川(正)主査】  よろしいですか。ほかにも御質問なされたい方、いらっしゃるかと思うんですけれども、時間をオーバーしてしまいましたので、もしもどうしてもこの点についてお聞きしたいということであれば、事務局の方にその旨お話して、事務局の方から3つの学校に、再度追加資料等々お願いするということで進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 6分ぐらい時間をオーバーしてしまいましたけれども、時間になりましたので、今日はこれで終わりたいと思います。
 では、次回の件について、事務局から御報告をお願いします。

【小谷教育制度改革室長】  次回でございますが、次回は中高一貫教育における、本日も話題がございましたが、学習意欲の継続した向上の問題ですとか、入学者選抜の在り方といったことにつきまして、ヒアリング等も交えて御議論いただきたいと思っております。
 年がかわりまして来年1月20日の10時から、文部科学省16階の特別会議室での開催を予定しております。また改めて開催通知を発信させていただきますので、よろしくお願いいたします。

【小川(正)主査】  では、これで閉会したいと思います。ありがとうございました。

 ── 了 ──

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