資料8-1:中高一貫教育に関する実態調査(結果)概要

中高一貫教育に関する実態調査(結果)概要

1.調査対象・項目

(1)調査対象
・全国の中高一貫教育校(中等教育学校、併設型、連携型)
・都道府県・市町村教育委員会

(2)調査項目
・中高一貫教育の導入に係る経緯
・教育課程の内容
・教育活動の状況
・入学者選抜の状況

(3)調査時期
・平成22年3月

(4)回収率
・99%(366校 /370校(平成21年度設置校))

2.調査結果

1.中高一貫教育の導入に係る経緯

(1)教育活動の特色について (データ編 P4~6参照)
・ 国公私を問わず、「学習意欲の向上」、「進路希望の実現」、「生徒一人一人の個性・創造性の伸長」を重視する学校の割合が高い。
・ 国私立では、「国際化に対応するための教育」を重視する学校、公立では「体験学習を重視」、「地域の特性を重視」を挙げる学校の割合が高い。
・ 逆に、「情報化」、「環境」、「伝統文化」等については、公立・私立とも低調。
・ 公立について類型ごとに見ると、中等教育学校・併設型では、「学力・学習意欲の向上を重視」しているが、連携型では、「地域との連携を生かした教育の重視」、「地域の特性を重視」している学校の割合が高い。

(2)中高一貫教育を導入したねらい (データ編 P7~9参照)
・ 国公私ともに、「6年間の計画的・継続的な教育活動を展開」することをねらいとしている学校が約8割を超える。
・ 公私立では、「学力の定着・向上」、「生徒を継続的に把握すること」をねらう学校の割合が高い。
・ 国公立では「異年齢集団による活動」をねらいとする学校が約6割あるが、私立では3割にとどまる。
・ 「校務の簡素化・効率化」のために導入する学校は極めて少ない。
・ 公立について類型ごとに見ると、中等教育学校と併設型は同様の傾向を示しているが、「教育課程の基準の特例を活用すること」をねらいとする学校は、中等教育学校の76%に比べて併設型では44%と低くなっている。私立も同様の傾向。

(3)中高一貫教育を導入したことによる成果(データ編 P10~12参照)
・ 国公私立ともに、「異年齢の交流による生徒の育成」については、導入のねらいとしていた学校数と同数以上の学校で、「学力の定着・向上」については、導入のねらいとしていた学校数に近い学校で、成果があったとしている。
・ 「教職員の意識改革・指導力向上」については、公私立において、導入のねらいとしていた学校数の倍以上の学校が成果があったとしている。
・ 公立について類型別に見ると、併設型では、「学力の定着・向上」に成果があったとした学校が、それをねらいとした学校数より減少している。
・ 私立について類型別に見ると、中等教育学校と併設型で差異は見られないが、比較的差が生じた項目として、「異年齢交流による生徒の育成」は中等教育学校が高く、「教員の意識改革・指導力の向上」は併設型が高い。

(4)中高一貫教育実施にあたっての課題 (データ編 P13~15参照)
・ 公私立では、「生徒間の学力差(個に応じた指導法の確立)」、「高校入試がない(または簡便な入試)ため学習意欲の向上」を課題とする学校の割合が最も多い。
・ 国公立の半数以上の学校が「教職員の負担増」を課題としている。
・ 公立について類型別に見ると、「生徒間の学力差(個に応じた指導法の確立)」を課題とする学校は、中等教育学校・併設型で約9割。
・ 「教職員の負担増」を課題とする学校は、中等教育学校・連携型がそれぞれ52%、55%であり、併設型は6%と少ない。
・ 「男女比のバランス」を課題とする学校は、中等教育学校・併設型で約4割あるが、連携型ではほとんど見られない。

(5)ねらい・成果・課題のクロス分析 (データ編 P16~19参照)
・ 公私立とも多くの学校が「学力の定着・向上」をねらいの一つとして中高一貫教育校を導入し、成果を上げている反面、生徒間の学力差に苦慮している。
・ 中高一貫教育を導入した結果、当初ねらいとして挙げていた学校よりも多くの学校で「異年齢交流による生徒の育成」に成果があったとしており、特段の課題も認識されていない。
・ 中高一貫教育を導入した結果、当初ねらいとして挙げていた学校よりも多くの学校で「教職員の意識改革・指導力の向上」に成果があったとしている。その反面、特に国公立では5割以上の学校が「教員の負担増」を課題としている。

2.教育課程の内容

(1)教育課程の基準の特例の活用状況 (データ編 P21~23参照)
・ 高等学校(後期課程)から中学校(前期課程)への一部移行を行う学校が圧倒的に多い。(公私立の約6割)
・ 中学校(前期課程)段階では、「選択教科の授業時間数の拡大」の特例が「選択教科による必修教科の代替」の特例よりも多く活用されている。
・ 公立の連携型では、「学校設定教科・科目について卒業に必要な修得単位数に含めることのできる単位数の上限の拡大」の特例のみが活用されている。

(2)中高一貫教育校における教育課程上の特例の活用例(データ編 P24~30参照)
1 中学校における必修教科の時数を減じ、選択教科の時数に充てている例
・ 第1学年で国語を30単位時間、技術を5単位時間減じ、第2学年で国語を15単位時間、音楽、技術、外国語をそれぞれ5単位時間減じ、第3学年で国語、社会、理科、音楽、技術、外国語をそれぞれ5単位時間減じ、学校設定教科「コミュニケーション」(35単位時間)に充てている。
・ 第1、2学年で技術・家庭を35単位時間減じ、「情報技術」に充てている。
・ 第1学年で美術を10単位時間、保健・体育を35単位時間減じ、第3学年で音楽・美術を35単位時間減じ、それぞれ「音楽」、「芸術」に充てている。

2 中学校において、選択教科の時数を拡大している例
・ 「英語コミュニケーション」を第1学年において14単位時間、第2、3学年において35単位時間拡大している。
・ 「数学」を第1学年において30単位時間、第2,3学年において35単位時間、「英語」を第2,3学年において35単位時間拡大している。

3 学校設定教科・科目について卒業に必要な修得単位数に含めることのできる単位数の上限の拡大(通常20単位までを30単位まで)
・ 活用している34校のうち、最大限(10単位まで)活用している学校が最も多く10校となっている。

4 中学校(前期課程)と高等学校(後期課程)の指導内容の一部入れ替え
・ 中学校の「社会」の公民的分野・経済に関する内容を高等学校の「現代社会」(経済に関する分野)で指導し、高等学校の「現代社会」の政治に関する分野を「社会」(公民的分野・政治に関する内容)で指導

5 中学校(前期課程)から高等学校(後期課程)へ指導内容の一部を移行
・ 中学校「理科」の生物に関する内容(発生・遺伝)を高等学校「理数生物Ⅰ」へ移行

6 高等学校(後期課程)から中学校(前期課程)へ指導内容の一部を移行
・ 高等学校「数学Ⅰ(不等式、連立方程式)」、「数学A(2次関数、円の性質)」を中学校「数学」に移行

(3)教育課程の基準の特例を活用した成果 (データ編 P31参照)
・ いずれの特例についても、「特色ある教育課程の編成が可能」を成果として挙げる学校が多い。
・ 中学校における取組としては、「選択教科の授業時間数の拡大」の特例が「選択教科による必修教科の代替」の特例よりも成果があったとする学校が多い。

(4)教育課程の基準の特例の活用にあたっての課題 (データ編 P32~34参照)
・ 国公私立ともに、「6年間一貫した指導計画(シラバス)の作成」を課題とする学校が多い。(国立6割、公立約4割、私立約5割)
・ 国公立では、「教員数の確保、持ち時間数の増加」を課題とする学校の割合が私立に比べて高い。(国公立約4割、私立約2割)
・ 公立では、「中高の教員間での打合せ時間の確保」を課題とする学校の割合が国私立に比べて高い。(国立なし、公立約4割、私立約2割)
・ 私立では、「内進生と外進生との学力差」、「中高一貫教育用教材の研究・作成」を課題とする学校の割合が、国公立に比べて高い。
・ 国公立では、特例の活用にあたり、教員の確保や打合せ時間の確保など、物理的側面における課題があり、私立では、内進生と外進生との学力差、中高一貫教育用教材の研究・作成など、教務的側面における課題を有する傾向にあると考えられる。
・ 公立について類型ごとに見ると、中等教育学校で「中高間の重複内容と積み上げ内容の整理が必要」、「6年間一貫した指導計画(シラバス)の作成」、「時間割の編成」を課題とする学校の割合が高い。

3.教育活動の状況

(1)交流授業の実施状況 (データ編 P36参照)
・ 国立では、すべての学校で「高等学校の教員が中学校で授業を行うとともに中学校の教員が高等学校で授業」を行っている。
・ 公私立では、「高等学校の教員が中学校で授業を行うとともに中学校の教員が高等学校で授業を行った」とする学校の割合が約7割と最も多い。
・ 公立では、「高等学校の教員が中学校で授業を行った」割合が国私立に比べて多い。(公立約3割、国立なし、私立約3%)
・ 私立では、「授業を行わなかった」とする学校が約3割にのぼる。

(2)交流授業による成果 (データ編 P37、38参照)
・ 公私立では、「高校教員の中学校教育に対する理解が深まり、指導力が向上する」こと成果とする学校が、それぞれ約9割、約7割と高い。
・ 公立では「生徒の継続的な把握・理解が可能となる」とする学校が約7割、私立では、「教員の間で6年間かけて生徒を育ているという意識を共有できる」とする学校が約8割と高い。

(3)交流授業実施にあたっての課題 (データ編 P39、40参照)
・ 国公私立のすべてにおいて、「時間割の編成」に課題があるとする学校の割合が高い。(国立10割、公立約7割、私立約6割)
・ 公立では、「教材研究・指導方法の工夫」を課題とする学校が約6割にのぼるが、私立では約4割となっている。類型別に見ると、併設型で課題とする割合が高い。
・ 公立では、「中高間の教員の打合せ時間の確保」を課題とする学校が約7割にのぼるが、私立では約3割にとどまる。類型別に見ると、連携型で課題とする割合が高い。

(4)学校行事について中学校と高等学校が合同で実施した項目(データ編P41、42参照)
・ 公私立ともに、「文化祭、学園祭、音楽祭等の学芸的行事」が最も割合が高く、公立約7割、私立約9割となっている。
・ 私立では、「入学式、卒業式、始業式、終業式等の儀式的行事」、「運動会、体育会等の健康安全・体育的行事」の割合も約7割と高い。
・ 公立について類型別に見ると、儀式的行事、学芸的行事、体育的行事ともに併設型では約9割と高いが、連携型では、学芸的行事が約5割で最も高くなっている。

(5)中学校、高等学校の生徒が合同で行う活動 (データ編 P43参照)
・ 国公私立平均すると、部活動を実施する割合が約8割と最も高く、次いで、生徒会活動が約5割となっている。

(6)内進生と外進生に関するクラス編成 (データ編 P44参照)
・ 公立では、約5割が「3年間を通じて内進生と外進生を混合してクラス編成している」
・  私立では、「3年間を通じて内進生と外進生を分けてクラス編成している」、「併設型中学校以外からの入学者は受け入れていない」の合計が約5割となっている。

(7)内進生と外進生の授業の進め方 (データ編 P45参照)
・ 公立では、「教科・科目によっては進度別に分けて授業を行っている」とする学校の割合が最も多く約5割となっている。
・ 私立では、「進度別に分けてクラス編成を行っている」、「教科・科目によっては、進度別に分けて授業を行っている」学校がそれぞれ約4割となっている。

4.入学者選抜の状況

(1)実施している項目 (データ編 P47~49参照)
・ 国公立では、8割以上の学校が、「面接」、「小学校からの調査書・推薦書」、「適性検査」における選抜を実施している。
・ 公立では、約7割の学校が「作文」を実施している。
・ 公立では、約8割の学校が「適性検査」を実施しており、類型別に見ると、中等教育学校では67%、併設型では87%となっている。
・ 私立では、ほぼすべての学校において「学力検査」を実施している。
・ 「抽選」を行っているのは公立のみ。
・ 「実技検査」は国公私立いずれにおいても実施している学校の割合は低い。

(2)簡易な入学者選抜について実施している項目 (データ編 P50参照)
・ ほぼすべての学校で「面接」を実施しているほか、「レポート」、「調査書」による選抜を実施している学校は、それぞれ約5割となっている。

(3)過去5年間の平均倍率の推移 (データ編 P51、52参照)
<中等教育学校(前期課程)、中学校における入学者選抜>
1 国立
・中等教育学校(前期課程)では、7.7倍~8.8倍で推移している。
・併設型では、6.6倍~7.7倍で推移している。
2 公立
・中等教育学校(前期課程)では、3.5倍~4.5倍で推移している。
・併設型では、4.1倍~5.1倍で推移している。
3 私立
・中等教育学校(前期課程)では、4.1倍~5.4倍で推移している。
・併設型では、2.8倍~3.4倍で推移している。
・連携型では、1.2倍~1.9倍で推移している。

<中等教育学校(後期課程)、高等学校における入学者選抜>
1 国立
・併設型では、1.8倍~2.0倍で推移している。
2 公立
・併設型では、1.2倍~1.4倍で推移している。
・連携型では、0.8倍~0.9倍で推移している。
3 私立
・併設型では、3.1倍~3.5倍で推移している。
・連携型では、8.1倍~8.9倍で推移している。

(4)中等教育学校(前期課程)・併設型中学校(公私立)における入試倍率の分布(平成22年度) (データ編 P53参照)
1 中等教育学校(前期課程)
・公立では、1~2倍の学校が最も多い。
・私立では、2~3倍の学校が最も多い。
2 併設型中学校
・公立では、2~3倍の学校が最も多い。
・私立では、1~2倍の学校が最も多い。

(5)併設型・連携型高等学校(公私立)における入試倍率の分布(平成22年度)(データ編 P54参照)
・併設型の公立では、1.0~1.1倍の学校が最も多い。
・併設型の私立では、2.0~3.0倍の学校が最も多い。
・連携型の公立では、1倍を下回る学校が多い。

(6)平成21年度末における中等教育学校前期課程修了者、併設型・連携型中学校卒業生の高等学校への進学状況 (データ編 P55参照)
・ 国私立ではほとんどの者が自校進級(中等教育学校)・併設型・連携型高等学校に進学しているが、公立では約3割の者が他の高等学校・高等専門学校に進学している。(ただし、その多くは連携型である。)

(7)「他の高等学校・高等専門学校に進学」の区分に該当がある場合の具体的な進学先(データ編 P56参照)
・ 「他の高等学校・高等専門学校に進学」している者の具体的な進学先は、ほぼすべて他の高等学校となっている。

(8)「他の高等学校・高等専門学校に進学」した場合に学校がとった対応例(データ編 P57参照)
・ 本人の進路希望を踏まえた上で保護者を交えた面談を行い、他校への進学意思を確認
・ 希望する進学先の概要・特色を説明した上で、本人・保護者の意思を確認
・ その他(転居等)

5.教育委員会からの回答

(1)中高一貫教育校の設置理由 (データ編 P59参照)
・ 都道府県では、「生徒・保護者の選択肢の拡大」を理由とする教育委員会が約8割と最も多く、次いで、「中等教育の多様化・複線化」を理由とする教育委員会が約7割となっている。
・ 指定都市では、すべての学校が「生徒・保護者の選択肢の拡大」を理由としており、「中等教育の多様化・複線化」を理由とする教育委員会が約9割となっている。
・ 指定都市以外の市町村では、「教育水準の向上」を理由とする教育委員会が約9割となっており、次いで、「生徒・保護者の要望に応える」を理由とする教育委員会が約8割となっている。

(2)中高一貫教育校を設置したことの成果 (データ編 P60参照)
1 都道府県
・ 「中等教育の多様化・複線化」、「生徒・保護者の選択肢の拡大」については、それを設置理由として挙げた教育委員会数と同数で成果があったとしている。
・ 「教育水準の向上」、「公立学校の活性化」、「地域の特色を生かした教育の実施」、「生徒・保護者の満足度が向上した」については、それを設置理由として挙げた教育委員会数と同数以上で成果があったとしている。
・ 一方、「高等学校の再編統合が進んだ」ことを成果とする教育委員会数は、それを設置理由とした教育委員会数よりも減少している。

2 指定都市
・ 「中等教育の多様化・複線化」、「生徒・保護者の選択肢の拡大」については、それを設置理由として挙げた教育委員会数と同数で成果が上がったとしている。
・ その他項目では、「生徒・保護者の満足度が向上した」を除き、それを設置理由とした教育委員会数よりも成果があったとする教育委員会数が減少している。

3 指定都市以外の市町村
・ 「生徒・保護者の選択肢の拡大」について、それを設置理由とした教育委員会数を大幅に上回る教育委員会で成果があったとしている。
・ 一方、「中等教育の多様化・複線化」、「教育水準の向上」を成果とする教育委員会数は、それを設置理由とした教育委員会数よりも減少している。

(3)中高一貫教育校を設置したことに伴う課題 (データ編 P61参照)
・ 「高校入試がない(または簡便な入試)ため学習意欲等の面で課題がある」を課題とする教育委員会は約5割、「生徒間の学力差」を課題とする教育委員会は約6割となっている。
・ 「中高間の連携に課題」を課題とする教育委員会は約4割、「教員の負担増」、「男女比率のバランス」を課題とする教育委員会は約3割となっている。
・ 「近隣の公立中学校・高等学校への影響」、「生徒の人間関係の固定化」を課題とする教育委員会は約2割となっている。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

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