特別支援教育の在り方に関する特別委員会(第11回) 議事録

1.日時

平成23年8月19日(金曜日)9時30分~12時30分

2.場所

三田共用会議所 講堂

3.議題

  1. 早期からの教育相談・支援について
  2. 就学先決定の際の意見が一致しない場合の調整の仕組みについて
  3. 教職員の確保及び専門性向上のための方策について

4.議事録

【宮﨑委員長】 それでは定刻となりましたので、ただいまから第11回中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育の在り方に関する特別委員会を開催いたします。
 本日は御多用の中、また大変蒸し暑い中、御出席を賜りましてありがとうございます。
 まず、本委員会の委員として新たに着任をされた皆様について、御紹介をいたします。まず、久保委員でいらっしゃいます。

【久保委員】 全日本手をつなぐ育成会の久保と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

【宮﨑委員長】 どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、露木委員でいらっしゃいます。

【露木委員】 全国連合小学校長会の方から参りました露木です。どうぞよろしくお願いいたします。

【宮﨑委員長】 なお、本日は欠席されておりますが、大江委員が新たな委員として着任をされております。どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、本日の委員の出欠状況ですが、安彦委員、大江委員、太田委員、岡上委員、乙武委員、木舩委員、品川委員、中村委員、杉山委員が御欠席、そのほかの委員の方々は御出席です。
 なお、いつも申しておりますが、本委員会においては、発言される場合には必ず挙手をした上で、お名前を述べてから御発言をいただきますようにお願いいたします。
 また、通訳の方のために御発言の際には、ゆっくり御発言いただくようにお願いいたします。
 それでは議事に入ります。本日は3つの審議を予定しています。1つ目が、「早期からの教育相談・支援について」です。2つ目が、「就学先決定の際の意見が一致しない場合の調整の仕組みについて」です。3つ目が、「教職員の確保及び専門性の向上のための方策について」の3点について御審議をいただきたく思っております。
 なお、1つ目の審議である「早期からの教育相談・支援について」は、東京都三鷹市、滋賀県湖南市、岡山県笠岡市より御意見を伺う予定となっておりますので、どうぞよろしくお願いします。
 それでは、まず配付資料について事務局から御説明をお願いします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。まず、配付資料ですが、資料は議事次第のとおり、資料1から資料11までです。枝番がついておりますものは、資料1が1から4まで、資料2が1から2まで、資料7が1から3まで、資料8が1から2までとなっております。参考資料は1、2の2点になっております。不足がありましたら、随時事務局までお申し付けください。
 まず、前回の特別委員会でお決めいただいたように、資料1-1のとおりワーキンググループが設置されまして、7月8日に第1回が開催されたところです。資料1-2がワーキンググループの委員名簿となっております。資料1-3のとおりワーキンググループにおいては、まず障害種ごとに必要とされる配慮について、障害者本人、又は保護者からヒアリングを行っていただきました。それらを踏まえて、障害種ごとの配慮事項について整理いただき、ワーキンググループで障害種を超えた横断的な配慮事項について審議、検討を行っていただくこととなっております。
 スケジュールとしましては、特別委員会として今年中に合理的配慮等の環境整備について整理を行うこととなっておりますので、それに合わせて審議を行うということになっています。
 資料1-4が、ワーキンググループでヒアリングを行っている内容ですけれども、対象者としましては(1)の「視覚障害」から始まって、(10)の「重複障害」まで、ヒアリング項目につきましては、(1)の「子どもの成長のために学校教育に期待すること」から、(2)以降が各種配慮事項についてお聞きするということで、昨日までに第3回のワーキンググループまでが開かれまして、ヒアリングが一通り終わったところです。
 続きまして、資料2-1を御覧ください。現在、開会中の通常国会で障害者の方々に深く関係する法律が幾つか成立していますので、御紹介します。
 資料2-1は、まず障害者基本法の一部を改正する法律です。この法律については、内閣提出法案として提出されたところまで前回の特別委員会で報告させていただいたところですが、その後、衆議院の審議の際に一部修正されて成立しています。本年8月5日に一部を除いて施行されています。
 資料2-2に新旧対照表、衆議院、参議院における附帯決議、衆議院、参議院における議事録をつけておりますので、あわせて御参照いただければと思いますが、資料2-1の真ん中から下のところに改正法案の概要、資料2-2では8ページになりますが、改正の内容、教育部分をつけております。
 まず、16条の1項に当たる部分ですけれども、障害者がその年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるように配慮しつつ、必要な施策を講じなければならないとなっています。
 次に、(2)のところです。ここは、衆議院で修正された部分ですが、第2項として、第1項の目的を達成するために十分な情報提供を行うとともに、可能な限り、その意向を尊重しなければならないとされています。
 (3)のところは、特別支援学校や特別支援学級において教育を受けている場合に、交流及び共同学習を通じ相互理解を促進する施策を講ずるとしています。
 (4)のところですが、1項、2項、3項を実現する上で必要なものとして、調査研究、人材の確保、資質向上、適切な教材等の提供、施設整備その他の環境整備を促進することを規定しています。衆議院での修正により、この4項の部分では「適切な教材等の提供」という文言が追加されました。このような状況も踏まえながら、文部科学省としまして、今後、就学先の決定の仕組みについて検討することとしています。
 続きまして、資料3を御覧ください。障害者虐待の防止、障害者の擁護者に対する支援等に関する法律が議員立法として国会に提出され、可決成立しています。内容としましては、障害者虐待について、擁護者によるもの、障害者福祉施設従事者等によるもの、使用者によるものがそれぞれ定義されています。
 また、学校につきましては、障害者虐待の早期発見、啓発活動や障害者虐待を受けた障害者の保護及び自立のための国等の施策に協力するよう進めなければならない旨、また学校の長について研修の実施及び普及啓発、相談体制の整備、就学する障害者に対する虐待に対処するための措置、その他必要な措置を講ずるものとする旨がそれぞれ規定されています。施行は、平成24年10月となっています。
 続きまして、資料4を御覧ください。社会福祉法及び介護福祉法の一部を改正する法律が内閣提出法案として提出され、成立しています。これまで、たんの吸引や経管栄養は医行為としまして、医師・看護師等の免許を持つもの以外が反復継続する意思を持って行うことが禁止されていました。そのため特別支援学校の教員については、これまで一定の条件の下に、たんの吸引等を行うことは違法性阻却の形でやむを得ないとされてきたところですが、このたびの法改正で、一定の研修を受けた者が一定の条件の下にたんの吸引等を実施することができるよう制度化することとしています。施行は平成24年4月となっています。
 続きまして、1つ目の議題である早期からの教育相談支援について、関係資料を説明いたします。
 まず、この基礎資料集、緑のファイルの6の耳のところを御覧ください。昨年の12月におまとめいただいた論点整理ですが、そちらの9ページを御覧いただきますと、就学相談、就学先の在り方についてのポイントのところですが、まず一人一人の教育的ニーズに応じた支援を保障する就学先を決定するため、また本人・保護者、学校、教育委員会が円滑に合意形成を図るため、医療や福祉の関係部局との連携を図りながら、障害のある子どもの教育相談・支援を乳幼児期を含め早期から行うことが必要と整理いただいているところです。
 10ページを御覧ください。10ページには、(1)「早期からの教育相談・支援」としまして、1点目、乳幼児期を含め早期から教育相談、就学相談を行うことにより、本人・保護者に十分情報を提供し、本人・保護者と学校、市町村、教育委員会が教育的ニーズと必要な支援について合意形成を図りながら決定していくことが必要と整理いただいています。
 それから、2点目ですけれども、乳幼児期から幼児期にかけて子どもが専門的な教育が受けられるような体制を医療・福祉・教育の連携の下に早急に確立することが必要と整理いただいています。
 3点目として、市町村教育委員会は、医療や福祉等の関係部局との連携や地域との連携を十分に図り、例えば乳幼児健診の結果を必要に応じ共有し、必要な支援を行うことが必要と整理いただいています。
 次に、資料5を御覧ください。資料5は、就学手続における市町村教育委員会及び都道府県教育委員会の取組について整理したものです。関連した取組例は、特別委員会の第2回の各県から御説明いただいた資料を、改めて事務局で整理したものです。
 まず、1の(1)としまして、市町村教育委員会の法令に基づく役割ですが、小・中学校の設置義務、学齢簿の作成等、就学手続全般となっています。
 次に少し飛んで、2の(1)ですが、都道府県教育委員会の法令に基づく役割としまして、特別支援学校の設置義務、就学に係る事務に関する指導・助言、就学手続の一部を担うということになっています。市町村教育委員会の取組例としましては、1の(2)に幾つかの県に同じものを挙げていただいているので、まとめて説明しますと、学校見学、体験入学、相談情報提供を設けている、それから就学指導委員会で毎年フォローアップしている、支援体制の一元化を図っている、それから個別の支援手帳等の活用により支援をつなぐ仕組みをつくっているといった例があります。
 都道府県教育委員会の取組例としましては、2の(2)ですが、特別支援学校の見学、体験入学、就学相談、市町村教育委員会の相談支援、特別支援学校を就学先とした場合の決定、それから判断と異なる措置となった児童生徒の実態調査、市町村就学相談委員会の専門性向上のための研修会、研究協議会の実施といった取組例があります。
 資料5の2ページ以降は、各県に出していただいた資料を整理させていただいたものですので、御参照いただければと思います。
 続きまして、資料6を御覧ください。本日のヒアリングはこのような日程で行うこととなっています。まずは、三鷹市の取組について、清原委員より御発表いただくことになっています。次に、湖南市の取組について、湖南市の松浦発達支援室長より御発表いただきます。その次に、笠岡市の取組について、笠岡市の岡田学校教育課長より御発表いただくことになっています。それぞれ15分ずつ御発表いただき、最後にまとめて質疑応答を20分程度とらせていただく予定になっています。
 以上で説明を終わります。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの事務局の資料1から資料6に関するものについて、6については、これから御発表いただく資料ですが、まず5までのことで何か御質問がございましたら、お願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは、私から1点だけつけ加えさせていただきますが、資料1に関する件です。合理的配慮等の環境整備検討ワーキンググループの設置をさせていただいて、委員につきましては、委員長の指名ということで設置をさせていただいたことを、まず御了承いただきたいと思っています。
 先ほど御説明がありましたように、既にヒアリングが終わって、これからいよいよワーキンググループの具体的な作業が始まると。そのことに関しては本委員会で、また逐次御報告をいただくことになっていますので、この件もどうぞよろしくお願いをいたします。
 それでは、これから早期からの教育相談・支援の方策について、三鷹市、湖南市、笠岡市の順で15分程度ぐらいずつ御説明をいただきたいと思います。お三方の説明の後に質疑に入りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
 それでは、三鷹市につきまして、清原委員より資料を提出していただいていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【清原委員】 ありがとうございます。三鷹市長の清原慶子です。本日は、三鷹市教育委員会学務課副主幹であり、総合教育相談室長の田中容子と一緒に来ています。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、まず資料7-1及び参考資料を参照していただきまして、これからの報告を聞いていただければと思います。
 資料7-1に記載しておりませんが、まず三鷹市の概要について御紹介しますと、三鷹市は昭和25年、1950年、三鷹町から三鷹市になりました。市政施行61年目を迎えています。面積は16.5平方キロメートル、人口は約18万人、世帯数は約8万9000でございまして、地方交付税の不交付団体です。私は、平成15年4月30日から市長を務めています。
 それでは、「教育と福祉の連携による障害の早期発見、早期療育と学校教育へのスムーズな引き継ぎ」につきまして、三鷹市の事例から報告をさせていただきます。
 1点目に、三鷹市における教育支援の位置づけについてお話をいたします。図1を御参照ください。三鷹市は、平成13年に現行の基本構想を策定し、「平和の希求・人権の尊重・自治の実現」という理念の実現を目指して、市民参加と協働のまちづくりの市政を進めています。
 また、三鷹市は、健康福祉施策については、『第3次三鷹市基本計画』及び『三鷹市健康・福祉総合計画2010』により進めています。さらに、地域を基盤とした子育て支援、母子保健等については、『三鷹市次世代育成支援行動計画2010』や『三鷹市子育て支援ビジョン』に基づいて進めています。平成23年度は『第4次三鷹市基本計画』策定に取り組んでおりまして、これらの個別計画についても改定作業を行っています。三鷹市では、これらの計画の中で、すべての子育て家庭への支援、母と子の健康づくり、家庭、学校、地域の教育力向上、安心して子育てができる生活環境、支援が必要な子どもと家庭への取組を推進してまいりました。
 一方、教育施策としては、平成18年4月1日から施行しています『三鷹市自治基本条例』の第33条で、「学校と地域との連携協力」を定めています。これは私が市長になりましてから定めた内容ですが、第33条は次のように書いています。「教育委員会は、地域と連携協力し、保護者、地域住民等の学校運営への参加を積極的に進めることにより、地域の力を活かし、創意工夫と特色ある学校づくりを行うものとする」。第33条2項には、「教育委員会は、地域及び市長と連携協力し、学校を核としたコミュニティづくりを進めるものとする」とあります。このように三鷹市では、保護者、地域住民等の学校運営への参加を進めることにより、地域の力を生かし、創意工夫と特色ある学校づくりを目指した「コミュニティ・スクールを基盤とした小・中一貫教育」に取り組んでいます。
 さらに、平成19年度の国の『特別支援教育施策の指針』に合わせ、三鷹市では特別支援教育の推進計画として『三鷹市教育支援プラン』を策定しています。この教育支援プランは、これまでの健康福祉や子育て支援の施策と三鷹市教育ビジョンの考え方に基づくものです。したがいまして、障害の「害」の文字、これは漢字の「害」を平仮名の「がい」として「障がい」と表記しておりまして、一人一人のニーズに応じた支援は決して特別なものではないという考え方から、三鷹市では特別支援教育を単に「教育支援」と、このように呼んで取組を進めています。
 そこで、2点目ですが、三鷹市における自立を目指した教育支援の実際について報告をいたします。
 1点目に、「ライフステージを見通した教育支援」についてです。図2を御覧ください。
 三鷹市では、地域で生まれた子どもたちが、それぞれ一人一人のニーズに応じた適切な支援や教育を受けて育ち、やがては地域に根付いて生活や就労を継続していくという『国連障害者権利条約』の理念とも共通する、いわゆる「インクルーシブな地域社会」を目指しています。
 そこで、まずは総合保健センターの乳幼児健康診査で、発達の遅れなどの課題が発見された場合には、総合保健センターでフォローするほか、障害児、障害者の福祉センターであります北野ハピネスセンターでの相談へとつないでいます。就学前は、総合保健センターと北野ハピネスセンターで相談や療育を行いながら、幼稚園や保育園などでの生活を支援しています。障害のある子の就学については、保護者からの申込みによる就学相談と保護者の同意を得た上での就学支援委員会での判断を行っています。
 また、就学相談を希望しない幼児でも、就学に当たって心配な場合には、平成19年度から就学支援シートを保護者と幼稚園、あるいは保育園とで作成し、教育委員会を通じて学校へ提出し、園で行っていた支援を学校でも継続できるようにしています。
 義務教育段階は、三鷹市立の小・中学校の通常の学級か、固定制の教育支援学級、もしくは都立の特別支援学校での学校生活を送ることになります。三鷹市を離れて都立の特別支援学校に通う児童生徒については、東京都教育委員会が行っている副籍事業の下に、それぞれの児童生徒が居住する地域の指定校である三鷹市立の小・中学校の行事や授業に参加したり、学校便りを受け取ったりという交流を積極的に行っています。
 義務教育修了後は、学校教育の継続や就労など、それぞれの状況に合わせた進路を選択しながら地域での生活を送れるよう支援をしています。
 そこで2点目に、市長部局であります健康福祉部における早期発見と早期療育について報告します。図3を御覧ください。
 健康福祉部健康推進課(総合保健センター)では、妊娠、出産、育児に関する親の不安の軽減を図り、安心して育児ができ、子どものすこやかな成長を育むために様々な母子保健サービスを実施しています。
 乳幼児健康診査においては、健診を実施するだけでなく、保護者の相談の場としてもとらえています。保護者の子育てに関する不安の軽減や療育支援が必要な子どもの早期発見や個別相談、親子で参加する経過観察心理グループなどの早期対応を実施しています。また、子育てについて不安な保護者には、保健師による相談や、親グループなどで継続的に支援しています。乳幼児健診を受けない未受診者については、何らかの支援が必要であるのに、保護者からSOSを発信しにくい事情があることも多いため、私が市長になりましてから、「産後うつ」を発見するためのアンケートを実施するなどにより、その把握に努めています。保護者ができる限り地域で孤立するようなことがないよう働きかけています。
 また、医療機関、都の保健所や児童相談所、三鷹市の子ども家庭支援センターとの連携による支援をしています。
 図4を御覧ください。北野パピネスセンターでは、幼児部門で早期発見、早期療育を行っています。発達に課題のある子及び障害のある子の保護者からの相談対応や対象児への専門療育等を提供しています。
 このような療育や支援が必要な対象児は、総合保健センターや地域の小児科医等から紹介を受けるほか、幼稚園や保育園の勧めで保護者が相談に訪れることもあります。幼児部門には、くるみ幼稚園という2歳から5歳を対象とした通園部門がありまして、地域の幼稚園や保育園の統合保育を目指して、専門療育を行っています。外来部門では、個別又は集団での専門療育を行っており、さらに専門療法士とスタッフによる巡回発達相談では、直接市内の幼稚園や保育園に出向いています。園にいる療育が必要な子どもへの適切な対応法等の助言指導を幼稚園教諭や保育士に対して出前で行っています。
 学校教育への引き継ぎという点においては、北野ハピネスセンターでは、相談・療育を学校教育段階に引き継ぎまして、スムーズな就学への移行が可能となるように就学支援シートを渡すことはもちろんのこと、それまでの療育経過と内容を記述した療育のまとめとを保護者に提供しています。
 また、北野ハピネスセンターの幼児部門の代表や小児神経科医師が、教育委員会で行っている就学支援委員会に参加しています。
 3点目に、三鷹市の教育施策について御紹介します。三鷹市は、先ほど申し上げましたように、三鷹市教育ビジョンの下にコミュニティ・スクールを基盤とする小・中一貫教育を行っています。学校自由選択制は行っていません。7つの中学校を中心とした、小学校2校から3校と中学校1校からなる学園の中で、質の高い教育をどの学校においても保証し、9年間の義務教育に責任を持つものです。
 三鷹市では、これらのすべての学園の中に、固定制か通級制の教育支援学級のいずれかを設置しています。
 それでは、改めまして三鷹市の『教育支援プラン』について御報告をいたします。図7を御参照ください。
 平成19年度に三鷹市の特別支援教育推進計画として策定したのが、『教育支援プラン』です。これは「障がいのある子もない子も、学校、家庭、地域の力を得て、次の時代を担う人として育っていくことを支援するためのプラン」です。
 プランは4つの推進の柱から成り立っています。簡潔に申し上げます。1番目は、「一人ひとりの教育的ニーズに応える教育支援」で、学校においては個別指導計画、個別の教育支援計画の作成活用や学校長のリーダーシップ、また教員に対する研修の継続などを挙げています。特に、個別指導計画は各校の教育支援コーディネーターの研修を強化することにより、すべての学校で取り組んでいます。特に小学校1年生の個別指導計画は、就学支援シートが提出された児童については、これを利用して作成を行っています。
 時間の関係で資料7の一部を省略して読ませていただきますが、重要なのは、専門の就学相談員が幼稚園、保育園、ハピネスセンターの通園部門等に出向いて行動観察を丁寧に行い、専門医や都立特別支援学校の担当者も加わる就学支援委員会において判断を行っているという点です。
 さて、2番目は「小・中一貫教育校で推進する教育支援」です。おかげさまで、今年の3月までで7つの中学校区、すなわち7つの小・中一貫教育の学園で、すべて、いわゆる通級、あるいは固定制の教育支援学級の整備が終わりました。私は、義務教育9年間だけではなく、幼稚園や保育園の支援等の引き継ぎや義務教育修了後のさらなる継続が重要だと認識しています。特に、教育委員会から学校に派遣するカウンセラーや教育支援員の役割を果たす学習指導員や巡回発達相談員を、一つの学園内の小・中学校にはそれぞれ同一の者を派遣することにより、引き継ぎを更に望ましいものにしています。これを学童保育や、あるいはその他の場面でも展開をしています。
 教育支援プランの大きな3番目の柱は、「総合教育相談室が行う教育支援」です。今日も総合教育相談室長の田中と一緒に来ていますが、三鷹市では、この総合教育相談室は極めて重要な役割を果たしていると私は位置づけています。実は、開設前に担当者が、今日報告予定の湖南市の発達教員システムについて学ばせていただきました。大変感謝しております。タイプは少し異なるのですが、湖南市の取組を反映させていただき、教育委員会の中に総合教育相談室を設置しておりますが、市長部局との連携を豊かにすることによって、仮に保護者が就学時に教育支援委員会の判断とは異なる就学先を選んだとしても、継続的に相談していただくケースが増えておりまして、まさに保護者に寄り添う、あるいは子どもたちに寄り添う取組を、この総合教育相談室ができていることを誇りとしているところです。
 私たちとしては、あまり相談の希望を持たない家庭への支援が重要だと考えておりまして、学校と連携しながら家庭への支援を行うスクールソーシャルワーカーを中心に、市で小学校に配置しているスクールカウンセラーにも活躍してもらいながら支援を行っております。
 なお、昨年の4月1日に「子ども政策部」を開設しました。この子ども政策部が児童相談所と連携して、虐待等の要保護児童対策事業である子ども家庭支援ネットワーク事業を市すでに全国に先駆けて行っておりますので、障害のある子どもが虐待の被害に遭わないように教職員の研修を行うほか、個別のケースについての助言を行う中で、丁寧に個別の支援の引き継ぎや連携も行っているところです。
 教育支援プランの4番目の柱は、「教育支援プラン達成の把握と課題の検討」です。三鷹市では、学校管理職、教員、学識経験者、保護者、健康福祉部、子ども政策部等も含めた委員による教育支援推進委員会で謙虚に検証作業を行っていただいております。
 最後に、三鷹市の事例からの問題提起として、実は幾つもありますが、時間の関係で2つに絞らせて説明させていただきます。
 1点目は、「担当者同士の信頼関係の構築の重要性」です。三鷹市では、もともと健康福祉部の乳幼児健診から就学前の療育、相談の連携という実践がありました。それに加えて、子ども政策部の行う子ども家庭支援ネットワークを中心とした事業や、幼稚園と保育園と小学校の連携を図る、いわゆる「幼・保・小連携事業」の実践など、教育委員会教育部と市長部局の健康福祉部及び子ども政策部の連携による子どもの発達支援や子育て支援の施策が行われてきています。このことは、子どもの立場に立った継続的な支援というだけではなく、支援の担い手が多層的であるということです。個別的な支援を子ども本位に継続する上では、複数の部署でそれぞれのキーパーソンが役割分担をすることによる「多層的な支援」を生かすことが重要となっています。その中で、先ほども申し上げました教育部の総合教育相談室の機能が重要になっています。連携のキーパーソンとなる職員として、市の教育支援コーディネーター、統括指導主事、複数の事務局員を配置したことにより、教育と福祉が互いに顔の見える連携を実現していますが、こうした支援の担当者同士の信頼関係の構築が、まずは重要であるということを改めて確認したいと思います。
 2点目は、「子ども本位の連携のための情報共有の必要性と個人情報保護の兼ね合い」です。三鷹市では、個別指導計画や就学支援シートの管理等の手続については、三鷹市個人情報保護委員会に報告し、了承を得ており、日常的に個人情報の管理を徹底しています。子ども本位の適切な支援をしていくためには、複数の部門が有効に連携することが必要であり、個人情報を守りつつも、支援や指導に必要な情報について共有の範囲を明確に定め、その都度、対応していくという慎重な体制が求められます。
 支援会議においては、それぞれの部署や機関が、それぞれの専門性を生かしつつ、個々のケースの実態把握、支援の目的や内容、期間の設定を具体的、かつ明確に行っていく過程が重要です。ただ関係者が集まれば連携が生まれるわけではありません。子ども本位の連携のための適切な情報共有が必要であり、個人情報保護との兼ね合いが現場の課題でもあります。
 多少時間が超過してしまいましたが、三鷹市の事例から、あえて市長が報告をさせていただきましたのは、市長部局と教育委員会が、ともに子ども本位の取組をすることが重要不可欠であり、市長もまた様々な現場にいることで、各部門の連携ができると認識しておりまして、これまでの取組について市長から報告をさせていただきました。
 後の御質問には、総合教育相談支援室長にも対応してもらいます。御静聴ありがとうございました。

【宮﨑委員長】 どうもありがとうございました。
 続きまして、湖南市健康福祉部社会福祉課発達支援室の松浦室長より御説明をお願いいたします。

【湖南市】 皆さんこんにちは。滋賀県湖南市健康福祉部社会福祉課発達支援室長の松浦加代子です。どうぞよろしくお願いします。
 今日は、湖南市発達支援システムを機能させる中で、早期発見、早期発達支援に取り組んできた内容と、そこから新たに見えてきた課題、また、その解決に向けた方策について御報告をさせていただきます。
 私どもの思いや方法をうまくお伝えできるかどうか心配をしておりますが、こうした機会を与えていただいたことで、今後の取組を考える契機にできればと思っております。
 資料につきましては、7-2と、この8月に発行しましたハンドブックを御覧いただきたいと思います。
 湖南市では、公立、私立を問わず、市内すべての校園が、これからお話しする発達支援システムに組み込まれておりまして、教育、福祉、保健、就労、医療といった各関係機関の横の連携による支援と個別の指導計画による縦の連携とを機能的に関連させながら特別支援教育を進めております。
 湖南市は、人口5万5000人、毎年の出生数がおよそ550人、東海道五十三次の宿場町もある一方で、大阪の中心部までおよそ1時間半で通えるベッドタウンとして発展してきました。その出生数のおよそ10%が2歳児の時点で新規相談を受けています。そこから就学までをどのようにつないできたかについても報告いたします。
 発達支援システムの横の連携について、教育を例にとって御説明します。湖南市の場合、保育園を管轄するのは健康福祉部子育て支援課で、幼稚園、小学校、中学校を管轄するのは教育委員会学校教育課です。また、義務教育を終了した人や特別支援学校に在籍する児童生徒については、市の教育委員会が直接関わりを持つ必要はありませんが、成長していく一人の児童生徒の支援を考えますと、支援の継続という点で関係機関の連携は欠かすことはできません。それを地域として支えていこうとするのが、私の所属する発達支援室です。
 次に、縦の連携のかなめであり、校園における支援によりどころとなる個別の指導計画についてお話しします。湖南市において個別の指導計画は、早期発見、早期対応の重要性を確かめ合い、保育園、幼稚園、小・中学校が校園間で引き継ぎ、幼児、児童生徒への適切な支援を継続して行うために、なくてはならないものになっています。
 また、一昨年度からは、中学校から次の進路先への引き継ぎが充実したものになるよう、個別支援移行計画の作成に取り組んでいます。個別支援移行計画につきましては、ハンドブック48、49ページを御覧ください。この個別支援移行計画の特に大切にしている点は、本人の参画ということです。本人が得意なところ、好きなこと、苦手なこと、そういったことを本人と支援者がともに作成をしているということです。発達支援室は、こうした縦のつながりにおいても個々の情報や支援の在り方を統括するようになっています。
 次は、どのような場面で、どのように発達支援システムを活用しているかについてです。発達支援システムの活用によって考えられることは、乳幼児健診とその後のフォローを確実に実施するということです。また、療育教室やことばの教室幼児部において早期発達支援を行うことです。保育園、幼稚園、小・中学校で個別に子どもの見立てをするとともに、集団の中での支援の方向を明らかにし、取り組んでいます。また、校園間での引き継ぎにとどまらず、学年間での引き継ぎにも丁寧に取り組んでいます。
 これらの取組を高等学校とその後の進路先につないでいくことに努力をしています。高等学校等の進路先との連携や個別の相談は、発達支援室が担っています。これらの支援の継続が、その後の就労支援にまでつながるようになってきました。このように、発達支援システムを有効に活用していくためには、乳幼児健診や保護者、保育園、幼稚園、小学校、中学校での気づきと、相談機関へどうつなぐかがポイントになります。保育園、幼稚園が活用できる発達相談、巡回相談につきましては、ハンドブックの10ページを、小・中学校が活用できる巡回相談につきましては、ハンドブックの13ページを御覧ください。これらの相談の窓口は、すべて特別支援教育コーディネーターが担っています。園では、副園長先生にコーディネーターになっていただくようお願いしており、小・中学校には複数のコーディネーターを置くようにしています。
 どの相談についても言えることですが、校園ごとに回数や時期をあらかじめ振り分けていては、ニーズに合った相談、実効性のある相談にすることが難しいと考えています。そのため本市では、要請に応じてタイムリーに実施する方法をとるようにし、支援や指導の在り方の相談、心理検査の実施、事例検討、職員や保護者の研修会など、校園の実情に合わせて実施しています。
 また、市内にある滋賀県立三雲養護学校は、検査や相談以外にも見学や体験、専門的な情報の提供など、様々な教育相談に御協力くださっており、システムの厚みを増す、なくてはならない存在として、特別支援学校のセンター的機能を担っていただいています。
 相談が終わると、調整会議での決定を経て、各機関につなぎますが、その対応は一様に決まっているわけではありません。各機関でのそれぞれの特質を生かした対応を心がけております。運用の具体はケースによって異なります。これらの経路は、すべて保護者の了解が必要です。保護者の了解の下、必要な情報を関係機関でやりとりしています。
 ハンドブックの12ページを御覧ください。では、発達支援システムを活用した小・中学校における特別支援教育の進め方について説明します。
 1点目は、先ほど述べました巡回相談の活用です。授業参観で得た情報やアドバイスを基に授業を組み立てたり、個別のケースについても見立てを改めるなど、集団の中での支援を意識して取り組んでいます。
 2点目は、教育委員会が発行、編集する「特別支援教育ハンドブック」を基に、コーディネーターの役割を確認したり、学習環境についてのチェックリストを作成するなど、特別支援教育の推進について共通理解を図っています。
 3点目は、不登校や学校への行き渋りについても巡回相談を活用し、早期対応を進めていることです。こうした子どもたちの困り感を明確にすることは、特別支援教育の趣旨にかなうことであり、本人のペースに合わせた教室復帰に取り組んでいます。この取組が特別支援教育を普遍的なものにし、不登校児童生徒の減少につながる成果を上げています。
 4点目は、「読み書きチェック湖南市版」の活用です。湖南市ことばの教室で作成し、これを小学1・2年生全員に実施、ことばの教室で結果考察をした上で、読み書きの困難な児童に早期に対応するきっかけにしています。
 5点目は、湖南市内にある保育園、幼稚園、小・中学校が湖南市発達支援ITネットワーク(KIDS)というイントラネットでつながっています。これにより個別ケースの情報集積と情報交換を可能にしています。
 6点目は、学齢期終了後を見据えた就学指導です。
 特別支援教育を推進していくためには、あれもこれもやればいいというわけではありません。これは何のための会議なのかといった開催する会議の目的を明確にする必要があります。例えば、特別支援教育コーディネーター連絡会議では、進捗状況の確認や研修を進め、校園間の連絡体制の充実を図ることを狙いとしています。開催に当たっては、保育園、幼稚園の連絡会議、保育園、幼稚園、小・中学校の連絡会議、小・中学校の連絡会議といったように、狙いによって会議に集まる校園種を設定しています。
 また、専門チーム会議は、各校園の特別支援教育コーディネーター等から示された事例について、障害の判断、医療対応、教育・支援内容等についての検討を行います。
 不登校ネット会議は、学校への行き渋りや不登校についての取組を検討する会議です。この会議と巡回相談連絡会議がリンクしているのですが、これは子どもが行き渋りを見せた時点から巡回相談につないでいくという方針を持ち、巡回相談員でもある通級指導教室担当者と適応指導教室の担当者、発達支援室、学校教育課が情報を共有することによって時間をおかない対応や、個々のケースに見合う方向での支援を考えやすくしています。
 また、支援の方向を考えるには、就学指導委員会での検討も重要です。どのような支援を経て今があるのか、また、これから先、どのような支援が必要であるのかといった視点を持って、園では4歳児の後半から就学を見据えた取組を進めています。特に、就学の際に対人関係の困難さや見通しの持ちにくさから派生する不安の高さに寄り添うには、少人数での指導から始め、交流学級での学習の割合を高め、行く行くは在籍変更をすることが有効です。
 就学の際の審議の資料、これも個別の指導計画をベースに作成しています。ハンドブックの42、43ページ、これが個別の指導計画ですが、これと58、59ページの就学指導への提出資料、こちらを照らし合わせて御覧ください。
 就学指導につきましては、どんな学校か、どんな学級かを先に考えるのではなく、どんな支援が必要で、結果としてどんな学校であり、どんな学級であるのかということを考える過程を大切にしています。こうした早期かつ手厚い対応、例えば発達相談体制の整備、保育園、幼稚園での保護者との丁寧な面談、ことばの教室や療育教室と、保育園、幼稚園との情報交換、ことばの教室や療育教室での保護者との丁寧な面談、発達支援室での就学何でも相談、保育園、幼稚園と小・中学校の情報交換、小学校での参観や面談、県立三雲養護学校での教育相談といったことによって、保護者の納得を得られる就学指導が実現しています。
 それぞれの面談では、園長、校長や、特別支援教育コーディネーターも同席し、保護者にとっては安心感につながっています。
 以前は、夏休みに就学相談会を開催していましたが、就学について考える保護者の負担は大きなものがあり、疑問や不安を感じられたときにタイムリーに相談できる体制こそが保護者の納得につながりやすいものとなっています。その結果、就学指導委員会が保護者に提案する支援の方向性と保護者の意向は、およそ8割方以上、一致した結果となっています。一致しなかったケースにつきましても、継続相談ということで個別の指導計画を作成、実行を続けています。
 湖南市の発達支援システムは、隣の市である甲賀市と厚生労働省が言うところの自立支援協議会に位置づけられる甲賀地域障害児・者サービス調整会議においても連動しています。特に教育の部分では、特別支援教育部会を通じて、圏域全体で情報交換に努め、課題を明らかにすることに取り組んでいます。
 その特別支援教育部会が作成しましたのが、発達支援ファイル「ここあいパスポート」です。「ここあいパスポート」を有効な資料にするために、校園からは保護者の求めに応じて個別の指導計画を提供することになっています。「ここあいパスポート」は、療育手帳等、手帳をお持ちでないけれども、支援を必要とする方に有効です。手帳を持たない方には、どうしても支援をつないでいくことがおろそかになりがちだったからです。そこで、この「ここあいパスポート」が、その解決の一助となるよう、各校園での周知徹底を図っています。
 湖南市では、発達支援システムが機能することによって、早期対応、早期支援が充実してきています。そのことによって、二次障害の防止につながっているものと確信しています。
 また、校園では、保健や福祉サービス、相談支援事業所、専門機関とのつながりを柔軟に持つことができるようになってきました。これらは就労や社会自立をゴールに考えた取組ですが、このような視点を持つようになってきたこと自体が成果であると考えています。
 湖南市では、教育の目指すところは、自分は大切にされているんだと実感できる自尊感情を育むことであると考えております。発達支援システムが縦にも横にもつながっていることも、このことを目指しているからにほかなりません。これからは、このシステムを改善しながら、いかに継続させていくか、また地域課題を圏域で克服しながら個々のケースによりよい手立てをどう提示していくか、まだ道は半ばと考えています。しかし、理解者と実践者を増やし、さらに進めてまいります。
 以上、湖南市の取組をお伝えしました。御静聴ありがとうございました。

【宮﨑委員長】 どうもありがとうございました。
 それでは、最後に笠岡市教育委員会学校教育課岡田課長より御説明をお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

【笠岡市】 これより岡山県笠岡市における特別支援教育の取組について御説明させていただきます。
 まず初めに、笠岡市について簡単に御説明いたします。笠岡市は、岡山県の瀬戸内海に面しておりまして、西側は広島県との県境に近い市です。
 笠岡市教育委員会が管轄しておりますものは、幼稚園が12園、それから小学校18校、中学校10校、そして笠岡市教育委員会学校教育課は、私を含めて学校の教員から事務局職員となったものが5名います。その5名の中で、特別支援教育の専門的な担当は配置されておりません。小学校の担当、中学校の担当を中心に行っております。
 先ほどの2市の取組をお聞かせいただきまして、市全体でシステムが構築されているお話でございましたが、これから私が報告をさせていただきますものは、学校教育課として、いろいろな学校現場における、又は幼稚園における課題等を踏まえながらつくり上げてきた、まだまだ途中というふうになっております。
 まず、1に書いてありますように、笠岡市教育委員会として、どのような取組をしてまいりましたかについて簡単に御説明します。
 平成19年度に国の動向を踏まえながら、4ページに示しております笠岡市特別支援教育推進体制というものを策定しました。この策定に当たりまして、笠岡市には幸いにも県立の特別支援学校、そして知的障害児通園施設、笠岡学園というものがあります。こういうところと協働しながら、この体制づくりを進めてまいりました。そして、平成19年度から文部科学省から指定をいただきまして、発達障害早期総合支援モデル事業に取り組みました。
 この中で取り組んだことは、主に4点です。まず、1点目といたしましては、保育所、保育園、幼稚園、小学校、中学校における特別支援教育の推進。2点目が、コーディネーター等、担当者の効果的な研修。3点目といたしましては、個々のケースに対する関係機関と連携した支援体制。そして、4点目が、幼児期からの一貫した長期的・継続的な連携体制の構築、この4点でございました。
 この平成19年度に御指定をいただきまして取り組む前までには、次の3つの課題がございました。まず、発達障害に係る診断を受けるお子さんが多くなった中で、就学先を決定する段階での幼稚園、保育所、保育園、それから小学校等の説明不足によるトラブル。それから、保護者の方々から相談を受ける体制づくりが、まだ整備されていないこと。そして、3点目といたしましては、教職員の専門性というものでございました。そういう課題を踏まえながら、先ほど申しました4点に取り組んでまいりました。
 こうした取組をする中で、実感として特別な支援を必要とする子どもの早期把握、そして一人一人の教育的ニーズに応じた支援を保障する就学先決定に向けた相談体制を含めた早期支援システムの構築の必要性を痛感しました。
 これまで特別支援教育に係ること以外に、生徒指導上の問題ということで、学校教育課と市長部局の健康福祉部局の子育て支援課は、家庭の問題、それから虐待等で連携をとっておりました。そのことを踏まえて、この後に説明させていただきますシステムを構築することに至った次第です。
 4ページに示しております笠岡市特別支援教育推進体制の中で、主に現在取り組んでいますもの4点を1ページに示しております。1点目は、ケースに対する専門家や関係機関等との連携による支援。今現在、子育て支援課には、相談員を配置しております。それから、笠岡市教育相談室に巡回相談員2名を配置しております。そして、ことばの教室の担当の先生、それから、先ほど申しました知的障害児通園施設である笠岡学園のコーディネーター、そして県立特別支援学校の担当の相談の先生と連携しながら、今、支援体制をとっております。2点目といたしましては、保育所、保育園、幼稚園、学校内における効果的な特別支援教育の推進。そして、3点目といたしましては、幼児期からの一貫した長期的・継続的な連携体制。そして、4点目といたしましては、効果的な教育方法の調査研究・研修体制となっております。
 このような取組を始めて、関係の機関と連携するケースがとても増えております。そういう中で、平成18年度以前に見られました相談時に係る不安感を解消することができなくて、余計不安感を高めてしまうような具体的な苦情等は減ってきております。相談する機会は増えておりますが、そういう苦情が減ってきているということについては、一定の効果があるのかなととらえております。
 続きまして、幼児期からの一貫した体制づくりについて御説明します。
 5ページに、笠岡市4歳児発達支援事業のイメージ図を示しております。あわせて御覧いただけたらと思います。
 平成21年度より教育委員会と健康福祉部局が連携いたしまして、早期からの教育相談・支援、そして円滑な就学指導を目的といたしまして、笠岡市4歳児発達支援事業の取組を開始しました。目的としましては、2点、保育所、保育園、幼稚園において集団での困難さを持つ幼児に対して、担任や所長、園長、先生方を含めた職員との協力した支援。2点目といたしましては、医療、保健、福祉、教育の各関係機関が集団での困難さを抱えている幼児に対して、連携をしながら支援するということを目的として、この事業を進めてまいりました。
 この事業の実施に当たりまして、医師、保健師、コーディネーター、臨床心理士、カウンセラー、指導主事からなる支援チームを編成することとしました。
 6ページに一つの支援チームの例を示しております。この支援チームを構成するに当たりまして、医師会、保健所、児童相談所、知的障害児通園施設、県立特別支援学校等の協力を得て、相談に応じてチームを編成して具体的な対応をしてきております。
 それでは、続きまして具体的な取組について説明をさせていただきます。
 5ページにイメージ図を示しておりますので、あわせて御覧いただけたらと思います。まず最初に、1、保育所、保育園、幼稚園の4歳児、よく年中と言われるのですが、その中で生活状況調査等を保育所、保育園、幼稚園から保護者の方に配付をしていただきまして、記入をいただきます。そして、各お子さんに対しての困難さを把握していきます。それを受けて9月まで、2に書いてありますように、各保育園、保育所、幼稚園での行動観察を行います。その後に、個々の子どもたちに対しまして、個別支援事前シートというシートを活用しましてスクリーニングを行っていきます。そして、3点目、10月の頃になりますが、保育所、保育園、幼稚園の中で、園内委員会等を開催していただきまして、困難さの高い幼児の把握をしていきます。そのお子さんに対して、市の支援チームに対する事前検討会議の個別の相談票を作成していただきます。そして、個別の相談票と、記入していただいております個別の事前シート、それを基に支援チームによる事前検討会議を行います。そして、それを受けまして、11月までに、5に書いておりますように、支援チームが該当の保育所、保育園、そして幼稚園に訪問させていただきまして、行動観察を行っております。そして、その訪問行動観察後に、支援チームによる個別支援シートを作成しております。そのシートを基に、12月までに支援チームによる支援方針検討会議、そして支援方針を決定して、7に示しておりますように、支援方針に基づいた幼児への支援を行っております。そして、支援チームによるサポートもあわせて行っております。ここで得ました情報等につきましては、市の就学指導委員会へ情報提供されております。
 今申し上げました4歳児発達支援事業の支援チーム等の関わりですが、4月から12月まで、半年以上かかっております。そういう中で、随時、保護者の方から個別の相談が多々あります。それについては、主に学校教育課の担当、それから子育て支援課の相談員を中心に相談を受けて対応させていただいております。
 具体的には、特別支援教育に係る就学前の子どもや保護者、保育所、保育園、幼稚園、学校等からの相談、要望に対してすぐに対応できるように、子育て支援課と学校教育課が情報、そして行動連携に努めております。特に、就学相談については、子どもの障害の状態、そして本人の教育的ニーズ、本人や保護者の思い、意見等を把握することに努めております。その相談の中で専門家の意見を踏まえながら、総合的な観点からよりよい方向性を探るように努力しております。その際、先ほどの御発表にもありましたように、可能な限り子ども本人や保護者の意見を最大限尊重し、学校や教育委員会を含めて、教育的ニーズと必要な支援について合意形成を図るように努めております。
 笠岡市教育委員会学校教育課は、最初に申し上げましたように、指導的業務と学事に係る、つまり人的配置に係る業務を担当しております。そういうメリットを生かしながら、人的な支援もあわせて検討しております。その中で必要に応じて、就学先決定につきましては、特別支援学級の見学、参観、それから通常学級の見学、参観、そして県立ではありますが、特別支援学校の見学、参観等の調整も学校教育課等でさせていただいております。
 そして、3月には、先ほどの保育所、保育園、幼稚園と小学校との連携という観点から、小学校教員が実際に保育所、保育園、幼稚園に出向いて、担任からお子さんの様子や支援の具体を聞いたり、障害の状態を把握したりする機会を設けております。あわせて担当の先生方を集めた特別支援教育連絡会を開催いたしまして、各保育所、保育園、幼稚園で行われています支援体制の引き継ぎ、情報交換を行っております。
 今年度、笠岡市4歳児発達支援事業に取り組みました子どもたちが就学しました。実際に、支援チームで相談に当たったお子さんは17人に上っております。その子どもたちが本年度就学しました。以前から比べますと、早期相談、早期支援体制をつくったことによって、就学先に関わるトラブルは減っております。そして、就学後の相談支援体制も継続して行っております。
 続きまして、一貫した支援体制づくりの取組について御説明いたします。
 3のところに書いておりますように、保護者が我が子の教育的ニーズや情報等を各関係機関と共有し、乳幼児期から就労までの一貫した支援を受けることができるように相談支援ファイルというものを活用する取組を始めております。別添として、「かけはし」と書いたものをお手元にお配りしています。御覧いただけたらと思います。実際のものは、相談支援ファイルということで、このようなファイルの中に色々なシートを入れるようにしております。
 この取組は、先ほどから申してまいりましたように、やはり継続的な支援を行うためには、情報を一元化して共有することが必要だと考えました。そういう中で、支援ファイルに行き着いたということになります。
 これには、21年度に検討委員会を立ち上げまして、保育所や知的障害児通園施設、それから県立特別支援学校、そして井笠圏域障害者相談支援センター、健康福祉部局等、様々な機関の協力の下に、この取組を行っております。
 これは、子どもの状況だけではなく、学校や関係機関とともに検討する支援内容についてもファイルに記載できるように工夫しております。笠岡市といたしましては、支援を必要とする子どもや保護者との関係機関等とのつながりを大切にしながら、一貫した支援を行うことができる体制をつくっていきたいという思いの中で、この相談支援ファイルの愛称を「かけはし」とさせていただきました。
 この「かけはし」の活用の効果としては、次の3点を考えております。まず1点目ですが、「かけはし」に記録した子どもの状況や支援の経過を関係機関等に示すことで、適切な支援を受けるための手がかりとする。2点目といたしましては、子どもの状況や支援の経過を基に、関係機関と情報を共有しながら、今後の支援の方針や内容について具体的に検討することができる。3点目といたしましては、「かけはし」に子どもの状況や支援の経過を記録することで、成長の過程を振り返ることができると考えております。
 この「かけはし」の主な中身につきましては、7ページに相談支援ファイル「かけはし」の内容ということで示させていただいております。この中には、お手元の「かけはし」の具体的なものを御覧いただけたら分かりますが、いろんな情報が入るようにしております。例えば、病気医療に関する情報等も入れております。そして、発達に関する受診相談、非常に個人情報に係ることも入れております。そうしたことを受けて、今後の課題としては、こうした個人情報の管理について制度化をしていく必要があるのではないかと考えております。
 そして、先ほどの2市の御発表にありましたように、市全体としての特別支援教育のシステムの構築等も必要ではないかと考えております。この「かけはし」につきましては、現在、試行ということでさせていただいておりまして、この秋に「かけはし」を活用していただいている保護者の方と話し合いを持つ予定にしております。そして、そこで御意見、御感想等をいただきながら、より本当に使っていただけるものをつくっていきたいというふうに考えております。
 以上、笠岡市の発表について説明をさせていただきました。ありがとうございました。

【宮﨑委員長】 どうもありがとうございました。
 それでは、3市の御説明につきまして、御質問、御意見を賜りたいというふうに思っております。
 なお、湖南市の松浦室長は、公務のために11時までに御退席なさるという予定ですので、まず湖南市に対する御質問を先にお願いできればと思います。久松委員、お願いします。

【久松委員】 全日本ろうあ連盟の久松です。3市の報告、大変立派な取組の様子を、お話を聞かせいただきまして、改めて感謝を申し上げます。
 まず、湖南市からということですけれども、3市にお聞きしたいことがあります。共通項目としてお聞きします。
 早期発見、早期教育、早期相談支援ということで、体制づくりをしていますが、知的障害と発達障害が中心の支援体制ということの報告だったと思います。例えば視覚障害を持つ子どもであるとか、耳の聞こえない子どもであるとか、盲ろうですとか、そういった障害に対する支援について、取組はどのようにやっていらっしゃるのか、簡単でいいですので、お話を聞かせていただければありがたいと思います。
 以上です。

【宮﨑委員長】 これについては、順番でよろしいですかね。三鷹市から、お願いいたします。

【三鷹市】 三鷹市教育委員会です。視覚障害、聴覚障害、盲ろう等につきましては、乳幼児健診でまずは早期発見に努めております。その後、発見されましたら、近隣の医療機関とともに発達支援をしていくという体制です。

【湖南市】 湖南市も同様です。同じように就学指導につきましても、盲の方、視覚障害の方も同じように進めております。

【笠岡市】 笠岡市におきましても、視覚障害、聴覚障害等につきましては、子育て支援課が行います乳幼児健診、1歳半健診、3歳児健診等で把握いたしまして、県とも相談しながら、就学先、支援の方法については検討してまいっております。

【宮﨑委員長】 それでは、ほかにお願いします。大南委員。

【大南委員】 全国特別支援教育推進連盟の大南です。湖南市の室長さんにお願いいたしますが、私は一昨年、「ここあいパスポート」のことについてお話を伺ったわけですが、その後の普及の状況といいますか、どの程度これが活用されているのか。実は、東京都内でも、幾つかこれに似たようなものをつくっている区市がありますけれども、なかなかファイルとして、あるいは資料として十分に活用できるところまで普及しきれていないのが現状ではないかと思うので、湖南市の状況をお伺いできればと思います。

【湖南市】 今、委員から御指摘があった状況と同様です。御希望された方に障害がある、ないに関わらず、このファイルはお渡しすることができます。なおかつホームページからダウンロードもできますので、どなたが持っておられるかということは正確に市としてはつかんでいません。ですので、就労の場面で、「ここあいパスポート」を持って相談場面に持ってこられた方に、私はまだお一人しか出会っていないのですけれども、今のところ学齢期の方に広げているという状況です。

【宮﨑委員長】 それでは、佐竹委員、続いて髙橋委員、お願いします。

【佐竹委員】 全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会の佐竹と申します。
 久松委員の御質問とちょっとかぶってしまうかもしれないのですが、今、発達障害関係のお子さんのことで、かなり社会的に問題になっていて、そういった支援体制が非常に充実してきているということは把握できます。しかし、今言ったように視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、そういったお子さんは、まず医療という部分から発見なり気づきなりが分かりますが、それもケース・バイ・ケースでございまして、私の子どもは肢体不自由でしたが、出産時に何のトラブルもなく、1カ月健診でも引っかからず、3カ月健診でも見守ろうねと言われて、6カ月ぐらいになって、ようやく何らかの医療体制なり、相談にというようなお話でした。私は1カ月の頃から何らかの、何か親として困っているというか、不安に思っていることがあるということは言い続けてまいりましたが、発見されませんでした。非常に軽いケースだというふうにお医者さんはおっしゃいました。そういう子どももいるのです。生まれたときから、必ずしも障害は発見されないということです。
 ですが、私の子どもは、養護学校に行き、今、電動車いすがなければ日常的に何もできない、全身の日常介助が必要な状態です。ヘルパーさんにも日常的に関わっていただいています。こういう将来が待っているのに、乳幼児期に関して何らかのケアなり、発見ができないということが事実としてあるわけです。
 そういった機能的な障害のある子どもに対する医療関係と、発達も含めた支援体制というのが、もう少し明確に、何らかのこういう連携ですというケースがあるのであれば教えていただきたいと思います。もし薄いのであれば、今後そういったことも含めた体制づくりを3市の方にもお願いしたいと思います。
 もう一つ、就学相談に行く前の早期発見という部分でお話をされておりますので、一つだけ、これは親としてお願いがあります。発達障害のお子さんは、特に小集団の中、幼稚園、保育園のときに、保母さんなり、親御さんなりが気づいて、ちょっと何らかのケアが必要だというケースが通常だと思います。ところが、乳幼児期のときというのは、その発達の差に、健常であっても、何らかの機能的な脳の中のトラブルを抱えているにしても、その差というのがあまり分からないものだと思います。そのときに、安易に何らかのケアが必要だということで抜き出して、こういう施設に行きなさい、こういうところに行きなさいとしてしまわないで、発見したその場で、まず何のケアができるかということを突き詰めて、成長していく中で、もう少し専門家のケアを受けるとか、いろいろな手立てが考えられるということを親御さんに丁寧に説明した上での仕組みであれば、なお親としては安心があるのではないかと考えています。
 というのは、親御さんは、この時期に非常に不安を覚えますと、本人のストレス、子どものストレスというのがいろいろなところに出てきてしまいます。それが結果的に虐待につながったり、閉じこもりにつながったりというようなことになりやすいという現実があるということをお話したいと思います。

【宮﨑委員長】 今の佐竹委員の最初の件について、何か各市でありますか。

【三鷹市】 運動発達のお子さんについてですけれども、三鷹市では総合保健センターの乳幼児健診で、まずは見ていますが、今お話しのように、乳幼児期の健診では発見できないケースもあります。そのような場合につきましても、3歳児健診、それから、それぞれの園に北野ハピネスセンターから巡回発達相談などが参りますので、その中で上がってくるケースがあります。また、乳幼児健診のフォローといたしまして、親子グループを実施しております。

【清原委員】 それから補足いたしますが、現在、三鷹市では、実は教育委員に小児科の医師をお願いしています。私になりましてから、初めて医師にもお願いをいたしました。このことは、三鷹市には市立幼稚園はございませんが、保育園の園医さん、あるいは小・中学校の校医さんとして、医師の方が実は多く学校教育に関わっていらっしゃるのですが、その専門的な見地からの御意見というのを積極的に出していただくということの必要性を感じたからです。
 あわせて、要保護児童支援ネットワーク、子ども家庭支援ネットワークにおいても医師に入っていただきまして、私たちが、乳幼児健診以外に子ども家庭支援センターなどにお母さんが育児不安などで訪れたときに、どのように保護者の早期発見を寄り添いながら支援できるか、そのような職員のまなざしといいましょうか、視点といいましょうか、保護者の気持ちをやわらかくするために、「心配しないで」というのではなくて、「なぜ保護者が心配しているのか、不安であるのか」ということを専門的見地から明確にするという姿勢を持つように研修をしてもらっているところです。
 以上です。

【湖南市】 ハンドブックの11ページを御覧いただきたいと思います。今、保護者の御立場でお話しいただきました。やはり園での気づき、それから周りからの乳幼児健診での指摘、あるいは保護者からの声という、そこのあたりが、ぴったり一致することはなかなか困難である思いました。子どもが小さければ小さいほど、やはり困難であるというところを我々支援に関わるものはしっかり理解をしながら、そして、なおかつ保護者さんがどの程度のところまでを御理解されて、あるいはどの程度のことを求められているのかという、そういったところで10ページの発達相談につきまして、保護者の主訴を傾聴する相談を大事にやっていきたいと考えています。

【笠岡市】 笠岡市においても、先ほど委員の方がおっしゃられましたように、保護者の方のストレスを高めてしまうような相談になってしまうことが現実にありました。その中で、先ほども湖南市さんが言われましたように、保護者の方の思いを聞いて、又は御本人の様子をしっかり把握して、焦らない。早期相談、早期支援ということで一番大事だと私は思っていますのは、長い時間をかけて、時間を焦らずに御説明をさせていただく。そして、その中で信頼関係を築いていくということを第一に、今取り組んでいるところです。今、委員さんがおっしゃられたことは痛感をしております。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、髙橋委員、お願いします。

【髙橋委員】 全国町村教育長会の髙橋と申します。
 湖南市の資料の3ページに「不登校児童生徒の減少につながる成果をあげている」と書かれているところは、私にとっては興味深いところなものですから質問いたします。
 不登校については、要因は非常に複雑で、なかなか簡単に対応しきれないというのが不登校児童生徒への課題かなと思っております。もちろん、湖南市さんがやられております発達支援室との関わりは、今、注目されていますし、効果を上げているということは承知しています。ただ、湖南市さんの場合には一般市町村などでは適応指導とか何とかという教育委員会が管轄でやられているのですが、そういった社会福祉課の関係、発達支援室との関わりで成功している、そういうふうな事例の一つだろうと思っています。そこで、ここに書かれている発達支援室との関わりの中で成功した具体的な事例を紹介していただければと思います。

【湖南市】 多々ございまして、まず、子どもさんが学校へ行けない状態になると、やっぱり保護者の方の不安というのがすごく高いと思います。そこのところを支えるのが社会福祉課発達支援室の保健師です。そして、子どもさんの行き渋りの時点で、まず何を困っているのかというところに対応すること、ここが教育の役割かなと考えています。ですので、保健福祉と、そして家庭的な経済基盤の問題もありますし、そのあたりが連携しながら、やはり一昔前、5年ぐらい前でしたら努力が足りないとか、家庭が学校へ押し出す力が弱いだとか、そういった受けとめをしていたことも湖南市でもあるのですけれども、いや、そうじゃないと考えています。そこのところ、この子が何を困っているのかというところに視点を当てるというのが巡回相談員の役割であり、まず話を子どもさんと聞く、あるいは保護者さんと面談する中でお話しを聞くということです。すべて相談は、まず保護者の方の主訴、そこを聞きながら、そしてこの子がどういう学校へ再登校するのも、それも通常学級に一日いるということではなく、どのあたりから行けるのかというところ、そこのところを調整しながらやってきている事例が、かなりたくさんございます。

【宮﨑委員長】 ほかにありますでしょうか。北住委員、お願いします。

【北住委員】 むらさき愛育園の園長の北住です。
 早期からのという問題とは少し離れますけれども、一般教育と特別支援教育の関連という意味からも大事な点だと思われるので、ちょっと御質問いたします。
 三鷹市の資料7-1の3ページ、「コミュニティ・スクールを基盤する小・中一貫教育を行っている。学校自由選択制は行わず」とあります。特に、大都市部では学校自由選択制がかなり進んできていると思いますが、私が関わっている外来で見ているお子さんなんかを見ていると、これがプラス面とマイナス面があると思います。かなり一定範囲の中での選択制になることで、いわゆる成績がいい子どもたちが集まるところと、軽度の障害のあるお子さんが集まるところと分化してきている地域もあると。それが果たしていいことなのか。いわゆるコミュニティー、日本全体の問題としてコミュニティーの質をどう保つか。その中で、学校も一つのコミュニティーの核の一つとして大事である。そう考えると、あまり自由選択制という形で、地域が分断されていくのは好ましいことではないのではないかと私は考えているのですけども、その辺の基本的な方針なり、考え方で、あえて自由選択制をとっていないのかどうか。特に大都市圏では大きな問題になってくると思いますので、聞きたいと思います。

【清原委員】 三鷹市の教育施策については、資料7-1でも御説明しておりますが、参考資料の図5を御覧いただきたいと思います。私自身の考え方は、小学校、中学校に責任を持つ三鷹市としては、しかも16.5平方キロという大変狭い市域の中で約18万人の市民が住んでいるのであるならば、積極的に、住まう地域、支え合う地域で、一人一人が尊重されるような地域をつくっていくという理念の中で、学校においても、7つの中学校区を一つのエリアとする7つの学園において小・中一貫教育を実現するという方針をとりました。したがいまして、地域の保護者だけではなくて、住民の皆さんが多様に関わりながら、学校を拠点とするコミュニティーをつくっていくということで、これまでの実践を重ねてきました。平成18年に一つの学園ができてから、20年度に4つ、21年度に3つということで、既に7つの中学校区すべてに7つの学園が短期間に成立できたのも、この理念を児童生徒、保護者だけではなくて、地域の皆さんが支えてくださったからだと思うのです。
 実際に、各学校に多様な市民の皆様が、まさに授業支援であったり、クラブ支援であったり、地域子どもクラブ支援であったりといった多様な場面で、ボランティア的に関わってくだっております。私としては教育支援、特別支援教育も、まさに地域で最初から最後まで子どもたちが人権を尊重されて暮らすということを目指しているならば、どの子も地域の学校で、ということで貫くことが一つの考え方だと思っています。ただ、もちろん、そうは言いましても三鷹市の公立学校の支援だけでは不足するお子さんがいらっしゃいますので、都立の特別支援学校で学ぶ子どもたちも地域で居場所をつくるということが大変重要なことであり、そういう意味で東京都の副籍の事業の中で、子どもたちがしっかりと東京都の特別支援学校に通いつつ、地域の学校にも居場所を持って、地域によって支えられつつ、自分自身も役割を果たして、その自己の尊厳を確認できるという取組を今後も目指していきたいと考えているところです。

【宮﨑委員長】 それでは、ちょっと時間が押しておりますので、あと一人、二人、尾崎委員と河本委員、山岡委員までということで、すみません。

【尾崎委員】 全国特別支援学校長会の尾崎です。
 三鷹市長さんに質問させていただきます。三鷹市では、自立を目指した支援、教育を、教育委員会のみならず、市長部局が密接な連携を持ってなさっているということで、特に図2におきましては、特別支援学校もその中に位置づけて連携をしているという形をとられています。そして、最後には地域での生活就労まで含めて三鷹市としては考えてやっているということですが、質問は、まず特別支援学校で就学支援シートの活用状況がどうなっているかというのが1点。そして、特別支援学校を卒業しますと地域へ戻っていきますけれども、昨日のワーキンググループのヒアリングで、ある人から学校生活の間はよかったと、卒業してからが大変だと、そういうふうに言われないような教育支援をしてほしいというような話がありました。私も、高等部の学校の校長をやっているのですが、むしろ高等部3年間よりは、それ以降の人生が長いわけですから、学校を卒業して就労するのがスタートなんだということで、そういう自立に向けての教育をするのが学校の役割だというふうに考えていますが、そういうことも含めまして、三鷹市として特別支援学校にこういうことを期待したいということがあれば教えていただければと思います。

【三鷹市】 特別支援学校に就学するお子さんの「就学支援シート」ですが、もちろん保護者と園が作っています。さらに、特別支援学校につきましては、東京都の特別支援教育推進室で行っています「就学支援ファイル」という、もう少し就学支援シートよりも踏み込んで、お子さんの障害や課題について詳細に記述したものがありますので、そちらも使用しています。

【清原委員】 特別支援学校に地域での生活就労を実現するために何を期待するかという御質問にお答えいたします。
 三鷹市でも、学校卒業後、それぞれの個性と能力に応じて就労の機会を提供することについては、社会福祉法人やNPO法人と連携しながら、多様な日中の働く場や、あるいは就労支援を行ってきました。そのときに、私自身も特別支援学校を卒業した方、あるいは在学中の方の当事者の御意見も直接伺ったのですけれども、本当に自分自身の能力というものを自覚するということのための支援の必要性、それから、その能力が職業と結びついたときに、それが、もちろん働くということは一つの権利保障でありますが、やはり働くということによって制約される時間的な面であるとか、そうした社会性がないと継続できないというところもありますので、単なる能力の発見や、あるいは支援だけではなくて、働くことそのものに対する意欲とか、あるいは意識とか、ある場合には我慢をするとか、そういうような訓練というのも、より一層重要になってくるのではないかと思います。
 ちなみに、三鷹市役所では東京都の特別支援学校の生徒さんをインターンシップとして、このところお迎えしています。このインターンシップを私は効果があるというふうに拝察をしているところです。インターンシップを経験された特別支援学校の生徒さんから、市長あてのお便りをいただくこともありまして、やはりそういう機会、正式な就労ではないのだけれども、市役所以外にも場所を発見されていると思いますが、そうした短期であっても、インターンシップということも有効ではないかなというふうに考えました。総合的な職業教育という点についても、さらにカリキュラムを充実していただければ心強いと思います。ありがとうございました。

【宮﨑委員長】 それでは、河本委員、お願いします。

【河本委員】 全国特別支援学級設置学校長協会の河本です。
 3市の御説明ありがとうございました。早期発見、早期療育、そして早期の支援ということの重要性、そのために各市が取り組んでいる施策、あるいは行っている今までの御報告、大変御参考にさせていただき、聞かせていただきました。ありがとうございました。
 私からは、この後の話のことにも関係するのだろうと思うのですけども、私は、特別支援学校設置校の校長ですので、設置校の校長の立場でお聞かせ願いたいと思います。三鷹市に御質問させていただきたいと思っているのですけれども、やっぱり障害があるお子さんをお持ちの親御さんにとって、小学校就学は、非常に大きなハードルというのですか、進路含めて大変な思いをされるのだろうと思うのですけれども、就学に関して、三鷹市の資料の2ページのところ、真ん中辺、具体的に数字が分かったら教えていただきたいということです。「また就学相談を希望しない幼児でも」云々とありますけれども、就学相談を希望されないお子さんの人数というか、親御さんの全体の就学児童数に対する割合というのですか、そのあたりの数値が、もし分かったら教えていただきたいというのが1点。
 もう一点は、同じようなことですけれども、5ページに、これも真ん中辺、「たとえ就学時に就学支援委員会の判断と異なる就学先を選んでも」という文章がありますけれども、ここのことに関しても実態といいますか、今の三鷹市では、判断と異なる就学先を選ぶ親御さん、人数的なものだとか、あるいは割合、どのぐらいいらっしゃるのかということです。これから、またこのあたりの話を詰めていかなければならないので、もしできたら参考にさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【三鷹市】 まず最初の就学相談を希望しないお子さんですが、この把握はとても難しいのです。といいますのは、障害のあるお子さん、幼児の方たちのすべてが北野ハピネスセンターにつながっているとは限りませんので難しいのですが、北野ハピネスセンターの通園、又は通所という、北野ハピネスセンターでケアを受けているお子さんの中で就学相談にかかられた件数は29件です。そして、そのうち就学支援委員会に図った件数が18件、けれども、その中で判断と異なる就学をされたのが3件です。それから、就学支援委員会を途中で辞退した件数が11件あります。相談にはいらっしゃるのですけれども、辞退されたのが11件という、小学校就学に関しては、そういう数字が出ております。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、山岡委員。

【山岡委員】 日本発達障害ネットワークから参りました山岡です。
 私からの話が1点と質問が1点です。
 先ほど、事務局から障害者基本法の改正についてお話がございまして、それに関する規定が変わったのですけれども、実は第二条のところで障害者の定義というところが変わっておりまして、もともと身体・知識・精神という、この精神のところに括弧をつけて、発達障害を含むという規定が入っております。ここは私どもからすると大きな改定でございまして、特別支援教育の推進や、あるいは発達障害者支援法の成立などを受けての流れですけれども、障害者基本法という基本的な法律の中に発達障害が対象として位置付けられたということです。この発達障害の中には発達障害者基本法の定義に含まれている自閉症や注意欠陥多動性障害や学習障害、その他の障害が含まれるということでございまして、当然に特別支援教育においても、これらがきちっとした法律の下で支援の対象となるということが、さらに明確化になったということです。
 質問ですけれども、3つの市の取組、すばらしいなと思いました。いずれも教育と、教育分野以外のところが連携をして取り組まれているところが特徴だと思います。そうでないと、こういう早期からの支援はできないのだろうと思います。数字のことで1点だけ御質問させて下さい。特別支援教育の対象になっておられる児童生徒さんがどのぐらいの比率でおられるかということを御質問したいのですけれども、市なので、特別支援学校の数字は把握されてないかもしれないのですが、そこを含む、含まないも言っていただいた上で、三鷹市と笠岡市で、小・中学校段階で、特別支援教育の対象になっている児童生徒さんがどのくらいの比率でおられるかを、教えていただければと思います。

【宮﨑委員長】 それでは、分かる範囲でいいと思いますので、資料があったらお願いいたします。

【三鷹市】 実は、特別支援教育の対象の子どもさんは、通常の学級にもいるわけですが、数字で分かりますのが、三鷹で言う教育支援学級固定制、また通級指導学級を通級制と呼んでいますが、そのお子さんの数を申し上げます。
 三鷹市は、7月1日現在で小学校の通常学級の子どもが7820人、中学校が3133人です。そのうち固定制の教育支援学級、いわゆる特別支援学級に在籍している子どもさんが、小学校では98人、それから通常の学級にいて通級制を利用している子どもさんが161人です。中学校におきましては、固定制の学級の人数が76人、通級制の利用者が49人です。
 それから、各学校、通常の学級を持っている各学校で個別指導計画を書いている枚数が、今正確な数字が出ないのですが、小学校全体で合計300枚を超えています。ですから、学校によって差があるのですけれども、3%から10%ぐらいの子どもたちについて個別指導計画を教員が書いております。

【山岡委員】 その300は、さっきの98人と161人を含んでいるのですか。

【三鷹市】 特別支援学級は含みません。今申し上げたのは通常の学級に在籍している児童で個別支援計画を作成している人数ですので、通級の子どもさんは、ここに入ります。

【笠岡市】 お子さんの数の詳細は、ちょっと今、手元に資料がありませんけれど、例えば小学校の特別支援学級の設置ですが、18校の中で13校には設置しております。それから、中学校におきましては10校の中で7校には設置しております。そして、特別支援にかかる支援員を市で配置しておりまして、その数で申し上げますと、先ほど最初に申し上げました幼稚園12件、小学校18校、中学校10校の中で、あわせて40校園の中の21校園には配置をしております。支援員の数で具体的に言いますと、49名の方に支援に当たっていただいております。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 3市から具体的な政策展開について、御提案も含めて、本当に貴重なお話をいただきました。三鷹市の清原委員、それから田中室長さん、湖南市の松浦室長さん、そして笠岡市の岡田課長さん、本当にありがとうございました。今後の私ども検討の参考にさせていただきたいと思います。
 少し時間が押しておりましてといいますか、大幅に押しました。ただ、長丁場ですので、5分程度ぐらい休憩をとりたいと思います。でも中途半端ですね。そちらの時計で11時半まで休憩をとりたいと思います。
 それでは、休憩にいたします。

( 休憩 )

【宮﨑委員長】 それでは、議事を再開いたします。
 就学先決定の際の意見が一致しない場合の調整の仕組みについて御審議をいただきたいと思います。まず、事務局より配付資料の説明をお願いいたします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。
 繰り返し恐縮ですが、基礎資料集、緑のファイルの6の論点整理をもう一度御覧いただければと思います。6の論点整理の9ページ、「就学相談・就学先決定の在り方について」のポイントの2つ目のところですけれども、総合的な観点から就学先を決定する仕組みとすることが必要。その際、本人・保護者に対し十分情報提供をしつつ、本人・保護者の意見を最大限尊重し、本人・保護者と教育委員会、学校等が教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを原則とし、最終的には、市町村教育委員会が決定。その後ですけれども、本人・保護者と教育委員会、学校等の意見が一致しない場合の調整の仕組みについて、今後検討していくことが必要というおまとめをしていただいていたところです。
 具体的には(2)の就学先決定の仕組みの13ページ、11です。例えば、英国、米国においては、就学先決定について、本人・保護者の意見と行政の意見が一致しない場合、地方局や州に登録された中立の立場の仲介者が両者の間に入って合意点を見つけ、解決策を探るといった調整のための仕組みが用意されている。これらを参考に、今後、日本における仕組みを検討していく必要がある。例えば、都道府県教育委員会が仲介者を紹介する役割を担うことも考えられる。これについては、これまでの認定就学の事例を整理することや、新たなモデル事業を実施していくことも考えられるという整理をいただいているところです。
 次に、先ほど説明した資料ですが、もう一度資料5にお戻りいただきますと、就学手続における市町村教育委員会及び都道府県教育委員会の取組について整理したものですが、2の(1)、都道府県教育委員会の法令に基づく役割としまして、特別支援学校の設置義務、就学に関する事務に関する指導・助言、就学手続の一部を担うということになっており、都道府県教育委員会の取組の例は、2の(2)にあるように、特別支援学校の見学・体験入学、就学相談、市町村教育委員会の相談・支援、特別支援学校を就学先とした場合の決定、判断と異なる場合の措置となった児童・生徒の実態調査、市町村就学相談委員会の専門性向上のための研修会、研究協議会の実施といった例があるという状況です。
 続きまして、資料8-1を御覧ください。就学先決定の際の意見が一致しない場合の調整の仕組みについて整理させていただいたものです。1ポツとしまして、訴訟によらない現行制度上の手続ということですが、最初に学校教育法施行令に基づきまして、保護者の申し立てにより、教育委員会が相当と認めるときには変更することができることとなっております。
 次に、行政不服審査法に基づく異議申し立てを行うことができますが、この際、就学すべき学校の指定は自治事務となっておりますので、不服審査制度上の上級行政庁が存在しないために、その処分を行った教育委員会に対して異議申し立てを行うという形になっております。
 3つ目のポツは、訴訟によるもので、参考としてお示ししているものですが、行政事件訴訟法に基づいて、処分にかかる取消訴訟、義務付けの訴えを行うことが可能になっておりまして、これは平成16年の行政事件訴訟法の改正により法定化されたものです。
 次に、2ポツの政府における行政不服申立制度の現在の検討状況ですが、現在、政府としましては行政救済制度検討チームというものを設けまして、行政不服審査制度の改革を行っているところです。その論点整理が6月、8月にまとまっておりまして、そのポイントを事務局で整理させていただいております。これはまず、昨年8月に改革方針というものが示されておりまして、それに基づき論点を整理して公表しているものです。今後のスケジュールとしては、今年の11月を目途に取りまとめを行って、できるだけ早期に法制化作業を進めて国会に提出するということになっております。
 1ページの下から2行目ですけれども、まず、基本方針としまして、行政不服申立制度について、審理官制度を創設する等によって、公正さにも配慮した簡易迅速な手続の下で、柔軟かつ実効性のある権利権益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保し、国民が救済手続を一層自由に選択できるようにするというものです。
 続きまして、ポイントということで4ページを御覧ください。4ページに、仕組みとしまして、審理官制度の創設というところですけれども、審査庁となる行政庁に、審理官という独立して職権を行使する職を置くとしております。審理の手続としては、口頭意見陳述の際にすべての関係人を招集し、申立人から処分庁への質問権を規定して、審理官の前で対立双方の主張を明らかにすることなどを導入することとしております。
 5ページを御覧ください。こちらは不服審査制度の裁決のメニューとして、申立人に対して一定の処分をすることを処分庁に義務づける義務付け裁決、一定の処分をしないように求める差止裁決を新設するといった内容になっております。
 続きまして、6ページの下からのところですが、審理の迅速化のために標準審理期間を定めるよう努めることや、審理請求期間を延長することなどが示されております。
 それから、8ページ上からのところです。これまで、主に国における体制整備について書かれていたものを紹介していたところなのですが、地方公共団体においてどういう措置をとるかについて、ここ以降で整理させていただいております。ここでは地方自治の観点を踏まえ、地方公共団体の多様な実情にも配意した制度設計とすることが適切としておりますが、審理官による審理手続を行わないこととした場合であっても、審査請求人・審査庁・処分庁の間において、審理官が行う場合と同内容の審理手続を確保することにより一定の手続保障の水準向上を図ることは可能。さらに審査庁において、職権の独立行使等が保障される審理官でなくても、処分に関与しない者に審理手続を遂行させることも考えられるとされております。
 現在検討されている内容でございまして、今、不服審査制度で異議申し立てで行われている就学事務の不服審査について、どのように変わっていくかということが不明な部分もありますが、意見が一致しない場合の調整の仕組みを考える上で、考慮すべきことの1つとして報告いたしました。
 以上で説明を終わります。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの事務局の説明について御質問、御意見がございましたらお願いしたいと思います。
 それでは佐竹委員、どうぞ。

【佐竹委員】 質問なのですが、不服審査をしている間に、子どもが就学時期を迎えてしまった場合はどのようになるのかを教えていただけたらと思います。

【宮﨑委員長】 お願いします。

【横井特別支援教育企画官】 様々なケースがあると思われますが、一義的には行政処分ということですので、行政の判断に基づいた就学先に就学いただくことになろうかと思いますが、そうならないように、本人・保護者、学校、教育委員会の間で話し合いがされるものと思われます。

【宮﨑委員長】 いいですか。
 それでは、石川委員お願いします。

【石川委員長代理】 事務局からの説明、ありがとうございました。まだきちんと読み込めていないのですけれども、不服申し立て制度についての改革を進めているということで、それはやっていただいたほうがいいことだと理解しますけれども、これはあくまで救済の仕組みですし、それは一般的な行政処分についての救済の仕組みということなので、教育における就学先決定で、関係者の間で合意形成ができなかった場合の調整の仕組み、救済ではなくて調整の仕組みですから、それは別途、それに特化したものをつくる必要があるということだと思います。ですので、それについてこの委員会では検討していく必要があるし、場合によっては法律の専門家からのヒアリングというようなことも必要なのではないかと考えますが、いかがでしょうかということが1点。
 それに加えて、先ほどの3市からの御報告にもあったように、信頼関係をつくっていくということが非常に重要だと、現場で非常に努力されているということがよく分かりましたし、すごく大事だと思うのですが、さらに現場での信頼関係をつくっていくことを支援する上でも、制度に信頼を埋め込むということが大事だと思います。不服制度は、救済のための仕組みとしては必要ですけれども、教育における制度に信頼を埋め込んでいくという意味での調整の仕組みが必要ではないかと考えます。

【宮﨑委員長】 事務局から何か御意見ありますか。それから、今の石川委員の御意見を受けて、また皆様から御意見をいただければと思います。
 まずはお願いいたします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。
 繰り返しになりますけれども、資料8-1の1ポツで示させていただいておりますように、不服がある場合、まず、行政処分として教育委員会が就学先の決定をするわけですが、それに基づいて、不服がある場合に、最初のポツのところですが、学校教育法施行令に基づいて保護者が申し立てをし、教育委員会が相当と認めるときには変更ができるということになっております。これが1つの調整かと思われます。それで、なおかつ調整がつかないときには、もしくは、そのプロセスを経なくてもできることではありますが、行政不服審査法に基づく異議申し立てができるということで、石川委員長代理からは救済制度ではないかというお話であったかと思いますが、救済制度でもあり、調整の仕組みの1つでもあろうかと思います。
 さらに3つ目のポツで、訴訟になりますが、行政事件訴訟法による形で救済措置、調整ができるということになっておりますので、これに加えて必要があるかどうかということです。それで、不服審査につきましては繰り返しになりますが、今、より公平さにも配慮したようなもの、審理官制度等を創設しようということで改革が進められているというのが今の状況です。

【石川委員長代理】 今の御説明で大体理解できまして、現行の制度の中でどこまで、ぎりぎり工夫してできるかということは全体で共有できたので、それでいいか、足りないかということをこの委員会の中で議論していく、いわば出発点という理解でよろしいでしょうかというのを、もう一度重ねてお聞きしたいと思います。

【宮﨑委員長】 では、久松委員お願いします。

【久松委員】 全日本ろうあ連盟の久松です。事務局の方にお尋ねしたいのですけれども、先ほど、現行の調整手続法上の調整、不服審査法に基づいて手続をするという、調整機能があるというお話があったと思いますけれども、調整機能というのは具体的にどういうところで、どういう場面でそういう機能が発揮されるのでしょうか、教えていただきたいと思います。今の不服審査申し立てについては、佐竹委員からもお話がありましたが、実態として、今の不服申し立てをしている人が、教育現場でどのような状況に置かれているのかということについても含めて、お話をお聞きしたいと思います。

【宮﨑委員長】 事務局、よろしいですか。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。
 繰り返しになってしまいますが、現行の調整の仕組みということで資料をつくっておりますけれども、不服がある場合の、訴訟によらない現行の手続ということで、学校教育法施行令に基づく申し立てによって、教育委員会が相当と認めるときには変更することができるような、そういう調整ですとか、行政不服審査制度に基づいて異議申し立てをしていただいて、処分庁である教育委員会に異議申し立てを行っていただくわけですが、それによって何らかの調整が行われて、結果として、就学先が改めて見直される可能性があるということで説明させていただいたものです。
 不服審査制度の実態については、データを持ち合わせておりません。繰り返しになりますが、行政処分として就学先を決定しておるわけですので、基本的には、決定した内容に従って就学をしていただく状態になっていると理解しております。

【宮﨑委員長】 それでは山岡委員。

【山岡委員】 不服がある場合の手続きについては難しいところが2点ほどあると思います。まず、障害者基本法の、先ほど事務局から御説明があった今回の改正点で言いますと、ここの部分については、「可能な限り」という文言がついていて、保護者とかの意向を「可能な限り」受けるということだと思います。まずそこを念頭に置かなければいけないということです。それから昨年12月に取りまとめられた本委員会の、論点整理の中でもうたっていただいたのですけれども、就学後、柔軟に就学先の見直しができるかどうか、小学校に入ったときに一生が決まってしまうのではなくて、小学校1年生、2年生、3年生になったときに、柔軟に転学ができるのであれば、ここの考え方が大分違うということが1つです。論点整理でも、柔軟に就学先の見直しが行えることが適当とうたっていただいています。
 それからもう一つ、保護者からすると、不服審査も裁判も、あまり変わらず、大変な手続です。実は私は、本業でADRというものに関わっておりまして、法務省等に相談に出向いたこともあります。これは民間の金融機関に導入が義務付けられたのですが、裁判外の紛争解決制度というものがあります。これをADR、Alternative Dispute Resolutionという、英米で行われている制度が持ち込まれたものです。これを紛争解決と考えると、保護者からすると、第三者が立ち会うことが一つ、それから手軽であるということと、弁護士とか専門家に頼らなくても、そこの手続に乗れるということが大事です。それと、費用がかかったり、難しい手続きがなくても紛争解決ができるということです。イギリスでいうとオンブズマンという制度があって、そういうものが第三者的にこういう紛争解決に関わっていくというのが根づいているらしいのですけれども、日本において、どういうところが実施主体になってできるかどうかは分かりませんが、理想を言うと、オンブズマンとかADR制度みたいなものがあって、何かのときに第三者機関が間に入って仲裁にいくというのがいいと思います。

【宮﨑委員長】 では、石川委員。

【石川委員長代理】 もう1点申し上げたいと思います。要するに、3つあるけれども、今、山岡委員がおっしゃったように、2番目と3番目は考えないでというか、最後の手段みたいなもので、あくまで調整によって信頼関係を構築しながら、その子にとって最善の決定を考えていく、再度考えていくという仕組みを、教育においては構築する必要があると思うのですけれども、1番目の現行の枠組みでそれでいいかというと、これでは不十分だと考えます。多分時間的な制約があって、まず、就学先を決定してから実際の就学までに、おそらく間がないので、先に決定してから、その後の調整ということをせざるを得ないのだろうと思います。調整してから就学先を決定するという時間的な猶予が多分ないという前提での話なのですが、その場合でも、現行では親がアクションを起こさないといけないわけです。しかし調整ができていないということは、両者そのことは理解しているわけですから、それに対して教育委員会及び学校は、親からの何らかの申し立てがない限りはアクションを起こさなくてもいいという制度になっている。少なくとも制度上はそうだと思いますけれども、それだとやはり、信頼関係を制度に埋め込むということにはなっていないと思うので、ここは改善をしていく必要があると個人的には考えます。

【宮﨑委員長】 それでは齋藤委員、お願いします。

【齋藤委員】 全国心臓病の子どもを守る会の齋藤と申します。7月まで足立区の教育長、及び3月までは特別区の教育長会の会長をしておりましたので、その面から、少し御意見と実態を申し上げたいと思っております。
 就学先の決定ですけれども、足立区の場合、小中をあわせまして4万6,000人の児童・生徒がおります。学校は小中あわせて109校あります。当然のことながら、5,400~5,500人のお子さんが小学校1年生に入ってきますので、小学校入学時の就学先の相談については、非常に期間を要します。夏休みの時点から、来年度の就学相談に入ります。ですから、時期は逸しないようにということで、調整に時間がとれるようにやっております。
 昨年度の例ですが、保育園のお子さんでしたけれども、医療的ケアが必要な、たんの吸引が必要なお子さんでした。保育園ではしっかり面倒が見ることができたのですが、保育園と同じように、学校で看護師さんと介護の人をつけることは不可能に近いということで、保護者とずっと話し合いを行ってまいりました。校長先生のところにも行って、学校にも何度も何度も足を運んでいただいて、保護者と学校との信頼関係も築きました。最終的には保護者の希望通り、普通学級に入るということで、今、3人の看護師さんでローテーションを組みながら関わっていただき、介護もしていただいている、こういう状況です。
 このように教育委員会も変わってきています。できる限り保護者の意向に沿いたい、もちろんお子さんの状況によって、強い意思を持って、こちらの方がいいですよとお勧めする場合もありますが、多くの自治体では、最終的には保護者の意向に沿う形で、何とか努力しようとしていると思っております。問題なのは、どのくらい人と物とお金をつけられるかということだろうと思います。
 しかし、今回出された行政不服申し立て制度は、本当に最後の保険みたいなものとして、私は取り扱っていただきたく思います。これがあまりにも前面的に出てきてしまいますと、現状と逆にずれてしまって、また昔に戻るのか(教育委員会は保護者の意向を聞かず決めるのか)と受け取られるのではないかと心配しております。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 この件に関しましてはもう少し検討が必要だと思いますが、まず現在、政府において、行政不服申立制度についての検討が行われていて、大変コントラバーシャルな問題に関しては、場合によってはこの制度の検討というのもあり得るだろうと考えます。ただし、今皆さんの御意見をお伺いしている中で、障害者基本法の一部を改正する法律案が通過したというようなことを受けて、情報の提供と、可能な限りその意向を尊重しなければいけないといったような動きを、きちっと、この就学の仕組みの中にどうつくっていくかということが重要かと思いますので、これについてはもう少し、さらに検討を進めるということでよろしいでしょうか。今日のところは情報提供をいただいたということで御了解いただければと思います。ありがとうございました。
 それでは、大変時間が押しているのですが、教職員の確保及び専門性の向上のための方策についての審議をしてまいりたいと思います。まず、事務局より資料の説明をお願いします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。
 繰り返しで恐縮ですが、まずは教職員の確保及び専門性の向上について、論点整理においてどのようにまとめていただいたか、という確認としまして、緑のファイル、基礎資料集の6、論点整理の20ページ目を御覧ください。こちらの方で、まずポイントとしましては、「インクルーシブ教育システム構築のため、教職員の確保や教員の専門性の向上を図るための具体的方策として、大学での教員養成の在り方、管理職を含めた現職教職員の研修体系、採用、配置などについて、今後検討していくことが必要」としていただいているところです。
 次に現状と課題のところで、特別支援学校教諭の免許状を保有している割合が、特別支援学校の教員で7割、特別支援学級の教員で3割であるとして、課題になっていること、それから特別支援教育についての研修、障害のある者の採用、人事配置を課題として挙げていただいているところです。
 (1)の教職員の専門性の確保のところでは、専門性とはどういうものが必要か、それから英米で行われている、障害を高発生頻度と低発生頻度に分けて専門性を向上させる取組を参考としてはどうか。それから小・中学校における特別支援教育担当教員、特別支援学校教員の人事上の配慮、それから特別支援教育コーディネーターの専門性などについて言及いただいたところです。
 21ページ、教職員の養成・研修制度のあり方では、すべての教員が持つ特別支援教育の専門性、小・中学校における特別支援教育担当教員の持つ専門性、特別支援学校教諭の免許状を保有せずに特別支援学校教員となっていることが可能とされている現行制度の見直しについて、それぞれ検討する必要があること、特に校長等、管理職を対象とした研修が必要であること。研修の実施に当たっては、特別支援学校のセンター的機能、国立特別支援教育総合研究所、大学、通信制の大学を活用することなどについて、それぞれ22ページまで言及いただいているところです。
 23ページに移りまして、(3)教職員への障害のある者の採用・人事配置では、障害のある当事者の教職員が確保されるよう、採用や人事配置について配慮する必要があると言及いただいているところです。
 続きまして、資料9を御覧ください。こちらも現状を整理するとともに、関連した取組例は、本特別委員会の第4回で県から発表いただいた資料を整理させていただいたものです。まず、1として教員の養成・免許としております。
 制度としましては、幼・小・中・高の免許状の取得をするに当たっては、教職に関する科目中、「幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」という中で、「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」を学ぶこととされております。
 特別支援学校の教員は、幼・小・中・高の免許状に加えて、特別支援学校の免許状を取得することとなっております。以前、盲・聾・養護学校と分けられていた免許状については、平成19年4月から特別支援学校の免許状に一本化され、教授可能な障害種別を特定して授与するという形になっております。また、特別支援学級や通級による指導につきましては、小・中学校の教員免許状を持っている教員が担当できることになっております。
 さらに、四角く囲ったところ、繰り返しになりますが、特別支援学校の免許状保有率は、平成22年度で70%、特別支援学級担当教員の特別支援学校教諭免許状の保有率は、同じく22年度で33%となっております。
 教育委員会における関連した取組例としましては、免許法認定講習や放送大学の活用、保有率の調査、大学等と連携した免許法認定講習についての調整等が挙げられておるところです。
 2ページ目を御覧ください。2として教職員の研修について整理しております。現状では国立特別支援教育総合研究所や、各県の特別支援教育センター等において研修が行われているところであり、研修の現状としましては、15年4月1日から22年9月1日までで、受講率は教員全体で58%。管理職で70%程度となっております。
 教育委員会における関連した取組例としましては、国立特別支援教育総合研究所が行う専門研修への派遣、それから特別支援教育センターの設置、自主的な研修会の実施、巡回相談とは別に各特別支援学校での研修会を実施するとか、特別支援学校がそれぞれの担当地域を設けて、各地域の小・中学校等からの要望に応じた巡回相談を実施するであるとか、離島の教員の専門性向上のための移動講座を実施するといった例が挙げられます。
 以上で説明を終わります。

【宮﨑委員長】 それでは引き続き、日向調整官からお願いいたします。

【日向教育改革調整官】 教育改革調整官の日向と申します。
 資料10を御覧いただければと思います。中央教育審議会教員の資質能力向上特別部会、審議経過報告のポイント等です。まず、経緯から簡単に御説明をさせていただきます。
 資料の6ページを御覧いただければと思います。昨年6月の中央教育審議会総会におきまして、文部科学大臣より、教職生活全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について諮問がなされまして、総会直属の部会として、教員の資質能力向上特別部会が設置をされたところです。その後、特別部会におきまして、御覧のとおり8回にわたり御審議をいただきました。今までの議論を整理し、今後の具体的な議論につなげていくため審議経過報告をまとめ、本年1月31日に開催されました中央教育審議会総会に報告をされたところです。特別部会の委員名簿につきましては5ページを御覧いただければと思います。本特別委員会の委員の方からも何名か御参加をいただいているところです。
 続きまして、内容について御説明をさせていただきます。2ページを御覧いただければと思います。審議経過報告の詳しい内容につきましては、委員の皆様方につきましては、お手元、机上に審議経過報告の全体の資料も用意させていただいておりますので、後ほどお目通しをいただければと思います。
 まず、2ページの教員養成の在り方についてです。最初に、近年の社会状況の変化や、子どもの変化等を背景として、教員が対応すべき課題が増えているということ、それから2点目に、今後10年間に教員全体の3分の1が退職をし、経験の浅い教員が大量に誕生することが予想されること。また、3点目といたしまして、新人教員について、実践的指導力やコミュニケーション力等が十分に身についていないとの指摘があること、4点目といたしまして、社会状況の変化や国際化、科学技術の進歩に対応し、専門職である教員にもより高度な専門職としての資質が求められていることなどを背景に、教員養成におきましても、これまで以上に高度な実践的指導力やコミュニケーション力等の育成が求められている。
 これらを踏まえまして、教員養成につきましては、学部4年に加え、1年から2年程度の修士レベルの課程等での学習を要すること、修士レベル化について、今後検討を進める。この場合、例えば、当面は学士課程修了者に基礎的な資格を付与し、教員として採用された後に、必要な課程等を修了すれば、修士レベルの資格取得を可能とすることも検討する。
 また、新たな仕組みと現行の初任者研修制度との関係や、採用段階との関係も整理する必要がある。教員養成を修士レベル化することに伴い、養成の規模や、大学の組織体制のあり方、奨学金の活用等による学生の経済的負担の軽減についても、あわせて検討する。
 学部・大学院等における教員養成にかかる課程認定審査や、設置審査をより厳格化するとともに、事後評価システムを強化し、教員養成の質を保証する。また、事務体制についても抜本的に強化する。
 次に3ページです。教員免許制度の在り方についてですが、教員免許制度につきましても、教職生活全体を通じて教員の資質能力向上を図ることを支援する制度に改革すべきである。教員養成の修士レベル化について今後検討を進めることとし、その際、例えば、当面は学士課程修了者に基礎的な資格(「基礎免許状(仮称)」)を付与し、教員として採用された後に、必要な課程等を修了すれば修士レベルの資格(「一般免許状(仮称)」)を付与することも検討する。
 また、教員が教職生活を通じてより高い専門性と社会性を身につけていくことを支援するため、教員免許状により一定の専門性を公的に証明する「専門免許状(仮称)」を創設することについて検討する。
 これまでの検証も踏まえ、教員免許更新制については、教員が教職生活の全体を通じて、自発的かつ不断に専門性を高めることを支援する新たな制度への意向も視野に入れて検討を進める。その際には、「専門免許状(仮称)」制度と関連づけて検討するとともに、10年経験者研修との関係についても整理していく必要がある。
 4ページですが、現職研修等についてです。初任者研修のあり方については、養成期間と初任者の時期について複合的に考え、初任者研修について発展的に解消することも含め、今後検討を進める。
 任命権者と大学が連携した研修のあり方や、研修の受講成果を「専門免許状(仮称)」の取得単位の一部とすることなどについて、検討する必要がある。
 それから、当面取り組むべき課題の一番最後の丸のところですが、特別支援教育に携わる教員の資質能力の向上については、今後の特別支援教育のあり方の検討状況を踏まえ、検討を進めていく必要がある。以上が、審議経過報告の主な内容です。
 現在の審議状況でございますが、基本制度ワーキンググループが設置され、審議経過報告を踏まえ、具体的な審議が行われているところです。年度内に一定の方向性を示す予定で検討が進められているところです。
 簡単ですが、以上で説明を終わらせていただきます。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 今説明をいただいたのですが、この件に関しては時間的なゆとりがございませんので、本日は情報提供ということにとどめたいと思います。教員の資質能力向上特別部会の審議経過報告を見ますと、今後、本特別委員会の検討なども反映させていただけるような中身になっていますので、これについてはもう一度、本特別委員会においても改めて審議をしたいと思いますが、今説明があったことに関して、何か御質問、御意見があったら頂戴したいと思います。
 大南委員、お願いします。

【大南委員】 全国特別支援教育推進連盟の大南です。
 2つありますが、第1点は、免許状の区分の仕方が変わってくるとしたら、資料の3ページで、義務教育免許状であるとか、あるいは中等教育免許状という形がとられるようになりますと、特別支援学校教員免許状ではなくて特別支援教育免許状が可能になるのではないかと思います。そうしますと、特別支援学級や通級指導教室を担当している教員が免許を取りやすくなる。あるいは活用できるものになるのではないか、私はここに夢を託しています。
 それからもう一つ、現職研修のあり方について、これまでのやり方を否定するつもりはないのですけれども、教員が学校を離れるのはもう限界にきていると思います。ですから、学校で授業をやりながら研修ができる方法はないだろうかと感じています。実は今、幾つかの小・中学校の授業に関わっているのですが、授業を見ながら、新任の先生なり、経験の浅い先生に対してスーパーバイズをしていくといいますか、ですからこれは、これまで小学校、中学校、あるいは特別支援学校・学級を終えられた先生方で授業の上手な方、あるいは、本人の授業は上手でも指導はあまり上手ではないかもしれないんですが、授業が分かる、子どもが分かる人がスーパーバイザーになって、学校へ訪問していく。そうすると教員は動かなくて済んで、しかも、子どもの見方であるとか教材の提示、それからここにある言葉で言えば、実践的指導力の向上という点では、授業を基に考えていくのが私は最適なのではないかと思います。ですから、そういうスーパーバイズができる方を市町村の中で探していただいて、学校へ派遣をしていく、そういうものを現職研修の中に組み入れていけば、教員を、あまり学校から離さないで済むのではないか、これも、私の研修の夢の1つです。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 前段の免許状の仕組みについては、ワーキンググループで基礎制度の検討が始まっているということで、このあたりで、免許制度についても具体的に進んでいるのでしょうか。

【日向教育改革調整官】 教育改革調整官の日向です。
 実は来週の月曜日にワーキンググループの2回目を開催する予定でございまして、その中で免許制度についてご審議いただく予定です。その免許制度の中身の中で、この免許の区分の話も議論がされる予定です。
 なお、先ほど大南先生から、できるだけ学校から離れないでというお話がありましたが、実は委員の先生方にしか配付していませんが、こちらの冊子の16ページに、校内研修というような取組についても、要件を満たせば、専門免許状の取得単位の一部として認定を可能とするなど、必要な支援を行うことが重要であるとか、例えば専門免許状を取得した教員が学校の研修会の講師となって、他の教員の資質能力の向上に取り組んでいくことなども考えられるという記述もあります。ですから、今先生から御指摘いただいたような方向で、今後、具体的な議論が展開されるのではないかと考えております。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 もう一件報告をしていただかなければいけないものがありますので、この件に関しては改めて、審議をさせていただくということでよろしいでしょうか。
 今、大南委員から、教員免許制度についての具体的な夢といったことでお話をいただきましたが、特別支援教育免許状といったようなことに関しては、私どもの検討の中で、少し詰めて、教員の資質能力向上特別部会に、方向性としてこれはどうかというようなことの提起をさせていただければありがたいと思います。
 それから現職研修のあり方などについては、新採研、あるいはその直前の教員採用に関わるところで、養成塾とか養成セミナーとかというようなところもスーパーバイズされた中で、資質向上というのがもう具体的に動いておりますので、このあたりも含めて、また今後、皆様の御意見を頂戴して整理をしていくということにしたいと思います。今日のところはこれで御了解いただければと思います。ありがとうございました。
 それでは最後に、前回の特別委員会で御質問があった点について、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所からの回答という形でお話をいただきます。
 それでは、よろしくお願いいたします。

【大内上席総括研究員】 国立特別支援教育総合研究所の大内と申します。
 前回の特別委員会におきまして、イギリス、フランス、イタリアについて、障害がある子どもへの対応について報告をさせていただきましたが、イギリスにつきまして2点、フランスにつきまして1点、イタリアにつきまして5点御質問をいただいております。これらについて、順次簡単にお答えさせていただきたいと思います。それぞれ、担当者から報告をさせていただきます。

【横尾主任研究員】 国立特別支援教育総合研究所の横尾です。イギリスについて御回答させていただきます。
 イギリスについては、「特別な教育的ニーズのステートメントを持つ子どもの就学に当たっては、保護者がそれを望まない場合と他の子どもたちと効果的な教育の手立てと矛盾しない限りはメインストリームスクールで教育されなければならない」という、こちらで訳をしたものの出典と、それから原文についてということと、2点目は、障害者の権利に関する条約第24条の留保及び解釈宣言についてということで御質問をいただいております。
 資料の2ページ目に回答を載せました。1つ目の出典及び原典ですが、education Act 1996年教育法の中の316条のところにある原文です。内容については御覧いただければと思います。
 それから2点目です。権利条約24条の留保及び解釈宣言ですが、こちらも御指摘いただいたとおり留保もしております。プロセスは、2007年に署名後、2009年に留保と解釈宣言とともに批准が行われています。
 留保と解釈宣言についての定義ですが、仮訳として下に載せておきました。留保は、条約の特定の規定の自国への適用上、その法的効果を排除し、又は変更することを意図したものです。解釈宣言については、条約の内容についての自らの理解や特定の条項についての解釈について宣言をするということで、留保とは若干違っているものであるということです。留保内容と解釈宣言につきましては以下に示しております。少し長いのですが、御覧いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【宮﨑委員長】 それでは、引き続いてお願いいたします。

【棟方総括研究員】 国立特別支援教育総合研究所、棟方と申します。フランスについて回答させていただきます。
 質問事項は、就学の決定に当たり、親の同意が必要要件となっているのかどうかということについてです。結論から申しますと、居住地以外の学校などへ学籍登録や特別な学級などの特別な就学を行う場合、保護者の同意が必要と規定されておりますため、親の同意が必要要件になっているということになります。
 具体的に説明をさせていただきます。就学の決定の手続ですが、まず、保護者は居住地に最も近い通常学校へ学籍を登録します。その後、障害のある場合には、保護者からの申し出のみによって、特別な支援を受けて就学するための個別就学計画が作成されます。この個別就学計画は、通常学級での就学を最優先に、また保護者が密接に就学先の決定に関与することが規定されています。しかしながら、その最終決定は県の障害者権利自立委員会が行います。
 この障害者権利自立委員会は、個別就学計画の決定に先立って、15日間の期限付きで、保護者に内容を提示して意見を求めた上で最終決定を行います。もし、個別就学計画が最終決定した場合には、保護者がそれを不服とする場合には調整、調停、又は訴訟の手続がとられます。これは個別の就学計画が、障害者、成人の障害者手当などの決定の、障害者の個別補償プランというものがあるのですが、その一部を成すということから、障害者権利自立委員会の決定に従うということになります。
 その一方で、教育法典には、居住地以外、他の学校への学籍登録や特別な学級などの特別な就学の場合には保護者の同意が必要とされるということが明記されています。このため、個別の就学計画が決定されても、特別な就学について保護者の同意がなければ、その決定された就学計画は実施されません。この結果、子どもは学籍を登録した居住地に最も近い学校へ就学することになります。
 もし、保護者が個別の就学計画を受け入れないという場合には、そのまま、当初学籍が登録された通常の学校へ就学するわけですが、その反面、障害のある子どものための公的な支援の枠組みを受けられないことになります。これを回避するために、先ほどの障害者自立権利委員会は、実際には15日間の猶予の後に、保護者の同意が得られないということが分かったときには、審査のやり直しを含めて、保護者との合意形成、話し合いを継続すると書かれています。
 フランスの説明は以上です。

【宮﨑委員長】 お願いいたします。

【大内上席総括研究員】 続きまして、イタリアについて報告をさせていただきます。5点ほど御質問をいただいております。簡単に御説明させていただきます。
 1点目ですが、盲学校と特別支援学校と言える学校の存在についてということです。これにつきましては、新しくフルインクルージョンのシステムが導入される前の盲学校あるいは聾学校が、国立の中学校あるいは職業高校として存続しているケースがあるということが確認されました。校名につきましてはそのまま、「視覚障害のための」とか、「聴覚障害のための」というような校名が継承されている学校もございました。
 ただ、フルインクルージョンになりましてからは国立学校の位置づけになっておりまして、他の学校と同様にインクルーシブな教育を行うということになっております。つまり障害がある子ども、特に視覚障害、聴覚障害のお子さんが入っているわけですけれども、通常のお子様も入っているという格好になって存続をしているということです。
 例えば、ミラノにある旧盲学校は、1学級が25名と伺いましたけれども、その中に5名の視覚障害の子が入っていて、あとは健常のお子さんで学級が構成されている。そのような仕組みで、学校としてはインクルーシブな教育、日本語で言うと逆統合というような言葉があるかどうかは分かりませんが、そのような形での対応がなされているということです。在籍児童数を見ますと、圧倒的に健常の生徒が多いというようなことになっております。
 それから、旧盲学校及び聾学校から移行した学校につきましては、視覚障害とか聴覚障害が中心ですけれども、視覚及び聴覚の障害に関する、特有の課題に関する指導など、いろいろなノウハウ等を有しておりまして、障害生徒の在籍の比率が、ほかの学校に比べると高くなっているということがいえるということです。こうした学校につきましては、盲学校、それから聾学校について、数校把握しております。
 それから聴覚障害におきましては、職業分野をメインとして、聴覚障害の方を対象とした高校も存続しているということが確認されております。
 2番目ですが、常に医療的ケアが必要な子どもが在籍しているとき、医師やコメディカルスタッフが具体的にどのように対応しているかということについてです。これにつきましては具体例が必要かと思いまして、当たってみましたけれども、御質問いただいたような典型的な例ということが、今回、この期間で見出すことができませんでしたので、具体的な事例については把握できないということでお答えをさせていただきたいと思っています。ただし、制度としてはこういうお子さんに対してもきちんと対応するという仕組みは整えられております。
 それから3番目ですが、小学校の教員資格を取得する教員に対して、特別支教育に関する単位を義務づけることについての御質問でございました。これにつきましては、大学の教育学部における、幼稚園及び小学校の教員養成課程では、通常の学級で障害のある子どもに対応するための内容がカリキュラムに付加されております。それらは、法律が流動的ですけれども、現在、施行されている規定では、400時間を下限として、特別支援教育に関する基本的な基礎内容を習得させること、それから、教員資格を得るための試験にも特別支援教育に関する問題が出題されること、それからインクルージョンの教育を理解させるということで、100時間の実習も行うことが規定されております。
 これにつきましても、例えばですが、カラブリア大学という大学がありますが、その初等教育の教員養成のケースの例を見ますと、4年間のコースで6,000時間の履修をすることになっておりますけれども、そのうち450時間、特別支援教育に関する時間がとられております。
 それから4番目です。障害があるために通常の学校に行っていないという子どもの割合についてですが、これにつきましては、就学率が98%ということで、2%のお子さんがどうなっているかという御質問をいただいておりましたけれども、その内訳について詳細に示したデータというものがございませんでしたので、ここでは不就学者の実態を示すということにつきましても留保させていただきたいと思います。
 それから5番目ですが、北部と南部地域など、経済的状況が違うため、障害のある子どもの教育の対応が異なるのではないかという御質問ですが、イタリアの公立小・中学校は、基本的に国立です。したがいまして、障害がある子どもに対する教員配置は国の基準に基づいておりまして、地域による差はないというのが公的なお答えになります。
 ただ、支援員の負担につきましては県の権限によるものですので、それぞれの地域の財政状況が明確に出てまいりますので、県の財政で賄われております支援員等の配置については、南部と北部では差が出てきているということが想定されます。ただしこれにつきましても、具体的な支援員の数値というものが、統計資料として見出されませんでしたので、ここではこのような説明にとどめさせていただきたいと思います。
 簡単ですが、以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 イギリス、フランス、イタリアについて、私どもの質問に対しての御回答ということで、これについて、さらに何か御質問がございましたらお願いします。
 では、露木委員と山岡委員、お願いします。

【露木委員】 全連小の露木です。
 単純な質問なのですけど、今、イタリアの説明の中で、教育実習が6,000時間というお話をされたと思いますが、6,000時間、教育実習をするということなのでしょうか。

【大内上席総括研究員】 6,000時間というのは、全4年間の教員養成課程の時間数です。

【露木委員】 教育実習の時間数ではないのですか。

【大内上席総括研究員】 教育実習の時間数ということではございません。

【露木委員】 分かりました。あとこの養成課程の中で、400時間を下限とするとか、100時間というのは、養成課程の中でと、そういう意味ですか。

【大内上席総括研究員】 そうです。養成課程の中でその時間を確保するということです。

【露木委員】 分かりました。

【宮﨑委員長】 それでは山岡委員、お願いします。

【山岡委員】 イギリスの1個目の質問は私が出した質問ではないかと思いますが、少しイメージが違うなと思って見ました。第10回の資料では、文言的にはちょっと逆側に書いてあって、要するに保護者が望む場合と、その他の子どもの教育の手当てに矛盾する場合は特別支援学校に行くことになるぐらいの書き方がしてあって、ちょっとこれはすごい書き方だなということで御質問させていただきました。
 それともう一つ、これで合っているなら別にいいのですが、そのときに引用した法律は、ここでいうspecial education needs and disability act 2001となっていて、今ここで言われているのは1996なので、内容が変わっていなければ、良いのですが、5年ほど年代が遡っていますけれども、これはリバイズされていて、変わっているとかいうことはないでしょうか。

【横尾主任研究員】 すいません、就学の基準については1996年の教育法で固まって、そのまま2001年の教育法にも載っているかと思いますが確認いたします。

【山岡委員】 書き方が逆なので、この前ちょっとびっくりして御質問したのですが、前回の第10回資料の保護者が希望した場合、又は他の子どもへの効果的な教育の提供と矛盾すると判断される場合、特別支援学校に行くことになるという書き方は、ミスリードだったような気もいたします。

【宮﨑委員長】 本日の委員会はこれまでとしたいと思います。最後に事務局から事務連絡をお願いいたします。

【板倉特別支援教育課課長補佐】 特別支援教育課の板倉です。3点あります。
 まず1点目ですが、次回、第11回特別委員会の日程につきましては追って御連絡させていただきます。
 2点目ですが、今、議事録の案をお配りしております。そちらにつきましては、修正等があります場合は、8月26日金曜日、一週間後までに事務局まで御送付いただきますよう、よろしくお願いします。こちら、もちろんメールでもファクスでも結構です。
 3点目ですが、今回、非常に多くの配付資料がございましたので、机の上に資料を残していただければ、後日郵送でお送りいたします。よろしくお願いいたします。

【宮﨑委員長】 それでは、本日はこれで閉会といたします。御出席をいただきまして、大変ありがとうございました。
 また、ヒアリングに応じていただいた3市の皆様には、お世話になりました。ありがとうございました。

 

―― 了 ――

 

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