特別支援教育の在り方に関する特別委員会(第7回) 議事録

1.日時

平成22年11月19日(金曜日)14時00分~17時00分

2.場所

三田共用会議所 講堂

3.議題

  1. 論点整理について
  2. その他

4.議事録

【宮﨑委員長】 定刻となりましたので、ただいまから第7回中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育の在り方に関する特別委員会を開催いたします。
 本日は御多忙の中、御出席をいただきましてありがとうございます。
 本日の委員の出欠状況ですが、青山委員、安彦委員、大久保委員、大南委員、岡上委員、貝谷委員、清原委員、杉山委員、山岡委員が御欠席、そのほかの委員は御出席です。なお、太田委員は、御都合で少し遅れていらっしゃる予定です。
 毎回申し上げていますが、本特別委員会においては、御発言される場合には必ず挙手をした上で、お名前を述べてから御発言いただきますようお願い申し上げます。また、通訳の方のために、御発言の際にはゆっくり御発言をいただくようお願いいたします。
 それでは、議事に入ります。これより先は、議事の進行に支障を来す可能性がありますので、カメラの御使用を御遠慮ください。
 本日は、前回の会議において皆様からいただいた御意見を踏まえて、私のほうで委員長代理の石川委員とも御相談の上で、論点整理案を作成いたしましたので、これに基づいて自由討議を行う予定としています。
 それでは、まず、配付資料についての事務局から御説明をお願いいたします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。よろしくお願いいたします。
 まず配付資料の確認です。資料は、議事次第のとおり、資料1から9までの9点があります。資料4は大久保委員、資料6は大南委員から御提出いただいていますが、お二人とも御欠席ですので、紹介いたします。
 それでは、まず資料1を御覧ください。11月15日の障がい者制度改革推進会議において、特別支援教育課の千原課長より、本特別委員会の前回資料の委員長試案を提出して、本特別委員会の審議状況について事務局として説明を行いました。お手元の議事録は、内閣府が今回の本特別委員会に提出するために、短期間でまとめたものです。本日は、千原課長の説明より後の部分、委員により行われた意見交換の部分について紹介いたします。
 それでは、資料1の3ページをまず御覧ください。ここからが意見交換の部分です。
 まず、日本盲人会連合副会長の竹下委員から御発言があり、権利条約を受け入れて、特別支援教育を漸進させていくと言いながら、決定の仕組みを見ると、市町村教育委員会が決定するということで、従来と全く変わっていない。一貫して出てくる「専門的知識を有する人」、就学先決定に専門的知識が要るのか。結局、そういう言い回しの中で、本人の自己決定権や就学先選択権を奪おうとする流れが非常に色濃く出ていると言わざるを得ない。地域の条件を考えることが書かれているが、これはこれまでの統合教育における矛盾や現場における声を反映していないことからくる言葉だと思っており、とりわけ、視覚障害者は、当事者団体の声が意識的に特別委員会から排除されているために伝えることができなかったので残念であり、例えば、点訳の条件の有無で、統合教育を拒否されたり、受け入れられたりするという現実を踏まえたとき、こういう言葉にはならない、という御意見がありました。
 4ページ目ですが、大阪地域生活支援ネットワーク理事長の北野委員から、21ページに添付されている提出にも言及されながら、共有できる部分も全くない訳ではない。財政的な措置を図る観点も含めて、施策の優先順位を上げる必要があるといった記述については、特別支援教育をインクルーシブ教育と変えれば同意できる。教育の予算をOECDでも平均並みにしていくことが大事で、予算も勝ち取っていきたいと思っている、と御発言がありました。それから、問題としましては、委員長試案の「インクルーシブ教育システムと地域性」について「地域の学校に学籍を置いて」とあるが、根本的に違う。はじめから一緒に学校で共に学び、いろんなことをしておれば、目的は達成される。学籍の問題でなくて、普通学校・学級で学ぶことが基本にあれば、目的は達成できる。「通学の利便の向上のために特別支援学校の分室を設置するなど地域化を進めている都道府県もある」という問題ではない。それから、アメリカでは、基本的に「最も制約の少ない」、「最も統合された環境」で教育を受けることがまず権利で、前提であり、基本は地域で普通学校・学級で受けることが原則である。全体を読み、その原則が不明確だと思っている。例えば、「地域の実情等により環境整備に困難が予想される場合には、本人・保護者があらかじめ受けられる教育や支援について説明し、十分な理解を得る」ということは、「ごめんなさい」ということだと思うが、昨年の奈良県のケースもそうだが、それではすまない。バリアフリーとか、インクルーシブなシステムは、することが当然で、しないことは差別であると障害者権利条約にはうたっており、「ごめんなさい」ではすまないことを明確にすべきということ。それから、「予算制約性の問題は、非常に大きい誤解をしており、合理的配慮とあるけれども、均衡を逸した場合、過度な負担は、アメリカのADA法も含め、民間のサービスにはこういう表現があるが、公的なシステムにおいては、当然、バリアフリーをすることが義務付けられており、権利としてのバリアフリーである。学校的なシステム、公的な機関をバリアフリーにすることは最低の条件で、義務付けられており、障害者一人一人により細かい配慮が要る場合に合理的配慮の問題が出てくる。それについても、公教育の場合は連邦政府から予算がおりてきており、アメリカのADA法の仕組みを誤解していると思っている。」それから、「『環境整備が進まないまま、インクルージョンを進めることは結果として教育のダンピングを招いてしまう』というのは、危険な表現だと思っている。こちらにつけてありますが、配付資料にありますように、特別支援学校の子どもにかかっている予算は一人当たり850万である一方、普通学校や特別支援学級のほうは80万~90万で、100万かかっていない。つまり、特別支援学校で10倍以上の予算がかかっており、特別支援学校から普通学校・普通学級に予算が回ればダンピングは起こるはずはなく、より高い支援が普通学校・普通学級で受けられるので、納得のいかない表現であり、考えていただきたい」といった御意見がありました。
 5ページですが、弁護士の大谷委員からは、17ページの資料にも言及されながら、最初の出だしが、インクルーシブ教育システムにおいて重要なことは、多様な学びの場を用意しておくことであるという結論は、論理的整合性も含めて全く理解できない。従来から、インクルーシブ教育システムというのは、学びの場を統一して統合し、そして支援することである、これは一致していることだと思っていること。統合して支援するにもかかわらず、委員長試案は、形式的に一緒にするのではなく、多様な学びの場をと言っており、形式的に場を一緒にして、それですむとはだれも思っていないこと。必要な多様な支援はあっても、多様な学びの場になるのか理解できないこと。「統合した上で多様な支援を」であれば一致したと思えるが、スタートが違うので、再考してほしいこと。「共に学ぶ」と言いながら、教育条件が大幅に改善されない中、形式的な平等化になってしまうと言っているが、実質的に平等にすることは、まず、今お金がない、何もないからできない、支援はないということを前提にして話が進められているようであり、再考していただきたいと思っている。居住地校に副次的な学籍を置くことについては、原則、学籍を地域の学校に置き、支援籍を特別支援学校に置くならわかる。交流教育を盛んにやっているとのことであるが、できておらず、一年に一回、しかも間接交流しかない、連れていくのも大変、学校の先生も大変と。地域に支援籍にと、特別支援学校から地元校に連れていかなければならないが、学校の先生はそんなに連れていけず、だから交流できていない。できても、仲間になるような交流教育はできていない。これでインクルーシブ教育システムとは言えない。就学先決定の仕組みについては、全く現状どおりであり、就学先決定を総合的に判断する仕組みは、昭和53年の通達以来ずっとやってきて、変えたのは平成14年の認定就学のときに変えただけで、通常だったら特別支援学校に行く子も、地域の学校に受け入れ体制があれば、地域の学校に措置していいという認定就学を入れたときに、通達を変えた。これと今の委員長試案とほとんど文言が同じで、どこも違わないと思う。第22条の3の医学モデルの典型の表を撤廃し、一律の就学基準をやめようというスタンスに立つのか。就学基準を設けるならば、権利性のある規制にするために、どうしたいいのかというのを議論してほしい。決定手続の中で、就学基準という言葉を生かし、総合的判断と言いながら、30年ずっと同じことをやっていることが委員長試案で出るのか。全く理解できない。いろいろなことを議論されているなら、もう少しいろいろな資料を見ていただきたい。通達とどこが新しく変わるのか、精査してほしい。就学先手続きだけでも、もう少し資料を見直していただき、もう一度検討していただきたい、といった御意見がありました。
 障害者インターナショナル日本会議事務局長の尾上委員からは、7ページですが、韓国でもインクルーシブ教育が原則であることが明確になった上で、学校において、運用上、まさに義務として条件をつくらなければならない。アメリカと同様である。推進会議では議論をし、まとめ上げた第一次意見書を正確に読んでほしい。推進会議は形式的に場を一緒にするなどと一言も言っておらず、原則は地域、その上で、当該学校が必要な合理的配慮や支援を講ずるということを言っており、あたかも推進会議が形式的に場を一緒にすると言っているかのような誤解に基づく記述はやめていただきたいと思っている。形式的に場を一緒にするというよりは、地域の学校を原則にするのが当たり前で、その上で本人・保護者が希望する場合、特別支援学校も選べる仕組みにした上で、どこにおいても必要な合理的配慮と支援を得られる仕組みを推進会議は提案している。誤解に基づいた記述で試案をまとめないでいただきたい。就学先手続きの仕組みで、特別支援学校に原則就学するという従来の就学先決定の仕組みを改めとあり、ここだけ見ると期待してしまう。原則地域の学校で学ぶという仕組みに改め、本人・保護者の希望を尊重して、特別支援学校も選べるという仕組みにしていただけたらいいが、そうではない。推進会議は特別支援学校を廃止するといった記述は一つも第一次意見にはない。本人・保護者が希望する場合には、今までどおり特別支援学校を選べる、といった意見がありました。また、本日資料として21ページに添付しています東大阪市の資料についても、御紹介がありました。まず障害のあるなしにかかわらず、就学通知をその地域の小・中学校に通知を出した上で、その上で本人・保護者が希望する場合、12月までに教育委員会や学校に申し出れば特別支援学校も選べる、希望しなければ、当たり前に地域の学校に行ける。2年目になっているが、現場は全く混乱していない。このような仕組みをしっかり事務局として学んでいただいて、資料提供を特別委員会にしっかりしてほしい、といった御意見がありました。
 続きまして、8ページですが、東京大学大学院特任准教授の長瀬委員からは、国連の人権高等弁務官事務所が本年4月に出した障害者の権利条約のモニタリングに関する資料について、これは、この特別委員会でも第2回で大久保委員から資料として出していただいているものですが、そのモニタリングの質問に対応する観点から考えたときに、就学先の現在の仕組みは非常に問題がある。本人・保護者の同意を確保するという意見を反映していただきたい、との御意見がありました。
 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会常務理事の新谷委員からは、多様な学びの場のカスケードは、価値序列をつけているように見える。どんな学びの場も価値は同じ。支援の在り方に異なった面があるというインクルーシブ教育の理解についての考えを聞かせてもらいたい、との御質問がありました。
 障がい者制度改革推進会議の担当の東室長からは、ジェネラル・エデュケーション・システムの資料について、外務省のいつの時点の解釈か、という御質問がありました。
 これについて、千原課長から、新谷委員の質問については、カスケードについて、それぞれが大事な学びの場の1つであると思っていると回答し、また、東室長の質問については、本特別委員会で紹介する前に、文部科学省から外務省に確認して提出しているとの回答をしています。制度が変わっていないという指摘については、漸進的に制度を改めていくというのが、今の委員長試案の方向感であるとの説明を行いました。
 10ページですが、北野委員から、「学校や教育委員会は障害のある子どもを地域で受け入れるという意識をもって、就学決定に臨む必要がある」という記述について、意識だけでなく、もう一歩踏み込んだ表現をし、基本的に地域で受け入れることが原則としてあるという方向ならば、明確にしてほしい、との御意見がありました。
 このほか、本特別委員会のスケジュールについての確認、それから、この障がい者制度改革推進会議の議論を本特別委員会に伝えてほしいといった御要望がありました。
 以上、11月15日に行われました障がい者制度改革推進会議の、11月15日に行われました議論について説明させていただきました。
 次に、資料2を御覧ください。前回、道徳教育の内容や指針、それから命の教育についての御質問がありましたので、あくまで参考程度のものですが、事務局で整理いたしましたものを参考配付させていただきました。「道徳の時間」の時間数や学習指導要領でどのようなことが示されているかを簡単にまとめていますので、後ほど御覧いただければと思います。今後の審議に御活用いただければ幸いです。説明を終わります。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。11月15日の障がい者制度改革推進会議では本特別委員会の委員長試案をもとに説明していただきましたが、大変厳しい御指摘をいただいたことがよくわかるかと思います。これから、障がい者制度改革推進会議の御意見等も踏まえながら、論点整理について自由討議を行いたいと思いますが、その前に、前回試案という形で取りまとめた論点整理について皆様からいろいろ御意見をいただきまして、それらを念頭に置いて整理いたしましたので、私から少し説明させていただきます。
 資料3の論点整理案を御覧ください。資料3は前回皆様方からいただいた御意見を中心に、石川委員長代理や事務局と相談をして整理をしたものです。また、前回うまく整理できなかったと思われる部分についても、皆さんからメール等でいただいた多くの御意見をもとに、文章の整理、あるいはポンチ絵図等の整理もしました。時間の制約上、石川委員長代理と十分に御相談できなかった分もあり、意見が完全に一致しているわけでもありませんが、まずはとにかく本日皆様方に御議論をいただく材料として、特別委員会としての論点整理案という形にしてみました。その点を含みおきいただきたいと思います。
 前回も申し上げましたが、今回の論点整理は、まず総論としての方向性を出すことを重視しています。また、これまでの特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議の報告、それから障がい者制度改革推進会議の御意見も念頭に置きながら、特に障がい者制度改革推進会議の中で御意見があります就学先決定の方向についても、具体的な方向性を示す作業をしていきたいと思います。それに伴う環境整備については、少し時間をかけて検討していくことが必要かと思われますし、教職員の確保とか専門性の向上といったことについては、同じ中央教育審議会の中で設けられている教員の資質能力向上特別部会との兼ね合いで検討を進めていく必要があると思います。後ほど事務局からも説明をしてもらいますが、私からは、変更のポイントについて御説明申し上げます。
 1つは、前回、複数の委員から御指摘をいただきましたとおり、項目ごとのところ、四角囲みのところに、「現状と課題について」を挿入しています。例えば2ページを御覧ください。具体的な項目についてこれから申し上げますが、総論のところ、四角囲みでポイントを書いています。特に2つ目の○ですが、インクルーシブ教育システムにおいては、同じ場で学ぶという教育を追求するということであって、それと同時に、特別なニーズのある児童生徒に対して、その時点で教育的ニーズに的確に応える指導を提供できる「多様な学びの場」を用意するということにしています。カスケードについては、いろいろ御意見をいただき、非常に誤解を与えてしまいましたが、あくまでも連続的という意味であり、申し上げるまでもなく、私の考え方には上下関係があるということでは決してありません。上下関係は持たないということで、改めて26ページに参考資料5として図を添付しました。
 総論の本文に戻りますが、短期、中期、長期についての御議論があって、具体的ではないという御意見がありました。確かに、短期が何年ぐらいと示せればいいのですが、例えば長期といった場合にどうするのかというようなことに関しては、本部会だけで短期とか中長期ということを示せるのかという問題があります。そのあたりについては、国のさまざまな基本計画等の中で示されている計画の期間等との調整にもなると考えていますので、本日の案では、3ページの一番下の○6になりますが、短期、中長期の2つに分ける形でお示ししました。これについても、ぜひ御意見をいただければと思います。短期のところについて、特に就学相談・就学先決定のところは、できるだけ早い機会に整理していきたいという考え方で、教職員の専門性の向上のうちの研修については、短期に集中的に処理できることかなと思ったりしています。
 また、5ページの一番下の○4を御覧ください。前回、地域の教育資源の組合せを活用するという学校クラスターがどういうものかという御質問、御意見が非常に多くありましたので、改めて特別支援教育のスクールクラスターという考え方で整理をしたいと思っています。前回イメージ図を分かりやすく描けませんでしたので、イメージ図についても30ページで参考資料8として改めて示していますので、御参考にしていただければと思います。これは地域でそれぞれの学校が特徴を持っていくという考えの下で、学校を1つの教育資源として、さまざまな学びの場の一環として活用できる仕組みにしたいという考え方です。特に地方では特別支援学校が少ない地域も多くありますので、具体的にセンター的機能を活用することが難しいなど、さまざまな課題があります。そういったことを念頭に、特に小学校段階におけるスクールクラスターについて描いています。これは縦軸と横軸でものを考えていくという考え方にしているところです。地域の各学校に通っている子どもの教育ニーズに応える体制を整備したいという願いから出たものです。
 次に、6ページの下の2の「就学相談・就学先決定の在り方について」を御覧ください。7ページの一番上の○ですが、就学先については、前回さまざまな御意見をいただきました。どのように合意形成のプロセスを持つかという観点、学校、教育委員会や保護者の役割分担等の観点から整理をしてみたものです。まずは、本人・保護者に対する十分な情報提供が重要であろうということ。次に、本人・保護者の意見を最大限に尊重して、さらに本人・保護者と教育委員会、学校が教育的ニーズと必要な支援について合意形成を図っていきながら、最終的に市町村教育委員会が決定するとしてみました。イメージとしては、32ページの下の図を御覧ください。合意形成を図ることがとても重要であると考えています。また一方で、国と地方公共団体が責任を持って教育を実施するという日本の制度からすると、教育委員会が最終的に決定するということが適当と考えられるということで、こんな整理をしてみました。前回も述べましたが、このような就学先決定の仕組みを変えていくに当たっては、本人・保護者と教育委員会、学校等の意見が一致しない場合の調整のための仕組みが重要になってくるものと思います。また、対峙的なものではなくて、円滑に合意形成を図る観点から取り組まれることが重要と考えています。また、就学先は一度決めたら変えられないということではなく、非常に柔軟な仕組みにしていくこと、ここでも何度も意見も出されていますが、そのような考え方を関係者間で認識していただく必要があると思います。
 また、3については、「特別支援教育を推進するための人的・物的環境整備」から、「インクルーシブ教育システム構築のための人的・物的環境整備」と変えました。
 以上、変更のポイントについてだけ、私から申し述べさせていただきました。
 それでは、論点整理について、事務局から御説明をお願いします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。今ほど宮﨑委員長から修正のポイントについて御説明いただきましたので、私はそれ以外の主な変更点について確認いたします。
 まず資料3の1ページを御覧ください。1ページ、「はじめに」ですが、前回は総論に記載がありました中央教育審議会のこれまでの答申についての記述を○3に移動いたしました。
 それから、2ページ目を御覧ください。1の「総論」の四角囲いのポイントですけれども、2つ目の○で、「インクルーシブ教育システムにおいて重要なことは」に続けて、「同じ場で共に学ぶ教育を追求するとともに」という表現を追加いたしました。それから、形式的に場を一緒にするという記述については、「単に場を一緒にするのではなく」といたしました。
 それから、4つ目の○ですが、宮﨑委員長からも御説明ありましたけれども、前回、短期、中期、長期としていたものを、短期と中長期という形で記載いたしました。
 それから、その下の「現状と課題について」では、主に特別支援教育の現状について記述しています。
 3ページ目を御覧ください。3ページ目の(1)の「インクルーシブ教育システム(包容する教育制度)の構築に向けた方向性」では、○3で、先ほどの2ページ目のポイントの2つ目の○とほぼ同様の記述を記載しています。
 それから、その下の○6の今後の進め方については、短期、中長期という分け方をしておりまして、先ほど宮﨑委員長から御説明ありましたけれども、短期は就学相談・就学先決定の在り方、教職員の研修について、中長期的には合理的配慮を含むインクルーシブ教育システム構築のための人的・物的な環境整備、教職員の確保及び専門性の向上のための方策、特別支援教室について、体制面・財政面も含めて検討し実施していくということとしています。最終的には、障害者権利条約の理念が目指す共生社会の形成に向けてインクルーシブ教育システムを構築していくことを目指すという記載としています。
 それから、4ページ目の(2)の「共に学ぶ」ですが、○1、○2は、前回1つの文章にしておりましたが、整理して2つに分けています。
 それから、○4の特別支援教育とインクルーシブ教育システムの関係に関する記述ですが、前回委員の御指摘を踏まえて、このような記述で整理いたしました。
 それから、5ページ目を御覧ください。「インクルーシブ教育システムと地域性」の○2で、国としての制度設計の姿勢、それから、ナショナルミニマムといった御指摘を追加いたしました。
 また、○3では、警察と司法の関係についての記述を追加いたしました。
 ○4につきましては、先ほど宮﨑委員長からの御指摘のあったとおり、スクールクラスターという形で整理いたしました。
 6ページの○5では、通級による指導のうち、巡回指導によるものを追加しました。
 それから、次に、2の「就学相談・就学先決定の在り方」ですが、7ページ目の最初の○については、先ほど宮﨑委員長が御説明されたとおりの形いたしました。
 その下、四角囲いの下の「現状と課題について」で、就学先決定の制度改正の状況と現在の就学先決定の課題について、これまでの御議論を記述いたしました。
 それから、(1)の「早期からの教育相談」、(2)の「就学先決定の仕組み」、(3)の「一貫した支援の仕組み」の記述につきましては、文の順序を改めて整理して、内容を追加いたしました。
 例えば、8ページの○4では、個人情報の取扱いについて、留意して活用を図るという記述を追加いたしました。
 それから、同じく(2)の○1ですが、仕組みを変えていくために制度改正を行っていくという文言を追加いたしました。
 それから、9ページの○3ですが、学年ごと、学期ごとに個別の教育支援計画に基づく関係者による会議などを行うということで、就学先の柔軟な仕組みの一環として、そのような記述を追加いたしました。
 それから、9ページの○4では、親身になって相談を行うことで保護者との信頼関係が生まれるという記述を追加いたしました。
 ○5では、保護者の就学相談・就学先決定に臨む視点という形で追加いたしました。
 それから、12ページの3の「インクルーシブ教育システム構築のための人的・物的な環境整備」ですが、先ほど宮﨑委員長から御説明いただきましたように、見出しの言葉を、「特別支援教育」から「インクルーシブ教育システム」に変更いたしました。
 また、12ページの四角囲いの3つ目の○については、保育所を追加すべきとの御指摘に基づき、文言を整理いたしました。
 その下の「現状と課題について」では、小・中学校等と特別支援学校で、それぞれ環境整備を進める必要があるといった内容を記述いたしました。
 12ページの(1)の「環境整備全般」ですが、○1の指導方法の充実のところでは、括弧書きでマネジメント能力という記述を追加しています。それから、○1の最後で、私立学校への配慮を追加いたしました。
 ○2の部分は、前回の御指摘に基づいて、特別支援教室構想について記述を追加しています。
 それから、13ページの(3)の「交流及び共同学習」ですが、○1で、交流及び共同学習の意義について、追加で記述いたしました。
 それから、(4)の「特別支援学校のセンター的機能の活用」の15ページの○4ですが、特別支援学級について、特別支援学校のセンター的機能に類する役割を持たせるというような記述を追加いたしました。
 次に、4の「教職員の確保及び専門性向上のための方策」では、現状と課題といたしまして、専門性の担保として、免許状の取得率を課題として挙げています。それから、教員の研修、採用・人事配置を課題として記述しています。
 (1)の「教職員の専門性の確保」では、16ページの○4で、学校経営と評価について記述いたしました。
 それから、(2)の「教職員の養成・研修・免許」では、16ページ、○2で、国立・私立学校関係者、保育所関係者も特別支援教育に関する研修を受講できるようにすることが望ましいとの記述を追加いたしました。
 ○3では、例として、特別支援学級の新任担当研修についての記述を追加いたしました。
 ○7では、全国的な教員の資質の向上として、ナショナルセンターとして国立特別支援教育総合研究所の事業の一層の推進、それから、通信制大学を活用した免許状の取得についての記述を追加いたしました。
 それから、○8では、特別支援学校の研修について、記述を追加しています。
 以上で説明を終わります。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それでは、ここから自由討議といたします。今まで事務局から説明がありました障がい者制度改革推進会議の御意見等についても、あわせて御議論いただければと思います。
 本日の進め方ですが、今回はどの部分から御発言いただいても結構です。それでは、どなたからでも結構ですので、御意見をいただければと思います。
 どうぞ、尾崎委員。

【尾崎委員】 論点整理の改訂版を作成いただき、どうもありがとうございました。前回疑問に思っていたところが反映されており、用意してきた意見が大分取り入れられている感じもしますが、幾つか意見させていただきたいと思います。
 1つ目は、スクールクラスターの件です。本文は、5ページから6ページにあり、域内の教育資源の組合せ(スクールクラスター)と記載されています。図は先ほど御紹介ありましたように、30ページに添付されています。30ページに記載のあるセンター的機能の中に、これは特別支援学校のセンター的機能のことだろうと考えていますが、地域によっては特別支援学校が近くにないという地域もあるということを考えますと、特別支援学級もセンター的機能を得るような仕組みを入れたらどうかということです。それについては、15ページの○4に「特別支援学級をその市町村の特別支援教育のセンターとし、必要に応じ、特別支援学校のセンター的機能に類する役割を持たせることも考えられる。」と新たに追加されていますので、それとの関連で、クラスターの中にも位置付けることがあってもいいのかなと思います。ただ、その場合に、特別支援学級の専門性の向上、研修、それから人材確保についても重要なので、そういう記述も後では必要かなと考えるのが1点です。
 それから、2点目ですが、特別支援教室についての記述です。6ページの○5の下のほうに、通級による指導についても、児童生徒の負担軽減のため、巡回指導により、児童生徒の在籍校において実施している例もあるとあります。これは通級指導に近い形だろうという、そういう例があるという話と、それから、新たに加わったところで言えば、12ページのところに、特別支援教室構想が出されています。東京都においても、特別支援教育推進計画第三次実施計画が11月に発表されましたが、そこでも、児童生徒が通級に通うのではなくて、指導を在籍校で受けられるよう先生が巡回をして、特別支援教室で受けられるような形にしていく、先生が動くというような構想が打ち出されております。そういった意味でも、非常に重要なことであるということと、もう一つは、ある県は、通級による指導を非常に強化したところ、固定学級の児童生徒増、それから特別支援学校の児童生徒増がそんなに見られなかったというような報告を、全国の特別支援学校長会の理事・評議員会で聞いています。そういう例もありますので、インクルーシブ教育システムを考えるに当たっては、特別支援教室構想はぜひその中に入れて、実現をしていただければというのが2つ目の意見です。
 それから、3つ目を申し上げます。17ページの○7に、国立特別支援教育総合研究所の研究事業、研修事業、情報事業を一層推進ということですが、これも同感です。特別支援学校長会は、特別支援教育総合研究所と一緒になって調査研究をしたり、それから情報収集をしたり、啓発活動にも一緒に行ったりすることがあります。特に今後要望したいのは、特別支援教育を進めていく上で、あるいは、インクルーシブ教育システムを推進する上で、学校長の役割が非常に大きいと思います。これは特別支援学校だけでなくて、小・中学校、特に通常の学校、あるいは特別支援学級を設置している学校長の研修の、その役割は、特別支援学校だけでは当然担いきれません。国の機関とも連携協力しながら、ぜひ進めていきたいと考えていますので、より一層この構想を進めていただければと思います。
 以上3点です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。30ページのスクールクラスターのイメージ図では、今、尾崎委員からお話があったようなことを、含み込んで考えた中身です。
 特別支援教育構想のモデル事業がかなり進んでいて、地域内になかなか大きな資源がない場合に、互いの学校が特徴を持った形で整備をしていく。全ての学校に全ての機能を持たせるということは、なかなか実現が難しいので、特色を持たせる。その中の核になるのが特別支援学級であると思いますので、そこと支援教室との連携で各地域が整備されていくと、特別支援学校がないところでも対応が可能となったり、あるいは、福祉圏域の中の機関に恵まれていないところでも、何とか対応できるのかなと。幾つかの福祉圏域を念頭に置きながら、お互いに交流をしていくというような仕組みもできれば、これは子どもの側で見る場合と、それから大人というか、要するに、教員の研修体制の整備という視点でも有効に機能していくのではないか。今日、いろんな視点から考えたときに、厳しい状況がたくさん生まれているので、その点で特別なニーズを持っているお子さんたちへ支援をする仕組みを地域内につくっていく、できるだけ地域性を生かしていくという視点が必要と考えました。特にインクルーシブな教育システムをつくっていく場合には、これは必ず必要と考えました。まだ十分整理できている図ではありませんが、前回の図よりは少しわかっていただける中身になったのかなと思っています。
 少し補足的に説明させていただきました。いろんな視点から御意見を頂戴しました。ありがとうございました。
 それでは、新藤委員、お願いします。

【新藤委員】 ありがとうございます。全日本中学校長会の新藤です。全日本中学校長会でも、前回配付されました論点整理(委員長試案)を全国の校長に検討していただており、意見を集約しているところです。今日新たに提出された資料3を見ますと、全体的に全日本中学校長会としては、ここにまとめられているものはぜひ実現をしてほしいと強く思っています。
 特に、12ページ以降の3の「インクルーシブ教育システム構築のための人的・物的な環境整備について」の部分は、最も関心のあるところです。その関心の1つは、先ほど尾崎委員からも御発言がありましたけれども、校長のマネジメント能力を含めた専門性を、どう、どこで高めていくのかという部分だと思います。これまでは、どちらかというと、教員個々の個人的な努力といったところにかなり頼られて、そういった努力をした人間を管理職として登用していくという考え方もあるわけですけれども、それだとやっぱり十分に確保できていかないし、やはりかなり格差が出てくる可能性はある。そういう面では、やはり教員養成の段階から始まって、現職研修を含めて、かなりきめ細かく特別支援教育というか、インクルーシブ教育システムに関する知見を、あるいは実体験を深めていく必要があるのではないかと強く思っています。
 例えば東京都では、新規採用教員の初めての異動の場合は、特別支援学校なり特別支援学級への異動が、採用段階で義務付けられているわけですけれども、このあたりは積極的に考えていいのではないかと思います。また、特別支援教育コーディネーターですけど、現在、東京都では特別支援教育コーディネーターを担う人材を1年間特別支援学校に派遣して、そこで実地体験を積んで、戻って、その能力を発揮してもらうという形でやっています。ある程度経験を積んできた段階で、こういったことをやっぱりきめ細かくやっていただきたい。そういうことの中から、マネジメント能力の高い管理職も育ってくるのではないかなと思います。そういったところは非常に重要なポイントとして考えています。
 この辺は、現在、中央教育審議会初等中等教育分科会に教員の資質能力の向上に関する特別部会がありまして、教員養成並びに現職研修の在り方、これは管理職も含めてですが、どのように在るべきかということについて検討が進められています。ぜひその特別部会の議論とリンクするように、今回の委員長試案も、その特別部会に報告していただき、このような視点でも、教員養成の段階あるいは現職研修というところを徹底していく必要があることを報告していただきたいと思います。
 それから、もう1点は、就学相談・就学先決定に当たっての部分ですけれども、自分の勤めている学校の学区内に、どのような教育ニーズを有するお子さんがいるのかということに関しては、早い段階からの情報がなかなか来ない。小学校6年生から中学校に進学する段階で、情報がかなり押し迫ってから入ってきたり、あるいは就学相談にかかる段階で入ってくるというようなところがありますが、これではやはり遅いと思います。もっと言えば、私は中学校ですので、もっと早い段階から、例えば、ここにもありますけれども、入学の段階だけでやるわけでなくて、発達段階に応じて、必要に応じて相談を行っていくということがありましたけれども、その中に中学校の校長や教員も加わり、地域の実態、それから、子どもたちの実態に応じて、そして、13ページにもあります合理的配慮という部分でいけば、物理的なものもありますけれども、やっぱり教員側のソフト面での準備だとか、意識の問題もありますので、そういったことがやっぱり十分準備をされていくならば、保護者の要望等、あるいは本人の意思とか、そういったものをかなり尊重したことに向けて動けるのではないかと思います。そういった点での今後の在り方というところも、私どもも積極的に発言をし、実現をしていかなければいけないと思っています。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、中澤委員、お願いいたします。

【中澤委員】 中澤です。3点意見を述べさせていただきます。第1は、カスケードという言葉について幾つか議論があるようですが、辞書で調べますと「滝」という意味ですので、上から下に落ちたら、下から上に上がらないという意味もあります。これは幾つかの批判もあったようですが、連続体をもう少し柔軟な、上から下だけではなく、必要に応じて移動できるというイメージを与えるためにも、別な言葉がいいのではないかと感じました。
 次に、12ページの「インクルーシブ教育システム構築のための人的・物的な環境整備について」の現状と課題について、意見を述べさせていただきます。ここでは、「発達障害を含め、教育的ニーズの異なるさまざまな障害のある子どもが学んでおり」と書いてあります。このあたり、私の立場で国際的なデータの比較をしたとき、日本では障害児と認定されている子どものパーセンテージが非常に低く、現実的に既に通常の学級に多くの障害のある子どもが、海外の見方からするととても多く入っているはずです。それをまず押さえるということが、この現状と課題ではとても大事なことではないかと思っています。それは単に知的障害のない発達障害にかかわらず、実は多様な障害の子どもが既に支援なく入っているという現状を、ここで押さえていただきたいと感じました。
 また、短期、中長期ということがここにももし当てはまるのであれば、最初に取り組むべきことは、既に小・中学校にいる障害のある子ども、その範囲をどう決めるかということも大きな課題ですが、まずそういう現実をきちっと把握して対策をつくっていくということと思いますので、そのことを現状と課題に盛り込めないだろうかと感じました。
 ちなみに、この論点整理の28ページから29ページには、日、英、米の特別支援教育として特別な指導を受けている児童生徒の割合が、改めて掲載されております。この統計をまた後で見ていただきまして、日本が、いかに知らないうちに通常の学級にたくさん障害のある子が入ってしまっているかというところを踏まえていただきたいと思っています。それらの子ども、既に入っている子どもに適切なインクルーシブな支援を提供するということが、第一に大事なことではないかと思っているからです。
 同じく、この現状と課題についての、次の小・中・高等部、特に高等部において特別支援学校への希望する子どもが増えているという事態です。これは前回の幾つかの資料にもあったと思いますが、特別支援学校の高等部、あるいは高等部だけの学校に希望者が非常に増えている。それを考えて整理していかないと、「増えたから設備を増やしてしまう」ということを急速に進めてしまうと、比較的低い分離型の学校に入っている率の低い日本が、障害者権利条約の批准とともに、その率が高まっていくという統計的な問題も生じる可能性があると思います。この中には、もしかしたら通常の学校での支援がより高まれば、このように特別支援学校に行く希望というのは減る可能性もあるのではないかと感じているところです。
 ちなみに、日本ですと、通常の学級に親は行かせたい、でも行政側としては特別支援学校に行かせたいという対立を想定するのが普通ですが、インクルーシブな教育制度が進んだ国々で生じる親と行政局との間での就学先の配置に関する問題は、より支援、より多くのお金をもらえる特別支援学校に親は通わせたいと思っても、障害が軽度なために通常の学級に通わせるという事例がとても多いです。今は日本的な状況だけを見て、親との対立の構図を一方的に考えているところですが、将来的に、一人一人の障害のある子どもに適した資源がつくような制度になったときに、より高い資源を提供できる場というのは、実はだれでも希望すれば入れるわけではないということは、インクルーシブ教育の制度が進んだ国々の経験から学べると思います。以上、3点です。

【宮﨑委員長】 中澤先生、資料8を提出いただいていますので、紛争解決の方法としてのMediationについても御説明いただけますでしょうか。

【中澤委員】 それでは、資料8を提供させていただきましたので、続けて説明いたします。Mediation、前回提出した資料では「仲裁」と書きましたが、今回、「仲介」という日本語訳に変えさせていただきました。なぜならば、仲裁とすると、間に入る方の判断等が含まれますが、このMediationという紛争解決方法では、仲介をする方は、基本的に判断とかをしてはいけないことになっています。保護者と行政あるいは学校と意見の対立、あるいは、その支援に不満がある場合、最もよい予防の方法は、いいコミュニケーションと正確な情報を提供するということであるとアメリカやイギリスでは押さえていまして、この予防については、以前紹介いたしましたイギリスのペアレント・パートナーシップ・サービス、あるいはアメリカの両親情報研修センターなどが大きな役割を果たしています。しかし、こういう情報提供等にもかかわらず紛争が深刻化したときには、法的に定められた不服申立ての制度が、アメリカとイギリスでは法的に定められています。ただ、この法的に定められた解決方法は、時間とお金と労力と、そして、判決のようなものが出た段階で、両者の関係にかなり敵対的な関係を残してしまい、あまり好ましくないというのが経験から学ばれています。そのために、イギリスとアメリカの国で導入した制度として、このMediationというシステムがあります。
 これは、紛争状態にある保護者と学校あるいは地方行政局が、両方同意して初めて成立します。中立の立場の仲介者のリストが、アメリカでは州が、あるいはイギリスでは地方局がリストを持つ必要がありまして、この中立な立場の方が両者の間に入って、円滑にコミュニケーションを進め、お互いの言い分をきちっと出して、その中で合意点を一緒に見つけていき、解決策を探るというシステムがあります。この間のやりとりについて、アメリカの州によって若干の違いはあるようですが、基本的にその仲介者の費用は行政で負担しているようです。
 この仲介を通してやりますと、双方が話し合って、お互いに解決策を見出していくために、お互いの理解も深まり、どちらかというと、終わった後に関係性がよくなるというよい面と、それから、お互いが意見を出し合って出す解決策のため、守られやすいという利点、そして何よりも、安い費用と迅速な対応で進められるということで、法的な手続きをとろうとしている方々には、まずこれをやることを勧めて行っているようです。
 この「仲介」というシステムは日本では馴染みがないので難しいのですが、アメリカやイギリスでは、高い裁判費用を払うよりは、例えば、離婚をしたときに、どちらの親が子どもの親権を持つかといったところを、お互いが敵対的にならないように、仲介を入れて話し合って合意していくということをやっていまして、そういった仲介者を使うということが、かなり社会的に定着していますので、使いやすいシステムだろうとは思います。将来、日本でもこういったシステムを検討してもいいのかなと思いまして、御紹介を兼ねて、資料として提出いたしました。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。最後のMediationの件については、就学先決定の在り方に関する、私どもの前のイメージでは、第三者調停機関みたいなものという感じでしたが、今のお話を承ると、より保護者と学校との調整というか、調停をしていく仕組み、家裁の調停に若干似ている中身かなと思って聞かせていただきまして、できやすい仕組みかもしれないと思いました。これもぜひ御議論の中に加えていただければと思います。
 それでは、お待たせしました。先に佐竹委員、お願いします。

【佐竹委員】 全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会の佐竹です。今日は2人分お話しさせていただきたいのですが、まずは資料6を御覧ください。全国特別支援教育推進連盟の大南副理事長は本日御欠席ですが、私はこの推進連盟の理事も兼ねていまして、副理事長という立場から代弁を頼まれましたので、お時間をいただき発言したいと思います。資料を御覧いただければと思いますが、大南理事長から、3点ほどあります。2の「就学相談・就学先決定の在り方について」ですが、保護者の意見のみを重視するのではなく、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、教育学、医学、心理学等専門的見地からの意見、これが重要であるということ、その上で、最終的には市町村教育委員会が決定することとするということです。
 3の「インクルーシブ教育システム構築のための人的・物的な環境整備について」では、教員の配置を工夫することにより、「巡回による指導」を充実し、「児童生徒が動く」ことから「教員が動く」ことを検討するべきではないかという御意見です。
 最後に、4の「教職員の確保及び専門性向上のための方策」ですが、これは私も記憶がありますが、教育職員免許法では、附則において「当分の間、特別支援学校教諭免許状がなくても、特別支援学校の教諭になることができる」となっています。法律を改正した翌年から、その免許状を持った先生が膨大に増えるということはあり得ませんので、これが附則としてついたときには、当然、教諭免許状を持った先生をたくさん養成しなくてはならないということが前提でした。これを、これまで幾度も議論されて、廃止の方向が出された経緯があるはずということです。
 続きまして、佐竹として少しお話しさせてください。就学先決定についての親の在り方がたびたび出てまいります。私たち、私も含めました親は、就学相談に行きまして、多くのいろいろなことを話し合い、子ども自身も面談をした上で、こういった学校がいいのではないかということが相談としてあります。これまでもそうですが、就学先の決定には、とかく決める権利はだれにあるかという議論になりがちです。しかし、そうではなくて、障害児本人が成長するための教育を大前提に考えてほしい。例えば、通常の学校を希望している親御さんも、通常の学校であれば我が子はよりよく成長するという思いでおっしゃっているわけです。また、専門性の教育の充実した特別支援学校、特別支援学級を選ぶ親御さんも同じです。就学先の選択はだれのためであるのかということを前提に考えていただけたら、一番よろしいのではないかと思います。
 そのためには、個々のニーズに応じた個別の教育支援計画を、学校へ行ってから作成するのではなくて、早期の、子どもに何らかの障害があるとわかった時点から計画は立てていかなくてはならない。発達障害のお子さんであれば、支援ノートとか支援ファイルなどというものが、自治体によっては取組が始まっているとも伺いました。そういったものが積み重ねて、就学先決定が決まっていくのが自然ではないかと思っています。
 前回の委員会のときに、乙武委員から、親御さんが就学先をめぐって裁判に持ち込むというのはどのような思いであったのかというお話もありました。本当にお金もかかれば、時間もかかり、また、裁判によって傷つく本人もいたりするのではないかと、つらい思いをいたします。就学相談は、保護者にとっては子どもを育てる途中の出来事です。本人・保護者の気持ちに添ったものであれば、保護者と対立するような構図にはならないと思っています。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、品川委員、お願いいたします。

【品川委員】 ありがとうございます。品川裕香です。よろしくお願いします。すばらしくまとめていただきまして、ありがとうございました。すごいと感銘しながら拝読しましたが、幾つか付け加えさせていただければと思います。
 毎回お伝えしていて、今までの流れがあるのはよく存じ上げていますが、障害のある子、ない子と、この二項対立でとらえると、やはり発達障害が登場した現在は、非常に障害の線引きが難しく、この枠組みから漏れてしまう子どもたちがいます。軽度の知的障害の子どもたちはどうするのか。一見ADHD・LDに見えてあまり診断されることのない軽度外傷性脳損傷の子どもたちはどうするのか。あるいは、これも日本ではあまり診断されていませんが、学校では学習不振児とみなされている特異性言語障害の子どもたちはどうするのか。あるいは、特異性言語障害にもディスレクシアにも分類されない、意味理解が極端にできない意味理解困難な子どもたちはどうするのか。この意味理解困難児というのは、今、英国で注目されてきていまして、ヨーク大のスノーリング博士たちが調査したところによりますと、全英国の公立小学校の7%は意味理解困難者だというデータもあります。そういう子どもたちがいるということがエビデンスベースで分かっている以上、特別支援学校が指導するのか、メインストリームの学校が指導するのかというような二者択一の発想ではなくて、全ての先生たちが学び方に違いのある子どもや言語や認知に課題のある子が少なからずクラス内にいるという前提で、教育の在りようや指導方法を変えていく必要があります。特にヨーク州あたりでは対応し始めたと、この間同博士を取材したときに言っておられました。
 障害のある子、ない子という発想ですと、そもそも障害はだれが決めるのかという話にもなってきます。例えば、自閉症はドクターが決められるかもしれませんが、学習障害やディスレクシアなどはドクターなら正確に判断できるというわけではありません。学習障害は、本来、教師が判断することです。確かに世界保健機構のマニュアルICD-10にも、米国精神医学会のマニュアルDSM-4にも、診断の基準はあります。ですが、我が国の場合、現実的には、学習障害やディスレクシアを診断できる小児科医や小児神経科医、あるいは児童精神科医は非常に少ないです。障害があるかないかという視点に立ったときに、こういう問題にどう対処するのかということがあります。
 それから、保護者や教師が認めなければ、結局、本人のやる気の問題や家庭のしつけの問題等にすり替えられてしまい学習不振児として落ちこぼされていくという現状に対して、この特別委員会としてどう考え、対処していくのかを、ぜひ皆さんに改めて検討していただきたいと思います。
 また、先ほど、障がい者制度改革推進会議の委員の方からダンピングという表現について御批判いただいた旨を御報告いただきましたが、現実的に、子どもたちの学習権を保障できていない教育現場は多数あります。インクルーシブ教育を実質的にやるのであれば、全ては指導する側、教育側の問題だという視点を明確にしていく必要があると思います。
 繰り返し申し上げていますが、LDや自閉圏などは、視覚障害の方も、聴覚障害の方も、肢体不自由の方も、それから知的障害の方も併せ有していることがあります。目が見えないから読み書きに困難がないということはありません。ですから、やはりそこを土台に考えていく必要があるだろうということがまず1点です。
 この件については、文部科学省が平成19年4月に出した特別支援教育の推進に関する通知の中にこういう表現があります。「障害種別と指導上の留意事項」という項目がありまして、そこに、「障害のある幼児児童生徒への支援に当たっては、障害種別の判断も重要であるが、当該幼児児童生徒が示す困難に、より重点を置いた対応を心がけること。また、医師等による障害の診断がなされている場合でも、教師はその障害の特徴や対応を固定的にとらえることのないように注意するとともに、その幼児児童生徒のニーズに合わせた指導や支援を検討すること。」と書いてあります。こういった通知を平成19年に既に出されているわけですから、これを踏まえた表現にしていただきたい。例えば、「障害のある子どもも、障害のないとわかっている子どもも、あるいは、障害と診断されていなくても教育的ニーズのある子どもも」と入れるとか、御批判もございますでしょうが、全ての子どもを視野にいれたとき、ここは妥協できない点かと思います。
 もう1点は、先ほど、障がい者制度改革推進会議のほうからも何をもって専門家とするのか、とございましたけれども、教育、学びというのは、あくまでも言語理解です。ということは、子どもの言語の理解がどういう状態かというような専門的な判断が必要ということです。聴覚もそうです。あきらかに聴覚障害があるという場合ならいいのですが、例えば聴覚の認知がどうかということは、通常の検査ではわかりません。発達障害のことを知っている言語聴覚士や特別支援教育士のような方でなければわからないことです。視覚も同じです。眼科医は、目の病気を診る人であって、目の機能不全は診ることはできません。そういう専門的な視点がいなければ、学習の土台となるレディネスの部分で課題があり、学校に入ってから本人が苦しむ、あるいは教師も保護者もその子の課題が理解できず、結果的に本人が問題行動を起こしたり、不登校になっていったりというような現状があります。だからこそ、就学判断をする段階で、その子の見え方はどうなのか、聞こえ方はどうなのか、あるいは言語の理解はどうなのかと分かる専門家が必要だと申し上げているわけです。ここには医者と心理学と教育学の専門と入れていただきましたが、教育に一番必要なのは言語理解ですから、後半は検討課題として入れていただいておりますが、あくまでもここに言語の専門家と入れていただきたいと改めて申し上げたいと思います。
 それから、先ほど佐竹さんもおっしゃっておられた点です。私も佐竹さんの意見に全く同感ですが、就学決定に際し保護者の意見は非常に大事です。もちろんです。だけれども、一方で、保護者が子どもの状態に興味がない場合、ネグレクトしている場合、あるいは保護者自身が忙しかったり余裕がなかったりする場合、あるいは保護者が子どもの状態を受け入れられない場合、その子どもが不利益を得ていいのかということを、やはりぜひ皆さんに考えていただきたいと思っています。例えば、少年院には療育手帳のない知的障害の子どもたちがいます。刑務所もそうです。それから、ニートの取材をしていますと就労不安定の人たちの中に、保護者が「うちの子は普通だ」とおっしゃって、必要な教育を受けられないまま成人し、就労支援の段階になって発覚し、なかなか支援につながれないという人たちもいます。今回は制度設計をどうするか、ということですから、こういった視点は極めて重要だろうと思います。
 それから、スクールクラスターについてです。わかりやすくまとめていただきまして本当にありがとうございます。私はぜひここにコミュニティスクールの概念を盛り込んでいただければなおいいのではないかということを思いながら、拝見させていただきました。文部科学省は、御存じのように、これまでもコミュニティスクールを推進してきていますが、皆さんがよく御存じの、例えば、東京都杉並区立和田中学校はコミュニティスクールです。よのなか科の藤原さんがいらしたところですね。それから、陰山さんが校長を務められていた尾道市の小学校もコミュニティスクールです。コミュニティスクールのメリットは校長先生がかわられても、地域の人たちが学校の経営に参加して、学校を支えていくのでブレが少ないという点です。地域の人たちが地域の子どもたちを支えていく、共生というような共通概念が土台になければなかなか実際は難しいと思います。共に育つという意味であれば、このスクールクラスターの土台にコミュニティスクールベースみたいなものを入れていくことによって、地域に根づく学校になり得るだろうと思います。それができることによって、地域のネットワークを利用でき、結果的には共生社会の形成に向けて、望ましい土台ができうる可能性が芽生えるということを申し上げたいと思います。
 それから、合理的配慮のところですが、先ほど申し上げた平成19年の文部科学省の通知には、合理的配慮についても書いてあります。学習上・生活上の配慮及び試験などの評価の配慮。各学校は、障害のある幼児児童生徒が、円滑に学習や学校生活を行えるよう、必要な配慮を行うこと。入学試験やその他の試験の評価を実施する際にも、別室実施、出題方法の工夫、時間の延長、人的補助など可能な限り配慮。既に通知が出ているのに、現実の教育現場では行われていないわけです。やはりこの点についても、しっかりと明記していただきたいと思います。以上です。ありがとうございました。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。貴重な御意見をありがとうございました。
 コミュニティスクールの概念を一言だけ申し上げておきたいのですけど、日本で行われているコミュニティスクールの考え方が、私が学んでいる海外の、例えばオランダで今進行中のコミュニティスクールの考え方などとは少し違います。つまり、学校経営の視点からのコミュニティスクール論です。大事な点が1つあって、コミュニティスクールを考えるときに、学校経営の観点からだけではなくて、地域資源をどう活用していくかという仕組みがそこに加わらないと、コミュニティスクールと言わないのではないかという思いが私にはあって、あえて示さなかったのですけど、今の御意見を承ったので、少しまた御意見として対応を考えたいと思います。

【品川委員】 私も委員長と同じ考えで、海外のコミュニティスクールは日本のそれとは全く違います。でも、それはそれでいいのではないかとも考えています。公教育の在りようも文化も国によって異なりますし。例えば先ほど御紹介した尾道市の小学校では、学校運営協議会やPTAは男性中心で、生活指導上の問題は、彼らがやって、学校は教育に専念してくださいと徹底していたりする。そうすると、今まで学校側が抱えている多様な事務作業であったり、子どもの問題も、給食費回収等も学校が対応しなくて済むよう上手に役割分担ができていたりします。
 確かに、コミュニティスクールという言葉は、諸外国が使っているものと我が国が使っているものとの間で概念差はあります。しかし、コミュニティスクールに触れずにこのクラスターだけを示すと、学校だけでやっていこうとして、地域の人が全く関係なくていいということになりかねない。教育が変われば、社会は変わります。教育が多様化すれば、必ず社会は多様化していきます。せっかくスクールクラスターというものを示すのであれば、そこに地域も巻き込むのがよいのではないでしょうか。日本のコミュニティスクールもいっぱいいいところはありますが、私が特に注目するのは、子どもが学校に行っていない人も学校経営に加われることです。お年寄りの方も入れれば、独身の方も入れるし、お子さんのいない御家族も入れます。これからの時代、子どもを育てるということはそういうことではないか、つまり地域の子として育てていくという視点や発想が必要だと思いますので、その概念をうまく入れ込んでいただきたいと強く思った次第です。ありがとうございました。

【宮﨑委員長】 補足でまたお話を承りましたので、またここも少し考えていければなと思います。
 それでは、コミュニティスクールの関係で、齋藤委員、お願いします。

【齋藤委員】 特別区教育長会の会長の齋藤です。今コミュニティスクールというお話が出ましたが、私どもの五反野小学校が、コミュニティスクール、日本では第1号でしたが、これは法律よりもさらに上の決定権が理事会に全てあるので、なかなか他校に広がらないということがあります。少し広げるために、今検討しているところです。
 地域で支えるという意味で、少しだけ紹介をさせていただきたいと思います。コミュニティスクールとすると地域には重すぎるということがあり、地域の方に受け入れられる開かれた学校づくり協議会という組織を、小・中学校合わせて全校109校に設置しています。この組織が現在のコミュニティスクールに似ており、ほぼ10校ぐらいは、現在のままでも手を挙げればコミュニティスクールに認定されるだろうと文部科学省の方が訪ねてきたときに言われています。
 それこそ品川委員がおっしゃったように、地域の方、子育てが終わった人、あるいは全く関係ない人、子どものいない人も入って、学校支援をしていただいています。特別支援教育との関係はどうかと言いますと、例えば、特別支援教育対象で不登校のお子さんがいたとすると、そこの協議会の会長さんのところに校長先生が情報を持っていきます。もちろんPTAにも行きますが、PTAは保護者同士なので、難しいです。それから、子どもがちょっと変だというときも、結構その開かれた学校づくり協議会の方にお話をします。そうすると、地域の力で少しずつ解決をしてくれます。万全ではありませんが、地域の力を使わないと、特別支援教育はおろか、不登校対策もほとんどできないという状況になっています。また、放課後の子ども教室も、そこが中心となって、地域の方に募集をかけながらやっています。進み方はゆっくりですが、業者委託よりもスムーズにはいかない面もありますが、この地域の力を使っていくほうが、地域のコミュニティの再生になると思っています。以上です。
 それから(案)の12ページ「環境整備全般」についてです。先ほどの委員長のお話では、環境整備は中期的に取り組むという御説明だったのですが、私は、前回も申し上げましたが、就学先の決定をする就学委員会の判断には、環境整備による影響が非常に大きいと思っています。クーラー設置やエレベーター、たとえお金がかかっていても、整備することによって人的な配置が全く違ってきます。それから就学先の判断も違ってきます。ですからハード面の整備については何とか早急に打ち出していただきたいと思っています。
 それと、もう一つは人的な配置の問題です。医療的ケアについては、非常に厳しい医療の制限があります。東京都では、アレルギーのお子さんのショックが出たときに備え、エピペンを教員が打てるよう緩和しています。以前は保護者対応でしたので、2年ほど前に実際に起こったときに、急遽親御さんに来ていただいて打ったことで、大事に至らなかったということがありました。そういうことを考えますと、例えば、たんの吸引の場合、研修や指導することによって、介護者あるいは介助者で特定の条件の中で緩和できると、それだけでも少し違うなと思います。看護師と介護者と両方を一人のお子さんにつけることは、私は教育長として良しとする判断はできませんので、そういうときには、特別支援学校、あるいは、親御さんに付き添っていただくという判断しかできないと思います。このあたりのところが少し緩和できるといいと思います。
 それと、14ページの「特別支援学校のセンター的機能の活用」に幼児期の早い段階で、発達障害の有無や特別支援教育の対象かどうかを判断して、それに対処したほうがいいということが書かれています。1点目は、特別支援学校には幼稚部がありません。特別支援学校に対して非常に期待をしていますので、できる限り幼稚部を設置し、幼児教育のセンター的機能を担っていただきたいと思います。
 2点目は、特別支援学校に情緒系の学級を設置していただきたいと思います。と申しますのは、区市町村レベルで専門性の確保は困難だと思うからです。国の機関で全国に1箇所だけではなく、地域の中で経験を積み重ねながら、調査したり研究したり、あるいは、特別支援学級や通常の学級に行きつつ経験の蓄積をしていけるような、実際に役立つような、そういうノウハウを蓄積して、私どもに提供していただくというセンター的な役割を特別支援学校が持って欲しいと思います。
 3点目は、特別支援学級を担当する教員の専門性に非常に苦慮していますし、これを研修等で担保するのは非常に難しいと思っていることから、前回も申し上げましたが、特別支援学校の教員が一定程度通常の学校に異動する仕組みが必要と思います。地域の特別支援学級に専門性を持った特別支援学校の教師が一緒に子どもたちに向き合うことで、他の教員が学ぶことができ、専門性が若干は担保できると思っています。センター的な役割については非常に期待していますので、早い時期にまとめていただければと思います。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、髙橋委員お願いします。

【髙橋委員】 3点ほど意見を述べさせていただきます。重複するものもありますが、1点目は、齋藤委員から今ほど御意見のありました、特別支援学校のセンター的機能を一層活用するというところです。地方の教育委員会を預かる者としましては、このセンター的機能の役割、具体的にどのような姿でセンター的機能を果たすのかということが、今後の議論の中で具体的にしていただきたいと思っています。例えば、一番ニーズがあるのは保護者であり、児童生徒であり、また、学校からのニーズも多かろうと思います。ただし、心配なのは、先日の文部科学省からのデータによりますと、10年間で特別支援学校に通う子どもが2万8,000人増えて、今11万3,000人。しかも、教室不足にも悩んでいる特別支援学校が多いという話も聞きます。そういう忙しい中で、特別支援学校がこれらに対応できるのだろうかということです。やはりそういったところを解消していかないと、なかなか我々としても、特別支援学校に対してこういうことをお願いしますと言えない部分があります。それから、市町村教育委員会としましては、そうした市町村教育委員会と特別支援学校のセンター的な役割分担、そういったところも今後明確にしていただければと思います。
 2番目ですが、教員の資質の向上部分、16から17ページですが、齋藤委員もおっしゃっていましたように、現実の小・中学校では研修の時間がなかなかとれない。それから、専門的な免許を取得するといっても、なかなか難しい部分もあります。そこで、新藤委員の団体の方たちが行ったアンケート、新聞報道によりますと、今行われております教員免許更新制度、これについて意義を認めないという校長先生、一般の先生たちが60%以上になっている。中身があまりためにならなかったというような話も聞いています。事業仕分けではありませんが、今後、国としましても、免許更新制の在り方を議論される中では、一番喫緊の課題で必要なのは何かといったら、やはり特別支援教育に関する研修が強くあります。私としては、ひとつ切りかえていただきたいという思いはあります。意見として出しておきます。
 それから、3番目です。この特別委員会は教育の部会ですので、ふさわしくないかもしれませんが、日ごろ思っている疑問ですけど、インクルーシブな社会というのは、果たして学校教育、学校だけなのでしょうか。いつも心配していますのは、特別支援学校を卒業した子どもたちが、卒業後一体どういう生活をしているのかというのは、いつも気になっています。人として、人権を尊重されて生きていくためには、やはり職業につく、自分なりに、自分の力で少しでも生活できるような状況をつくっていかなければならない。そのための教育段階としての学校教育があると思っています。そういう意味では、とても学校教育は責任が重いと私は思っています。数年前にアメリカへ行ったときですが、アメリカでは、障害者の団体がやっているNPO法人に対して、国が手を差し伸べている。それは、そこでもって懐中電灯をつくっているのですが、そのできた懐中電灯は全てアメリカ陸軍が買い上げてくれるという国の制度もあります。私の村にも、NPO法人が運営していますパン屋さんもあります。結構一生懸命皆さん、ボランティアたちの助けをかりてやっています。ところが、製品を卸そうとした際に、一般競争入札などではとても一般企業には太刀打ちできません。そういう意味で、やはりそういう人たち、そういうNPO法人に対する法的な援助といいますか、後ろ盾、後押し、そういうものがないと、なかなか難しいのではないか。たまたま首長さんやそういう方たちが福祉に熱心だから、だから、そういうところで働く場があるというのではなくて、やはり国として、そういう将来に対しての制度的なものをつくっていく必要があるのではないかなといつも思っています。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 中村委員、お願いします。

【中村委員】 NPO法人若駒ライフサポートの中村文子です。12ページの「インクルーシブ教育構築のための人的・物的な環境整備について」の「現状と課題について」というところで、1点御意見を申し上げさせていただきます。先ほど、中澤委員、尾崎委員から出ていた部分とつながる内容かなと思いますが、1点目の部分の、「現在、小・中学校等においては、発達障害を含め、教育的ニーズの異なるさまざまな障害のある子どもが学んでおり、その環境整備が課題になっている」ということと、2点目の、特別支援学校の生徒が増えているという、数やニーズが増えているという言葉だけではなくて、そこで学ぶ児童生徒たちがどのぐらいさま変わりしているかというのを、ここで触れない限り、本当の意味でのこれからの特別支援教育の在り方は、私はまとめていけないのではないかと思います。
 ここから先は、私が保護者として感じたことを申し上げさせていただきますが、確実に、少なくとも私の近々の東京においては、児童生徒の形は大きくさま変わりしています。先ほど中澤委員が、欧米の成熟したインクルーシブ教育では、高く教育費のかかるところへ希望するということとの折り合いがかえって問題になるというお話をしていらっしゃいましたが、確実に東京ではその現象は起きてきていると私は思っています。私は、平成15年度の特別支援教育の在り方の部分で、子どもがまだ学齢期ということで、学ばせていただいた一人です。正直、そのときに、これほど特別支援学校の児童生徒が増えるとは、私は思っておりませんでした。逆に、もっと地域に子どもたちが戻っていくものと信じていました。ここの部分をきちんと見据える視点がなければ、私は、今回の障がい者制度改革推進会議から出た意見に向かって、特別支援教育がインクルーシブ教育であるということをきちんと申し述べることはできないと思います。
 その逆に、特別支援学級、学校で増えてしまった子どもたちのニーズがどんなものであるかということを、まずはきちんと分析することが必要であると思います。高等部だけではありません。少なくとも東京においては、私ははっきり小数点の計算をする小学部の生徒を現実に目の当たりにします。これはもしかしたら違うのではないかと、私自身が感じました。もちろん、その生徒の障害特質の中で、一時的に特別支援学校が必要だったのかもしれません。けれども、その子どもたちを安易に特別支援学校の中に送り込んでしまっている現状は、やはり私は見直すべきと思っています。
 小・中学校における支援が必要という一言だけではなく、先ほど尾崎委員がおっしゃったように、通級の部分、特別支援学級の部分、巡回指導の部分、そこをどう整備していくことで、本来のインクルーシブ教育につながっていくのかという視点をぜひ押さえていただきたいと思っています。
 私は実は子どもを特別支援学級で、息子は6年間、娘は9年間学ばせた保護者です。私はやはり特別支援学級で学ぶことと特別支援学校で学ぶことは、得るものは違うと思っています。それは知的な部分の重さ軽さではなくて、その環境の中だから学べるものがやはり別にあるのだと思います。知的に重いからといって、それによって教育を受ける権利が損なわれるというのは、やはり間違っていると思います。ぜひここの部分をきちんと見据えた上で、論点整理をしていただきたいと思います。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。また御相談したいと思います。それでは、これから10分間休憩といたします。

 

( 休憩 )

 

【宮﨑委員長】 それでは、再開したいと思います。席にお着きください。
 かなり論点整理案をめぐって活発な御意見を頂戴しています。カスケードという考え方、私は学びの連続体の構築という考え方、これはアメリカがインクルーシブな教育システムを導入するときの土台にあった考え方だったので、そこを日本型のインクルーシブ教育システムをつくるときの1つの視点として出させていただいたのですが、どうも誤解があったり、内容を少し整理する必要があったりと、あるいは、それぞれの現状と課題について、まだ十分書き込めていない部分が多すぎるというようなことであるとか、日本の現状の中・高の中にいるさまざまなお子さんに対する調査といったようなことも含めて、今現状がどうなっているかということをもう少ししっかり書き込む必要性があると思いました。あるいは、教育相談に対する早期からの支援体制の整備を図る中でのさまざまな御意見や、特に専門家を教育相談あるいは就学決定のときの考え方の中で、特に教育的な視点からの民間の専門家をどうするのかという御意見、それから、スクールクラスターの中にもう少し書き込むべき中身があるのではないか、あるいは、環境整備のところの問題ですとか、医療的ケアなども含めて、具体的に学校で今整備をしなければいけないところ、やれるところ、中長期ということではなくて、早い段階からきちっと、やはりできるところから整備する必要があるですとか、あるいは、人事交流の大切さ、そのほか、免許制度の在り方等々、いろいろな御意見を頂戴しています。
 引き続き、具体的な部分で皆様から御意見を頂戴したいと思います。
 それでは、まず河本委員、お願いします。

【河本委員】 全国特別支援学級設置学校長協会の河本です。ありがとうございます。15ページに書いてある教職員の専門性の確保ということでまず1点。10月に行われた第4回の特別委員会のときに、私から資料として提出させていただきました。委員の皆様のお手元にある配付資料集の第4回資料15です。このとき、教員の免許の問題もお話をさせていただきました。重複する部分もあり恐縮ですけれども。全国の設置学校のそれぞれの教員が、特別支援学校教員の免許をどれだけ持っているかということで、31.6%と約3分の1弱の者しか持っていない。これで今盛んに取ろうとしている状況ですけれども、特別支援学校の免許が、そのまま特別支援学級の教員で有効に活用できるかという問題があります。ですから、我々、全特協で考えているのは、果たして特別支援学校の教員の免許を持たせるよりも、新たに特別支援学級の教員の免許、これの必要性がどうかということを、その10月のときにお話をさせていただいたことを思い出しました。ぜひそのあたりもまた検討していただきたい、入れていただきたいということが1点です。
 それから、その10月のときの資料にもありますように、全国の学校の中の特別支援学級担任の教員がどのぐらいの経験年数を持っているか。ゼロ年から5年までの6年間、この6年までの経験が全体の55%という割合ですので、ここで専門性を高めるということは非常に大きな課題を含んでいると感じています。ぜひこの教員の配置の制度自体の抜本的な見直しといいますか、そのあたりのことも必要なのかなと感じて、前回お話をさせていただきました。
 もう1点です。冒頭で全国特別支援学校長会の尾崎委員から話が出ました。私もそのとおりだと思います。小・中学校の校長のこれからのリーダーシップの在り方ということが、非常に大きな課題だろうと思っています。とりわけ特別支援学級設置学校長の役割といいますか、設置校の校長がどういう役割を果たすか、その役割の大きさを改めてここで認識する必要があるということも尾崎委員と同じような考えを持っています。
 私のほうでは資料7を用意しましたので、御覧いただければと思います。今日の論点整理の2ページ、「総論」の中にあります「同じ場で共に学ぶ」という考え方、それから、4ページにあります「共に学ぶ」ということについてお話をさせていただきたいと思います。
 特別支援学級設置校の立場から、現状と今後の進むべき方向というのか、願いも含めて話をさせていただきたいと思いますので、特別支援学校のことは、話から除外させていただきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
 御承知のように、公立小・中学校の教育課程は、文部科学省が定めております学習指導要領をもとに編成することになっています。平成20年3月に小・中学校の新しい学習指導要領が告示され、そして小学校では平成22年度まで、そして中学校では平成23年度までが移行期間ということで、全面実施に備えているという状況です。今回の新しい学習指導要領で、「交流及び共同学習」ということについて、第1章総則の第4の「指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項」の(12)、中学校の学習指導要領では(14)に記載されていますけれども、「学校がその目的を達成するため、地域や学校の実態等に応じ、家庭や地域の人々の協力を得るなど家庭や地域社会との連携を深めること。また、小学校間、幼稚園や保育所、中学校」――中学校の学習指導要領では、「中学校間や小学校、高等学校」となっています――「及び特別支援学校などとの間の連携や交流を図るとともに、障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学習や高齢者などとの交流の機会を設けること」と記されています。もう皆様方御存じのとおりだと思います。
 実際に特別支援学級の児童生徒と通常の学級の児童生徒との交流及び共同学習を実施して感じていることは、相互の児童生徒にとって大きなメリットがあるということです。障害のある児童生徒にとって、自立と社会参加に向けての精神的な素地を培うだけではなく、あるいは、いろいろなノウハウを学ぶだけではなく、通常の学級の児童生徒にとっても、ノーマライゼーションの理念を基盤とした自立と社会参加の学習が成立しているということを、校長として実感しています。
 今年度の全国特別支援学級設置学校長協会の全国調査、これは国立特別支援教育総合研究所の全面的なバックアップで調査をさせていただいていますけれども、9,022校からの回答がありました。各学校の交流及び共同学習を含めた特別支援教育に対する校長の意識の調査を実施してみました。幾つか、4つぐらいしか今ここに書いてありませんけれども、その1つ、「学校経営方針に特別支援学級等を含めた特別支援教育の内容を盛り込んでいるか」という問に対して、9割以上の校長が「いる」と答えています。しかし、「交流及び共同学習を学校経営方針に盛り込んでいるか」ということになりますと、4分の1以上の校長が「盛り込んでいない」と答えています。また、3つ目、「学校評価の評価項目に特別支援学級等の内容を盛り込んでいるか」、この問には、3分の1の学校で「学校評価の評価項目に特別支援学級のことを盛り込んでいない」と答えています。学校評価の結果を特別支援学級等の指導に、8割以上の学校が「生かしている」という結果も出ていますので、これから先ほどの割合の少ないところを底上げしていく必要を感じています。
 各学校で交流及び共同学習の所期の目的の達成を目指して、充実した活動を展開していくためには、まず学校の経営者である校長の特別支援教育に対する幅の広い識見とマネジメント力が重要であるということを痛感しました。全国特別支援学級設置学校長協会として、今後の通常の学級と特別支援学級との間の交流及び共同学習が、より充実した活動となって、そして、どの学校でも計画的、あるいは意図的に実践できるよう、情報の発信、あるいは資料の提供等、このあたりに力を入れていきたいということを考えています。
 また、各区市町村の教育委員会には、各小・中学校の教育課程編成に向けて、特別支援教育に関する各学校の方針を明記するように、指導・助言されることをお願いしていきたいということも考えています。
 なお、特別支援学級設置校においては、各学校の教育課程、あるいは特別支援学級の教育課程の中に、交流及び共同学習に関するねらいや内容、年間指導計画等を、障害者基本法であるとか、あるいは学習指導要領のきちっと明文化されていることを強く強調しながら、教育課程の中に「交流及び共同学習」の項目を立てて明記するよう、指導されるように、各区市町村の教育委員会にもお願いをしていきたいと、全特協では考えています。よろしくお願いします。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 北住委員、お願いします。

【北住委員】 むらさき愛育園の園長の北住です。品川委員、中澤委員からの先ほどの御発言とも関連して意見を述べさせていただきます。私は小児神経学会のメンバーでありますが、第4回の委員会に小児神経学会としての意見書を出したので、その中での文章を読ませていただきます。「さらに私たちが乳幼児期から診療している中には、精神遅滞という診断基準を満たすには至らない程度ではありますが、全般的な発達が遅い小児も多く存在しています。こうした子どもたちは、従来からの福祉施策においても、発達障害者支援法においても、支援の対象から抜け落ちてしまいますが、現在の多人数授業の中で、必要な支援を受けられず、特別支援教育の対象からも漏れ、その力を伸ばせられないままに育ってしまう憂慮すべき傾向があります。存在は目立たないのですが、社会的に大きくハンディを負ってしまう特性の子どもたちへの配慮が十分になされるような教育環境が必要であります。」障害がある子・ない子と分けきれない。そのはざまにある子どもで、かなりの教育的配慮を必要とする子が今たくさんいる。その中で、ある程度診断がついた子も、見きれないという状況があります。ここからは、今日の論点整理案の12ページの文章をどうしていくかということに関連してきます。今、特別支援学校の生徒が増えてきているというのは、結局、今の先生方の力も落ちている、それから、障害があると診断がついていない子どもでも生徒の状況が難しくなっている、家庭の状況が難しくなっている、そういう教育総体の難しさがある中で、障害のあるお子さんをもう見きれない状況がある。先生も非常に忙しい、子どもも大変と。そういう中で、どうしても、以前であれば何とか見ることができていた子が、やはり今の教育体制の中では見られなくなってきている。それが特別支援学校の対象児が増えてきていることの1つの要因だと思います。
 今は過渡的な形で、それを必要だからどんどん増やしていくということではなくて、またできるだけ地域の学校に戻していこうと私たちは目指さなければならないと思います。この3の「現状と課題について」の文言のことに行きますが、その場合、特別な支援を要するのは、別に障害があると診断のある子どもだけではない。一番はじめの文章で、発達障害も含め、特別支援教育の更なる環境の整備というよりも、一般教育の環境整備が必要である。その中では、具体的には、少人数学級、あるいは複数担任制の実現などを中心とした一般教育の環境整備がまず必要である、これがまず大前提だと思います。これは中長期の目標にもなると思います。ここ3を、特別支援教育ではなくて、インクルーシブ教育システムと書きかえた中に、基本的な方向としては、あるいは中長期的目標として、大前提として、一般教育の教育環境の改善が必要である。現実には予算の問題があって、そのために予算をそちらのほうに持っていくと、やはり特別支援学校の対象とせざるを得ないお子さんへの予算が少なくなってしまうのではないかとか、その辺の危惧もあるわけですけれども。基本的な方向性としては、まずそこを押さえておく。そこをまずこの委員会としても、主張として大きく入れるべきだろうと思います。
 したがって、はじめのほうに戻りますが、中長期の目標が、4ページの上にあります。短期的にはというところと、それから中長期的にはというところ、ここのところは大久保委員からの意見文もありますけど、もう少し具体的な形で、目標として示すべきではないかと思います。短期的には、今できることの中で、1つは、認定就学の制度、あるいは、法的規定を改めることと、それから、中長期的には、やはり大きな予算措置を伴うものとして、少人数学級の実現を強調していただきたいと思います。
 それから、それと関連して、前回の委員会でも発言しました26ページの参考資料5のカスケードです。前回、このカスケードの左側に重度・軽度があって、質的な問題が入っていなくて、これ自体が非常に誤解を招く、あるいは、発想として問題ではないかという発言をさせていただきました。今回は、それが削除されています。今これから転換しなければならない医学モデルそのものとも解釈されるこの重度・軽度は削除していただいたのだと思いますが、中澤委員からお話がありましたように、カスケードはやはり一定の価値観を持ってしまうと思います。ですから、あえてこういう言葉を使う必要があるのか、誤解、反発を招く、あるいは発想の違い、本来我々が抱いている発想とは違う考え方、印象を持たれるカスケードという名前を取ったほうがいいのではないかと思います。
 それから、この中で、具体的には、さらにこれが1つの多様な学びの場ということで、こういう連続性のある選択肢を用意していくというわけですが、将来的には、この一番下の部分をできるだけ追求していく。そのためには少人数学級や複数担任制を必要とするということで、その方向性もある程度示される、それを説明するにもいい図だとは思います。下から3番目に「支援員を配置して通常学級」とありますが、これは要するに、支援員を配置して通常の学級でできるだけいろんなお子さんも見られる、共に学べる、共に学ぶということの実質が維持されながら共に学ぶ。通常の学級には支援員だけではなくて、例えば、支援員配置、あるいは医療的ケアのあるお子さんであれば看護師とか、あとは、糖尿病のお子さんもかなり通学していて、インシュリン注射をどうするかという問題もありますし、そういうときに、私は養護教諭も注射を行えるほうがいいだろうと思いますが、もう少し難しい処置だったら、例えば、そのときに看護師が行くとか、支援員や看護師等の配置、それから複数配置などによる通常の学級と。この部分を、中長期的な今後の目標ということであれば、これを膨らませて、より現実性のあるものに、また、せっかくの図を残すとすれば、そのような形で、カスケードを取っていただいて、この内容をより目標とする方向のものに文言を検討していただければと思います。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、石川委員、お願いします。

【石川委員長代理】 石川です。2点あります。1点目は、今の北住委員の御意見と大久保委員の資料にもありました短期、中長期についてですが、ほぼ同意見です。短期について言うと、やはり批准までを短期として、批准をするための要件をここでクリアするということが短期的にはどうしても必要なことですから、そのことを書く。その中には、今短期の中に入っていませんけれども、北住委員もおっしゃいましたけども、法案の中身まで踏み込む必要はないと思いますが、施行令を改正しなければいけないということは、本特別委員会の基本的な考え方、共通理解として書くべきではないかと考えます。
 中長期は、批准後5~10年ぐらいというようなスパンで、これまでの障害者基本計画だとか、いろんな枠組みとの整合性ということもあるので、数字についてはもう少し検討は必要かもしれませんが、やはりおおよそ目安がないと、みんな不安なので、中長期は20年先のことなのかなど、そういうことも思ったりすることもあるので、10年も長い気はしますけれども、5~10年以内に合理的配慮をこれぐらいまで達成するのだというように書きたいと思います。それが1点目です。
 2点目ですけれども、就学決定についてですが、先ほどの品川委員、佐竹委員からの御発言からも、親の同意ということをあまり強く入れすぎることに対する懸念が示されたと思います。例えば品川委員の場合ですと、ネグレクトというケースをたくさん見てきているというお話で、そのこと自体は説得力のある話なのですが、要は、2つの正反対のリスクをどうヘッジしていくかということです。1つは、同意要件は絶対必要だというように、私もそう考えていますが、障がい者制度改革推進会議でもそのような意見は多いわけです。親はしっかりしているけど教育委員会はしっかりしていないというリスクです。逆に、品川委員は、むしろ教育委員会というか、専門家、しっかりしている専門家が、就学決定において全責任を負うべきであって、しっかりしていない親をたくさん見てきているという。その2つのリスクを同時にヘッジするにはどうしたらいいかということですけれども。
 要するに、そこからは、だれであれ、絶対的な決定権を一者が持つべきでないということは言えると思います。だとすると、合議ということになるし、対話によって情報を、それぞれの、なぜそのように考えるのかということをお互いに共有し合って、会話を深めて、歩み寄って、合意形成していくことが大事で、にもかかわらず合意が得られない場合に、調停でいいのか、それとも、ネグレクトのような場合には、調停すらできなくて、やっぱり何か裁定までしなくてはいけないのか。このあたりが、議論として残っているのではないかと思います。ネグレクトのケースだったら、調停といっても、やってこないというのが、品川委員の話からすると想像されるわけです。それから、調停や裁定に時間がかかってしまったら、その間に子どもをどうするのかということも決めなければならない。
 だからといって、そういうのは面倒だからと、尊重、あるいは、一応今回、同意を図りながら決定するというところまで書いていただきましたが、これでいいかどうかです。合意形成を図りながらでいいかどうか。ここはもう一度考えてみる必要があると思います。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、太田委員、お願いします。

【太田委員】 品川区立鈴ヶ森小学校の校長の太田です。資料5に、今からお話しする内容をまとめていますので、そちらを御覧ください。
 今、石川委員はわりと具体的なお話をなさって、それから、先ほどから佐竹委員や品川委員からも具体的な事例も想定してという御意見をいただいていますが、私は自分が品川区に住んでおりますので、そんなところから、大きな基本理念というか、考え方としての意見を言わせていただけたらと思います。
 品川区では、平成10年から小・中学校の学校選択制を実施しています。居住地の小・中学校に就学するのではなく、区内の、現実的には4つのブロックに分けていますが、そこの学校から保護者が主体的に就学先を選択することができる制度です。現在では、東京の区部など、この制度を採用する制度は拡大しておりまして、インターネットで調べましたところ、内閣府の調査で、2006年、小学校の14.9%、中学校の15.6%がこの学校選択制を導入されているとありました。また、私の今勤めている品川区では、今年度、小学校は30%、中学校は29.8%の児童生徒が、居住地の学校以外の学校を選択して就学している実態があります。
 このような時代にあっても、障害のある児童生徒は、居住地の小・中学校に就学する選択権すらまだない。特別支援学校に就学すべき障害の程度が学校教育法施行令に定められておりまして、それに該当する児童生徒は、区市町村教育委員会が小・中学校において適切に教育ができる特別な事情があると認める者については、認定就学者と認める制度があります。しかし、この制度の中では、希望する全ての児童生徒を認定できない、現行制度の判断の中には、この合理的配慮が位置付けられていないからです。合理的配慮が公的制度にはなくて、現状のままで小・中学校において適切に教育ができると判断できる児童生徒は、かなり限られた数になっていると思います。そして、その判断の中にも入らないお子さんというのもいるのではないかというのが、中澤委員の御指摘ではないかと思います。
 先にも述べましたが、品川区をはじめ、幾つもの自治体で学校選択制が実施されている時代です。障害のある場合にだけ、それでもなお自分は挑戦してみたいという強い希望を持つ児童生徒とその保護者に対して、最終的に本人や保護者の同意の得られない就学先を決定するような手続がもしあるとしたならば、私の感覚では、障害者権利条約の内容にそぐわないものと思わざるを得ないと思っています。私は、基本的な合理的な配慮というものを、まずガイドラインとして保障していくことと、それと並行して、保護者の同意を就学指導のシステム上に明確に位置付けていくことを、自分の考えとしてお話ししたいと思います。
 このことは、先ほどから幾つか例に挙げられているネグレクトの事例とか、あるいは、本当に保護者の一方的なお考えで就学させたいという、そういうことを指しているのではありません。この理念に沿って、いろいろな具体的なシステムというのを整えていくということを御提案しているところです。
 1つは、保護者の同意とか合意というものをどうやっていくかというところを考えてみましたけれども、これについて、私は個別の教育支援計画をもっと具体的に活用したらどうかと思っています。そして、この個別の教育支援計画に同意することをもって、保護者の同意とするという考え方はいかがかと思っています。
 それから、合理的な配慮をガイドラインのようにきちんと示して、それを個別の教育支援計画に盛り込む。
 また、先ほどから少し話題になっている通常の学級への支援ですが、それについては、教員の訪問による専門性の高い指導が受けられるようなシステムをつくっていくというようなことです。
 また、4番目として、特別支援学校を選択した児童生徒には、逆に、特別支援学校を主体的に選択する児童生徒もいますから、そういう児童生徒には、副籍あるいは支援籍のような制度を全国展開して、居住地における交流及び共同学習を推進していく。
 そして、小・中学校や特別支援学校のどちらに就学しても、その就学先決定後も、就学指導委員会でかかわった専門家や行政担当者、保護者、あるいは在籍学校が支援チームとなって、個別の教育支援計画に基づく支援会議を設定して、そして、就学先や支援についての、常に妥当かどうかというような見直しをシステム上明記していくというのはどうかと思っています。
 また、新たな就学手続をこのように具体的に検討する段階がこれから先にあると思いますが、そのときには、ぜひ認定就学者とか通常の学級で育った方々の就学時や卒業後などの様子を、協力可能な方からはしっかりとお聞きして、具体的な情報を提供していただくなどしながら、現状と課題をきちんと踏まえて検討していったらどうかと思っているところです。
 3番目は、先ほど中村委員からもお話がありましたが、現在、東京都では、例えば、知的障害の軽い生徒を対象とした特別支援学校では、定員の3倍を超える希望者がいる学校もあると伺っています。その中には、通常の学級からの希望者も多いと聞いていまして、また、発達障害については、通級指導学級に希望者が大変多くて、入級するのに1年がかりという現状も見られると。特別支援教育の専門性が高ければ、保護者はおのずから専門性のある特別支援学校や特別支援学級、あるいは通級による指導を選択しているという現状がもう既にあるということです。こうしたことをもう一度踏まえると、就学先の決定に児童生徒や保護者の同意ができない状況がもしあれば、それをなくしていくことが重要であって、そのためには特別支援学校や特別支援学級が、保護者や児童生徒のニーズに十分に応える専門性を発揮していくような方策がこれから必要であると考えています。
 この中で、私は視覚障害のほうの委員として参加していますので、1つ明記したいのは、この障害種別の中で人数の少ない視覚障害や聴覚障害については、このような制度になっていくと、さらに在籍する子どもが減っていくことが予想されます。しかし、その専門性の維持・継承の面からも、特別支援学校が専門性の高い教育の拠点として存続できるような仕組みが必要でして、そのことについては、前に述べた、例えば訪問学級という制度を、視覚障害や聴覚障害の学級には設定するなどの工夫をしていただけたらと思います。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、山口委員、お願いします。

【山口委員】 今まで申し上げたことと繰り返しになることもありますけれども、今話題になっていることについて、少し発言させていただきたいと思います。
 今日の資料1を拝見しまして、特別支援教育、あるいは、特に就学についての関係者の皆さん方の見方が非常にここでの議論と大きく離れている感じを強くいたしました。私自身は、特別支援教育の課題はたくさんありますけれども、生徒に必要な教育を、その成長段階に従って施したという部分については、どういう形になろうが、やはりきちっと継承していかなければ、新しい制度設計にはつながらないと考えています。そういう意味で、今議論になっています就学決定について、私自身は、資料3の32ページ、これをどれだけサポート体制としてつくり上げていくかということ、これはインクルーシブな状態になってというニーズに対して、どういう教育を提供できるかということになっても、やはり変わらない重要なものですので、そういう点から発言させていただきたいと思います。
 一番左側に、乳幼児期からの本人・保護者への十分な情報提供、それから個別の教育支援計画の作成・活用による支援とあります。それから、一番右側に、就学先決定後も柔軟に就学先を見直していくと。この2つを、制度としてどれだけ具体的な形にするかによって、相当の就学決定に対しての、例えば保護者の皆さん、時に本人を含めての、そういったところでの齟齬と申しますか、対立と申しますか、そういったものは解消できるものと思っています。
 実は乳幼児期からの早期発見とか早期対応というようなことで、先進的な市町村では、役所の組織を改編しまして、教育委員会と福祉分野、あるいは健康保健分野が一体となって、この部分を対応するという形にしまして、1歳半でやるとか、3歳でやるとか、5歳でやるとか、いろんな考え方の違いはありますけれども、そこで個別にサポート体制を関連部局でチームをつくります。そして、その時点で、例えばある市の例ですけれども、ある保育園で、ある小学校へ上がる20数名の生徒さんが極めて支援が必要だという判定をしましたが、これが支援体制をつくることによって、それから、先回申し上げたように、このお子さんにはどういう方がどういうサポートを継続的にやる必要があるかということで、伴走者を指定しまして、親御さんの不安をとにかくなくす、親御さんの困り感というものをどうやってなくしていくかという、そういう視点でそういう伴走者を指定します。それが学校へ引き継がれていったときに、適応ができなくて、例えば二次障害に陥るとか、そういうことがなく、ほとんどの――2人ほど今も継続中でありますけれど、20数名のうちの20名以上は、集団の中に速やかに入っていって、親御さんもほっとしている、こういう事例があります。
 したがって、私は、就学決定の段階でどちらが正しいと判断することは極めて難しいことと思いますし、例えば、市町村で判断ができなければ、県で専門的なチームを組んでやったらどうかというような意見ももちろんわからないことではないですが、例えばそういう専門性を本当に有して、時間をかけて双方の立場を聞いて、判断して、適切な判定ができるだけの方がいるかどうか、あるいは、そういう体制が本当につくれるかどうかというと、これはなかなか難しい部分もあります。したがって、現在、長野県では、県のそういう相談員を、要請があれば、オブザーバーとしてそれぞれの奨学支援の会議に派遣しまして、相談には乗っていますけど、これは十分ではありませんけれども。とにかく当事者同士が納得いくまでやって、それでだめなときには後戻りもするし、また違う方法も年度ごとに考えていく、こういうことがきっちりできれば、相当了解が進むのではないかと思います。そういう意味では、今日の提案にあります、7ページの合意形成を図りながら決定していく、最終的には市町村教育委員会が決定する、こういったことに現時点で私は賛成です。今言ったようなことを整理しながら進める必要があると思い、申し上げました。以上です。

【宮﨑委員長】 よろしいですか。ありがとうございました。
 向山委員、お願いします。

【向山委員】 全国連合小学校長会の向山です。3点申し上げます。1つ目は、資料3の目次です。これはまだ論点整理についてのプロットですから、今後御検討いただくということになりますが、こういったような報告書が各学校やさまざまな関係機関に配られたときに、目次を見て、プロットを見て、何が書かれているのかについての明示性が強いものにしたほうがいいと私は思います。本特別委員会は、特別支援教育の在り方としているわけですから、目次を見たときに、特別支援教育の在り方ということで各項目が整理されている必要がある。「はじめに」の次に「総論」と書いてありますけれども、例えば、「総論」というよりも、「これからの特別支援教育」という言い方などにしていくことが大事かなと思います。
 それから、各項目についても、例えば、3は「○○について」、4は「○○の方策」となっていますけれども、こういった言葉の文言整理も必要です。
 それから、括弧書きのところでは、例えば、3の(1)の環境整備全般とか合理的配慮とかという、こういったような事柄をもう少し事務局にも御整理いただきたい。
 あるいは、4の(2)でも、養成・研修・免許と、言葉を「・」で結んでいますが、こういう言葉がこれでは整理されていない。あるいは、採用と人事配置というような言い方も、大きな概念で言えば、人事配置全体の中に採用も入るのかもしれない。そういったこともぜひ含めて、明示性の高いものにしていただきたい。
 それから、やはり特別支援教育の在り方と言っていますので、例えば、今日お配りいただいた基礎資料集の9の平成17年の中央教育審議会「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申)」という目次ですけれども、こういうものは目次を見ても明示性が強くなっています。それから、おそらく今後整理していく際に残された課題も出てくるものと思いますから、例えば5に「今後検討すべき課題」などとして、残された課題を検討する部分が担保されていると、議論が限られた時間でできないことを、またその中で書けばいいということになると思います。ぜひ委員長にも、事務局にも、もう一つ御苦労いただければありがたいと思っています。
 あと2つは、細かいことですが、9ページの一番上の○2に、「就学・教育支援委員会(仮称)等の名称とすることが適当である」と、このような言い方があります。全体的な仕組みを見ていくと、こういう言葉が適切なのかもしれませんが、ただ、これも就学指導委員会という言葉を使っていましたが、10年くらい前に、この「指導」という言葉がえらく誤解されたことがありました。指導というのを、非常にどこかある強権的に持っていくような。それで、「支援」という言葉を使っていくような風潮が学校現場にもありましたが、ようやく数年前から、それでは違うと、やはり指導であるということで、もう一回戻ったという経緯があります。指導というのは、読んで誤解をしやすい表現ですけれども、指し示して導いていくというようなですね。もしこれが誤解に基づくこういう言葉の使い方であったら、これは気をつけなければいけないと思います。
 それから、○3の4行目あたりに、例えば、「学年ごとや学期ごとなど」とありますが、「学年」というのは、学校では、1学年とか2学年とかという組織を示す意味と、学年という時期を示す意味とがあります。この辺が整理されていない。あるいは、学年ごとや学期ごとというような、踏み込んだことを書いていますが、かなり忙しい学校現場の状況を見ると、例えば、ここに学期ごとなんていう言葉を踏み込んで入れる必要があるかどうか。もう少し大綱的な言い方で、あとは学校の中でやっていってもらうようにしたほうがいいのかなと思いました。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、乙武委員、お願いいたします。

【乙武委員】 乙武です。僕も就学相談・就学先決定についてです。現状では、保護者の意見を最大限尊重し、区市町村の教育委員会が決定するという方向で議論が進んでいますが、僕自身はやはりここにどうしても疑問を感じています。例えば、9ページに、親身に相談に乗るとか、地域で受け入れるという意識を持って相談に臨むということが書いてありますが、それって、結局、態度、姿勢の問題であって、そのようなものは後で幾らでも言えるのかなと思います。「いや、親身になったのですけれども、御希望に添えませんでした」とか、「受け入れる姿勢でしたけれども、だめでした」とか、何でも言えるかなと思います。
 結局、区市町村が決定をする際に判断をするのが専門家の意見であると、その専門家の意見というのがどうなのかなと思っています。主にそれまでの経験ですとかデータというものに基づいて専門性というのが生まれてきていると思いますけれども、果たして全ての子どもがその経験、データに当てはまるのかということについて僕は疑問に思っています。例えば、最近は発達障害と呼ばれる子どもたちも出てきていて、一見何の問題もない、何の障害を抱えていないような子どもだけれども、実際に学校生活を送ってみると、なかなか周りとうまくいかない、適切な教育を受けられていないという現状があるのと同じように、逆に、一見、ここは少し難しいのではないか、通常の学級ではなかなか受け入れることが難しいのではないかと専門家が判断しても、実際、もしその学級に入ってみたらうまくいく、その子にとって実は適切な教育であったというケースも十二分にあると思います。
 例えば、僕自身が28年前に就学指導を受けて、一般的に考えれば、約30年前に両手両足、四肢が全部ない、電動車いすに乗った子どもが通常の学校、通常の学級に受け入れられるということは、常識的に判断すればあり得なかったと思いますし、普通であれば、養護学校へという判断が一般的だとは思いますけれども、当時の教育委員会、当時の受入れ先の校長先生が、どういう御判断だったのか、受け入れてみましょうということで、受け入れてくださったら、何とかなってしまった。もちろん、そこには担任の先生をはじめ、周囲の大人の人たちのすばらしい御指導、御支援があったからだとは思いますけれども。そういうケースもあるということを考えると、実際に入れてみないと、うまくいくかどうかはわからないのに、この子は無理だろうという判断で、その地域の学校でその子が能力を伸ばしながら、地域の子どもたちと一緒に教育を受けていけるという可能性が奪われてしまうというのは、すごく怖いことだと思っています。
 結果的に、特別な教育ニーズのある子どもが通常の学級に入ってみて、やっぱり難しさがあった、なかなかうまくいかないということで、途中から特別支援学校や特別支援学級に移って勉強していくということも、もちろんあるとは思います。でも、その際の保護者の思いというのは、初めから通常の教育を受けさせたかった、通常の学級で学ばせたかったという思いを、忸怩たる思いを抱きながら、最初から市区町村の教育委員会の判断によって特別支援学校・特別支援学級で学ぶことになるのとでは、大きく違ってくると思います。
 ここで大事なのは、保護者の自分の子どもに対する障害の受容ということかなと思います。僕自身の場合は、母親が、父親もですけれども、僕が生まれてからすぐにこの障害を受容してくれて、育ててくれることができましたけれども、やはりなかなかそういう親ばかりではない。特に僕の場合は、見てすぐにわかる障害なので、生まれてすぐ「ああ、障害者だ」とわかりますけれども、品川委員がおっしゃっているように、ぱっと見てわからないとか、だんだんわかってきたとか、いろいろなケースがあるからこそ、余計保護者の受容ということは、すごくこれから大事になってくるのかなと思います。そのときに、やはり小学校に上がる、人生の新たなスタートを切る段階で、「あなたはこっちです」という、家族ではない第三者の判断によってスタートラインを決められてしまうというのは、やはり社会から拒絶されているような感覚を受けてしまうのではないかと思います。やはり自分は、自分たちの家族は、こういう教育を受けさせたいという形でスタートしてみた。けれども、なかなかうまくいかない。やはりこちらのほうがよかったのではないかというように、だんだんと軌道修正をしていくということができるのとできないのとでは、大きく本人、そしてその家族の人生というものが変わってくるのではないかなと思っています。
 この委員会の中では品川委員が再三御指摘されているように、最近では教育ネグレクト、つまり、親がその子どもにとっての一番の支援者であり応援している人間であるという前提が覆されてしまうような家庭も、確かにないとは言えない。そういうケースに関しては、また別途議論が必要なのかもしれませんけれども、原則的には、僕自身は、就学先の決定権というのは、やはり保護者にあるべきなのではないかなと考えます。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 久松委員、お願いいたします。

【久松委員】 全日本ろうあ連盟の久松です。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。今回、意見書をお出ししました。資料9です。考え方の基本は、資料5の太田委員の御意見と基本的に同じです。
 1つ、資料9について説明に入る前に、一言申し上げたいことがあります。親が障害のある子どもが生まれてショックを受けるということについて、まず親がその障害のことを知らないということ。今の社会は、インクルーシブ社会ではないということが、1つあらわれていると思います。また、親が自分の子どもをどのように育てていけばいいのかわからないということ。今の社会には親を支援する仕組みがないということが言えるだろうと思います。ですので、最初に、向山委員の目次の整理が必要だというお話は、基本的に私もそのように思います。その中で、2の(1)のタイトルにある「早期からの教育相談」は、単なる相談、単なる情報提供だけでは足りないのではないかと思います。「支援」が必要だと思います。早期教育、また、親が育てられる環境整備、制度的な支援ということも盛り込まないと、親、保護者が全て負担を負うことになります。それが今問われているのだと思います。障害者のことを知らないということ。私たちは当事者団体として、社会に対して、私どもろうあ連盟は、ろうあ者のこと、聴覚障害者のことを理解していただくために、映画をつくって、そして、全国の高等学校など、聞こえない方々に理解を求めるということで、啓発活動を広めていっているところです。聞こえる人たちが、聞こえないということはどういうことなのかを理解するような取組が必要だと思います。地域の小学校、中学校に出向いて、手話を教えながら、聞こえないということは何が大変なのか、どういった障害なのかということを子どもたちに教えるような取組、それを障害のある立場で、障害のない子どもたちに理解を広めていくような取組です。ですから、親が障害者のことを知らないということが大きな問題だと思います。日常的に障害者とつき合う機会がない社会というのが、インクルーシブな社会ではないということ、それをまず強く言いたいと思います。
 私は障がい者制度改革推進会議のメンバーに入っています。障がい者制度改革推進会議で一番のテーマとして議論されているのは、学校教育法施行令の問題です。ここでは学校教育法施行令をどうするかということについて議論がないので、おそらく障がい者制度改革推進会議の中で、学校教育法施行令について議論することになろうかと思います。やはり保護者の「合意」または「同意」をどう見るかということについて議論になるものと思います。基本的には太田委員の考え方と賛同しますが、この「同意」できる仕組みをつくるということ。中間報告に合意形成を図りながら決定するという書き方ではなくて、合意形成を受けて決定する仕組みということになるのかなと感じています。ですので、その方向でもう少し踏み込んだ文章表現にすることで、障がい者制度改革推進会議にもつなげて議論ができるような形を求めたいと思います。
 次に、繰り返し意見を申し上げていますけれども、今の特別支援学校がセンター的機能を持つという考え方は理解できますが、今は先生方のお話のように、学校の先生の資質によることが多いです。また、人事異動でなかなか専門性を持った教育、先生が育たないということもあって、1人の子どもの発達段階に応じたサポートができないということが大きな課題だと思います。ですので、私の意見にありますように、個別支援センター、特別支援学校が固定的な機能を持つのであれば、センター的機能をつくるというのでも構わないかもしれませんが、現状では、特別支援学校が固定する機能というのはあり得ない。職員が異動することも多いですし、地域の学校の先生方も異動する。ですから、1人の子どもへの支援体制を継続的にやっていくということが難しいだろうと思います。ですので、個別支援センター的な機能を持って、これを独立させて、特別支援学校をサポートする。また、なおかつ、地域の小学校・中学校をサポートする。高校・大学の場合は、筑波技術大学が個別支援センター機能をつくっており、まあまあ成功、効果を発揮しているということがあります。全体的なインクルーシブ教育の効果を高めるような形に進めていくことが必要ではないかと思っています。今のところ、もう少し踏み込んだ表現が必要だということで、あえて申し上げたいと思います。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 少し時間が超過してきていますので、このあたりでまとめに入りたいと思いますが、後半部分の皆さんの御意見は、6ページ、7ページあたりの、特に就学相談・就学決定の在り方についての、特に囲みの部分の中身について具体的に踏み込んでお話をしていただいたところです。この修文をまたきちっとしなければいけないと思っています。両論併記というわけにはいかないので、両方の御意見が出ているということで理解していますが、もう一歩踏み込んだ記述にするべしというような御意見も強くありましたので、このあたりを今後さらに整理をしたいと思います。
 今まで各委員の方々からいただいた意見をまた整理をさせていただいて、これから石川委員長代理とも御相談の上で、事務局とも整理をいたして、次回の委員会までに、改めてまた皆さんにお示しをしたいと思います。
 なお、まだ足りない、いろいろ御意見を頂戴しなければいけないところですので、そういう点では、またメール等で事務局にお送りいただければと思っています。よろしくお願いします。
 それでは、今後の日程について、事務局から御説明をお願いします。

【助川特別支援教育課課長補佐】 特別支援教育課の助川です。次回につきましては、11月下旬、あるいは12月上旬に、引き続き論点整理案の審議を予定しております。なお、正式な日程につきましては、至急御連絡させていただきたいと思います。
 また、委員の先生方には、前回の議事録の案をお配りしておりますので、こちらにつきまして、修正等あります場合は、11月26日、1週間後までに事務局までお送りいただきますよう、よろしくお願いいたします。以上です。

【宮﨑委員長】 それでは、本日はこれで閉会といたします。御出席いただきましてありがとうございました。改めてお礼を申し上げます。

 

―― 了 ――

 

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