資料2:久松委員提出資料

平成24年6月6日

特別支援教育の在り方に関する特別委員会
「特別支援教育の在り方に関する特別委員会報告(案)」に関する意見

財団法人全日本ろうあ連盟
常任理事・事務局長 久松三二

1.全体的に

 共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進に関する委員会としての提言ですから、文末の表現は、「~期待される」「~考えられる」「望ましい」「適当である」から「~が重要である」「~必要がある」という表現に修正することを提案します。
 関係機関等との連携は、共生社会の形成に向けた重要な要素であると考えますが、この関係機関等はこれまで保護者、保護者団体(親の会等)、障害をもつ当事者、その当事者団体が含まれるという認識はなかったと思います。障害者権利条約では、障害者のための政策に障害をもつ当事者が参画できていなかったことを強く反省して、障害をもつ当事者が主体的に参画することの必要性を謳っております。
 早期からの教育相談・支援、就学先決定の仕組み、十分な教育を受けるための合理的配慮、個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成、地域の理解啓発、災害時の支援体制、交流および共同学習等において、市町村教育委員会が保護者や専門家のほかに、障害をもつ当事者やその当事者団体と十分に連携をとりながら推進していく必要があります。言うまでもないことですが、障害をもつ当事者やその当事者団体は、特別支援教育を受けた経験があり、その経験を活かした助言、支援ができます。また、最近では、福祉、医療、法律等の専門的知識を有する障害をもつ当事者が増えてきており、その人材を積極的に活用することにより保護者への勇気や安心感を与えることができます。

2.「教育支援委員会(仮称)」について

 「教育支援委員会(仮称)」は、保護者団体や障害をもつ当事者団体を含めた第三者的機能を有する機関として位置づけることが必要です。第三者的機能を有する機関に、医療、法律、福祉の専門家が参画することによって、公平性、専門性が担保されると考えます。

3.「基礎的環境整備」について

 あらゆる障害をもつ当事者への環境整備を提供し保障する観点から、「基礎的環境整備」は設置者の責任で対応することではなく、国が財源を確保し、国の責任で担うべきものと考えます。教員、支援員等の人事配置、情報保障を含めたソフト面を含めた施設整備、固有の障害に対応した教材の確保等、地域格差が生じないよう判断基準を明白にする必要があります。
 なお、ワーキンググループの報告でも、『障害のある子どもに対する支援については、法令に基づき又は財政措置により、国は全国規模で、都道府県は各都道府県内で、市町村は各市町村内で、教育環境の整備をそれぞれ行う。これらは、合理的配慮の基礎となる環境整備であり、それを「基礎的環境整備」と呼ぶこととする。これらの環境整備は、その整備の状況により異なるところではあるが、これらを基に、設置者及び学校が、各学校において、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、「合理的配慮」を提供する。』と提言しておりますので、この報告に沿って国の責任を明記することが必要です。

4.合理的配慮について

 上記3.の主旨の通り「基礎的環境整備」を国が担保することによって「合理的配慮」の内容を整備することが必要と考えます。現状では、障害をもつ当事者やその保護者の負担の格差が大きく生じる懸念があります。特に財政的困難を抱えた家庭では更に困窮を深める恐れがあり、福祉的サービスの提供が整備されつつ十分な教育を受ける環境を整えていく必要があります。

5.特別支援教育センター機能について

 本来は特別支援学校とは独立した機関であることが望ましいが、特別支援学校にその役割を求めるのであれば、特別支援学校の教員、特に指導の経験が豊かで専門的な知識を有する教員は特別支援教育センターの中核的役割を求められることが想定されるから、その負担はかなり大きいと考えられます。以前に比して人事異動により勤務年数が短くなる傾向の中では、特定教員にかかる負担は大きいと思います。その負荷を軽減するためにも学校内での役割を減らし、兼務することなく独立した職務として担うことが必要であると思います。

6.ろう教育、盲ろう教育、ろう重複障害教育、難聴教育について

 本報告案は、共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築を目指す特別支援教育の仕組みに関する提案ですが、主に知的障害や発達障害をもつ児童生徒を対象にしておりますので、視覚障害、聴覚障害、盲ろう、重複障害のように固有の教育や合理的配慮を必要とする児童生徒に適した教育システムを、別途検討する必要があると考えます。
 例えば、盲学校やろう学校が、県内に一校、あるいは二校しかないところが多くあります。また在籍する児童生徒の数が減少しており、個別指導を経験できても集団学習での指導方法を習得できない状況になってきており、県を跨いでの広範な人事交流や配置等の機会がなければ、その専門性を確保することがさらに困難になり、また難聴学級等の特別支援学級への指導もしにくくなるものと思われます。
 ろう学校では、障害を持つ教員の数が増加しつつありますが、職員会議等での障害をもつ教員への情報保障は同僚教員の自主的な配慮で取り組まれている状況にあります。登録手話通訳者や手話通訳士等外部の支援者の配置、派遣申請が出来る仕組みを構築する必要があります。またろう学校での言語指導は、主に日本語の習得のために行うことが多く、手話言語の指導が行われておりません。手話言語指導員の養成・配置、手話言語指導カリキュラム、手話言語教材の編纂、配給等を推進することが必要と思います。障害者基本法でも手話が言語として規定され、その観点での教育が実施されることを望みます。

 

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