資料6-2:特別委員会(第11回)における早期からの教育相談・支援についての事例紹介(概要)

<三鷹市>

○総合保健センターの乳幼児健康診査で、発達の遅れなどの課題が発見された場合には、総合保健センターでフォローするほか、障害児・者の福祉センターでの相談へとつないでいく。就学前は、総合保健センターや障害児・者の福祉センターで相談や療育を行いながら、幼稚園や保育所などでの生活を支援する。障害のある子の就学については、保護者からの申込みによる就学相談と保護者の同意を得た上での就学支援委員会での判断を行っている。

○就学相談を希望しない幼児でも、就学に当たって心配な場合には、就学支援シートを保護者と幼稚園、保育所とで作成し、教育委員会を通じて学校へ提出し、園で行っていた支援を学校でも継続できるようにしている。

○基礎自治体の小・中学校ではなく、県等の特別支援学校に就学した場合には、県等で設けている副次的な学籍を活用して居住する地域の指定校である小・中学校の行事や授業に参加したり、学校便りを受け取ったりという交流を積極的に行っている。

○義務教育後は、学校教育の継続や就労など、それぞれの状況に合わせた進路を選択しながら地域での生活を送れるよう支援をしている。

○総合保健センターで、妊娠、出産、育児に関する親の不安の軽減を図り、安心して育児ができ、子どものすこやかな成長を育むために様々な母子保健サービスを実施しており、また、障害児・者の福祉センターでは、通園や外来という形で早期発見、早期療育を行っており、発達に課題のある子及び障害のある子の保護者からの相談対応や対象児への専門療育等を提供している。

○障害児・者の福祉センターで実施している相談・療育を学校教育段階への引継ぎとして、スムーズな就学への移行が可能となるよう就学支援シートやそれまでの療育経過と内容を記述した療育のまとめとを保護者に提供している。

○コミュニティ・スクールを基盤とする小・中一貫教育を行っており、小学校2校から3校と中学校1校からなる学園の特別支援学級又は通級による指導を設置している。

○「一人ひとりの教育的ニーズに応える教育支援」を特別支援教育の推進プランの柱の一つに掲げ、学校においては個別指導計画、個別の教育支援計画の作成活用や学校長のリーダーシップ、教員に対する研修の継続などを挙げ、特に、個別指導計画は各校の教育支援コーディネーターの研修を強化することや就学支援シートの活用により、すべての学校で取り組んでいる。

○義務教育9年間だけではなく、幼稚園や保育所の支援等の引継ぎや義務教育修了後のさらなる継続が重要であるとして、特に、教育委員会から学校に派遣するカウンセラーや教育支援員の役割を果たす学習指導員、また学校を巡回して教員の指導を行う専門家である巡回発達相談員については、一つの学園内の小・中学校には、それぞれ同一の者を派遣している。

○「総合教育相談室」を設けて教育支援を行うとともに、市長部局との連携を豊かにし、仮に保護者が就学時に教育支援委員会の判断とは異なる就学先を選んだとしても、継続的に相談を行うケースにおいて、保護者に寄り添う、子どもに寄り添う取組を総合教育相談室で行っている。

○あまり相談の希望を持たない家庭への支援として、学校と連携しながら家庭への支援を行うスクールソーシャルワーカーを中心に、市で小学校に配置しているスクールカウンセラーにも関わってもらい支援を行っている。

○乳幼児健診から就学前の療育・相談の連携という実践、子ども家庭支援ネットワークを中心とした事業、幼稚園と保育所と小学校の連携を図る事業の実践など、教育委員会と市長部局の連携による子どもの発達支援や子育て支援の施策が行われ、支援の担い手が多層的である。個別的な支援を子ども本位に継続する上では、複数の部署でそれぞれのキーパーソンが役割分担をすることによる「多層的な支援」を生かすことが重要。連携のキーパーソンとなる職員として、複数の職員を配置し、教育と福祉が互いに顔の見える連携を実現するとともに、担当者同士の信頼関係の構築が重要である。

○子ども本位の適切な支援をしていくためには、複数の部門が有効に連携することが必要であり、個人情報を守りつつも、支援や指導に必要な情報について共有の範囲を明確に定め、その都度対応していくという慎重な体制が求められる。個人情報保護との兼ね合いが現場の課題である。

○各学校に多様な市民が、まさに授業支援であったり、クラブ支援であったり、地域子どもクラブ支援であったりといった多様な場面で、ボランティア的に関わっている。地域で最初から最後まで子どもが人権を尊重されて暮らすということを目指すならば、「どの子も地域の学校で」を貫くことが一つの考え方であるが、基礎自治体の支援だけでは不足する子どももおり、県等の特別支援学校で学ぶ子どもも地域で居場所をつくるということが重要であり、副次的な学籍といった事業の中で、特別支援学校に通いつつ、地域の学校にも居場所を持って、地域によって支えられ、自分自身も役割を果たして、その自己の尊厳を確認できるという取組を目指していきたい。

<湖南市>

○公立、私立を問わず市内全ての校・園が、発達支援のためのシステムに組み込まれ、教育、福祉、保健、就労、医療といった各関係機関の横の連携による支援と個別の指導計画による縦の連携とを機能的に関連させながら特別支援教育を進めている。

○発達支援のためのシステムの横の連携が支援の継続という点で欠かすことはできないものであるとして、それを地域として支えるために発達支援室を設けている。

○個別の指導計画を、保育所、幼稚園、小・中学校が校・園間で引き継ぎ、幼児、児童生徒への適切な支援を継続して行うとともに、中学校から次の進路先への引継ぎが充実したものになるよう、本人も参画させた個別支援移行計画の作成に取り組んでいる。

○発達支援のためのシステムの活用により、乳幼児健診とその後のフォローを確実に実施すること、療育教室やことばの教室幼児部において早期発達支援を行うことに取り組んでいる。

○保育所、幼稚園が活用できる発達相談、巡回相談、小・中学校が活用できる巡回相談といった相談の窓口は、すべて特別支援教育コーディネーターが担っており、園では、副園長にコーディネーターになってもらい、小・中学校には複数のコーディネーターを置くようにしている。

○校・園ごとに回数や時期をあらかじめ振り分けると、ニーズに合った相談、実効性のある相談にすることが難しいと考え、要請に応じてタイムリーに実施する方法をとるようにし、支援や指導の在り方の相談、心理検査の実施、事例検討、職員や保護者の研修会など、校・園の実情に合わせて実施している。

○市内にある特別支援学校のセンター的機能を活用し、検査、相談、見学、体験、専門的な情報の提供など様々な教育相談に協力してもらい、システムの厚みを増している。

○発達支援をするためのシステムを活用した小・中学校における特別支援教育として、○1 巡回相談の活用(授業参観で得た情報やアドバイスを基に授業を組み立てる、個別のケースについても見立てを改めるなど、集団の中での支援を意識した取組)、○2 教育委員会が発行・編集する「特別支援教育ハンドブック」の活用(コーディネーターの役割の確認、学習環境についてのチェックリストの作成等、特別支援教育の推進について共通理解を図る取組)、○3 不登校や学校への行き渋りについても巡回相談を活用し早期に対応(本人のペースに合わせた教室復帰に取り組み、不登校児童生徒の減少につながる成果)、○4 「読み書きチェック」の活用(ことばの教室で作成し、小学1・2年生全員に実施、ことばの教室で結果考察をし、読み書きの困難な児童に早期対応のきっかけ)、○5 保育所、幼稚園、小・中学校間のイントラネット(個別ケースの情報集積と情報交換が可能)、○6 学齢期終了後を見据えた就学指導(校・園間の連絡体制の充実を図ることを狙いとした特別支援教育コーディネーター連絡会議を集まる校・園種を毎回設定、専門チーム会議は、各校・園の特別支援教育コーディネーター等から示された事例について、障害の判断、医療対応、教育・支援内容等について検討、支援の方向を考えるための就学指導委員会の検討、就学指導においてまず必要とする支援を整理し結果として就学先を決めるという過程を大切にする)に取り組んでいる。

○保護者との面談においては、それぞれ園長、校長、特別支援教育コーディネーターも同席することや、夏休みだけでなく疑問や不安を感じられたときにタイムリーに相談できる体制をとり、保護者にとっての安心感につなげている。

○保護者の意向と一致しなかったケースについては、継続相談として個別の指導計画を作成、実行を続けている。

○発達支援のためのシステムは、近隣の自治体とともに設けている地域障害児・者サービス調整会議とも連動しており、特別支援教育部会を設けて圏域全体で情報交換に努め、課題を明らかにすることにも取り組んでいる。

○障害者手帳等も持たない者でも、「発達支援ファイル」を持つことで、支援を必要とすることが明確になるということで有効ではないか。

○発達支援のためのシステムが機能することにより、早期支援が充実し、それが二次障害の防止につながるのではないか。

○就労や社会自立をゴールとして考えるという視点を持つことにより、校・園が、保健や福祉サービス、相談支援事業所、専門機関とのつながりを柔軟に持つことができるようになった。

○園での気づき、周りからの乳幼児健診での指摘、保護者からの声が完全に一致することは困難であること、子どもが小さければ小さいほど困難であることを支援に関わる者はしっかりと理解をしながら、そして、保護者の理解や要請を傾聴する相談を大事にやっていくべき。

<笠岡市>

○体制作りのため、○1 保育所、幼稚園、小学校、中学校における特別支援教育の推進、○2 コーディネーター等、担当者の効果的な研修、○3 個々のケースに対する関係機関と連携した支援体制、○4 幼児期からの一貫した長期的・継続的な連携体制の構築に取り組んでいる。

○教育委員会と健康福祉部局が連携し、早期からの教育相談・支援、そして円滑な就学指導を目的とした4歳児発達支援事業の取組を開始し、医師会、保健所、児童相談所、知的障害児通園施設、県立特別支援学校等の協力を得て、医師、保健師、コーディネーター、臨床心理士、カウンセラー、指導主事からなる支援チームを、相談に応じて編成し対応をしている。

○4歳児を対象に○1 保育所、幼稚園を通じ保護者の方に生活状況調査等を配付し記入してもらい、子どもの困難さを把握、○2 各保育所、幼稚園で6か月間行動観察を行い、個々の子どもに対し、「個別支援事前シート」というシートを活用しスクリーニング、○3 保育所、幼稚園の中で、園内委員会等を開催し、困難さの高い幼児の把握、市の支援チームの事前検討会議の個別の相談票を作成、○4 支援チームによる事前検討会議を実施、○5 支援チームが該当の保育所、幼稚園に訪問し、行動観察、○6 支援チームによる個別支援シートの作成・支援方針検討会議による支援方針の決定、○7 支援方針に基づく園における幼児への支援、○8 支援チームによるサポート、という取組を行っている。

○就学先決定に当たって、通常の学級の見学・参観、特別支援学級の見学・参観、特別支援学校の見学・参観等の調整を教育委員会で行っている。

○保育所、幼稚園と小学校との連携という観点から、小学校教員が実際に保育所、幼稚園に出向いて、担任から子どもの様子や具体的な支援を聞いたり、障害の状態を把握したりする機会を設けるとともに、担当の先生方を集めた特別支援教育連絡会を開催し、各保育所、幼稚園で行われている支援体制の引継ぎ、情報交換を行っている。

○一貫した支援体制作りの取組として、保護者が我が子の教育的ニーズや情報等を各関係機関と共有し、乳幼児期から就労までの一貫した支援を受けることができるように相談支援ファイルというものを活用する取組を実施している。

○継続的な支援を行うためには、情報を一元化して共有することが必要であり、支援ファイルは有効と考えられる。子どもの状況だけではなく、学校や関係機関とともに検討する支援内容についてもファイルに記載できるように工夫し、支援を必要とする子どもや保護者との関係機関等とのつながりを大切にしながら、一貫した支援を行うことができる体制をつくっていきたい。

○相談支援ファイルの効果として、○1 記録した子どもの状況や支援の経過を関係機関等に示すことで、適切な支援を受けるための手がかりとする、○2 子どもの状況や支援の経過を基に、関係機関と情報を共有しながら、今後の支援の方針や内容について具体的に検討することができる、○3 子どもの状況や支援の経過を記録することで、成長の過程を振り返ることができる、が考えられる。

○相談支援ファイルには、例えば、病気医療に関する情報、発達に関する受診相談等、個人情報に係ることも入れており、今後の課題としては、個人情報の管理が挙げられる。

○相談支援ファイルだけでなく、自治体全体としての特別支援教育のシステムを構築することも課題である。

○保護者の方のストレスを高めてしまうような相談になってしまうことが現実にある。保護者の方の思いを聞いて、本人の様子をしっかり把握して、焦らずに、時間をかけて、説明をし、その中で信頼関係を築いていくということを第一に、取り組んでいくべきである。

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)