資料11:特別支援教育の在り方に関する特別委員会(第10回)における質問事項に対する回答

イギリス

  1. 「特別な教育的ニーズのステートメントを持つ子どもの就学にあたっては,保護者がそれを望まない場合と他の子どもたちの効果的な教育の手立てと矛盾しない限りはメインストリームスクールで教育されなければならない」の出典及び原文について
  2. 障害者の権利に関する条約第24条の留保及び解釈宣言について

フランス

  • 就学の決定に当たり,親の同意が必要要件となっているかどうかについて

イタリア

  1. 盲学校と特別支援学校(知・肢・病)と言える学校の存在について
  2. 常に医療的ケアが必要な子どもが在籍しているとき医師やコメディカルスタッフが具体的にどのように対応しているか
  3. 小学校の教員資格を取得する教員に対して特別支援教育に関する単位を義務づけることについて
  4. 障害があるために通常の学校に行っていないという子どもの割合について
  5. 北部地域と南部地域など,経済的な状況が違うために,障害のある子どもの教育の対応が異なるのではないか

平成23年8月19日
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所

イギリス1

質問事項

「『特別な教育的ニーズのステートメントを持つ子どもの就学にあたっては,保護者がそれを望まない場合と他の子どもたちの効果的な教育の手立てと矛盾しない限りはメインストリームスクールで教育されなければならない』の出典及び原文について」

回答

Education Act 1996のステートメントがある子どもの就学に関する規定の原文は,以下のとおり。

316

(3)If a statement is maintained under section 324 for the child, he must be educated in a mainstream school unless that is incompatible with―
 (a)the wishes of his parent, or
 (b)the provision of efficient education for other children.

以上

イギリス2

質問事項

「障害者の権利に関する条約第24条の留保及び解釈宣言について」

回答

 ご指摘のとおり。イギリスの条約への批准のプロセスにおいては,2007年に署名後,2009年に留保と解釈宣言とともに批准がなされている。

 留保と解釈宣言について国連では以下のように定義している。

(仮訳)

  • 留保とは,条約の特定の規定の自国への適用上その法的効果を排除し又は変更することを意図した国が行う宣言である。
  • 解釈宣言については,批准を行う国は時々,ある条約の内容についての自らの理解や特定の条項についての解釈について宣言する。留保とは異なり,解釈宣言は国家の立場について明確にするのみで,条約の法的拘束力を除外したり,変更したりするものではない。

[参照文献]

 United Nations Treaty Collection:Treaty Reference Guide Definition of key terms used in the UN Treaty Collection (URL http://untreaty.un.org/French/guide.txt)

 イギリスの行った留保内容と解釈宣言は,教育に関しては以下のとおりである。

Reservation
Education ― Convention Article 24 Clause 2(a) and 2(b)
The United Kingdom reserves the right for disabled children to be educated outside their local community where more appropriate education provision is available elsewhere. Nevertheless, parents of disabled children have the same opportunity as other parents to state a preference for the school at which they wish their child to be educated.

(仮訳)留保

教育 - 条約 第24条 第2項(a)と(b)

 連合王国は,障害のある子どもが,自己の生活する地域社会の外にある,より適切な教育の提供が可能などこかで教育され得る権利を保持する。但し,障害のある子どもの親は,その子どもが教育される学校の優先順位を表明する機会を他の親と同様に持つ。

Declaration
“Education ― Convention Article 24 Clause 2(a) and(b)
 The United Kingdom Government is committed to continuing to develop an inclusive system where parents of disabled children have increasing access to mainstream schools and staff, which have the capacity to meet the needs of disabled children.
The General Education System in the United Kingdom includes mainstream, and special schools, which the UK Government understands is allowed under the Convention.”

(仮訳)解釈宣言

教育 - 条約 第24条 第2項(a)と(b)

 連合王国政府は,障害のある子どもの親が,障害のある子どものニーズに応ずることのできるメインストリームの学校や職員へのアクセスがより多くできるようなインクルーシブなシステムの開発を継続するものとする。
 連合王国政府は、連合王国における教育制度一般には、メインストリーム学校と特別学校を含むものと理解しており、このことは本条約において許容される。

[参照文献]

 UN Enable:Convention and Optional Protocol Signatures and Ratifications Declarations and Reservations(URL http://www.un.org/disabilities/default.asp?id=475)

(参考)

Education ― Convention Article 24 Clause 2(a) and(b)
2.In realizing this right, States Parties shall ensure that:

(a)Persons with disabilities are not excluded from the general education system on the basis of disability, and that children with disabilities are not excluded from free and compulsory primary education, or from secondary education, on the basis of disability;

(b)Persons with disabilities can access an inclusive, quality and free primary education and secondary education on an equal basis with others in the communities in which they live;

(日本政府仮訳)

2.締約国は,1の権利の実現にあたり,次のことを確保する。

(a)障害者が障害を理由として教育制度一般から排除されないこと及び障害のある児童が障害を理由として無償のかつ義務的な初等教育から又は中等教育から排除されないこと。

(b)障害者が,他の者と平等に,自己の生活する地域社会において,包容され,質が高く,かつ,無償の初等教育の機会及び中等教育の機会を与えられること。

フランス

質問事項

「就学の決定に当たり,親の同意が必要要件となっているかどうかについて」

回答

 具体的な就学決定の手続きは,以下のように行われる。

 まず,保護者,あるいは法的後見人(以下「保護者」とする)は,子どもの障害の有無に関わらず,居住地に最も近い通常学校へ学籍を登録する。その後,障害のある場合には,保護者からの申し出によって,特別な支援を受けて就学するための個別就学計画(PPS)が作成される。PPSは,通常学級での就学を最優先に,また保護者が密接に就学先の決定に関与することが規定されているが,その最終決定は県の障害者権利自立委員会が行うことになっている。

 障害者権利自立委員会は,PPSの決定に先立って,15日間の期限付きで保護者に内容を提示して意見を求めた上で,最終決定が行われる。PPSが最終決定した場合に,もし,保護者が,その決定を不服とする場合には,調整,調停,または訴訟の手続きが取られることになる。

 その一方で,教育法典には,他の学校などへの学籍登録や特別な学級などの特別な就学の場合には,保護者の同意が必要と規定されているため,PPSが決定されても,特別な就学について保護者の同意がなければ,その決定されたPPSは実施されない。この結果,子どもは学籍を登録した居住地に最も近い学校へ就学することになる。

 付記:もし,保護者がPPSを受け入れない場合は,そのまま当初学籍が登録された通常の学校への就学が行われる反面,障害のある子どものための公的な支援の枠組みを受けられないことになる。これを回避するため障害者権利自立委員会は,実際には,15日間の期限のあとに審査のやり直しを含めて,保護者との合意形成の話し合いを継続するようである。

以上

イタリア1

質問事項

「盲学校と特別支援学校(知・肢・病)と言える学校の存在について」

回答

 旧盲学校及び旧聾学校が,国立中学校や職業高校として存続しているケースがある。校名がそのまま継承されている学校もあるが,国立学校として他校と同様のインクルーシブな教育を行っており,在籍生徒は,健常者が多数を占めている。

 一方,旧盲学校及び旧聾学校から移行した学校は,視覚障害や聴覚障害に特有の課題への対応や特別な指導を行う機能を有しており,障害生徒の在籍者の比率が,視覚障害や聴覚障害が他の障害種に比べて高くなっている。

イタリア2

質問事項

「常に医療的ケアが必要な子どもが在籍しているとき医師やコメディカルスタッフが具体的にどのように対応しているか」

回答

 常に医療的ケアを必要とする子どもへの学校での対応については,具体的事例について把握できていない。

イタリア3

質問事項

「小学校の教員資格を取得する教員に対して特別支援教育に関する単位を義務づけることについて」

回答

 大学の教育学部における幼稚園及び小学校の教員養成課程では,通常の学級で障害のある子どもに対応するための内容がカリキュラムに付加されている。それらは400時間を下限としており,特別支援教育に関する基本的な基礎的な内容を習得させようとするものである。教員資格を得るために必要な試験にも特別支援教育に関する問題が出題される。

 さらにインクルージョンの理解を深めるために100時間の実習も行うことになっている。

出典:Organisation of the education system in Italy 2009/2010.EURYDICE,

イタリア4

質問事項

「障害があるために通常の学校に行っていないという子どもの割合について」

回答

 イタリア政府及びISTAT(イタリア国立統計研究所)等の公的資料をあたったが,不就学者の実態を示すものは見いだすことができなかった。

イタリア5

質問事項

「北部地域と南部地域など,経済的な状況が違うために,障害のある子どもの教育の対応が異なるのではないか」

回答

 イタリアの公立学校は,国立である。障害がある子どもに対する教員配置は,国の基準に基づいており,地域による差はない。

 ただし,支援員の負担は県の権限によりなされるため,県の財政状況が影響するものと思われる。

以上

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)