平成22年12月17日
障がい者制度改革推進会議
1)目的
2)定義
3)基本理念
4)差別の禁止
5)障害のある女性
6)障害のある子ども
7)国及び地方公共団体の責務
8)国民の理解・責務
8)国際的協調
10)障害者週間
11)施策の基本方針
12)その他
1)地域生活
2)労働及び雇用
3)教育
4)健康、医療
5)障害原因の予防
6)精神障害者に係る地域移行の促進と医療における適正手続の確保
7)相談等
8)住宅
9)ユニバーサルデザインと技術開発
10)公共的施設のバリアフリー化と交通・移動の確保
11)情報アクセスと言語・コミュニケーション保障
12)文化・スポーツ
13)所得保障
14)政治参加
15)司法手続
16)国際協力
1)組織
2)所掌事務
本年1月から始まった「障がい者制度改革推進会議」(以下、「推進会議」という。)は、12月17日現在で29回目を迎えた。
「第一次意見」(障害者制度改革の推進のための基本的方向)は、第14回推進会議(6月7日)でまとめられ、閣議決定(「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」6月29日付)がなされて以降、推進会議においては、次の取組が行われている。
「第一次意見」では、今後の改革の課題を基礎的課題、横断的課題、個別分野の3つの分野に分けて意見が取りまとめられている。
この横断的課題の第1に位置付けられた障害者基本法(昭和45年(1970)法律第84号)(以下、基本法という。)の抜本改正は、本年末を目途に作成予定の「第二次意見」の内容を踏まえて、政府において、平成23年の通常国会に法案を提出することになっている。
そこで、「第一次意見」後の推進会議においては、「第二次意見」の取りまとめに向けて、追加的な個別分野の事項として「住宅」「文化・スポーツ」「ユニバーサルデザイン」「障害の予防」について、省庁ヒアリングを実施して議論を行ってきた。
また、基本法改正の議論においては、総則・各則・推進体制ごとに、事務局が提出した条文の規定ぶりイメージをもとに議論を行ってきた。
次に、横断的課題の第2に位置づけられた障害を理由とする差別の禁止法(仮称)等の制定については、11月に第1回「差別禁止部会」が開催され、今後は検討項目を整理して、政府において、平成25年の通常国会に法案が提出できるよう本格的な取組を行うことになっている。
横断的課題の第3に位置付けられた障害者総合福祉法(仮称)の制定については、この検討を行う「総合福祉部会」において、10月からは同法の重要なテーマ(項目及び論点)ごとに九つの作業チームを設置して、検討作業を行っている。
その中で、「第一次意見」で個別分野の課題として位置付けられ、検討項目及び論点が障害者総合福祉法(仮称)と関連しつつもその範囲を超える内容を持つ「就労」「医療」「障害児支援」の分野については、推進会議の委員との合同作業チームを設けて基本法改正に盛り込むべき事項の取りまとめも含めて検討を行ってきたところである。
この「総合福祉部会」では、今後、平成23年8月には部会としての意見を取りまとめ、政府において、平成24年の通常国会に法案提出を行い、平成25年8月の施行ができるよう、引き続き検討を行うことになっている。
このような検討と並行して、「地域フォーラム」が全国14ヶ所(11月末現在)で開催され、毎回100人~500人の参加者が集まり、推進会議の意義と一連の取組について、各地で大きな注目と期待が持たれている。
今後、「地域フォーラム」は、平成23年2月までに合計19か所で開催する予定になっている。
現行の基本法は、国内の障害者関係の各個別法及び施策の基本的な理念、方針及び推進体制を包括的に定めているが、現在、国内外の状況の変化によって大きな転換期を迎えている。
戦後の障害者施策は、1940年代の終わりから60年代にかけて、身体障害者福祉法や精神薄弱者福祉法(当時の表記)、精神衛生法にみられる「特別法」、又は社会福祉事業法や児童福祉法を始め、医療・教育・職業訓練及び雇用促進・年金・住宅・交通等に関連する個別法の中で分散して限定的に取り上げられ、その基本的考え方は、障害者を「対策」の対象とすることにとどまっていた。
このような状況に対しては、関係者から障害者対策に総合性と一貫性が欠けており、行政機関相互の連絡調整の必要性が指摘されていた。また、高度経済成長から取り残されていく障害者への無関心な社会の実態が、障害者団体や関係者から強く指摘され、根本的な対策を求める声が高まっていた。
基本法の前身である「心身障害者対策基本法」(昭和45(1970)年)は、こうした背景のもとで制定されたが、法律名称に表れているように、障害者を「対策」の対象とすることに変化はなかった。
ところが、「国連・障害者の十年」(1983-1992)の展開を中心とした国際的潮流を踏まえ、「心身障害者対策基本法」は大幅に改正され、名称も「障害者基本法」(平成5(1993)年制定)と改められた。この基本法は、主に3つの側面において変革をもたらした。
第1は、それまでの障害者の自力更生と社会復帰、優生思想を背景とした障害の予防と早期発見、障害の克服等を基調とした「心身障害者対策基本法」をノーマライゼーション理念に基づいて改編したことである。
第2は、「国連・障害者の十年」とノーマライゼーション理念の提唱による国内の「障害者対策に関する長期行動計画」(昭和58(1983)年~平成4(1992)年)の策定と実施による経過と実績を踏まえて、当時の障害者施策の到達点を基本法によって事後的に確認したことである。
更に、第3は、精神障害者がはじめて法的に障害者として位置づけられたことである。
その後、10年を経て平成16(2004)年に改正された基本法は、1990年代のアメリカ、イギリス等における障害者差別禁止法の実現や障害者への差別を禁止する法制化を求める国連・社会権規約委員会による日本政府への勧告(平成12(2000)年)等の国際的動向と国内の地域社会における障害者の生活保障を求める多様な取組に影響を受け、「基本的理念」(第3条3項)に差別禁止が、「国及び地方公共団体の責務」(第4条)に差別の防止がそれぞれ追加され、「施策の基本方針」(第8条2項)に「可能な限り、地域において自立した日常生活を営むことができるよう配慮されなければならない。」との文言が盛り込まれた。
このように、これまでの基本法にかかわる主な経過を振り返ってみると、内外の動向に少なからず影響を受けてきたことが明らかである。
現在、「障害者の権利に関する条約(仮称)(Convention
on the Rights of Persons with Disabilities)」(以下、「障害者権利条約」という。)の国連採択(平成18(2006)年)を契機に、障害者権利条約の締結に向けて、同条約が要請する障害者の権利を実現する枠組みと水準に見合う国内の障害者制度改革をどのように行うのかということが日本の大きな課題となっている。
この大きな課題の中で、基本法がその内容において、関係個別法の上位法として位置付けられていることにかんがみると、今般の基本法の改正は、障害者権利条約を締結し、同条約の規定を遵守するために必要な国内の制度改革全体の理念と施策の基本方針の要に位置し、今後の障害者施策の方向に大きな影響を与えるものとして、極めて重要かつ大きな意義があるということができる。
障害者は、古今東西いかなる社会であれ、普遍的に存在している。社会には、子ども、青年、壮年、高齢者が存在するように、障害者も社会の普遍的な構成員として存在する。
しかし、障害者が社会の対等な一員として地域社会で暮らすには、いまだに大きな社会的障壁が待ち構えている。たとえば、交通機関、建築物等における物理的な障壁、欠格条項をはじめとする法律制度の障壁、点字、文字情報、手話通訳等による情報保障の欠如における文化・情報面の障壁、障害者を庇護されるべき存在としてとらえたり、障害者を外観だけで判断するなどの意識上の障壁等である。
日本の障害者施策は、特に戦後から本格的に講じられるようになり、その結果、大きな発展を遂げてきたともいえる。ところが、これまでの障害者施策は、障害者をいわゆる健常者と対比して、心身の機能に障害をかかえ、能力的に劣っているものと把握し、障害者が遭遇する様々な困難の原因を個人の心身の状態に求める考え方を起点として、体系化されてきたものである。障害者が受ける制限の原因を障害の存在に求めている現行基本法の障害者の定義ひとつをとってもそれは明らかなところである。
しかし、人類社会はしだいに社会との関係において障害を考察するようになり、ついには、障害が個人の機能障害と社会参加を妨げる社会的障壁との相互作用によって発生するものであるとの認識に達した。そしてこうした認識の変化は、障害者を保護の客体として扱ってきたこれまでの社会の対応に反省を促して、自己責任・家族依存を前提とする政策から社会的支援としての地域社会での生活支援を拡大するとともに、障害に基づく差別を撤廃し、障害者を権利の主体者として扱うべきであるとする根拠をもたらした。
現行基本法は、先に述べた経緯をたどり、国際社会の影響や国内の状況を反映し発展してきたものであり、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本的理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めるものとなっている。
しかしながら、いまだ多くの障害者が施設や精神科病院での暮らしを余儀なくされ、地域社会における生活も多くの困難を抱えるだけでなく差別や虐待も後を絶たない現状にあり、国際障害者年(昭和56(1981)年)以来叫ばれてきたノーマライゼーションや完全参加と平等は、いまだ遠い夢でしかない。
かような状況において、基本法が単に既存の施策のリストに終わることなく、真に障害者施策をリードしていくためには、いくつかの条件が必要である。
すなわちそれは、第1には、障害に基づく差異を否定的な評価の対象としてではなく人間の多様性の一つとして尊重し、相互に分け隔てられることなく個性と人格を認め合うインクルーシブな社会の構築を基本法の目的に組み込むことであり、第2には、基本法が依って立つ障害概念を転換したうえで、差別禁止も含め、障害者に認められるべき基本的な人権を確認し、各種施策が人権確保のために国や地方公共団体の責務を定めるものであるとの位置付けを与えることであり、第3には、障害者に関連する政策決定過程に障害者が参画する重要性にかんがみて、障害者に関する施策の実施状況を監視する権能を担う機関を創設することである。
以上の改正の趣旨・目的を踏まえ、改正基本法には前文を規定すべきである。
推進会議は、かかる観点から、基本法の抜本改正に向けて精力的な議論を重ね、ここにその成果を第二次意見として示す。
本意見を受け、今後政府においては、基本法の改正に向けた検討・調整がなされていくものであるが、その内容が最大限に踏まえられたものとなるよう期待するものである。
1)目的
(推進会議の問題認識)
【基本的人権の享有主体性の確認】 障害者を保護の客体であるとする見方から、すべての基本的人権の享有主体であるとの見方へ、考え方の根本を転換することが障害者権利条約の理念であり、今後の障害者施策の基本となるべきである。したがって、かかる観点から、障害者権利条約を締結することを目指して、基本法の目的の見直しが行われるべきである。 【格差の除去と平等の権利の保障】 障害者は、障害に基づく日常生活上及び社会生活上の様々な制限や制約を受けている。また障害者の中でも、制度の対象になる障害とならない障害があるなど、制度内にも障害の種別・程度による格差(*1)といえるものが存在する。こうした現状を改善し、すべての障害者に障害のない人と平等の権利を保障することができるよう、基本法の見直しが行われるべきである。 (*1)「障害の種別・程度による格差」 【インクルーシブ社会の構築】 すべての障害者が国民から分け隔てられることなく、社会の一員として受け入れられ、合理的配慮や必要な支援の充足を通じて、障害の有無に関わらず地域社会で共に自立した生活を営むことが確保されたインクルーシブ社会を実現することが日本の目指すべき社会であることを明記し、そのための国及び地方公共団体の責務を明らかにするよう、障害者基本法の見直しが行われるべきである。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害者が、障害のない人と等しく、基本的人権の享有主体であることを確認し、そのことを前提として障害者基本法の目的を改正すること。
○ 障害の有無にかかわらず、国民が分け隔てられることなく相互に個性と人格を尊重する社会を実現するために、合理的配慮や必要な支援の充足を通じて必要な施策を推進する旨を障害者基本法の目的に加えること。
○ 障害者を福祉施策の客体としてのみとらえているという印象を与える表現は用いないこと。
2)定義
(推進会議の問題認識)
これまでは、個人の心身の機能の損傷と、様々な社会生活における不利や困難としての障害を同一視したり、障害を個人に内在する属性としてとらえ障害の克服を個人の適応努力に任されたりするなど、障害の軽減や除去のために医学的な働きかけ(治療、訓練)を優先する医学モデルが社会に浸透していた。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害の定義は、「社会モデル」の考え方を踏まえたものとするとともに、周期的又は断続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける場合も含まれるような包括的で幅広いものとすること。
3)基本理念
(推進会議の問題認識)
【基本的人権の享有主体】 法の目的でも述べたように、すべて障害者は、基本的人権の享有主体であり、障害者権利条約の理念である、「障害者を保護の客体から権利の主体へ」という考え方の転換を基本理念にも反映すべきである。 【地域社会で生活する権利】 障害者権利条約は「すべての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を認め」ている。すなわち、全ての障害者が分け隔てられることなく、障害のない人と対等な構成員として位置づけられ、合理的配慮や必要な支援の充足を通じて、障害の有無にかかわらず地域で共に生活することが確保されたインクルーシブ社会を実現することが求められている。このため、締約国は、この権利が完全に享受され、地域社会が完全に受け入れるために必要な措置等を講ずることが求められている。 【自己決定の権利とその保障】 すべての障害者は、障害のない人と平等に自己選択と自己決定の権利を有する。 【情報アクセスと言語・コミュニケーションの保障】 日常生活及び社会生活において、多くの障害者が必要な情報にアクセスし、自ら必要とする言語を使用し又はコミュニケーション手段を利用することに多くの困難を経験しているが、その問題の深刻さが省みられることは少なかった。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ すべて障害者は障害のない人と等しく基本的人権の享有主体として個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有すること。
○ 障害者権利条約における「地域社会で生活する平等の権利」を有することを確認すること。
○ すべて障害者は必要とする支援を受けながら、自ら下した決定に基づき、社会を構成する一員として様々な分野の活動に参加する権利を有することを確認すること。
○ 手話等の非音声言語が言語であることを確認し、障害者が、必要な言語を使用し、必要なコミュニケーション手段を利用するという障害者権利条約における「表現及び意見の自由についての権利」を有することを確認すること。
4)差別の禁止
(推進会議の問題認識)
【差別の禁止】 障害者に対する差別が存在することは、内閣府の調査だけでなく、地方公共団体における差別禁止条例制定のプロセスでも明らかにされているところである。 【法の下の平等と差別の禁止】 そのためには、まず、基本法においても、法の下の平等のもとで差別が禁止されるべきものであって、何人も障害に基づく差別を受けない権利を有することを確認し、更に差別の定義等の基本的事項を規定することが必要である。 【差別の定義】 基本法における差別の定義としては、障害者権利条約の定義を踏まえ、あらゆる区別、排除又は制限が不利益な結果をもたらす目的を有する場合はもとより、行為者の主観的意図にかかわらず、不利益な効果が発生する場合も含むものであること、更に、相手方に均衡を失した又は過度の負担を課すものではないにもかかわらず、特定の場合において、障害のない人と等しく機会の均等を確保するための必要かつ適当な変更及び調整である合理的配慮を提供しない場合も含むものであるべきである。 【差別禁止法制の整備】 また、差別を実効的に禁止するには、障害に基づくあらゆる分野の差別を禁止し、権利の侵害から救済を図る機関を規定する法律が別途制定されなければならないが、この差別禁止法の制定が基本法の抜本改正の後に予定されているため、まずは、基本法において差別禁止法制の整備に向けた規定を置くべきである。 【複合差別に対する認識と対応】 更に、障害に基づく差別の問題において、被害を受けた人自身が相談したり、権利主張すること自体が困難であり、社会的に潜在化していることを考慮すると、啓発、相談、研修等の分野において、差別の問題が考慮されるべき重要事項であることの確認がなされるべきであり、なかでも、障害のある女性や子ども、重度障害のある人が複合的又は加重的な差別を受けているという視点、及びその状況に配慮した対応が、基本法の定めるあらゆる施策分野に提供されなければならない。 【実態の調査と事例収集】 これらのためにも、国は、障害に基づく差別に該当するおそれのある事例の収集、整理、及び提供を行い、実態を明らかにした上で障害に基づく差別を防止するための普及啓発を図るべきである。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害者権利条約における直接または間接的な差別や合理的配慮の定義を踏まえ、障害に基づく差別に係る規定を見直すこと。
○ 国は、障害に基づく差別の実態を明らかにし、その防止に関する普及啓発を図るため、差別及びその防止に関する事例の収集、整理及び提供を行うものとすること。
5)障害のある女性
(推進会議の問題認識)
日本が女子差別撤廃条約を締結して以降、同条約の国内実施においては、障害のある女性についても、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野においても、性の違いに基づくあらゆる差別を受けることなく、すべての人権及び基本的自由を享有することが求められている。 (*2)男女共同参画会議 監視・影響調査専門調査会資料「新たな経済社会の潮流の中で生活困難を抱える男女について」(平成21年11月26日)図表46。元データ:社会福祉法人全国社会福祉協議会 以上の事実を深刻に受け止め、基本法には、男女共同参画社会基本法の趣旨も踏まえ、次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 複合的な困難を経験している障害のある女性が置かれている状況に十分に配慮しつつ、その権利を擁護するために必要な施策を講ずること。
6)障害のある子ども
(推進会議の問題認識)
【障害のある子どもと障害のない子どもの平等の確保】 障害のある子どもの施策は、一般の児童施策において取り組まれるべきであり、障害のない子どもと等しく、すべての権利が保障されるべきである。生命、生存、及び成長の権利が保障されるとともに、医療、福祉、及び教育について、同年齢の子どもと同じ権利が保障されるべきである。子ども期においては、特に、遊びや余暇について、同年齢の子どもと同等に楽しむことができるよう、障害に基づいて不利益な取扱いが生じないようにしなければならない。 【障害のある子どもにとっての最善の利益】 障害のある子どもにかかわる判断や決定においては、障害のある子どもに対して第一次的責任と権限をもつ父母、又は親権者を含むすべての関係者・関係機関において、障害のある子どもの最善の利益が考慮されなければならず、障害のない子どもと同じように尊厳と成長が保障されるよう、基本的人権が保障されなければならない。 【障害のある子どもの意見表明をする権利】 障害のある子どもは、障害及び年齢に適した支援を活用しつつ、自己にかかわる事柄について自由に意見を表明する権利を持ち、その表明された意見が障害のない子どもの意見と同等に、すべての関係者において、考慮されなければならない。意見表明における意見には、明示された意見のほか、子どもの意思や感情の動きを含めるべきであり、国及び地方公共団体は、意見表明権を保障するため、それらを的確に読み取ることができる体制や環境を整備しなければならない。 【障害のある子ども及び家族への支援】 乳幼児期の障害のある子どもについては、早期に適切な支援を得られなければ後に障害をもつ可能性が高い子どもを含め、機能障害の存在が確定できない段階から継続的で、「養護している他の者の資力を考慮して可能な限り無償」の支援が子どもとその家族に対して講じられるべきである。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害のある子どもが障害のない子どもと等しく児童の権利条約等で認められている「意見表明権」を含む人権が認められ、一人の子どもとして尊重され、地域社会において必要な支援が提供されるとともに、その保護者等に対しても必要な支援が提供されるための施策を講ずること。
7)国及び地方公共団体の責務
(推進会議の問題認識)
【障害者の権利を保障する責務】 国及び地方公共団体は、あらゆる人権の享有主体であるすべての障害者が地域社会で自立した生活を営むことができるよう、その権利を保障する責務を有すると同時に、身体障害や知的障害が対象となる障害者雇用義務や地方公共団体の医療費助成制度等が精神障害には適用されないなど障害の種別・程度により福祉・医療施策に制度的格差がある現状を改める責務を有している。障害者基本法の改正に当たり、この点を明らかにするべきである。 【差別を禁止する措置を取る責務】 国及び地方公共団体は、障害に基づくあらゆる差別を禁止するための措置を講ずる責務を有している。また、国及び地方公共団体は障害者への合理的配慮義務を有すると同時に、事業者、企業、学校設置者等合理的配慮を行うべき者に対し、財政的、技術的な支援を行う責務を有している。 【インクルーシブ社会の構築】 国及び地方公共団体はあらゆる差別や偏見をなくし、障害者の置かれている状況についての国民の理解を広げ、障害者が障害のない人と平等に地域社会で自立した生活を営むことができるインクルーシブな社会を構築する責務を有している。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害者権利条約における「地域社会で生活する平等の権利」を保障し、地域生活と社会参加に必要な支援を講ずるとともに、容易に合理的配慮を提供できるための支援を含め障害に基づく差別を防止する責務を有すること。
○ 障害の種別や程度に基づく不合理な制度的な格差を無くす責務を有すること。
○ 障害者を福祉施策の客体としてのみとらえているという印象を与える表現は用いないこと。
8)国民の理解・責務
(推進会議の問題認識)
【障害者を含むすべての人の責務】 「国民は、社会連帯の理念に基づき、障害者の福祉の増進に協力するよう努めなければならない」との現行規定は、国民から障害者を切り分け、障害者を一方的に庇護すべき対象とみなしているとの誤解を与えかねない。そこで、障害者も障害のない人も対等であるという前提のもとに相互に協力するという観点に立って、現行の規定は改められるべきである。 【具体的な意識啓発】 インクルーシブな社会の構築には、障害者の人権や障害そのものについて、障害者を含むすべての人の理解を得る必要があるが、そのためには、障害及び障害者の理解を促進する一般的規定を設けるだけではなく、社会全体の意識向上に資する具体的な取組を規定するべきである。そのために、例えば、障害者が社会参加することによって、社会的役割を果たしている好事例を収集し、社会へ発信することで障害者の権利促進を図ることも必要である。 【事業者等の責務】 特に、雇用主である事業者、学校の設置者等が障害者の権利を理解及び促進する責務があることを明らかにすることが必要である。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害のない人と等しく有する障害者の権利に関する国民の理解を深めるために必要な施策を講ずること。
○ 国民は、障害の有無にかかわらず、相互に権利を尊重しなければならないこと。
○ 障害者は庇護される対象であるかのような誤解を招く表現は用いないこと。
○ 事業者等は、障害者が障害のない人と共に同じ社会の一員であることを踏まえ、合理的配慮等により、その事業活動が障害者にも等しく及ぶことを認識し、障害者の権利の実現とその地位の向上に寄与するよう努めるものとすること。
9)国際的協調
(推進会議の問題認識)
政府は、昭和56(1981)年の「国際障害者年」、昭和57(1982)年の「障害者に関する世界行動計画」の実施を求めた「国連障害者の十年」、「第1次・第2次アジア太平洋障害者の十年」といった国際的な流れの下、「完全参加と平等」「ノーマライゼーション」といった国際的理念を取り入れ、国内普及に向けた取組を行ってきた。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害者に関する施策は、障害者の尊厳の尊重及び権利の確保に資する観点から、国際的協調の下に行われなければならないこと。
10)障害者週間
(推進会議の問題認識)
障害者週間を設けることには大きな意義があり、今後とも精力的に展開すべきであるが、現状の障害者週間に関しては、以下の点について考慮すべきである。
以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害者の社会参加を促進する観点から障害者週間を位置づけ、障害者の団体を始めとする民間団体等の参画を得るとともに、障害者は庇護される対象であるかのような誤解を招く表現は用いないこと。
11)施策の基本方針
(推進会議の問題認識)
施策の基本方針を考える前提として、「第一次意見」の基本的考え方として示された。 ○1 障害者が「権利の主体」としての社会の一員であること を確認する必要があるとともに、改正が予定されている新たな「目的」や「基本的理念」等との整合性を確保することが重要である。特に「社会モデル」的観点から新たな指針が示されるべきであり、障害のある女性等に対する複合的差別による格差や障害種別による制度的な格差に着目し、障害者の生活実態を踏まえること、更に「地域生活」を可能とする支援に向けた施策であることが、方針の基本的な要素として組み込まれるべきである。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害者に関する施策を講ずるに当たっては、障害者の自立及び社会参加を困難にする社会的な要因を除去する観点から行うものとし、障害者の性別、年齢、障害の状態に配慮するとともに、それぞれの障害者の選択した生活形態や環境を含む生活の実態やその困難さに基づいて必要な支援の提供が計画、実施されなければならないこと。
○ 障害者への必要な支援等、障害者権利条約における「地域社会で生活する平等の権利」を踏まえ必要な施策が講じられなければならないこと。
○ 障害者に関する施策を講ずるに当たっては、障害者及び関係者の意見を聴き、当該意見が可能な限り尊重されなければならないこと。
○ 障害者を福祉施策の客体としてのみとらえているという印象を与える表現は用いないこと。
12)その他
(推進会議の問題認識)
【障害者基本計画等】 国及び地方公共団体は、障害者に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより障害者基本法の目的を達成するため、障害者及び関係者の参画を得て、障害者のための施策に関する基本的な計画を策定するべきである。 【法制上の措置等】 国は、障害者基本法の目的を達成するために、差別禁止法制を含む必要な法制上、及び財政上の措置を講ずるべきである。 【年次報告】 政府は、障害者の置かれた状況、及び障害者のために講じた施策の概況に関する報告書を毎年国会に提出するべきである。 |
(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害者及び関係者の参画を得て、障害者のための施策に関する基本的な計画(国にあっては障害者基本計画、地方公共団体にあっては都道府県又は市町村障害者計画)を策定すること。
○ 国は、障害者基本法の目的を達成するために、差別禁止法制を含む必要な法制上及び財政上の措置を講ずること。
○ 国は、障害者の状況及び障害者のために講じた施策等の概況に関する報告書を毎年国会に提出すること。
1)地域生活
(推進会議の問題認識)
基本理念で述べたとおり、基本法において地域社会で生活する権利を確認し、その実現に向けた財政上の措置も含めた施策の具体化のための措置を取るべき旨を規定することが求められるが、権利の実現に向けた地域生活支援について、以下の諸点が基本事項として議論された。 【支援の対象】 支援を必要とする障害者に制度の谷間を作らないようにすべきである。具体的には、障害者手帳の有無にかかわらず、対象として明確でなかった発達障害、高次脳機能障害、難病やてんかん等により支援の必要な状態にある人、乳幼児の段階でいまだ障害が確定しえないが支援の必要な状態にある子ども等も支援の対象から除外されたり、申請の段階で締め出されたりすることがないようにすべきである。 【家族支援】 障害者がその生活を施設や病院から地域へ移行しようとしても、地域で生活する上での社会資源が不足していることや精神障害者の保護者制度等の制度の存在によって、家族に依存せざるをえず、その家族の大きな負担が地域移行を困難ならしめている。このような現状を改めるには、家族や家庭に対する支援が必要である。 【支給決定の仕組み】 必要とする支援の内容と程度の判断は、ADL(日常生活動作)等を中心とした医学モデルに基づく障害程度区分に法定のサービスを連動させるというシステムによって、本来必要な障害の種別や程度に応じた支援が制限又は限定されることなく、障害者の選択した生活形態や環境において「社会モデル」の視点から何が必要な支援であるかの判断がなされるべきであり、本人の意思を前提とした協議と調整のプロセスが用意されるべきである。 【支援の内容とあり方】 障害者に対する支援は、自立に向けた支援である以上、一般就労、教育及び文化・スポーツ等の場面等、社会一般で通常行われている社会生活全般にわたって支援が提供されるべきであり、サービスメニューもそれに即したものであることが求められるとともに、社会参加や日常生活の場面が切り替わっても切れ目のない形で提供されることが求められる。 【地域移行】 いかなる障害者も通常の生活形態が保障されるべきであり、家庭から分離され、見も知らぬ他人との共同生活を強いられ、地域社会における社会的体験の機会を奪われるいわれはない。障害者に対する支援は、本来、通常の生活形態を前提として組み立てられるべきである。 【利用者負担】 支援を受ける際の費用に関して、応益負担の原則は廃止し、仮に負担が求められる場合であっても、定率負担とすることなく、また本人の所得を基礎とすること。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害者が地域社会において生活する権利を実現する上で必要とする支援が制度の谷間なく、かつ障害者の様々な日常生活や活動において、自らの必要に応じて提供されるよう、多様な選択肢の確保を含む必要な施策を講ずるとともに、障害者の地域移行を計画的に推進すること。
その際、家族に対する支援も含め、専ら家族に依存することがないようにするための必要な措置を講ずること。
○ 利用者負担に関して、仮に負担が求められる場合でも、定率負担とすることなく、また本人の所得を基礎とすること。
2)労働及び雇用
(推進会議の問題認識)
【労働施策と福祉施策の一体的展開による労働の権利の保障】 一般就労において、障害者の就業率や賃金等の労働条件は、障害のない人と比べかなり劣悪である。一方、福祉的就労においては労働の実態があるにもかかわらず、多くの障害者が一般労働法規の対象外とされ、通常の労働条件を確保する展望もない状況に置かれている。 【合理的配慮等の提供による雇用及び労働の質の向上】 障害の種別、程度にかかわらず、働くことを希望するすべての障害者が差別されることなく障害のない人と平等に就職、職の維持や昇進、昇給、復職等ができるよう、職場において事業所から適切な合理的配慮が行われる必要がある。 【雇用義務の対象拡大と職業的困難さに基づく障害程度の認定】 現在は、障害者雇用義務の対象は身体障害者と知的障害者に限定されているが、その対象を、精神障害者を含むあらゆる種別の障害者に拡大するべきである。また、障害者雇用にかかる障害程度の認定は、機能障害ではなく職業的困難さに基づいて行うべきである。 【一般の職業紹介サービス等の利用】 障害者が障害のない人と平等に労働及び雇用に参加できるよう、個別のニーズに応じた適切な職業紹介サービス等の提供を確保するためには、限られた特定の機関で障害者を対象とした特別な職業紹介サービス等が提供されるだけではなく、一般市民を対象とした身近にある通常の職業紹介サービス等を障害者も等しく利用できるようにしなければならない。また、生涯にわたりキャリア形成の機会が確保されなければならない。 【多様な就業の場の創出及び必要な仕事の確保】 障害者が自由に選択し、又は納得できる労働に就けるよう、企業や公共機関での雇用に加え、自営・起業、社会的事業所や協同組合での就業、並びに在宅就労等を含む、多様な就業の場が創出されると共に、そこで就業する障害者が生計を立て得る適切な仕事を安定確保するための仕組みが整備されなければならない。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 労働施策と福祉施策を一体的に展開し、働くことを希望するすべての障害者が合理的配慮及び必要な支援を受けることにより、障害のない人と平等に労働者としての権利が守られ、生計を立て得る収入が得られるとともに、働く機会が確保されるよう、必要な施策を講ずること。
○ 障害者が障害のない人と平等に生計を立てる機会を安定的に確保できるよう、自営も含め多様な就業の場を創出するとともに、仕事等の確保も含む必要な施策を講ずること。
○ 障害者雇用義務の対象を身体障害、知的障害から、他のあらゆる種別の障害に拡大するとともに、職業上の困難さに着目した障害認定を行うために必要な措置を講ずること。
3)教育
(推進会議の問題認識)
日本における障害者に対する公教育は特別支援教育によって行われており、法制度として就学先決定に当たっては、基準に該当する障害のある子どもは特別支援学校に就学する原則分離別学の仕組みになっている。障害者権利条約は、障害のある子どもとない子どもが共に教育を受けるインクルーシブ教育制度の構築を求めており、こうした観点から、現状を改善するために以下を実施することが必要である。 【インクルーシブな教育制度の構築】 人間の多様性を尊重しつつ、精神的及び身体的な能力を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加するとの目的の下、障害者が差別を受けることなく、障害のない人と共に生活し、共に学ぶ教育(インクルーシブ教育)を実現することは、互いの多様性を認め合い、尊重する土壌を形成し、障害者のみならず、障害のない人にとっても生きる力を育むことにつながる。 【地域における就学と合理的配慮の確保】 障害のある子どもは、障害のない子どもと同様に地域の小・中学校に就学し、かつ通常の学級に在籍することを原則とし、本人・保護者が望む場合に加え、ろう者、難聴者又は盲ろう者にとって最も適切な言語やコミュニケーションの環境を必要とする場合には、特別支援学校に就学し、又は特別支援学級に在籍することができる制度へと改めるべきである。 【学校教育における多様なコミュニケーション手段の保障】 手話・点字・補聴援助・要約筆記等による教育、発達障害、知的障害等の子どもの特性に応じた教育を実現するため、ろう者を含む手話に通じた教員や視覚障害者を含む点字に通じた教員、手話通訳者、要約筆記者等の確保や、教員の専門性向上に必要な措置を講ずるべきである。 【交流及び共同学習】 交流及び共同学習には、様々な形態がある。例えば、特別支援学校と小・中学校等の間で行う学校間交流、特別支援学級と通常学級との学校内での交流、居住地の学校で行う居住地校交流、地域の人々との地域交流等があり、それぞれ、直接一緒に活動する直接交流と、手紙やビデオテープの交換等を介して行う間接交流がある。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害のある子どもは、他の子どもと等しく教育を受ける権利を有し、その権利を実現するためにインクルーシブな教育制度を構築すること。
○ 障害のある子どもとない子どもが、同じ場で共に学ぶことができることを原則とするとともに、本人・保護者が望む場合に加えて、最も適切な言語やコミュニケーションを習得するために特別支援学校・学級を選択できるようにすること。
○ 就学先の決定に際し、本人・保護者の意に反して決定がなされないことを原則とすること。
○ 障害のある子どもの個別のニーズに的確にこたえるため、合理的配慮や必要な支援が提供されるために必要な施策を講ずること。
4)健康、医療
(推進会議の問題認識)
障害者権利条約の考え方を踏まえ、すべての障害者が可能な限り最高水準の健康を享受し、その尊厳にふさわしい生活を営むことができるよう、障害に基づく差別なしに必要な医療が自らの選択によって受けられるようにすべきであり、医療提供に当たっては、人権の尊重が徹底されなければならない。 【地域生活を可能とする医療の提供】 障害者が安心して地域社会で生活を営むことができるためには、まずは、障害に基づく医療拒否等の差別が禁止されなければならない。 【難病、その他希少疾患等に対する適切なサービス提供及び調査研究の推進】 難病、その他希少疾患等(以下、「難病等」という。)については、本人、家族や周囲の者はもとより、医療関係者においても適切かつ十分な理解がなされておらず、これらの難病等に対して早期になすべき対応に遅れが出たり、適切な医療が提供されなかったり、地域社会で生活する上で必要となる生活支援のためのサービスがない場合もある。 【人権尊重の観点からの精神医療の体制整備】 精神障害者への医療サービスは、精神医療のニーズを十分に精査し、必要最低限かつ適正な数の病床数への削減を行い、急性期・重症患者等への医療の充実を図るとともに、入院を要しない精神障害者への地域での医療提供体制を確保する必要がある。その際には、人権への理解を含め高い資質を備えた者による医療サービス提供体制が確保されなければならない。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害者の人権を確保しつつ、必要な医療が提供されるために必要な施策を講ずること。
○ 障害者が地域社会で自立した生活を営むことができるよう、日常生活における可能な限り身近なところで必要な医療や支援サービスが提供されるために必要な施策を講ずること。
○ 障害の原因となる難病等の治療や症状の軽減に係る調査及び研究を推進すること。
5)障害原因の予防
(推進会議の問題認識)
「障害の予防」という表現には、「障害はあってはならず、治療しなければならないもの」という否定的な障害観が反映されている反面、障害の悪化を防ぐことや、健康維持と適切な保健サービスの提供という観点から、疾病等の早期発見、早期治療を含む予防の必要性を読み取ることも可能である。 【「障害の予防」に対する基本的考え方】 そこで、障害の原因となる傷病や疾病に対する予防対策は、障害者施策としてではなく、一般公衆衛生施策の中で行われていることから、「障害は不幸である」といった差別や偏見を与えかねない「障害の予防」という表現は避けるべきである。 【予防と支援】 どのような障害があっても地域社会の中で育ち、学び、生活し、働くといった地域生活を実現していくためにも、障害の原因となる疾病等が早期発見されることによって、それ以前の生活が脅かされることなく、他の者と同じ地域社会で生活を送りながら、早期の段階から医療を含めた必要な支援を得ることができる体制づくりが重要である。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害に対する否定的な考え方を前提とする表現は用いないこと。
○ 障害の原因の予防のための施策は、公衆衛生又は医療に係る施策の一環として講ずること。
6)精神障害者に係る地域移行の促進と医療における適正手続の確保
(推進会議の問題認識)
障害者施策のなかでも、従来の精神障害者施策においては、保護と収容に重きが置かれてきたことを背景として、いわゆる「社会的入院」患者が推定で7万人いると言われる状況が存続している。 【社会的入院の解消】 精神障害者が長期間にわたり病院の閉鎖された空間での生活を強いられる制度設計がなされてきたことを踏まえ、国の責務として、精神障害者が地域社会での自立した生活へと移行することを支援し、地域社会へのインクルージョンを実現していくことが喫緊の課題となっていることにかんがみ、以下の施策を展開していくことが必要である。
この仕組みを構築するに当たっては、地域社会で生活を営むことを基本としてサービスが提供されなければならない。 【非自発的医療に係る人権尊重の観点からの適正手続の確保等】 精神障害者に係る非自発的な入院や医療上の処遇については、人権の尊重を徹底する観点から、適正な手続を確保することが不可欠である。特に、以下の点が重要である。
以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 精神障害者の社会的入院を解消し、強制的措置を可能な限り無くすため、精神病床数の削減その他地域移行に関する措置を計画的に推進し、家族に特別に加重された責任を負わせることなく、地域社会において必要な支援を受けながら自立した生活を送れるよう通院及び在宅医療のための体制整備を含め必要な施策を講ずること。
○ 障害者に対する非自発的な入院その他の本人の意思に基づかない隔離拘束を伴う例外的な医療の提供に際しては、基本的人権の尊重の観点に基づき、当該医療を受ける障害者に対して、障害のない人との平等を基礎とした実効性のある適正手続を保障する制度を整備すること。
7)相談等
(推進会議の問題認識)
障害者にとって、乳幼時やその後の人生の節目において、また医療、就労等を含む生活の様々な分野に関し相談できる体制があることが重要である。しかし、どこに、どのような相談機関があるのかを探すことから始めなければならず、ようやく相談が始まっても高圧的な対応をされたり、必要なコミュニケーション支援がないばかりに必要な情報を得られずに放置されてしまう等の経験をもつ障害者は多い。 【身近な地域での相談等】 そこで、まず、地域の身近な場所で、いつでも対応できる相談の体制づくりが求められる。相談機関相互の連携だけでなく、専門的知見を有する障害者団体による支援、様々な相談を受け止め、相談分野を限定しないいわゆるワン・ストップ・ステーションを含め障害者の権利を擁護し、本人中心の支援を行い、相談内容を解決できる相談体制が必要である。 【相談におけるコミュニケーションの確保】 相談において、手話、点字、筆談、要約筆記、指点字等の使用をはじめ、知的障害・発達障害においても、一人ひとりの個別ニーズに対応したコミュニケーション手段を利用することができるよう、多様なコミュニケーション手段を求めに応じて確保すべきである。 【障害当事者等による相談活動】 障害当事者が、障害者自身の尊厳を回復し、自己の権利を理解し、自己決定できるよう、障害当事者が相談活動を担ういわゆるピア・カウンセリングや障害者の親同士、兄弟・姉妹同士の相談等を積極的に活用し、促進する必要がある。地域での自立生活体験等の機会を提供し、地域生活のイメージを具体化する等のエンパワーメント支援ができるようにする必要がある。また、専門的知識を有する障害者団体が、広域的な相談支援ができるようにする必要がある。 【相談者の研修】 相談を効果的に実施するためには、相談業務にかかわる者の資質が大きく問われる。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害者が必要なコミュニケーション手段の提供を受けながら身近な地域で相談することができるための施策を講ずること。
○ 障害者に対する人権侵害に関する事項を含む多様な相談が適切に行われるよう相談体制の整備を図り、障害者自身又は家族による相談やそれ以外の者による相談等、相談を行う者に対する必要な研修等を行い、制度に位置づけること。
8)住宅
(推進会議の問題認識)
日本ではいまだに多くの障害者が施設や精神科病院での暮らしを余儀なくされている。また地域社会で暮らす障害者にとっても、住宅の確保に様々な困難を抱えている。 【公営住宅利用における課題】 障害者にとって利用しやすい公営住宅の提供は、不十分である上に、障害に配慮したアクセシブルな住宅の提供は、限られている。市街地から離れた場所に建設される公営住宅は、公共交通機関等を利用しにくい場合、社会参加が制限される。公営住宅法施行令には重度障害者の単身入居について一定の条件を付したいわゆる「相対的欠格条項」があり、単身入居が制限されている。
【国土交通省】 【民間賃貸住宅利用における課題】 障害者が民間賃貸住宅を利用する際に、申込者又は同居予定者が障害者であること、バリア(障壁)を除去するための改造が必要であること、退出時の原状回復が困難であること等を理由に、入居拒否されるなどのトラブルが生じている。
【国土交通省】 【グループホーム、ケアホームに関する課題】 グループホーム、ケアホームは、施設からの地域移行や保護者に依存した生活から自立するための多様な住まいの一つの形態としての役割を担っている。
【国土交通省】
【厚生労働省】 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(政府に求める今後の取組に関する意見)
○ 障害者の個々のニーズに応じた住宅を確保するため、公営住宅を含めた賃貸住宅等が的確に供給されるよう、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成23年内にその結論を得る。
○ 住宅のバリアフリー化を促進するための支援策について検討を行い、平成24年内を目途に結論を得る。
○ 公的な家賃債務保証制度を利用しやすくするための具体的方策や、住宅セーフティーネット法に基づく居住支援協議会が有効に活用されるための具体的方策について検討し、平成24年内を目途に結論を得る。
○ 民間賃貸住宅の利用に当たり生じ得る障害に基づく入居拒否の問題への対処を含め、障害者が円滑に民間賃貸住宅へ入居できるよう、必要な支援について、差別禁止部会での議論を踏まえて検討し、平成24年度内を目途に結論を得る。
○ グループホーム等の建設に際し、地域住民との間において生ずるトラブルへの対応については、差別禁止部会における議論も踏まえつつ検討し、平成24年度内を目途に結論を得る。
(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害者の地域移行を促進し、地域社会における生活を実現するため、様々な障害者自らの必要に応じた住宅を確保するために必要な施策を講ずること。
9)ユニバーサルデザインと技術開発
(推進会議の問題認識)
現代社会において、規格化された大量に生産される商品だけでなく、自動化された機器、それらが組み込まれた一連の様々なシステムとそれに基づくサービス等が利用できなければ、障害の有無にかかわらず、多くの人が日常生活や社会生活を営む上で、多くの困難を経験することになる。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ ユニバーサルデザインの理念があらゆる施策に反映されるようにすること。
○ 障害者が自立した日常生活や社会参加を行うために必要な福祉用具等の研究開発や普及のために必要な施策を講ずること。
10)公共的施設のバリアフリー化と交通・移動の確保
(推進会議の問題認識)
障害者が、必要に応じて、公共的施設、交通機関等を円滑に利用できるようにすることは、あらゆる権利行使の前提であり、障害者の日常生活又は社会生活を営む上で欠かすことのできない切実な課題である。 【国及び地方公共団体の責務と地域間格差の解消】 公共的施設のバリアフリーにおいては、一定の進展は見られるものの、地方においては、バリアフリー新法の対象となる規模以上の建築物や施設等が大都市よりも少ないため、結果として地方における整備が進んでいない現状がある。今後の交通基本法の法案内容を視野に入れながらも、バリアフリー新法には責務の主体として「国」、「地方公共団体」及び「公共的施設を設置する事業者」が明記されていることに留意し、地方における公共施設や交通機関等のバリアフリー整備の遅れを解消することが必要である。そして、地域間格差の解消のため、整備対象施設の更なる範囲の拡大も含めた効果的な方策が実施されなければならない。 【交通計画又は市町村の基本構想策定に必要な視点】 現在、検討されている交通基本法との関連を踏まえ、国及び地方公共団体による交通計画の策定やバリアフリー新法に基づく市町村の移動等円滑化基本構想の作成・改定にあたっては、利用や移動が困難な障害者の参画を図り、その意見を尊重することが必要である。 【合理的配慮の位置づけ】 国は、公共的施設、交通機関等のバリアフリー化における最低基準を示して基盤整備を行っているところであるが、その最低基準による基盤整備をしてもなお、障害者の障害特性等によって利用や移動に制約が残る個別的事案が生じた場合には、事業者が合理的配慮の提供を適切に行うことができるよう、国及び地方公共団体は、必要な技術的又は財政的支援を講ずることが必要である。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 切れ目のない交通・移動手段を確保する観点から、障害者のニーズを踏まえ、大都市部のみならず地方部においてもバリアフリー化を計画的に推進するとともに、適切な接遇や合理的配慮を確保するために必要な施策を実施すること。
11)情報アクセスと言語・コミュニケーション保障
(推進会議の問題認識)
基本理念で述べたように、日常生活及び社会生活において、多くの障害者が必要な情報にアクセスし、自ら必要とする言語を使用し、又はコミュニケーション手段を利用することに困難を経験しているが、その問題の深刻さが省みられることは少なかった。それゆえに、情報へのアクセスやコミュニケーションに困難を経験する障害者が障害のない人と等しく人権が保障されるために必要な措置が講じられなければならない。 【必要とする情報へのアクセス】 国及び地方公共団体は、すべての障害者が生活をする上で、必要とする情報へのアクセスについて、必要な措置を講ずるとともに、情報通信、放送、交通、建築物、出版、その他生活のあらゆる分野にかかる事業者がアクセシブルな形態・様式において情報を提供するよう必要な措置を取るべきである。 【必要とする言語の使用及び多様なコミュニケーション手段の利用】 国及び地方公共団体は、すべての障害者に情報へのアクセスとコミュニケーションを権利として保障するため、障害者が必要とする言語の使用及びコミュニケーション手段の利用を可能にする支援の確保やそれにかかわる人材の養成等、必要な措置を講ずるべきである。 【災害時の情報と必要な支援の提供】 国及び地方公共団体は、自然災害や人為による災害が発生したときには、通常の生活に重大な支障が生じる、又は生命に危険が及ぶあらゆる現象に関する情報と、これらの支障や影響を回避するための情報を障害者に提供しなければならない(発生場所、規模、内容、今後の動向、避難ルート、避難場所、避難先で得られる情報保障の内容(手話通訳者の有無等)、医療や配給等の情報、交通情報等)。 【情報アクセスにおける障害者の参画】 電気通信、放送、電子出版及びその他の情報の提供に係るサービスの提供並びにコンピューター等の情報通信機器の製造等を行う事業者は、サービスの提供並びに機器の製造等のプロセスにおいて障害者が参画する社会的仕組みを設け、障害者の利用の便宜を図るべきである。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害者が様々な情報にアクセスし、また自ら必要とする言語を使用し、更に多様なコミュニケーション手段を利用することができるよう必要な施策を講ずること。
○ 災害情報の提供に当たっては、障害者の特性に配慮した伝達手段が提供されるよう必要な施策を講ずること。
12)文化・スポーツ
(推進会議の問題認識)
自由に文化・スポーツに参加し、これに貢献し、又は楽しむこと、そして、レクリエーション・余暇等を楽しむことは、障害の有無にかかわらず、すべての人の権利である。しかしながら、障害者はその機会へのアクセスを欠き、排除されることもある。また、文化やスポーツは贅沢なものであり、障害者の享受には制限があっても仕方がない、というような社会的通念もあるが、これらは変えていかなければならない。 【文化等について】 障害者が文化、余暇、レクリエーション等を享受しようとする場合に、物理的バリアのため施設やその機会を利用できない、映画の字幕等情報保障の欠如のために文化作品等を鑑賞できない、文化施設等までの交通アクセスが整備されていないなどの実態があるため、障害のある人が障害のない人と同等に文化、余暇、レクリエーション等を享受できるようにする必要がある。
【文部科学省・関係省庁】
【関係省庁】 【スポーツについて】 障害者がスポーツを楽しもうとする場合に、物理的バリアのため施設を利用できない、精神障害を理由に施設の利用が拒否される、車いす利用であるために一般の市民マラソン大会への参加を拒否されるなどの実態がある。
【文部科学省・厚生労働省】 【文化・スポーツ等のいずれにもかかわる点について】 障害者が障害のない人と同等にスポーツに参加したり、観戦を楽しんだり、又は文化活動に参加したり、文化等を享受するためには、そもそもこれらの機会にアクセスできなければならない。
【厚生労働省】 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(政府に求める今後の取組に関する意見)
○ 障害者が芸術・文化活動をする際に必要な配慮や支援等が提供されるための環境整備を図るための具体的方策を検討し、平成23年度内を目途にその結論を得る。
○ 障害者スポーツ振興のために必要な環境整備を図るとともに、障害者スポーツの指導者の育成等の在り方について検討し、平成23年度内を目途にその結論を得る。
(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害者が文化・スポーツ等の分野において様々な活動をすることができるようにするために必要な施策を講ずること。
○ 文化・スポーツ等の分野において、障害者は庇護の対象であるかのような誤解を招く表現は用いないこと。
13)所得保障
(推進会議の問題認識)
人の生活を賄う所得は一般的には就労による所得と年金や手当等に大きく依存している。 (*3)遠山真世(2008)「障害者の就労実態:参加と自立を阻む要因」p.37(勝又幸子主任研究者『障害者の所得保障と自立支援施策に関する調査研究』平成19年度総括研究報告書) (*4)土屋葉(2008)『障害者の自立支援に向けた生活実態把握の重要性‐「障害者生活実態調査」の結果から-」』p.200,『季刊社会保障研究』Vol.44 No.2 【公的年金制度改革における検討】 第一次意見にあるように、多くの障害者が国民一般の所得水準に達していない現状を踏まえ、障害者が障害のない人と同等に地域社会で自立した生活を営むことができるよう政府において平成25年通常国会に法案提出を予定している新たな年金制度創設に向けた議論と併せて、障害者が地域社会において自立した生活を営むために必要な所得保障の在り方について、給付水準と負担、並びに稼働所得との調整の在り方を含めて検討を行うべきである。 【無年金障害者の所得保障】 同じく、第一次意見にあるように、国民年金制度の発展過程において生じた特別な事情等により、障害基礎年金の支給対象から除外されている無年金障害者(20歳以前の初診日認定ができない者、国籍条項撤廃時(昭和57(1982)年)に20歳以上の在日外国人障害者等)が、現在多数存在している。 【経済的負担等の軽減】 住宅にかかる費用や障害ゆえに追加的に必要な費用等に関して、国及び地方公共団体は、障害者の地域社会で生活する権利を促進し、その自立を支援するために、障害者及び障害者を介助する親族等の経済的負担の軽減を図らねばならない。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害者が地域社会において人としての尊厳にふさわしい自立した生活ができるよう、年金、手当等の制度に関し必要な施策を講ずるとともに、税制上の措置、公共的施設の利用料等の減免、就労支援との連携等、その他必要な施策を講ずるなど障害者が障害のために追加的に要する経済的負担の軽減を図るために必要な施策を講ずること。
14)政治参加
(推進会議の問題認識)
政治参加の問題は、投票行為、障害のある議員の議会活動、障害者の政治活動への参加、議会や政治に関する情報保障、公的活動への参加等、幅広い分野に及び多くの課題を抱えている。 【選挙等に関する情報提供と投票のための必要な体制の整備】 国及び地方公共団体は、法律の定めるところにより行われる選挙、国民審査又は投票において、障害者が障害者のない人と同等に容易に必要な情報が提供され、投票することができる条件整備が必要である。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害者の選挙権及び被選挙権の機会の均等を図り、障害の種別や特性に応じた必要な施策を講ずること。
○ 選挙等の実施において、選挙等に係る情報の提供や投票等について障害の特性に配慮した施策を講ずること。
15)司法手続
(推進会議の問題認識)
刑事訴訟手続や民事訴訟手続を始めとする司法手続においては、障害があるために意思表示や理解の面で制約を受けている人に対する配慮が、著しく欠けているとの指摘がある。例えば捜査段階においては、逮捕状の内容や黙秘権等について取調べ者が一般的な説明しかしないため、障害者は何を言われているのか理解できず、有効・適切に自己防衛することができないことが多い。公訴、公判、刑の執行、拘禁施設全般にわたっても同様で、障害のある被疑者等が意思表示等の面でどのような困難さをもっているかを把握、留意するという過程は全くないという指摘がある。 【司法に係る手続等と必要な配慮】 国及び地方公共団体は、障害者が被疑者、被告人、受刑者等の直接の当事者の場合において、少年事件の手続、捜査(取調べ、実況見分、逮捕等)、公判、判決、刑の執行、受刑を含む拘禁手続及び処遇、民事事件における口頭弁論、証拠調べや判決手続等、手続及び処遇全般にわたって、障害者の特性に応じた手続上の配慮が必要であり、それらにかかる費用負担を含め、そのために必要な措置を取らなければならない。また障害者が司法関係者、参考人、証人、裁判員、傍聴者等間接的な関わりを持つ場合においても、同様の措置が行われなければならない。 【コミュニケーション手段等の確保措置】 国及び地方公共団体は、上記手続及び処遇上の配慮、特に障害者が必要とする適切なコミュニケーション手段等を確保するための措置を講ずると同時に、これらのコミュニケーション手段等についての情報を、障害者に告知するべきである。このコミュニケーション手段等には、手話通訳者、要約筆記者、盲ろう通訳者、知的障害者等への説明者等の立会いによる情報保障を含み、司法機関としてこれらの者への研修を行うべきである。 【司法関係者に対する研修】 国及び地方公共団体は、司法手続に係る関係職員(警察官及び刑務官等を含む。)に対して、障害の理解と必要とされる手続及び処遇上の配慮に関して、研修を行うべきである。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 司法手続及び刑事施設等の処遇において、障害の特性に応じたコミュニケーション手段の確保等の必要な配慮がなされるとともに、関係職員に対して障害の理解等に関する研修を行うなどの必要な施策を講ずること。
16)国際協力
(推進会議の問題認識)
日本は、第1次及び第2次「アジア太平洋障害者の十年」の提唱国として、NGO等と協力しつつ、アジア太平洋における障害分野の国際協力に積極的に貢献してきており、諸外国からも高い評価を受けている。今後も国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)を中心に、積極的な役割を期待されている。更に、アフリカや中南米での実績もあり、アジア太平洋地域を越えた広範な地域での活動を継続し、推進すべきである。日本は、障害分野での国際協力について、法的には直接的な規定を有していないが、障害者権利条約は国際協力の必要性をうたっており、障害分野における国際協力を促進するためには、基本法に、国際協力に関する取組を行う旨を盛り込む必要があるべきことを明記する必要がある。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 障害分野における国際協力を推進するため、外国政府、国際機関又は障害者の団体を始めとする民間団体等との連携や協力を図るために必要な施策を講ずること。
○ 国際協力の取組の担い手及び受益者として障害者が参加できるように、障害に特化したものだけではなく、国際協力事業全般において合理的配慮の提供を確保するとともに、バリアフリー化の促進を図ること。
1)組織
(推進会議の問題認識)
【組織】 障害者権利条約では、監視機関(モニタリング機関)について、締約国に対して、自国の法律上及び行政上の制度に従い、この条約の実施を監視するための枠組みを自国内において維持・強化・設置すること等を要請している。 (国) 中央障害者施策推進協議会及び推進会議を発展的に改組し、障害当事者、学識経験者等で構成する審議会組織を新たに内閣府に設置すべきである。その際、当事者の意見を反映させる観点から、構成員の過半数を障害当事者とすることが必要である。 (地方) 各都道府県及び市町村において、実態を踏まえた実効性のある障害者計画を策定し、地方においても障害者権利条約の理念を実現していくためには、地方における施策の実施状況の監視を、協働による地域づくりといった観点から行う権限を新たに付与するなど、現行の地方障害者施策推進協議会の権限を強化し、当事者の意見を反映させる観点から、その構成員の過半数を障害当事者とすることが必要である。 |
2)所掌事務
(推進会議の問題認識)
【所掌事務】 (国) 国に置かれる審議会組織は、障害者施策の確実な実施を図るため、以下の事務を担う必要がある。
また、勧告が行われた場合に、関係大臣は、これに基づき講じた施策について、審議会組織に適切な期間内に報告を行わなければならないこととすべきである。 (地方) 地方に置かれる審議会組織は、地方における障害者施策の実施を図り、障害者権利条約の理念を実現するため、現行の事務に加えて、以下の事務を新たに担う必要がある。
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(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)
○ 中央障害者施策推進協議会及び障がい者制度改革推進会議を発展的に改組し、障害当事者、学識経験者等で構成し、障害当事者が過半数を占める新たな審議会組織を内閣府に置くこと。
○ 新たに国に置かれる審議会組織は、基本法の理念に基づき障害者基本計画及び障害者に関する基本的な政策に関する調査審議を行うとともに、施策の実施状況を監視し、必要に応じて応答義務を伴う勧告を行うことができるようにすること。
○ 国に置かれる審議会組織は、改革の集中期間において、制度改革の推進に関する事項についても調査審議を行うものとすること。
○ 国に置かれる審議会組織が任務を十全に果たせるようにするため、関係行政機関、関係団体等に対し必要な協力を求めることができるようにするとともに、必要な情報保障を含めた委員への適正な待遇の確保や必要な体制整備を行うこと。
○ 地方に置かれる審議会組織は、障害当事者が過半数を占める構成とし、現行の事務に加えて、新たに施策の実施状況に関する監視に関する事務(検証、評価等を含む。)を行うこと。
(推進会議の問題認識)
【作業チームの設置】 推進会議は、「障害」の表記に関する作業チームを設置し、「障害」のほか、「障碍」、「障がい」、「チャレンジド」等の様々な見解があることを踏まえ、それぞれの表記を採用している障害者団体、地方公共団体、企業、マスメディア、学識経験者等10名から、その考え方や運用状況等についてヒアリングを行うとともに、障害団体関係者も含む一般からの意見募集を実施した。同作業チームによる報告を受けた推進会議はその報告に基づき、現時点における考え方の整理と今後の課題について検討を行い、以下のことを確認した。 【表記問題に対する結論と課題】 「障害」の表記については、様々な主体がそれぞれの考えに基づき、様々な表記を用いており、法令等における「障害」の表記について、見解の一致をみなかった現時点において新たに特定の表記に決定することは困難であると判断せざるを得ない。
これらを踏まえ、法令等における「障害」の表記については、当面、現状の「障害」を用いることとし、今後、制度改革の集中期間内を目途に一定の結論を得ることを目指すべきである。 【今後の取組】 今後の取組として、具体的には、以下の取組が重要であるが、その際、障害は様々な社会的障壁との相互作用によって生ずるものであるという障害者権利条約の考え方を念頭に置きつつ、それぞれの表記に関する考え方を国民に広く紹介し、各界各層の議論を喚起するとともに、その動向やそれぞれの表記の普及状況等を注視しながら、今後、更に推進会議においても検討を進め、意見集約を図っていく必要がある。
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初等中等教育局特別支援教育課