資料8:中澤委員提出資料

イギリスとアメリカ合衆国における紛争解決方法としてのMediation(仲介)
―機能、アクセシビリティ、中立性の確保―

中澤惠江

 

 保護者と学校・地区行政局とのあいだの意見の対立や対応への不満が深刻化することを予防するためには、保護者と学校・地方教育局の間のコミュニケーションの促進と信頼できる正確な情報を双方が得られるようにすることが必要である。イギリスではペアレント・パートナーシップ・サービスが、米国では両親情報研修センターがこの予防に重要な役割を担っている。

 対立が深まった場合、Tribunal(調停所、イギリス)や法で定めた適正手続き(アメリカ)に進むことになるが、その前に用いることができる紛争解決の方法としてMediation(以後、仲介)がある。当事者双方の合意があって初めて仲介は開始される。

 

<仲介サービスの機能と権限>

 「仲介」では、特別支援教育の法律、手続き、制度、状況等に精通し且つ紛争解決スキルのある、中立的な立場の仲介者が、両者の間に入って話し合いを促進する。仲介を通した話し合いでは、双方が納得するよう、双方の意見表明がされ、整理され、その中で障害のある子どもの利益に適った解決策を、双方の当事者が出し合って合意に向かう。仲介者は判断を行わない。仲介を通した合意には法的拘束力がないが、双方が話し合いで解決策を見いだした場合、その結果は守られやすいとされている。

 この間に話し合われることは非公開であり、もしも仲介を通した合意が成立せず、法定手続き等に至った場合も、仲介の過程で話された内容は証拠として使われない。ただしイギリスでは、子どもの虐待等が疑われる場合等には例外的な扱いがあるとされる。

<仲介者と仲介の場>

 アメリカにおいては州が、イギリスにおいては地方行政局が、基準に照らして中立性のあるとされる仲介者のリストを公開する。仲介者の選択は当事者双方の合意の中でリストの中から選ばれる。なお、仲介サービスの存在とその意義について保護者にその存在が周知されることが求められている。

 話し合いは、当事者双方のいる場所で行われる場合もあれば、必要に応じて片方の当事者それぞれから仲介者が話をきいて行うシャトル方式の場合もある。さらに、必要に応じて、電話を通して行われる場合もある。物理的なアクセシビリティーだけでなく、精神的なアクセシビリティーのため、保護者が不安を感じる場合は友人やadvocateを同伴できることになっている。

<仲介で扱わない問題>

 イギリスにおいては、政策的な問題や、求められる解決策がその後の政策に大きな影響を及ぼす問題については、仲介では扱わず、Tribunal(調停所)で対応する。

 

 

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)