社団法人日本PTA全国協議会

平成22年10月27日

社団法人日本PTA全国協議会

 

障害者の権利に関する条約の理念を踏まえた特別支援教育の在り方に関する意見について

 

1 現行の特別支援教育の評価

 子どもの主体的な取組を支援するという視点に立ち、教育的ニーズを把握し、適切な指導と必要な支援を行うものとして進められてきた特別支援教育は、共生社会の実現を目指すものであるという点において、障害者の権利に関する条約の理念と目指すべき方向性は一致するものと認識している。したがって、現行の特別支援教育の取組を支持する立場で、以下の点について論評する。

(1)通常の学級における特別支援教育の充実

 小・中学校では、発達障害を含め子どもの障害の実態が多様化するにつれて、特別な支援を必要とする子どもが増えてきている。障害のあるなしにかかわらず、すべての子どもに適切な指導を行うために、教員の一層の専門性・指導力の向上が求められる。
 と同時に、必要に応じて、特別支援教育コーディネーターの専任化や特別支援教育支援員の拡充など、定数措置が必要である。

(2)特別支援学級の充実及び通級による指導の拡充

 特別支援学級及び通級による指導は、地域における特別支援教育の拠点として重要な役割を担っており、担当する教員には、より高い専門性を期待する。特に、通級による指導は、特別支援学校と同様、これまでから地域のセンター的な役割を担っており、発達障害等の特別な支援を必要とする子どもが今後も増加すると考えられることから、その拡充が益々求められる。

(3)特別支援学校の専門性とセンター的機能の更なる充実

 特別支援学校のこれまでの実績や授業の専門性と充実した施設設備などを勘案すると、今後も特別支援教育に果たすべき役割は大きく必要不可欠である。ただ、できるだけ地域で教育を受けられるようになることが望ましいことから、今後は、特別支援教育のセンターとして積極的に地域の学校を支援していくことに重点が置かれるよう期待する。
 ただし、特別な支援と環境設定が必要な子どものために、特別支援学校が選択肢の一つとして位置付けられるべきであり、そのすべてを否定するものではない。

(4)高校における特別支援教育の推進の必要性

 高校においては、発達障害を含む特別な教育的支援を必要としている生徒が在籍している。今後、高校での特別支援教育の体制づくりを一層求めたい。

 

2 平成21年2月の調査研究協力者会議の中間とりまとめにおける就学先決定に関する提言について

 就学指導の実情をみると、ただ保護者の思いを受け止めるだけにとどまり、市町村教育委員会として適切な指導ができていなかったり、教育内容・方法など総合的な情報提供ができていなかったりと、保護者とのコミュニケーションが不十分で、共通理解を図るまでに至っていない場合もある。
 就学指導委員会に特別支援教育コーディネーターや保健師が入ることで、よりよい就学相談が進んでいる地域もあると聞くが、構成メンバーや専門性においても市町村ごとの差が大きい。

 本提言において、就学指導の在り方として「必要な教育的ニーズ、保護者や専門家の意見、就学先の学校における教育や支援の内容等を総合的に判断して決定する仕組みとする。」こと、また「制度としては義務教育を実施する責任を有する教育委員会が決定する。」こと、「就学後も継続的な就学相談・指導を行う。」こと等の改正イメージが示された。

 専門的な意見を基にして、親身になって相談を尽くした上での「就学指導」であるならば、本提言の趣旨に異論はない。ただ、各市町村教育委員会や就学指導委員会の現状を考えると、就学に関するきめ細かな相談や、「個別の教育支援計画」の作成及びそれを基にした就学指導の実現が可能となるかは極めて不安である。

 

3 障がい者制度改革推進会議の第一次意見の評価について

 

 障害のある子どもをもつ保護者にとって、就学先の決定は大きな決断を迫られるものである。保護者の多くは、我が子に地域の小・中学校で同じ学年の子どもたちと共に学ばせたいという思いと、一方で個の伸長のために専門的な教育を受けさせたいという思いをもつ。
 地域の学校における特別支援教育の専門性の向上をはじめとする、ソフト面ハード面の教育環境の整備が図られるのであれば、我が子を地元の子どもたちと共に、地域の学校に通学させたいというのが、保護者にとっては、あたりまえの願いである。

 というものの、一人一人の障害の状態や様々な環境により、教育的ニーズがそれぞれ大きく異なるので、偏った議論で終わることのないように願う。
 特に、合理的配慮に関することついては、本人、保護者、周りの子ども、学校、教育委員会など、その立ち位置によっても、また、ライフステージによっても大きく異なるし、変化もするととらえると、性急で固定的な結論が導かれないように切に願う。

 次代を担うすべての子どもたちのために…。

 

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)