全国教育管理職員団体協議会

適正就学を原則に

全国教育管理職員団体協議会  会長  小林省三

 

 2004年5月1日付け文部科学省の統計(括弧内の数字:全国小中学生1,092万人に対する割合)によると、通常の学級に高機能自閉症、学習障がい、注意欠陥多動性障がい児が約68万人(6.3%)、特別支援学級に視覚障がい、聴覚障がい、知的障がい、肢体不自由、病弱、言語障がい、情緒障がいが9万1,000人(0.83%)が在籍している。通級学級(通常学級から週に1~2回程度通う学級)に約3万6,000人(0.33%)、そして、特別支援学校に約5万2,000人(0.48%)通学しており、増加の傾向にある。勤務校でもその例外ではなく、日々の教育活動に教員と共に真剣に取り組んでいる。
 平成22年6月7日、障がい者制度改革推進会議で障がい者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)が5項目(1「権利の主体」である社会の一員、2「差別」のない社会づくり、3「社会モデル」的観点からの新たな位置づけ、4「地域生活」を可能とするための支援、5「共生社会」の実現)打ち出された。国民の人権上からも全国教育管理職員団体協議会(以下、全管協)は当然のことと考えている。
 また、障がい者が差別を受けることなく、障がいのない人と共に生活し、共に学ぶ(インクルーシブ教育)を実現することは、互いの多様性を認め合い、尊重する土壌を形成し、障がい者のみならず、障がいのない人にとっても「生きる力」を育むことに繋がり、賛同する。
 本会議の焦点である「特別支援教育の在り方」であるが、ヒアリングまでの期間が短く、かつ課題が広範囲にわたり、全管協としてのみならず、会長である小林省三が勤務するA小学校である特別支援学級(知的障がい)設置校長としての意見としても述べさせていただく。

※資料

 A勤務校は区内(人口約70万人)、小学校73校のうち特別支援学級が26学級(知的障がい学級12校、弱視障がい学級2校、難聴障がい学級2校、言語障がい学級2校、情緒障がい学級8校)設置されている。A小学校は知的障がい学級で高機能自閉症、自閉症、情緒障がい、難聴、学習障がい(LD)、注意欠陥多動性障がい(ADHD)、ダウン症等を併せもち、人との関わりが苦手なため孤立する傾向にあり、言語能力に障がいがあるのか、コミュニケーションしようとする力に欠けている。また、パニック状態になると奇声を発し、泣き叫び、床に寝転ぶこともある。こだわりを示し、同じ言葉を何度も言ったり、行動したりする場面を観察した。
 そこでA校では、特別支援学級の知的障がい児を対象に英語活動を通して、文部科学省が求める「生きる力」に繋がる国際コミュニケーション力の素地(『共生』『自己決定行動』『主体性』)を育むことを目的に実践・研究している。
 具体的には、英語によるコミュニケーション活動(英語活動)を通して、一人一人の知的障がい児が自己開示し、自信をもって、明るく、積極的に、且つ意欲的に行動する姿を一定期間調査し、その変容振りを記録し分析している。校長は今夏、8学会でその成果を発表した。

 

 

特別支援教育の在り方に関する論点

就学相談、就学先決定の在り方について

○すべての児童が通常学級に就学した場合は、多様な価値観のなかで児童は育まれることがメリットである。クラスでの異文化(障がい)を理解することであり、国際化する日本では必要不可欠である。
 デメリットは担任教師の学習、生活指導に支障をきたすことである。若手教員が指導法に悩み、管理職に支援を要求してきているのが現状である。教師の特別支援教育研修が不可欠であるとともに教師の複数配置が必要である。

○就学先決定での保護者の同意が得られないことがある。子どもの幸福を願うための考えの相違から生じている。そこで一定期間「試行在籍」することを提案する。3ヶ月程度で学校はレポートを作成し、保護者に提示する。それでも相違があれば、6ヶ月の試行をする。その後は、校長判断(決定)として、3学期からの新しい教育環境での再スタートを促す。

 

体制・環境整備について

○知的障がい児の場合、てんかんあるいは発作を伴うことがある。就学する場合、校内での応急措置としての専用のAED、車椅子、担架が必要である。大規模校では養護教諭複数体制、受け入れ可能指定救急病院との連携も余儀なく必要とされる。

 

教職員の確保及び専門性の向上について

○障がい特性に応じた教育方法として、英語活動を通してコミュニケーション力(人と関わる力=「生きる力」)を身に付けさせていきたい(「特別支援外国語教育」の確立)。日頃、母語もままならなく、差別意識をもたれている児童に自尊感情、成就感、自立心を与え、他の学習にもよい影響を与える英語活動が適している。
 A校では4年間の実践結果から英語活動が、障がい児のコミュニケーション力育成に適しているとの検証を重ねてきた。平成23年度より新学習指導要領外国語活動が導入される経緯もあり、文部科学省におかれましてはぜひ推奨ありたい。

 

以上

 

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)