主な意見概要

障害者の権利に関する条約の理念を踏まえた特別支援教育の在り方に関するヒアリング主な意見概要

 

 標記ヒアリングについて、19団体(別紙)から10月に2回に分けて実施。

 

1.現行の特別支援教育の評価

<肯定的なもの>

  1. 障害のある子どもの幼少期から卒業までの多様な支援全体を一貫した特別支援教育ととらえ、様々な障害種別に対応するための体制づくりを進めてきたことを評価。(全国特別支援教育推進連盟)
  2. 身体障害や知的障害に加え、新たに発達障害をも対象にし、「通級による指導」など一人一人の教育的ニーズに応えるインクルーシブな教育を目指す支援体制が整いつつあることは評価できる。(日本発達障害ネットワーク、同旨:全日本特別支援教育研究連盟、全日本教職員組合、指定都市教育委員・教育長協議会、全国都市教育長協議会)
  3. まだ整備すべきところはたくさんあるが、特別な支援を要する児童生徒への対応について、少しずつ体制が整いつつある。(全日本教職員連盟)
  4. 特別支援教育がインクルーシブ教育への橋渡しとして位置づけられるとすれば、盲・聾・養護学校や特殊学級はもとより、学校制度全体の再検討を促す契機になった点で大きな意味を持つ。(日本高等学校教職員組合)
  5. 超重症心身障害児も体調の良好なときには訪問教育を行うという水準は、国際的にも最も進んでいると評価してよい。(全日本特別支援教育研究連盟)

<課題を挙げたもの>

  1. 障害に基づいて分離する就学先決定の仕組みとそれに伴う原則分離教育体制、普通学校・学級での障害児への配慮・支援の不足、言語としての手話による教育体制の未整備、難聴児への日本語教育、盲ろう児への教育、特別支援学校の狭隘化など、権利条約からみた障害児教育体制としてはきわめて不十分・条約に抵触するものであり、これらの問題を解消する必要がある。(日本障害フォーラム、原則分離教育について同旨:障害者権利条約批准・インクルーシブ教育推進ネットワーク、盲ろう児への教育について同旨:全国特別支援教育推進連盟)
  2. 現行の特別支援教育の理念に、障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ、共生社会の形成の基礎となるものであるという位置づけが含まれていることは評価できる。しかし、原則分離という状況は変わっておらず、共生社会の実現のためには、合理的配慮義務の実施や原則学籍一元化等を制度化する必要がある。(日本教職員組合)
  3. 特別支援教育は障害の定義が医学モデルであり、権利条約が提唱している社会モデルではない。障害の定義を社会モデルにし、社会全体が障害を克服・軽減するための教育を行うインクルーシブ教育体制を整え教育の目的を改正すべき。(障害者権利条約批准・インクルーシブ教育推進ネットワーク、同旨:日本教職員組合)
  4. 学校教育関係者にインクルーシブ教育に関する知識が乏しく、医学モデルに立脚した指導をするため、障害児を普通学級から排除しがちである。学校関係者の意識啓発をし、また、今までの蓄積された共に学ぶ実践を評価し活かすべき。(障害者権利条約批准・インクルーシブ教育推進ネットワーク)
  5. 普通学級における合理的配慮と必要な支援が整備されていないために本人及び保護者に負担が強いられている。国の予算措置の仕組みを変え、普通学級に合理的配慮と必要な支援を整備するべきである。(障害者権利条約批准・インクルーシブ教育推進ネットワーク)
  6. 教室の新設・増設のための財政的な未措置、特別支援教育に関する経験や知識の豊かな教師の不足、特別支援教育支援員配置の不十分のために、障害の程度に関係なく一つの特別支援学級に在籍するケースも少なくない。障害のある児童生徒を受け入れ、個に応じた適切な支援をするため、環境整備を急ぐべき。(全国町村教育長会、同旨:指定都市教育委員・教育長協議会)
  7. 市町村による格差が生じないよう、また、国の責任において義務教育の水準を維持するため、義務教育費国庫負担率を2分の1に復元させることを望む。(全国町村教育長会)
  8. 交流及び共同学習を一層充実すべき。居住地校交流の実施のための人件費や人材派遣などを補助すべき。自立活動による指導や外部専門家の導入を一層充実すべき。また、特別支援学校以外でも、自立活動の内容が活用されるべき。(全国特別支援教育推進連盟)
  9. 地域の財政状況によって、地域の間での格差がかなり出てきている。一層のハード面の整備、特別支援教育にかかる教職員定数の充実等が必要。(全日本教職員連盟、整備不十分について同旨:全日本教職員組合、日本高等学校教職員組合)
  10. 特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組は、公立幼稚園においては少しずつ進んでいる。特別支援アドバイザーやスクールカウンセラー等の派遣、それから巡回相談等については、人的配置が進んでいる地域もある一方、地域によりまだ差がある。(全国国公立幼稚園長会)
  11. 特別支援学校に在籍する児童生徒と出身地の小・中学校との交流教育については、十分な成果を上げるまでには至っていない。障害のある児童生徒がそれぞれの地域で安心して生活できるような人間関係づくりや、地域社会とのつながりを推進していかなければならない。(全国町村教育長会)
  12. 教育、医療、保健・福祉等の機関が連携して、早期からの支援や就学指導を行う体制を構築することが急務である。(全国都市教育長協議会)
  13. 障害のある自分の子どもだけ個別の支援計画を作ることについて保護者の理解不足があり、結果的に小学校への引継ぎが非常に困難。そのため、口頭で小学校に、その子どもの特性や進度、配慮の方法等の伝達を行わざるを得ない。(全日本私立幼稚園連合会、同旨:全国国公立幼稚園長会)
  14. 発達障害はその診断名によらず、学習の困難を共通して持ちやすいが、そのための専門的指導への展望が拓かれていない。これは次の小・中学校における指導要領改訂の重点課題となるだろう。(日本発達障害ネットワーク)
  15. 支援員の配置経費も含め、高等学校の発達障害などの生徒に対する特別の教育課程や通級に類する指導の在り方などについて、さらに検討が必要。(全国都道府県教育委員長協議会・全国都道府県教育長協議会、高等学校の体制充実について同旨:社団法人日本PTA全国協議会)
  16. 既存の特別支援学校においては、児童生徒数の増加傾向に加え、障害の重度・重複化、多様化等への対応や、地域のセンター的役割も上積みされるなどのため、職務の困難性・特殊性が高まっている。(日本高等学校教職員組合)
  17. 特別支援学校は、センター的機能を発揮して小中学校等を支援しており、こうしたことから、特別支援学校に対する理解と期待は高まっており、児童生徒数も増加から大規模化、狭隘化といった課題が生まれているものの、今後、就学前からの一貫した支援の必要性がますます求められることから、特別支援学校は、個別の教育支援計画を作成する市町村教育委員会への支援にも力を発揮することになる。(全国都道府県教育委員長協議会・全国都道府県教育長協議会、センター的機能について同旨:社団法人日本PTA全国協議会)
  18. 私立小学校においても、障害のない児童と障害が軽度の児童が共に生活し、学ぶ教育を実行している学校もあり、互いの多様性を認めて尊重する土壌が私立の学校の中にもある。私立学校への公的な補助金の増額をお願いしたい。私立学校でも専門家が不足している。特別支援教育の諸条件の整備はすべて自前でやらなければならず、財政的に非常に厳しい。私立の学校にも、教育委員会などが持っている特別支援体制の専門家チームなどを使わせてもらいたい。(日本私立小学校連合会、専門家の巡回について同旨:全日本私立幼稚園連合会)
  19. 私立幼稚園への補助は単価が低く、加配が難しいため、学級担任に頑張らせざるを得ない。30人前後の園児が1クラスにいる中で、1~2人発達障害の子どもを抱えて非常に厳しい現状である。(全日本私立幼稚園連合会)
  20. 私立学校は公立学校とともに公教育を担っているが、その経営形態・状況が著しく異なっており、学校の維持・運営には生徒・保護者の負担によるところが大きい。今後、特別支援教育の諸条件の整備に当たっては、教職員の加配や施設設備の拡充など、受入体制に係る環境整備に要する経費の調達が、私立学校は公立学校以上に重大な課題。公立学校に準じた措置が実施される必要がある。(日本私立中学高等学校連合会)
  21. 普通学級に籍を置く特別支援教室を充実させ、現行の交流及び共同学習をフル・インクルージョンに移行するために回数を増やし、普通学級への移籍を図るべき。(障害者権利条約批准・インクルーシブ教育推進ネットワーク)
  22. 今後、「特別支援教室(仮称)」への移行もさらに現実的なものになると思われるが、国としての基本的な考え方を示すべき。(全国都道府県教育委員長協議会・全国都道府県教育長協議会)
  23. 課題としては、特別支援教育に携わる専門性のある教員の不足が多くの政令指定都市で挙げられており、通常の学級担任を含めた教師全体の特別支援教育に関する専門的な資質の向上が急務であるとの意見が多数あった。(指定都市教育委員・教育長協議会、同旨:社団法人日本PTA全国協議会)

 

2.平成21年2月の調査研究協力者会議の中間とりまとめにおける就学先決定に関する提言の評価

<肯定的なもの>

  1. 障害の状態及び教育的ニーズ、保護者・専門家の意見、学校・地域の状況等を総合的に判断し、義務教育を実施する責任を負う教育委員会が、教育的ニーズに最も適切に対応できる学校を就学先として決定する仕組みとするとの提言には賛成。(全国特別支援教育推進連盟、同旨:全日本教職員連盟、全国都道府県教育委員長協議会・全国都道府県教育長協議会、全国都市教育長協議会、全国町村教育長会)
  2. 総合的な観点から就学先を検討し、十分な合意や納得を大切にしながら決定するという方向、また、就学後においても継続的にフォローアップすることを位置付けていることを評価。(全日本教職員組合)

<課題を挙げたもの>

  1. 原則として障害のある子どもとない子どもの学校を分離する法制度が前提となっているため、現行制度の問題点を解決するものではない。(日本障害フォーラム、同旨:障害者権利条約批准・インクルーシブ教育推進ネットワーク)
  2. 十分な環境条件が整っていないにも関わらず認定就学をしている例がある。保護者の気持ちの尊重は基本的配慮事項であるが、教育側も、本人の自立と社会参加という長期的な視点に立った専門性からの粘り強い助言をすべき。就学支援にあたって十分な理解が共有されないと、その後の無責任な受入れ継続による困難の増大と二次的障害にもつながる危険を高める可能性がある。(日本発達障害ネットワーク)
  3. 就学先の決定については教育委員会の役割は大きいが、教育の場を選択する主体は、保護者でも教育委員会でもなく、子どもたち自身であることを明確にうたうべきである。(全日本特別支援教育研究連盟)
  4. 長期的な展望にたって保護者の意見を聴取することの大切さを明示したことは評価。しかし、障害を持つ子ども本人からの意見の聴取を明記していないのは問題。また、教育相談は、現状の教育委員会主導ではなく、対等な立場で、原則、本人及び保護者の意向を優先させ、その上での合理的配慮を検討する制度にすべき。(日本教職員組合)
  5. 就学後の継続的なフォローアップの必要性を明示したことについては評価。しかし、特別支援学校・特別支援学級への転校を進めて問題を解決するのではなく、どのような学校・学級でも支援すれば解決できるという視点からフォローアップする必要がある。(日本教職員組合)
  6. 本人・保護者の選択を重視して就学先を決定する場合にも、自己責任を強調するのではなく、すべての学びの場において同等の権利が保障されるとの視点から、行政として特別支援学校・特別支援学級の教育条件に責任を持って推進することを求める。(全日本教職員組合)
  7. 就学先を最終的に決定するのは、義務教育を実施する責任を有する市区町村の教育委員会で良いと考えている。しかし、そのためには幼稚園や保育所等の就学前教育の段階からの個別の教育支援計画や個別の指導計画に基づく指導を丁寧に積み重ねる必要があり、ここが非常に重要である。また、就学後の支援内容までを丁寧な説明をしながら、早期から必要性を伝えていくことが重要である。(全国国公立幼稚園長会)
  8. 障害のある子どもたちの就学に向け、市町村教育委員会が就学前の早い段階から保健及び福祉関係部局などとともに連携をしながら相談を実施し、必要に応じ医療などの専門家の意見を聞きながら、保護者と一緒になって個別の教育支援計画を作成することが必要である。もしもそのことによって財政的な負担がかかるというのであれば、文科省が予算化していくことが大切。(全国都道府県教育委員長協議会・全国都道府県教育長協議会、同旨:全日本教職員組合、全国国公立幼稚園長会、全国都市教育長協議会、全国町村教育長会)
  9. 課題としては、毎年数百件を超える就学相談の申込状況の中、提言のとおり、すべての対象児について教育委員会が個別の教育支援計画を作成することを明言するのであれば、現状の教育委員会組織では無理があり、組織改編や人員増が必要であることについて、多くの回答があった。(指定都市教育委員・教育長協議会)
  10. 専門的な意見を基にして、親身になって相談を尽くした上での「就学指導」であるならば、本提言の趣旨に異論はない。ただ、各市町村教育委員会や就学指導委員会の現状を考えると、就学に関するきめ細かな相談や、「個別の教育支援計画」の作成及びそれを基にした就学指導の実現が可能となるかは極めて不安。(社団法人日本PTA全国協議会)
  11. 保護者の意向を尊重して小学校へ入学した場合、教育的ニーズに応じた十分な支援体制を整備できないのが現状であること、さらに、小学校や通常の学校へ就学する医療的ケアを必要とする児童生徒に対する支援が課題となると思われるなどの課題が挙がっている。(指定都市教育委員・教育長協議会)
  12. 全般的に提言内容がやや理論的になりがちな面もある。学校現場がこれらの提言を実現できる人的、物的な支援や制度の充実について国が主体的に推進することが必要。(全国都市教育長協議会)

 

3.障がい者制度改革推進会議の第一次意見の評価

<肯定的なもの>

  1. 障害のある子どももない子どもも異なる扱いをすることなく、原則として、地域の学校へ就学し、ろう児、盲ろう児、その他、希望する場合には特別支援学校・特別支援学級への選択権を保障する、としており、権利条約が規定する差別禁止(異別取扱いの禁止)、原則インクルーシブ教育体制と分離された環境での教育を認める形となっていること、障害のある子どもやその親の選択権を認めていること、すべての小学校・中学校での障害児への合理的配慮を行うことを明記していることから、権利条約の規定を踏まえた妥当なものである。(日本障害フォーラム、同旨:障害者権利条約批准・インクルーシブ教育推進ネットワーク、権利条約に沿ったものであることにつき同旨:日本教職員組合)
  2. 障害者が差別を受けることなく、障害のない人とともに生活し、ともに学ぶインクルーシブ教育を実現することは、互いの多様性を認め合い、尊重する土壌を形成し、障害者のみならず、障害のない人にとっても生きる力をはぐくむことにつながり、賛同する。(全国教育管理職員団体協議会)
  3. 障害の程度にもよるが、本人の意思を尊重し、自らの決定・選択に基づいて将来的に社会参加し、自立して生きることが、人としての幸せにつながると考えている。(全国国公立幼稚園長会)
  4. 原則学籍一元化を制度化することによって、地域の学校で障害者が学ぶことを原則とし、障害者自らが自分の生き方として学びの場を選べる制度が整備されるべき。(日本教職員組合)

<課題を挙げたもの>

  1. 子ども本人の個性と能力を最大限に発達させるために、その時点でどのような教育があるのか、また、望ましいのかを決めていくことが、就学相談・就学指導の最大の論点。その選択を保護者に全面的に委ねる「選択権の行使」という考え方には戸惑う。(全国特別支援教育推進連盟)
  2. 就学先の決定については、保護者と学校教育に責任を持つ教育委員会及び学校との共通理解により、子どもの就学先を決定することができる制度であることが重要であり、単に本人、保護者に就学先の決定権を保障しても、適切な就学先の決定がなされるとは限らないと考える意見があった。(指定都市教育委員・教育長協議会)
  3. 現状の通常学級の環境のままでインクルーシブ教育を取り入れた場合、特別な教育的支援を必要とする児童生徒への対応がさらに不十分になり、教育の本来の目的の達成が困難になることが容易に想像できる。地域への就学等を優先するあまり、教育の目的である「その児童生徒が社会に適応するために必要な力を身につける」という観点が十分議論されていない。(全日本教職員連盟)
  4. 原則として通常の学級に在籍すると示されたが、子どもたちの成長・発達する権利を侵害しかねない危険性を含んでおり再検討が必要。特別支援学校や特別支援学級は、インクルーシブな教育制度の中に包含されると考える。推進会議の第一次意見は、日本の障害児教育の積極的な到達点をも否定し、障害児の権利を後退させることにもつながりかねない。(全日本教職員組合)
  5. 性急な教育改革は望んでいない。段階的に課題を詰めていくことが必要。子どものニーズに応じた教育よりも形式的な機会均等や平等感によって処理することには大いに課題が残る。特別支援学校では、生徒の障害と特性に応じて職業教育やキャリア教育を行っており、推進会議の意見は、障害のある生徒に対する職業教育の在り方やキャリア教育、後期中等教育の分野への配慮が薄いものである。(全国特別支援教育推進連盟)
  6. 障害のある児童生徒が求めるインクルーシブ教育とは、理念のみを先行させたフル・インクルージョン体制ではなく、多様な支援サービスと柔軟な選択可能性を担保したシステムである。ICFを共通理解とするインクルーシブ教育において、成熟した合理的配慮こそが最も検討されなければならない。(日本発達障害ネットワーク)
  7. インクルーシブの理念を否定するものではないが、現実的には障害のある幼児児童生徒一人一人の多様なニーズを踏まえた指導や支援の必要性を踏まえれば、現行の特別支援教育の理念及び制度そのものが生かされることが重要であると考える。(全国都道府県教育委員長協議会・全国都道府県教育長協議会、同旨:指定都市教育委員・教育長協議会)
  8. すべての子どもが通常の学級に在籍して教育が可能かどうかの検討が大いに必要である。例えば、重度重複障害の子どもが通常の学級に在籍した場合に、その子どもを支援する教育的支援や医療的な支援が十分に満たされるための合理的配慮が必要であり、施設面、財政面、人的支援等について、制度上しっかりと議論され、整備されなければ、現場の学校が混乱すると考えられる。(指定都市教育委員・教育長協議会)
  9. 一人一人の障害の状態、様々な環境により教育的ニーズがそれぞれ大きく異なるので、偏った議論で終わることのないように願う。特に、合理的配慮については、本人、保護者、周りの子ども、学校、教育委員会など、その立ち位置によっても、また、ライフステージによっても大きく異なり変化もする。性急で固定的な結論が導かれないように切に願う。(社団法人日本PTA全国協議会)
  10. 「障がいの有無にかかわらず、すべての子どもが地域の小・中学校に就学し、かつ通常学級に在籍することを原則とした制度」については、集団活動を特色とする学校教育においては困難な場合がある。その集団に属する子どもに対し同じ教育課程を実施できる状況であれば可能であるが、個に応じて異なる教育課程を実施することが必要な子どもがいる場合、その子に適した教育環境を準備することが必須。(全国都市教育長協議会)
  11. 障害者が日常生活及び社会生活において受ける制限を社会全体で解決していき、障害者の日常生活及び社会生活のあらゆる分野への参加を可能かつ容易にしていくことが、今後目指すべき社会。自分の生活が就労により自立できるような環境をつくることが、真のインクルーシブである。(全国町村教育長会)
  12. 第一次意見が、小・中学校に就学した場合に、追加的な教職員配置や施設・設備の整備などの条件整備を行うために計画的に必要な措置を講ずるとしたことは積極的側面を持つ。しかし、個別の配慮にとどまっていること、特別支援学校にかかわる計画的な条件整備に全く触れていないことなど、不十分。(全日本教職員組合)
  13. デメリットは担任教師の学習、生活指導に支障をきたす点。教師の特別支援教育研修が不可欠であるとともに、教師の複数配置が必要。(全国教育管理職員団体協議会)
  14. 養護学校義務制実施も、分離教育の強化という面よりも、教育を受ける権利の保障に向かう大きな画期的な発展であったと、歴史的、実践史的に理解すべき。(全日本特別支援教育研究連盟)
  15. 教員・施設設備・教材等が就学時に用意されている必要があるが、就学時に学籍を通常学級に一元化する場合、就学時から就学へのスムーズな移行を実現するための年度ごとの行財政的な条件整備が極めて困難になる。(全日本特別支援教育研究連盟)

 

4.その他、特別委員会の論点(例)について

(1)総論

  1. 権利条約の交渉過程等も踏まえた条文解釈、差別禁止を基調とする法的性質を踏まえることが大前提であり、その前提が特別委員会でもきちんと共有されるべきである。(日本障害フォーラム)
  2. 権利条約では、重度な知的障害や発達障害のある人の教育について、視覚障害や聴覚障害、それらの重複障害のある人と比較すると、考慮すべき事項がまったく明記されていない。その教育方法・技術等の在り方について明確にしていく必要があり、条約における課題である。(全日本特別支援教育研究連盟)
  3. 障害者の能力をその可能な最大限度まで発達させるという障害者の権利条約第二十四条第1項(b)は、インクルーシブ教育として普通学級で学ぶことを前提にしているものであり、この項のみを取り出した議論ではなく、地域の学校で共に学ぶという意味で議論を進めるべき。(日本教職員組合)
  4. 日本の実情を踏まえ、実現可能かつ段階的なインクルーシブ教育システムの構築について時間をかけて議論いただきたい。そのためには体制や環境整備も重要であるが、特別支援教育にかかる教員の専門性の向上を図ること、障害を個人の問題と考えず障害のある子どもへのより良い教育がすべての子どもに生きる教育であるという考え方を学校現場に浸透させていくことが必要である。また、交流及び共同学習の充実など、地域の視点を重視した取り組みの積み重ねが非常に大きい。(指定都市教育委員・教育長協議会)
  5. インクルーシブ教育の理念には異論はないが、現行の特別支援教育が有するメリットについても、客観的に評価する必要がある。(日本高等学校教職員組合)
  6. あらゆる手立てを講じて子どもの意見表明を保障するべき。聞く側の力量が問われるが、小学校の段階から聞くことが必要。(障害者権利条約批准・インクルーシブ教育推進ネットワーク)
  7. イタリアでは、障害のある子どもが普通学級に入ったことによって、新しい学校ができ上がった。障害の種類や程度を問わず就学前から高等教育まで普通学級でのインクルーシブ教育が保障されており、2005年の統計では、障害のある児童生徒のうち小学校に在籍している子どもは93.04%、中学校は96.39%、高等学校は94.94%である。(障害者権利条約批准・インクルーシブ教育推進ネットワーク)
  8. 特別支援教育は、特別な障害群の囲い込みと分離ではなく、もっと連続性を意識した柔軟で合理的な支援サービスを前提とするものである。こうした視点に立つとき、特別委員会の論点には、21世紀の特別支援教育を象徴する「発達障害」の導入の視点が欠けている。(日本発達障害ネットワーク)
  9. 学童期前から小学校1・2年くらいまでのときに、ストレスマネジメントという形での親支援のプログラムを充実させるべき。(日本発達障害ネットワーク)
  10. 障害者の権利条約にうたわれているインクルーシブ教育の推進は、我が国が目指す共生社会の実現に欠かせない。しかし、教職員の多忙のため、一人一人の子どもたちと向き合う時間が十分に確保できない状況も見られる。(日本教職員組合)

(2)就学相談・就学先決定の在り方及び必要な制度改革について

  1. 現在1カ月検診、3カ月検診、1歳6カ月検診、3歳児検診があるが、それ以後は入学期までない。早期からの支援のためには、幼児期から発達相談のシステムを市区町村に義務づけていくというようなことも必要。(全国国公立幼稚園長会)
  2. 保護者が子どもの障害を隠そうとしているならば、それは誤りだということを教えることが必要。その上で、必要な支援、教育内容を考えていくことが必要。(障害者権利条約批准・インクルーシブ教育推進ネットワーク)
  3. 保護者への支援体制をどうしていくかがとても大事。(全国町村教育長会)
  4. できるだけ集団生活の中で育ち合う、という観点で受け入れていく必要があるとは感じているが、医療的ケアの方が現発達段階では大事というケースの子どもも、保護者の強い願いをもって希望してくるケースがある。そういった子どもの受け入れに関しては、就園相談のシステムが必要として、医師や教育委員会が参画することも考えてはいるが、まだシステムとなっておらず園長の裁量で受け入れており、命を預かるという点では、現場の苦労もある。(全国国公立幼稚園長会)
  5. 就学前の4・5歳児について、学校教育への移行をよりよく実現するために、学校教育が提供できる様々な支援や場において、有意義な体験ができるような個別支援計画を市町村教育委員会は用意するべき。(全日本特別支援教育研究連盟)
  6. 「教育委員会と就学相談・指導の強化」についても検討すべき。また、各都道府県の就学に関する取組例を、可能な限り紹介しあうべき。(全国特別支援教育推進連盟)
  7. 保護者に選択権を与えるべき。(日本障害フォーラム)
  8. 高校進学を含む就学先の決定に当たっては、本人・保護者、学校、学校設置者との事前の合意形成や意見調整を図る機会を十分に設ける必要がある。また、そのための調整機関として第三者機関を教育委員会内に設置するよう指導すべき。(日本高等学校教職員組合)
  9. 就学相談・就学先決定の在り方及び必要な制度改革について、カギは、保護者理解・保護者支援にある。保護者が我が子の将来を見据え、今必要な教育的支援について現実を受けとめて考えられるように、長期の個別の教育支援計画を共に作成していくことが重要。(全国国公立幼稚園長会)
  10. 個別の教育支援計画を活用するに当たって、就学前教育を担当する保健部局と義務教育を担当する教育委員会の連携と協力が必要。現在でも連携を行っているが、課題もある。部局を横断した連携体制を構築することによって、就学決定においても、最も必要な保護者と学校、教育行政サイドの共通理解を深めることができる。(全国都市教育長協議会)
  11. 就学後の適切な就学相談・指導により、就学先を変更する事例が増加している。柔軟な就学指導を進める上でも、適切な教育を進めるための支援体制の充実が望まれる。(全国都市教育長協議会)

(3)制度改革の実施に必要な体制・環境整備について

  1. 当面、特別支援学校において、高等学校の教育内容を発展的に盛り込むことや、高等学校において特別支援学級を設けるなど、実現可能な対応から段階的に日本版インクルーシブ教育を進めることが望ましい。(日本高等学校教職員組合)
  2. 特別支援学校を選んでも、地域の学校を選んでも、同じような支援や合理的配慮が得られることが重要。(日本障害フォーラム)
  3. 特別支援教育の問題は、支援体制づくりと環境整備といった制度的・人的・物理的な問題であり、今後も計画的な整備が必要である。(全国町村教育長会)
  4. 小・中学校に就学する場合、その前提として、通常学級の教育課程が障害のある子どもたちにとっても最大限度の発達保障、アイデンティティの形成、自由な社会への効果的参加の促進などの教育の目的を実現するものとして編成される必要がある。(全日本教職員組合)
  5. 認知・コミュニケーションにかかわる障害、知的障害などがある子どもたちの中には、障害に配慮して教育課程全体を組み立てる必要のある子どもたちが存在することに注意が必要。(全日本教職員組合)
  6. 副籍、支援籍などの検討・推進においても、障害のある子どもたちが主体的に参加できる教育課程のあり方の検討、通学や十分な教育を保障するために必要な条件の整備が不可欠。(全日本教職員組合)
  7. 高等学校の学習指導要領、入試制度の在り方、生徒指導の在り方、学習評価の在り方の検討が必要。(日本高等学校教職員組合)
  8. 教育課程上の配慮として、専門的知識を有した教員や介助員など複数の教員による支援チームが必要。(全国都市教育長協議会)
  9. 特別支援教育の充実は、それに携わる教員や介助員に加え、「場」の確保が非常に大きい。クールダウンする場や休息の場が大事である。(全国国公立幼稚園長会)
  10. 知的障害児の場合、てんかんや発作を伴うことがあるので、就学する場合には、校内での応急措置としての専用のAED、車椅子、担架が必要。大規模校では養護教諭複数体制、受け入れ可能指定救急病院との連携も必要。(全国教育管理職員団体協議会)
  11. 障害のある子どもが地域の小・中学校に就学する場合、環境整備として、校舎のバリアフリー化を進め、エレベーターの設置、専用トイレの整備、必要な場合は冷暖房設備など生活環境の整備が必要。また、障害種別に応じて特別支援学校に準じた新たな施設の整備が必要となる場合もある。(全国都市教育長協議会)
  12. 障害の程度や内容に合わせた適切な教材・教具を整備する必要がある。(日本高等学校教職員組合)
  13. 居住地校との交流及び共同学習を進めていく上で、副次的学籍の検討や公的な交通手段の確保が必要。副次的学籍のメリット・デメリットを整理すべきである。(全国都市教育長協議会)
  14. 学籍をフレキシブルな制度とする検討をする必要がある。(日本高等学校教職員組合)
  15. 知的障害のある人・子どもの教育において、最も適切な言語並びにコミュニケーションの形態及び手段、かつ学業面の発達及び社会性の発達を最大限にし、彼らのアイデンティティをよりよく確立する環境が特別支援学校や特別支援学級である場合は少なくない。(全日本特別支援教育研究連盟)
  16. 特別支援学校のセンター的機能を充実させて、扱う内容を増やし、地域に対し様々な貢献をしていくことが考えられる。(全国都道府県教育委員長協議会・全国都道府県教育長協議会)
  17. 少数意見ではあるが、特別支援学校の設置義務に関し、政令市等一定規模の市町村にも、税源とともに権限を持たせることを検討願いたいという意見もあった。(指定都市教育委員・教育長協議会)
  18. どのような条件の下で障害のある子どもが最も生き生きと仲間と活動し学ぶのか、またそのような活動が実現する子ども集団の条件はどうかなど、観察評価を含む子ども主体の移行支援の方法を研究すべき。(全日本特別支援教育研究連盟)
  19. 国、県、市町村の役割分担を考えたとき、設置者としての市町村に財政的、人的負担が偏らないよう国、県、市町村の役割を明確にする必要がある。特に国の財政面での支援や県による専門的知識技能を有した教職員の配置などを望みたい。(全国都市教育長協議会)

(4)障害のある幼児児童生徒の特性・ニーズに応じた教育・支援のための教職員の確保及び専門性の向上のための方策

  1. 最近の学習障害や注意欠陥多動性障害の子どもに対しての支援について、特別支援学校の教員が対応しきれないという課題がある。市や教育委員会のバックアップのもとに、そのような教員への専門性の向上について取り組んでいかなければならない。(指定都市教育委員・教育長協議会)
  2. 特別な支援を要する子どもへの対応については、一つ一つ経験を踏んでいくことが最も大切であり、研修等により知識を深めていくことが必要なのであって、免許を取ることは必要ではないと、一般の教職員は考えている。(全日本教職員連盟)
  3. インクルーシブ教育について管理職を含めた研修を行うとともに、教職員の人権意識を高める必要がある。(日本高等学校教職員組合)
  4. 今の学校のシステムの中で、研修の時間、免許を取るための認定講習へ行っている時間的余裕がなく、教員免許更新制の中でも最重点教育として特別支援教育というのを位置づける必要がある。(全国町村教育長会)
  5. 免許、研修については、教員が多く時間がかかる。特別支援教育への関心の高まりや特別支援教育を必要とする児童生徒が増大しているという課題があり、それに対応する教員については、ベテランを配置していくことを、各市町村の教育委員会や各学校長に要望していくことになる。(全国都道府県教育委員長協議会・全国都道府県教育長協議会)
  6. 特別支援学級の担任が異動したときに再び特別支援学級の担任になるとは限らず、専門性が継続しにくい。また、人事異動の期間が短くなってきており、蓄積がしにくい。さらに、特殊別支援学級の担任が学校に一人しかいないことが多く、学校で孤立して、なかなか集団的に専門性が高められない。(全日本教職員組合)
  7. 高校の免許を持っている先生が特別支援学校を担当し、また高校に戻るといった交流によって、高校も特別支援学校も指導面で活性化される。(日本高等学校教職員組合)
  8. 各専門職をまとめる立場の教職員が必要とされ、その職責に応じた職名・手当を検討する必要がある。(日本高等学校教職員組合)
  9. 特別支援学校教諭免許状の取得率向上のための諸条件の整備が必要。(日本高等学校教職員組合)
  10. 特別支援学校教諭免許制度は特別支援教育教員免許制度に改めるべき。(全日本教職員組合)
  11. 手話や点字のできる教員の確保が必要。(日本高等学校教職員組合)

(5)その他関連事項

  1. 「職業教育・就労支援」に関して、ぜひとも議題に加えていただきたい。キャリア教育の必要性が叫ばれている中、障害者にとって「職業教育・就労支援」は、学校教育とは切り離すことのできない重要な課題である。(全国町村教育長会)

 

 

(別紙)

参加団体【19団体】

 

第1回(10月18日)【10団体】

    • 全国特別支援教育推進連盟
    • 日本障害フォーラム(JDF)
    • 日本発達障害ネットワーク(JDDネット)
    • 全日本特別支援教育研究連盟
    • 障害者権利条約批准・インクルーシブ教育推進ネットワーク
    • 日本教職員組合
    • 全日本教職員連盟
    • 全日本教職員組合
    • 日本高等学校教職員組合
    • 全国教育管理職員団体協議会

 

第2回(10月27日)【7団体】

    • 日本私立小学校連合会
    • 全日本私立幼稚園連合会
    • 全国国公立幼稚園長会
    • 全国都道府県教育委員長協議会・全国都道府県教育長協議会
    • 指定都市教育委員・教育長協議会
    • 全国都市教育長協議会
    • 全国町村教育長会

 

※日本私立中学高等学校連合会及び社団法人日本PTA全国協議会は、書面により意見提出。

 

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)