資料21:山岡委員提出資料

2010年10月5日

中央教育審議会初等中等教育分科会
特別支援教育の在り方に関する特別委員会御中

日本発達障害ネットワーク
代表 市川 宏伸

 

「障害のある幼児児童生徒の特性・ニーズに応じた教育・支援のための教職員の確保及び専門性の向上のための方策」に関する意見

 

 日本発達障害ネットワーク(JDDネット)は、2005年12月に発足し、発達障害関係の当事者団体、学会、職能団体66団体(全国団体=17、エリア団体=49)により構成されており、わが国において発達障害を代表する団体として、活動しております。
 表記につきまして、意見を取りまとめましたので提出いたします。

 

【提案事項】

現行の「特別支援学校教諭免許状」を「特別支援教育教諭免許状」とする等、特別支援学級、通級による指導等の通常の学校における特別支援教育担当教員も視野に入れた免許制度に改正すること

 

(理由)

(1)国連の障害者の権利条約で、インクルーシブな教育制度、合理的配慮が求められており、従来の特別支援学校のみならず、小中学校等においても体制整備が求められており、特別支援教育の確かな専門性を備えた人材の配置が今後ますます求められること。

(2)2005年の中教審WG報告において、中長期的な課題として検討していくことが提言されていること

     特別支援教育教員免許の総合化については、中教審にWGが設置され、2005年4月22日に「特殊教育免許の総合化について(報告)(主査=大南英明氏)」において、現在の特別支援学校教諭免許状として総合化することが方向付けられた。
     一方この報告書の基本的な考え方において、「なお、「特別支援学校(仮称)」のみならず、小・中学校等の特殊学級や通常の学級に在籍する障害のある児童生徒等への対応も含めた「特別支援教育」を担当する教員の資質を担保するものとして、「特別支援教育免許状」を構想すべきとの議論もある。これについては、今後の特別支援教育の在り方のみならず、免許制度全体の見直しを視野に入れつつ、中長期的な課題として検討していくことが適当である。」とうたわれており、当時から5年を経ており検討すべき時期に来ていること。

(3)2007年の改正により、特別支援学校だけでなく、通常の学校においても特別支援教育に取り組むことが、学校教育法に規定されていること

     2007年4月に改正施行された、学校教育法では第81条において、「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校においては、次項各号のいずれかに該当する幼児、児童及び生徒その他教育上特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対し、文部科学大臣の定めるところにより、障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を行うものとする。」としており、特別支援教育は特別支援学校だけでなく、通常の学校における特別支援学級、通級による指導において対応が求められていること。

(4)2002年に文部科学省が行った全国調査により、通常の学級の中にLD、ADHD、高機能自閉症等の発達障害の可能性のある児童・生徒が6.3%(68万人)在籍しているという推計値が示されており、通常の学級における支援体制の整備が求められていること。

(5)特別支援学級、通級による指導の対象となっている児童・生徒の数は、特別支援学校在籍の幼児・児童・生徒数を上回っていること。

     特別支援学級、通級による指導の担当教員数は、特別支援教育担当教員全体の40%に相当する人数がいること。
     文部科学省の特別支援教育資料(2008年5月現在)によると、生徒数・教職員数は下記のようになっている。
     

    [児童・生徒数(小中計)]

特別支援学校

60,302

25.8%

特別支援学級

124,166

53.0%

通級による指導

49,685

21.2%

234,153

100.0%


    [教員数]

特別支援学校

68,677

59.5%

幼稚部~高等部計

特別支援学級

42,603

36.9%

小中計

通級による指導

4,085

3.5%

小中計

115,365

100.0%

 

 さらに、発達障害のある児童・生徒は通常の学級にも在籍しており、通常の学級における支援体制の整備が必要。

(6)特別支援学級と通級による指導における特別な教育課程については、特別支援学校学習指導要領を参考にして編成することになっているが、発達障害等については、特別支援学校においては障害種別として規定がない等、特別支援学校教諭免許では、特別支援学級と通級による指導等の通常の学校おける特別支援教育対する対応が十分ではないこと
 小中学校、特に「通級による指導」では効果的な教科の補充指導が求められている。学習指導要領では、小中学校では特別支援学校の学習指導要領を参考にして指導することになっているが、かつての特殊教育に準ずる教育の流れを汲む、特別支援学校の教育に準じた教育では、十分な効果が期待できない。LDなどの発達障害についてはその障害特性に応じた教育が求められており、特別支援学校の教育とは別に、小学校・中学校用の学習指導要領に独立して指導方法を示すべきである。

(7)現行の「特別支援学校免許状」ではなく、「特別支援教育免許状」にすることで、教員養成系の大学・学部(一部、教職大学院などの大学院教育)などにおけるカリキュラムが、当然、小中学校の特別支援学校や通級による指導の担当者も含めた総合的なものに変更され、特別支援学級や通級による指導の担当者の専門性向上に確実に繋がることになる。

 

 その他、本提案と直接結びつくものではないが、教職員の専門性に関連して、下記のような意見があった。

    1. 通常学級の教員について特別支援教育の意義や障害児教育の基礎的な知識を付けさせることが必要。
    2. 通級による指導や特別支援学級の担当教員の、経験年数が短く専門性が担保されていないことから何らかの対策が必要。
      (通級指導教室の担当教員の経験年数:3年未満が65%(国立特別支援教育総合研究所の笹森・廣瀬(2009))

 

以上

 

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)