中央教育審議会初等中等教育分科会
特別支援教育の在り方に関する特別委員会
第4回討議資料
平成22年10月5日
全国特別支援学校長会 尾崎 祐三
特別支援教育に関わる教員が身につける内容としては、以下の点が考えられます。
(1)障害を理解していること(障害の基礎知識、アセスメント検査技術)
(2)障害の特性に応じたコミュニケーション手段を獲得していること
(3)障害に関わる教育に関する教育課程を熟知していること
(4)幼児児童生徒の障害の状態に合わせた指導内容・方法を計画(個別の指導計画・個別の教育支援計画の作成と活用)し実践できること
(5)教材・教具の作成、活用(情報機器も含む)ができること
(6)障害の状態に合わせた職業教育・キャリア教育の指導や進路指導と就労支援ができること
また、下記の障害の教育を実施する場合、上記の専門性にプラスして下記の専門性を身につけた教員を確保する必要があります。
<視覚障害の場合>
○1 点字指導(点字に関する理解⇒「点字力」、点字の読み書きについて指導する力⇒「点字指導力」)
○2 歩行指導(白杖を使った歩行指導)
<聴覚障害の場合>
○1 聴能に関する基本的事項理解と活用(補聴器の管理、聴力検査、言語明瞭度検査の実施力)
○2 言語コミュニケーション(読話等を生かす口話法、発音発語指導の方法の理解と実施、会話を容易にする手話・指文字:全国手話検定試験2級以上程度の力量)
○3 聴覚の状態を知り、人工内耳施術者に対する配慮事項を含めて、聴覚を最大限生かす聴覚活用力。
<知的障害の場合>
○1 児童生徒と教師の一対一の個別指導、複数の教師による小集団・大集団による指導等、
○2 一人一人の児童生徒の運動能力や感覚機能等を高めるための教材・教具の作成、開発力、
○3 行動特徴や心理特性の理解、
○4 自閉症児童生徒対応、
○5 ハローワークや障害者職業センター、就業・生活支援機関と連携した進路指導
<肢体不自由の場合>
○1 医療的ケア(注入、吸引、導尿等)
○2 摂食指導(嚥下困難な生徒への安全な給食指導)
○3 自立活動(運動・動作、コミュニケーション等の指導およびハンドリングの知識・技術)
<病弱の場合>
○1 病気についての基礎的知識、
○2 生命や安心安全な生活に関わる基本的な特性の理解ができ個に応じた適切な支援、
○3 カウンセリングの知識技能、
○4 医療的ケア(注入、吸引、導尿)
(1)特別支援学校が担う地域の小学校・中学校等支援のための特別支援教育のセンター的機能を拡張させる
特別支援学校においては、これまで蓄積してきた専門的な知識や技能を生かし、地域における特別支援教育のセンターとしての機能の充実を図ってきました。
幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校の要請に応じて、発達障害を含む障害のある幼児児童生徒のための個別の指導計画の作成や個別の教育支援計画の作成などへの援助を含め、その支援に努めてきました。継続して幼小中高への支援が必要です。
今後は、特に就学相談との関係においても、早期教育相談(適切な乳幼児相談、母親指導、他機関の活用、案内)が重要になります。
(2)特別支援教育支援員等の活用を図る
障害のある幼児児童生徒の学習上・生活上の支援を行うため、教育委員会の事業等により特別支援教育に関する支援員等の活用が広がってきています。
この支援員等の活用に当たっては、校内における活用の方針について十分検討し共通理解のもとに進めるとともに、支援員等が必要な知識なしに幼児児童生徒の支援に当たることのないよう、事前の研修等に配慮する必要があります。
職員としての専門職の学校への配置
○1 医療的ケアを支援・実施する常勤看護師及び教職員に医療的ケア研修を実施するためには、指導・助言・育成・相談支援を担う専門医の配置が必要です。
○2 重症心身障害の児童生徒の医療に関する専門医(指導医)及び看護師の確保が必要です。(現状では、求人難のために医療専門職の確保が、極めて困難な実態があります。)
○3 保健室要員(養護教諭、看護師、非常勤看護師、各科の校医、薬剤師等)の確保が必要です。
○4 個の実態に応じた自立活動に関する専門性ある人材(PT:理学療法士、OT:作業療法士、ST:言語聴覚士、他)の確保が必要です。
○5 個々の摂食機能に応じた給食、例えば4段階の形態食:初期食、中期食、後期食、普通食など用意し、摂食指導を行うためには、専門的職歴を有する栄養士と経験と技能を有する給食委託業者が不可欠です。
特別支援教育の推進のためには、教員の特別支援教育に関する専門性の向上が不可欠です。
学校は、組織的に各学校における校内研修の実施や校外での研修に参加させたりすることにより専門性の向上に一層努めることが必要です。また、教職員は一定の研修を修了した後でも、より専門性の高い研修を受講したり、自ら最新の情報を収集したりするなどして、継続的に専門性の向上に努める必要があります。
そのためには、文部科学省、国立特別支援教育総合研究所、各都道府県等教育委員会における研修や校長会等や研究団体が行う研修体制の充実や各都道府県等教育委員会における別支援教育に関する研究・研修センターの整備も必要です。さらに、大学や医療機関、企業(補聴器メーカー等)や障害団体(手話に関しては、ろうあ協会などの成人聾者団体等)との連携が必要な場合が多々あります。地域や関係者との連携が一層重要になります。
そして、現職研修も大切ですが、大学における教員養成段階からの問題も検討する必要があります。
共生社会の実現のためには、障害のある児童生徒一人一人が勤労観・職業観を身に付け、主体的に社会参加・自立できるように小学校段階からのキャリア教育・職業教育を充実することが重要です。
現在、特別支援学校の高等部においては、多様な障害に対応して、生徒一人一人のニーズに応じた職業教育を実施し、企業就労等に結び付けています。専門的な職業教育への期待は高く、多くの生徒や保護者が、専門的な教育を行う高等部への入学を希望しています。そのため、障害の特性に応じた専門的な職業教育を受けることのできる特別支援学校の高等部を拡充し、職業教育の機会均等を図ることが大切です。
初等中等教育局特別支援教育課