資料5:奈良県教育委員会提出資料

平成22年9月6日

中央教育審議会「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」におけるヒアリング資料
―制度改革の実施に必要な体制・環境整備について―

奈良県教育委員会事務局
特別支援教育企画室

 

1 障害のある子どもが地域の小・中学校に就学する場合、障害の種類やその状態に応じて必要な体制・環境整備として、どのようなものが考えられるか。

 

○ 県教委として、地域の小・中学校への就学を特に推奨してきたものではないが、もとより本県は地域志向が強く、各市町村の努力・工夫により必要に応じた体制・環境整備がなされてきている。

 

(1) 地域の小・中学校として

    ○1 ハード面

      • 小学校の97%、中学校の95%の学校で、障害児を想定した何らかの整備をしている。ただし、その多くは段差解消やトイレ改修で、エレベーターの設置は12~13%である(平成19年度調べ)。
      • 大規模な施設整備の改善は財政的負担が大きいため、各市町村とも、追加経済対策を活用したり、耐震化工事・大規模改修に併せた改善を行うなどの工夫をしている。
      • 余裕教室を活用して柔軟に特別支援学級を配置したり、教室の配置換えをしたりしている。

      [参考] 肢体不自由学級を設置している小・中学校のうち、主として車いすや歩行器等を使用する児童生徒が在籍する学校の施設整備状況(調査基準日:H21.5.1)

 

学校数

エレベーター設置

階段昇降機

スロープ

トイレ改修

小学校

46

9(設置率 約20%)

16

37

45

中学校

13

4(設置率 約31%)

8

8

12

    ○2 ソフト面

      • 特別支援学級の新設同意や学級定数の改善(8人→6人)
      • 特別支援教育支援員等の活用
      • 特別支援教育巡回アドバイザーの設置

 

(2) 県立特別支援学校として

      • センター的機能(相談支援、研修支援、情報提供等)の充実は欠かせない。

      例1)教育相談支援室の設置(盲学校)
       2)地域支援教室の設置(肢体不自由養護学校)

 

(3) 事例

    ○1 全盲生徒を中学校で受け入れている例

      • 点字ブロックの設置、点字パソコン一式の購入、点訳有償ボランティアの確保
      • 盲学校からの定期的なバックアップ

    ○2 肢体不自由(脳性麻痺)のある生徒を中学校で受け入れている例

      • 教室の配置換え、段差解消、トイレ改修、階段昇降機購入(借り入れ)
      • 肢体不自由養護学校との連携

○3 知的障害を伴う自閉症のある児童を小学校で受け入れている例

      • 感覚過敏に配慮するための静ひつな環境設定(指導上の工夫で対応)
      • 対象児童が複数で、特に多学年にわたると、指導体制に苦慮

 

(4) その他参考資料

参考1 特別支援学校(小・中学部)及び小・中学校特別支援学級の在籍者数(人)

 

視覚

聴覚

肢体

病弱

知的

情緒

合計

特別支援学校

12

69

128

7

529

745

特別支援学級

22

40

135

118

993

834

2,142

 

参考2 特別支援学校(小・中学部)及び小・中学校特別支援学級の在籍者数の推移(人)

 

H13

H14

H15

H16

H17

H18

*H19

*H20

H21

H22

支援学校

452

447

460

475

509

549

590

647

702

745

伸び率

100%

99%

102%

105%

113%

121%

131%

143%

155%

165%

支援学級

1,218

1,272

1,342

1,463

1,547

1,633

1,719

1,862

2,027

2,142

伸び率

100%

104%

110%

120%

127%

134%

141%

153%

166%

176%

*H19,20に特別支援学校を1校ずつ新設

 

2 障害のある子どもが地域の小・中学校に就学する場合、障害の種類やその状態に応じて必要な教育課程上の配慮(特に知的障害について)として、どのようなものが考えられるか。

 

  • 特別支援学級では、個別の指導計画に基づく指導が定着しつつあり、特別な教育課程を編成している。
  • 地域の小・中学校では、通常の学級における入り込み指導(交流及び共同学習)が比較的多くとられているが、逆に、特別支援学級における小集団による指導の場と時間の確保も必要である。特に知的障害を伴う場合は、領域・教科を合わせた指導の時間を大切にする必要がある。
  • 特別支援学級に対する本人・保護者のニーズが多様化しており、学級経営に苦慮することがある。
  • 小集団を形成する場合の障害の種類やその状態及び学年等に配慮が必要である。
  • 一定の学習集団を形成するために、近隣校の特別支援学級等と合同で学習する機会を設けることが重要である。

 

3 障害のある子どもが幼稚園、小学校、中学校、高等学校等に就学する場合、必要な合理的配慮として支援を講ずることができないケースとして、どのようなものが考えられるか。

 

(1)ハード面

    • 校舎等の完全なバリアフリー化
    • エレベーターやスロープの設置、自動ドア等の大規模な改修を伴うもの
    • 水治療室や全館の空調設備の整備

(2)ソフト面

    • 登下校の送迎
    • 教室移動の補助やトイレ介助などが頻繁に必要で、教員だけの対応では十分な指導及び安全確保ができない場合
    • 医学的管理を常時必要とする(医療的ケアを必要とする)場合

(3)その他

    高等学校に関して次のようなことに苦慮している。

    • 高校受検における合理的配慮に関して
    • 本人・保護者と教育委員会との間で、生徒個人の特性と選抜に求められる公平性との整合性に関する合意形成に苦慮している。

    • 評価と進級について
    • 生徒の学習状況を丁寧に把握するための多様な評価方法と単位認定の在り方

 

4 インクルーシブ教育システム構築のための漸進的取組として、居住地校との交流及び共同学習を更に進めていくためにどのようにすればよいか。(副次的学籍の在り方の検討を含む。)

 

(1)現状

    • 小学部では居住地校との個人交流が行われているが、中~高等部になるにつれて交流機会が少なくなる傾向がある。
    • 行事等への参加だけでなく、同学年の通常の学級の授業に定期的に参加している例がみられるようになってきた。
    • 訪問教育対象児の事例:居住地の小学校の特別支援学級と通常の学級の両方に、当該児童の机や椅子を置くとともに、家庭で訪問教育を受けている様子等を掲示するなど、事実上の副次的な受け入れ体制を整えている村もある。

(2)今後

    • 特別支援教育の専門性を担保しつつ、より一層地域化を促進する方法のひとつとして、特別支援学校の分校・分教室化も考えられるのではないか。ただし、設置する学部、障害の種類やその状態、学習集団の大きさや設置先など、吟味すべき点は多い。

 

5 必要な体制・環境整備における国、県、市町村の責務・役割分担、連携について

 

 地域の小・中学校がすべての障害種別に対応可能となるようにするためには、エレベーター、プレイルーム、水治療室、冷暖房施設等の設置など増築を伴う整備が必要となる。その場合の財源は、国の補助率を大幅に引き上げるなど、財政的な支援が不可欠である。

 また、小・中学校に専門性の高い教員や看護師を確保するなど人的な面でも整備が必要。

 

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)