資料10:中央教育審議会初等中等教育分科会(平成22年7月12日)―特別支援教育関係部分委員発言要旨―

中央教育審議会初等中等教育分科会(第70回、平成22年7月12日)
―特別支援教育関係部分委員発言要旨―

 

○皆理念においては同じ。十分な教育の機会を与え必要なサポートを提供できればよい。しかし、理念倒れになってはいけない。学校制度の中で、理念が生かされて中身のあるものにしていかなくてはならない。権利条約や閣議決定で強調されている点をもう一度考えながら、具体の学校教育の中でどう展開したら本物になるかということである。

○全連小では、毎年特別支援教育について抽出調査を実施。通常学級には発達障害の子どもが3%程度在籍。一番困っていること三つ選んでもらった。「友達とのトラブルが絶えない」66%、「その子どもが原因となって学級の授業に支障が出る」62%、「集団行動ができず指導ができない」52%であった。誰が対応しているか。担任57%、補助員15%、別の教員5%である。現場の教員が苦労している状況がうかがえる。条件整備がまだまだ必要だということを示している。

○「インクルーシブ教育」という理念は良いが、特別に支援が必要な子どもの権利保障と同時に通常学級の子どもの権利保障も考える必要がある。我が国の教育全体を考えながら議論が必要。

○初等教育で教育活動を進める際には一定程度静ひつな環境が必要、学校行事もそういった中で効果を上げている。そうした教育活動を保障し、担保するということも検討すべき。したがって、今後、十分な検討、多面的な議論、そして条件整備も考えていかなければならないと思う。

○閣議決定において第一次意見を非常に尊重するとなっており、教育では、インクルーシブ教育システム構築の理念を踏まえることが示されている。「障害の有無にかかわらず、すべての子どもは地域の小・中学校に就学し、かつ通常の学級に在籍することを原則とする」と書かれており、この原則を認めるかどうかだと思う。

○就学先を決定するのは教育委員会で果たしてよいのか。地域によっては特別支援学校がなく、結局特別支援学校に通うことは無理で、家庭での教育も認められない。30年ぐらい前、普通学級に障害児を入れたことがあった。色々あったが、最終的には大学に行って一流企業に就職した。

○クラスに障害のある生徒がいたことがある。障害のある生徒は、授業中に歌を歌ったりおしゃべりをしたりという状態であった。保護者からも苦情があったが、その子の生き方を通じて周囲の子は学び、心豊か、優しさが育ったと思う。しかし、障害のある生徒にとって、果たしてどうだったのか。普通学級で受けた授業が社会で生きていく力につながったか悔やまれる。一緒にやることはすばらしいが相当条件整備をしていかないと現場の教員が大変。当時は保護者、周りの子供の理解もあった。制度として行うとなれば、人的配置に加え、教員が特別支援教育に対する相当な知識を持つことが必要である。

○インクルーシブ教育システムに異論はないが、相当の条件整備をしなければならない。学習指導要領が改訂されたときにも、やれるところからやることになり、条件整備が一番後になった。周囲の理解や条件整備も併せて検討することが必要である。

○子どもが自立し社会参加するために教育をするのだが、教育現場と障害のある子どもの保護者との考え方の食い違いが大きくて納得がいかないというケースがある。就学前検診、就学指導の体制も必ずしも十分機能しているとは言えず、それが強すぎると選別につながるといったことがあって、大きな問題を抱えている。国として、どのように制度設計をすべきか、各市町村をどのようにサポートしていくのか十分配慮が必要である。

○障害のある子どもが通常の学級に在籍した場合、1、2年生ではうまくいくケースが多い。3、4年生ぐらいから、つまり知的な活動が多くなり、具体的な思考の段階から抽象的な段階になると大きなつまずきを生じてくる。また、全盲のお子さんが自立した生活をするためには小さいときから訓練しなければならない。途中からの進路変更や早期教育について、障害の種類や程度に応じて考えていかなければならないので、ソフト面・ハード面の充実を考えて推進いただきたい。

○環境をどのように整えていくかが大事。一方、保護者は学校に対し学力を求めていく。学校は、すべてのことを体感する子どもを育てて、それをトータル的な学力と言っていることを保護者にきちんと伝えないとインクルーシブ教育が学校現場でできたとしても、学校選択制度があれば、そうではない学力が上がりそうな学校に行こうとする。本当の趣旨のものがすべての学校で同じように行われる環境になるのか非常に気になる。国民すべてがそのような気持ちになれるような環境整備をきちんとして、そういう中で子どもたちが学ぶことができる。

○それぞれの子供の学習の権利を考えていくと、発達段階によって色々な状況が違う。障害のある子どもと障害のない子どもが、この部分では一緒に学んだ方が良い、この部分に関しては特別にきちんと障害程度に合わせて学んだ方が良い。1つの学校でできる範囲であれば、その学校で行うことが望ましいし、1つの学校でできない場合には、交流しながら学ぶ方が良い。そういう子どもを授かるというのはすべての国民にあるはずである。学習の権利を与えながら、感性を持つ教育を次の大人になる子どもたちにできるかが大事。

 

(「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」の設置について)

委員から、特別委員会の委員には障害当事者も入れる必要がある旨発言があり、分科会長より、委員の指名については一任いただきたい、是非障害当事者の方にも入っていただきたいと思っている、との回答があり、設置について了解された。

 

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初等中等教育局特別支援教育課

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