資料4:障害者制度改革に係る検討状況及び教育分野の主要課題

障害者制度改革に係る検討状況及び教育分野の主要課題

目次

(1)障害者の権利に関する条約
(2)障害者基本法
(3)障害者制度改革の推進体制
 障がい者制度改革推進会議 委員一覧
(4)障がい者制度改革推進会議 開催状況及び今後の予定
 文部科学省ヒアリング(4月26日)関係資料
 第一次意見(平成22年6月)抜粋
(参考)子ども・子育てビジョン(平成22年1月29日閣議決定)

平成22年7月 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課

(1)障害者の権利に関する条約 

1 経緯

  • 平成18年12月・・・・・・ 国連総会において採択
  • 平成19年9月28日・・・署名
  • 平成20年5月3日・・・・発効                   

※計144カ国・機関が署名済み、うち88カ国が批准

    (主要な批准国:仏、独、伊、加、英、豪、中)
    (未批准国:米、露、日)

2 概要

 障害者の尊厳、自律及び自立、差別されないこと、社会参加等を一般原則として規定し、障害者に保障されるべき個々の人権及び基本的自由について定めた上で、これらを確保し促進するための措置を締約国がとること等を定めている。

3 条約の批准・締結に向けた検討

 可能な限り早期の締結を目指し、必要な国内法令の整備等に係る政府としての対応を検討中。(政府の「障がい者制度改革推進本部」及び同本部に設置された「障がい者制度改革推進会議」の下で、教育関係を含め、条約批准に向けた主要な論点につき検討が行われている。)

4 教育関係の主要な条文(仮訳)

第二十四条 教育

1 締約国は、教育についての障害者の権利を認める。締約国は、この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現するため、次のことを目的とするあらゆる段階における障害者を包容する教育制度(inclusive education system)及び生涯学習を確保する。

    (a) 人間の潜在能力並びに尊厳及び自己の価値についての意識を十分に発達させ、並びに人権、基本的自由及び人間の多様性の尊重を強化すること。

    (b) 障害者が、その人格、才能及び創造力並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。

    (c) 障害者が自由な社会に効果的に参加することを可能とすること。

2 締約国は、1の権利の実現に当たり、次のことを確保する。

    (a) 障害者が障害を理由として教育制度一般(general education system)から排除されないこと及び障害のある児童が障害を理由として無償のかつ義務的な初等教育から又は中等教育から排除されないこと。

    (b) 障害者が、他の者と平等に、自己の生活する地域社会において、包容され、質が高く、かつ、無償の初等教育の機会及び中等教育の機会を与えられること。

    (c) 個人に必要とされる合理的配慮が提供されること。

    (d) 障害者が、その効果的な教育を容易にするために必要な支援を教育制度一般の下で受けること。

    (e) 学問的及び社会的な発達を最大にする環境において、完全な包容という目標に合致する効果的で個別化された支援措置がとられることを確保すること。

(2)障害者基本法

1 経緯

○昭和45年・・・・・・・・・・・心身障害者対策基本法制定
○平成5年・・・・・・・・・・・・障害者基本法と改称
○平成16年5月28日・・・・障害者基本法の一部を改正する法案が可決成立
 平成16年6月4日・・・・・・公布・施行  

2 教育関係の規定

(教育)

第十四条 国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢、能力及び障害の状態に応じ、十分な教育が受けられるようにするため、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。

2 国及び地方公共団体は、障害者の教育に関する調査及び研究並びに学校施設の整備を促進しなければならない。

3 国及び地方公共団体は、障害のある児童及び生徒と障害のない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによつて、その相互理解を促進しなければならない。

3 施行5年後の見直しについて

 同法附則第3条において、施行後5年を目途として検討し、必要な措置を講ずることとされている。

(3)障害者制度改革の推進体制

【障がい者制度改革推進本部】
(内閣総理大臣を本部長としすべての国務大臣で構成) 

●障害者権利条約の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革を行うため、閣議決定により設置。

●当面5年間を障害者制度改革の集中期間と位置付け、

  • 改革推進に関する総合調整
  • 改革推進の基本的な方針の案の作成及び推進
  • 「障害」の表記の在り方

に関する検討等を行う。

【障がい者制度改革推進会議】
(障害者、障害者の福祉に関する事業に従事する者、学識経験者等により構成)

●障害者に係る制度の改革を始め、障害者施策の推進に関する事項について意見

【部会】
(施策分野別)
●必要に応じ、部会を開催

※新たな推進体制の下での検討事項の例

  • 障害者権利条約の実施状況の監視等を行う機関 (モニタリング機関)
  • 障害を理由とする差別等の禁止に係る制度
  • 教育
  • 雇用
  • 障害福祉サービス

障がい者制度改革推進会議 委員一覧 〔平成22年7月現在〕

障害者団体関係の有識者(14名)

議長

小川 榮一

日本障害フォーラム(JDF)代表

議長代理

藤井 克徳

日本障害者協議会(JD)常務理事/日本障害フォーラム(JDF)幹事会議

 

森 祐司

日本身体障害者団体連合会常務理事・事務局長

 

尾上 浩二

障害者インターナショナル(DPI)日本会議事務局長

 

大久保 常明

全日本手をつなぐ育成会常務理事

 

久松 三二

全日本ろうあ連盟常任理事・事務局長

 

関口 明彦

全国「精神病」者集団運営委員

 

新谷 友良

全日本難聴者・中途失聴者団体連合会常務理事

 

門川 紳一郎

全国盲ろう者協会評議員 (注1)

 

大濱 眞

全国脊髄損傷者連合会副理事長

 

土本 秋夫

ピープルファースト北海道会長

 

竹下 義樹

日本盲人会連合副会長

 

川崎 洋子

全国精神保健福祉会連合会理事長

 

中西 由起子

アジア・ディスアビリティ・インスティテート代表

障害当事者以外の有識者・学識経験者(11名)

 

山崎 公士

神奈川大学教授

 

勝又 幸子

国立社会保障・人口問題研究所情報調査分析部長

 

北野 誠一

おおさか地域生活支援ネットワーク理事長

 

佐藤 久夫

日本社会事業大学教授

 

松井 亮輔

法政大学教授

 

長瀬 修

東京大大学院特任准教授

 

大谷 恭子

弁護士

 

中島 圭子

日本労働組合総連合会(連合)総合政策局長

 

堂本 暁子

前千葉県知事

 

清原 慶子

三鷹市長

 

遠藤 和夫

日本経済団体連合会労働政策本部主幹 (注2)

※  注1 全国盲ろう者協会・門川委員の補佐として、福島 智・東京大学先端科学技術研究センター教授がオブザーバー参加。

※  注2 遠藤和夫氏(経団連)はオブザーバーとして参加。

(4) 障がい者制度改革推進会議 開催状況・検討経緯

1 開催状況・検討経緯

  • 第1回:1月12日(火曜日)[委員顔合わせ・検討課題の確認等]
  • 第2回:2月2日(火曜日)[障害者基本法]
  • 第3回:2月15日(月曜日)[障害者自立支援法・総合福祉法(仮称)]
  • 第4回:3月1日(月曜日)[雇用、差別禁止、虐待防止]
  • 第5回:3月19日(金曜日)[教育、「障害」の表記、政治参加]
  • 第6回:3月30日(火曜日)[司法手続き、障害児、医療]
  • 第7回:4月12日(月曜日)[交通・建物・情報のアクセス、所得保障、障害者施策の予算確保
          • (※総合福祉部会の委員名簿公表:計55名)

  • 第8回:4月19日(月曜日)関係団体ヒアリング(障害者関係12団体)
  • 第9回:4月26日(月曜日)関係省庁・団体ヒアリング(文科省・教育関係団体〔全国特別支援学校長会・全国連合小学校長会・全国特別支援学級設置学校長協会、特別支援教育推進連盟等〕、法務省、総務省)
  • 第10回:5月10日(月曜日)関係府省ヒアリング(厚労、総務、国交省)、「障害」の表記等第11回:5月17日(月曜日)外務省ヒアリング、「第一次意見」骨子案提示第12回:5月24日(月曜日)「第一次意見」(制度改革の基本方向)推進会議案の総合討議第13回:5月31日(月曜日)「第一次意見」案の総合討議
  • 第14回:6月7日(月曜日)「第一次意見」取りまとめ
  • 第15回:6月28日(月曜日)第1次意見結果報告、今後検討すべき課題・スケジュール
  • 6月29日「第一次意見」を踏まえた障がい者制度改革推進本部の方針決定及び閣議決定
  • 第16回:7月12日(月曜日)有識者ヒア:司法アクセス、虐待防止、児童権利条約に係る審査等

2 今後の予定

  • 第17回:7月26日(月曜日)文部科学省・教育関係ヒアリング(調整中)
  • 第18回:8月9日(月曜日)障害者基本法改正に係る討議等:要調整
  • 9月以降:原則月2回(第2・第4月曜)のペースで推進会議開催
  • 並行して、地方フォーラム等での説明、総合福祉部会・差別禁止部会(8~9月頃設置) での検討等実施

    (※以降、22年度末を目途に「第二次意見」取りまとめに向けた討議を継続)

障がい者制度改革推進会議(4月26日)ヒアリング項目に対する文部科学省意見書ポイント○1

【総論】

○ 特別支援教育の推進に関する政府としての基本的考え方は、「インクルーシブ教育システムの構築という障害者権利条約の理念を踏まえ、発達障害を含む障害のある子ども一人ひとりのニーズに応じた一貫した支援を行うために、関係機関等の連携により学校現場における特別支援教育の体制整備を進めるとともに、教員の特別支援教育に関わる専門性の向上等により、特別支援教育の推進を図ります。」(子ども・子育てビジョン〔平成22年1月29日閣議決定〕より)とするもの。

○ 文部科学省としては、インクルーシブ教育システムについて、理念だけではなく人的・物的条件整備とセットでの議論が必要と考える。条件整備が整わない中での理念のみのインクルーシブ教育は、結果として、子どもの「能力を可能な最大限度まで発達させる」との目的(障害者権利条約第24条)を損なう恐れがあることに留意すべきであると考える。

障がい者制度改革推進会議(4月26日)ヒアリング項目に対する文部科学省意見書ポイント○2
人的体制・物的条件整備に係る試算(義務教育段階)

 

・・・障害者権利条約に規定された、子どもの「能力を可能な最大限度まで発達させる」との目的を損なわないようにするため、必要な人的体制・物的条件整備の検討について、以下のとおり二つの想定の下に試算

(想定A)
 居住地域の小・中学校の通常学級への就学を原則とし、保護者が希望する場合のみ特別支援学校に就学するものとする。この場合、小・中学校においてどのような障害の子どもにも対応できるよう条件整備を行う必要があるとの考えの下、必要な条件整備 を仮定して試算。

教員等・・・・・・・2兆1,655億円
施設・設備・・・・9兆9,830億円

(想定B)
 特別支援教育体制の一層の充実を図りながらインクルーシブ教育システムに漸進的に移行するものとする。就学先の学校については、保護者に小・中学校と特別支援学校それぞれの教育と提供可能な合理的配慮について十分な情報提供を行い、保護者の希望を踏まえつつ、義務教育の実施に責任を有する教育委員会が総合的に判断するとの上記の考え方の下、必要な条件整備を仮定して試算。

教員等・・・・・・・・・1,091億円
施設・設備・・・・1兆2,380億円

(注意)
想定・必要な条件整備は省略。試算については今後詳細な検討が必要なもの。

障がい者制度改革推進会議 第一次意見(平成22年6月)
「障害者制度改革の推進のための基本的な方向」(教育関係抜粋)○1

第3 障害者制度改革の基本的方向と今後の進め方

4.個別分野における基本的方向と今後の進め方
 以下の各個別分野については、推進会議の問題認識を踏まえて改革の集中期間内に必要な対応を図るよう、横断的課題の検討過程や次期障害者基本計画の策定時期等も踏まえた改革の工程表を示していくべきであり、事項ごとに関係府省において検討を進め、所要の期間内に結論を得て、必要な措置を講ずるべきである。

(中略)

2)教育
(推進会議の問題認識)
【地域における就学と合理的配慮の確保】
以下を実施すべきである。

  • 障害の有無にかかわらず、すべての子どもは地域の小・中学校に就学し、かつ 通常の学級に在籍することを原則とし、本人・保護者が望む場合のほか、ろう者、難聴者又は盲ろう者にとって最も適切な言語やコミュニケーションの環境を必要とする場合には、特別支援学校に就学し、又は特別支援学級に在籍することができる制度へと改める。
  • 特別支援学校に就学先を決定する場合及び特別支援学級への在籍を決定する場合や、就学先における必要な合理的配慮及び支援の内容を決定するに当たっては、本人・保護者、学校、学校設置者の三者の合意を義務付ける仕組みとする。また、合意が得られない場合には、インクルーシブ教育を推進する専門家及び障害当事者らによって構成される第三者機関による調整を求めることができる仕組みを設ける。
  • 障害者が小・中学校等(とりわけ通常の学級)に就学した場合に、当該学校が必要な合理的配慮として支援を講ずる。当該学校の設置者は、追加的な教職員配置や施設・設備の整備等の条件整備を行うために計画的に必要な措置を講ずる。

障がい者制度改革推進会議 第一次意見(平成22年6月)
「障害者制度改革の推進のための基本的な方向」(教育関係抜粋)○2

(政府に求める今後の取組に関する意見)
○ 障害のある子どもが障害のない子どもと共に教育を受けるという障害者権利条約のインクルーシブ教育システム構築の理念を踏まえ、体制面、財政面も含めた教育制度の在り方について、平成22年度内に障害者基本法の改正にもかかわる制度改革の基本的方向性についての結論を得るべく検討を行う

(推進会議の問題認識)
【学校教育における多様なコミュニケーション手段の保障】
以下を実施すべきである。

  • 手話・点字・要約筆記等による教育、発達障害、知的障害等の子どもの特性に応じた教育を実現するため、手話に通じたろう者を含む教員や点字に通じた視覚障害者を含む教員、手話通訳者、要約筆記者等の確保や、教員の専門性向上に必要な措置を講ずる。
  • 教育現場において、あらゆる障害の特性に応じたコミュニケーション手段を確保するため、教育方法の工夫・改善等必要な措置を講ずる。

(政府に求める今後の取組に関する意見)
○ 手話・点字等による教育、発達障害、知的障害等の子どもの特性に応じた教育を実現するため、手話に通じたろう者を含む教員や点字に通じた視覚障害者を含む教員等の確保や、教員の専門性向上のための具体的方策の検討の在り方について、平成24年内を目途にその基本的方向性についての結論を得る

障がい者制度改革推進会議 第一次意見(平成22年6月)
「障害者制度改革の推進のための基本的な方向」(教育関係抜粋)○3

6)虐待防止
(推進会議の問題認識)
(前略)立法府においては、障害者の虐待防止に係る制度の法制化に向けた検討がなされているが、今後の法整備に当たっては、政府が行う場合も含め、次の方針に沿って検討されるべきである。(中略)

(虐待行為者の範囲)

  • 障害者の生活場面に日常的に直接かかわりをもつ親族を含む介助者、福祉従事者、事業所等の使用者(従業員を含む。)に加えて、外部からの発見が困難な学校や精神科を始めとする病院等における関係者についても範囲に含める

(早期発見・通報義務)

  • 虐待の事実を早期に発見できるようにする観点から、障害者の生活に関連する者等に対し、早期発見を促す仕組みとする。
  • 虐待の発見者に対して、救済機関への通報義務を課すとともに、当該通報者の保護のための措置を講ずる。

(政府に求める今後の取組に関する意見)
○  障害者に対する虐待防止制度の構築に向け、推進会議の意見を踏まえ、速やかに必要な検討を行う。

(参考)

子ども・子育てビジョン
~子どもの笑顔があふれる社会のために~
(平成22年1月29日 閣議決定[抜粋])

(別添1)施策の具体的内容
(8)特に支援が必要な子どもが健やかに育つように
≪障害のある子どもへの支援に取り組む≫
障がい者制度改革推進本部における取組

  • 障がい者制度改革推進会議の議論を踏まえて、障害のある子どもの支援を含む障害者制度の改革を推進します。

特別支援教育の推進

  • インクルーシブ教育システムの構築という障害者権利条約の理念を踏まえ、発達障害を含む障害のある子ども一人一人のニーズに応じた一貫した支援を行うために、関係機関等の連携により学校現場における特別支援教育の体制整備を進めるとともに、教員の特別支援教育に関わる専門性の向上等により、特別支援教育の推進を図ります。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)