資料2‐1 教職調整額の見直しについて(案)

1.現行制度

  • 教員の職務は自発性・創造性に期待する面が大きく、夏休みのように長期の学校休業期間があること等を考慮すると、その勤務の全てにわたって、一般の公務員と同様に、勤務時間の長短によって機械的に評価することは必ずしも適当ではなく、とりわけ時間外勤務手当制度は教員にはなじまない
    ※ 自発性・創造性が求められる教員の職務の例、
    • 授業準備のための資料作成は、どこまでを対象とするか、どこまで深く掘り下げるかなど、教員の自発性・創造性に負うところが大きい。
    • いじめのトラブルを回避するために個別に面談を行う場合など、誰を対象として、どこまで丁寧に面接を行うかは教員の判断に委ねられている。
    • 部活動において各種の大会やコンクールなどでよい成績を収めるために、どのように指導し、どの程度まで指導を行うかは教員の熱意に基づき自発的に判断されている。

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 教員の職務と勤務態様の特殊性を踏まえ、教員については、勤務時間の内外を問わず包括的に評価した処遇として、以下のように規定。

  1. 時間外勤務手当を支給しない。
  2. 時間外勤務手当の代わりに、教職調整額として給料月額の4パーセントを一律に支給。
    ※ 教職調整額は給料相当とされ、期末・勤勉手当や退職手当等の算定の基礎とされている。
  3. 時間外勤務を命じることができるのは超勤4項目(a.生徒の実習、b.学校行事、c.職員会議、d.非常災害、児童生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合)に限定し、教員に過度の負担がかからないよう、適正な勤務条件を確保。

参考

一般地方公務員 公務上必要な場合に時間外勤務命令 時間外勤務手当
公立学校教員 時間外勤務は限定的に命じることが可能(超勤4項目) 全教員に一律の教職調整額
国・私立学校教員 労使協定に基づく時間外勤務命令(非公務員のため) 時間外勤務手当

 ※ 時間外勤務に関する法令上の根拠については別紙参照

2.見直しの背景

(1)教員の勤務実態の変化

教員勤務実態調査の結果

  • 昭和41年度の調査結果と比べて、教員の残業時間の平均が大きく増えている
    → 1ヶ月平均の残業時間 昭和41年:約8時間から平成18年:約35時間
  • 学校運営に関わる業務など児童生徒の指導に関わる業務以外の業務の時間数が大きくなってきている
    → 勤務日1日あたりの会議・打合せ、事務・報告書作成などの学校運営に関わる業務の時間:1時間43分かっこ7月)、1時間31分かっこ9月)、1時間37分かっこ10月)
  • 各教員の勤務時間の差が大きくなってきている
    → 勤務日1日あたりの平均の残業時間が0分の者もいれば、5時間以上の者もいる。

教員意識調査の結果

  • 各教員の仕事の量や質の負担感の差が生じている
    → 「仕事量が多すぎて、今のままでは長く続けられそうにない」との項目について、約36パーセントの教員が「あてはまる」又は「どちらかといえばあてはまる」と答えている一方で、約31パーセントの教員が「あてはまらない」又は「どちらかといえばあてはまらない」と回答しているなど、教員間の仕事量への負担感の差が開いている。

 ⇒ 制度と実態の乖離が進んでいることから、教職調整額の在り方及び一律支給の見直しが必要

(2)期末・勤勉手当や退職手当等の算定基礎とすること

  • 時間外勤務手当の代替措置的な性格を持つにもかかわらず、期末・勤勉手当や退職手当などに自動的に反映されることについて批判がある。
  • 骨太の方針2006において、メリハリを付けた給与体系の結果を退職手当等にも反映させるとされている。

 ⇒ 制度発足時は、期末・勤勉手当や退職手当等の算定基礎とすることを含めて公平となるよう支給率が設定されていたが、すでに実態が大きく変わっていること、また、調整額という手法をとっているため、過度な優遇と批判されやすいことなどから、期末・勤勉手当や退職手当等の算定基礎から外すことについて検討が必要ではないか

3.教員の職務の性格

  1. 教員の職務は自発性・創造性によるところが大きい
  2. 授業(はっきり拘束された時間)以外は、教員の自発性・創造性を活かした職務であり、上司の命令に従って一定時間働くことで一定の成果が出るというわけではない
  3. このため、教員の職務はストップウォッチで計ったような時間計測に基づく評価はなじまない
     上記1~3はこれまでと同様であるため、引き続き、教員の職務や勤務態様の特殊性は踏まえる必要がある。
     他方、
    1. 教員の職務は一律支給の調整額という枠組みでとらえきれなくなっているのではないか、
    2. 職務負荷に着目するなど、もう少し実態にあわせた丁寧な評価が必要ではないか、
    という課題がある。

4.教職調整額の見直し

 上記2のような見直しの背景を踏まえ、まず、期末・勤勉手当や退職手当等の算定基礎から外すため、調整額という形式をやめて手当とすることが必要ではないか。

 その上で、一律支給を見直しメリハリを付けて支給を行うため、以下のような方向で見直しを検討する。

【案の1】支給率にメリハリを付けて支給

勤務時間の内外を通じてそれぞれの教員にかかる職務負荷を評価して支給する新たな手当(教職特別手当(仮称))を創設する。
→ 給料の○パーセント支給を標準とし、職務負荷に応じて支給率を増減。

 ※ 引き続き、教員への時間外勤務命令は超勤4項目に限定。

課題

  • 客観的な評価基準をどう定めるか。
  • 勤務実態調査の結果を踏まえた支給率の見直しが必要。

【案の2】時間外勤務手当を支給

 一般の公務員と同様に、時間外勤務の時間数に応じて時間外勤務手当を支給する。

 ※ 超勤4項目を廃止。一般の公務員と同様に、公務のために臨時の必要がある場合に時間外勤務を命じることができるようにする。
(ただし、超勤4項目を改正し、教員に対して時間外勤務を命じることができる事項を拡大する方法も考えられる。)

課題

  • 教員の自発性・創造性を尊重するこれまでの考え方との整合性。
  • 教員の職務が時間外勤務命令に基づく勤務になじむか。
  • 勤務実態調査の結果を踏まえた予算の確保が必要。

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初等中等教育局財務課