資料5 教員の職務について

1 「職務」としての位置づけ

 「職務」は、「校務」のうち職員に与えられて果たすべき任務・担当する役割である(具体的には、児童生徒の教育のほか、教務、生徒指導又は会計等の事務、あるいは時間外勤務としての非常災害時における業務等がある。)。
 「校務」とは、学校の仕事全体を指すものであり、学校の仕事全体とは、学校がその目的である教育事業を遂行するため必要とされるすべての仕事であって、その具体的な範囲は、1.教育課程に基づく学習指導などの教育活動に関する面、2.学校の施設設備、教材教具に関する面、3.文書作成処理や人事管理事務や会計事務などの学校の内部事務に関する面、4.教育委員会などの行政機関やPTA、社会教育団体など各種団体との連絡調整などの渉外に関する面等がある。
 なお、職務の遂行中又はそれに付随する行為の際の負傷は、公務上の災害として補償が行われる。

2 「職務」として位置付けの是非に関する論点

(1)勤務時間内外の整理

1.勤務時間内の場合

 勤務時間内で、職務として位置づける場合、特段の問題は無い。
 一方、職務として位置づけない業務については、職務専念義務の免除のための措置が必要であり、そうでなければ有給休暇を取得して対応する必要がある(場合によっては、兼職・兼業の承認が必要となる。)。また、公務遂行性が無いため、「公務災害補償」の対象とならず、別途、事故等のための保険が必要となる。

 ※教特法第十七条:「兼職・兼業規定」
 「教育公務員は、教育に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと任命権者(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第三十七条第一項に規定する県費負担教職員については、市町村(特別区を含む。)の教育委員会。第二十三条第二項及び第二十四条第二項において同じ。)において認める場合には、給与を受け、又は受けないで、その職を兼ね、又はその事業若しくは事務に従事することができる。」

2.勤務時間外の場合

 そもそも、教職員は、勤務時間の割振り等により、時間外勤務が生じないようにする必要があり、勤務時間外に業務を命ずる時には、超勤4項目に限定される。

(参考)『超勤4項目』
  1. 教育職員については、正規の勤務時間の割振りを適正に行い、原則として時間外勤務を命じないものとすること。
  2. 教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合は、次に掲げる業務に従事する場合であって臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限るものとすること。
    • イ 校外実習その他生徒の実習に関する業務
    • ロ 修学旅行その他学校の行事に関する業務
    • ハ 職員会議(設置者の定めるところにより学校に置かれるものをいう。)に関する業務
    • ニ 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務

 現行制度上では、超勤4項目以外の勤務時間外の業務は、超勤4項目の変更をしない限り、業務内容の内容にかかわらず、教員の自発的行為として整理せざるをえない。
 このため、勤務時間外で超勤4項目に該当しないような教職員の自発的行為に対しては、公費支給はなじまない。また、公務遂行性が無いことから公務災害補償の対象とならないため、別途、必要に応じて事故等に備えた保険が必要

(参考)『公務災害の対象』

 公務災害の対象となるには、「公務遂行性」と「公務起因性」の2つの要件を満たすことが必要。前者の公務遂行性とは、災害が使用者の支配管理下において発生したものであることであり、直接的でなくても休憩時間等使用者の支配管理下にある場合には公務遂行性があるといえる。後者の公務起因性とは、災害の発生と公務との相当の因果関係があることである。

(2)事故・事件等が生じた場合の責任体制と賠償問題(⇒国賠法との関係)

1.学校の教育活動として位置づける場合

 国家賠償法上、ア:職務に関するもの、イ:故意又は過失、ウ:損害との直接的関連性の3つの要件に該当する場合には、対象となりうる。なお、「公権力の行使」については、判例上「広義」に捉えられており学校教育活動全般が当たると解されている。
 ※国家賠償法第一条
 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

2.学校の教育活動として位置づけない場合

 職務に該当しないため国賠法の対象からは外れるが、民法上の賠償責任が生じる対象となりうる。

(3)処遇の問題

 平日に行なわれるもの(勤務時間内外の別に関らず)であれば給与(教職調整額を含む)が、週休日等に行なわれるものであれば特殊業務手当が支給されている。

(4)勤務時間の弾力化

 平日の勤務時間外に従事させる必要がある場合であれば、超勤4項目の見直し又は1年間の変形労働時間制の検討が必要である(給特法第5条の改正が必要。労基法施行規則上10時間までが限度。)。
 一方、週休日等(=勤務を割振らない日)における職務については、週休日等の振替が必要であり、長期休業期間中への振替の在り方について検討する必要がある(都道府県の条例事項。現在は、以前の国準拠の名残で前4週・後8週の振替期間が通例。)。

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