課程認定大学では、従来から、教員免許状の授与に必要な教員として最小限必要な資質能力(教職課程の個々の科目の履修により修得した専門的な知識・技能を基に、教員としての使命感や責任感、教育的愛情等を持って、学級や教科を担任しつつ、教科指導、生徒指導等の職務を著しい支障が生じることなく実践できる資質能力)について養成してきた。
このうち、専門的な知識・技能については、これまで「学力に関する証明書」(教育職員免許法第7条により規定。実務的には単位修得証明書及び学位取得証明書として取り扱われている)で明示的にその全体を確認している。
一方、教員として最小限必要な資質能力のうち、専門的な知識・技能以外については、これまで基礎資格(学士の学位等)の取得及び教職課程の単位修得等により確認されている部分があるものの、教職指導等を通じて個々人において形成されているとして、明示的には確認されてこなかった部分がある。
このため、今後は、課程認定大学において、教員として最小限必要な資質能力の全体について、教職課程の履修を通じて、確実に身に付けさせるとともに、その資質能力の全体を明示的に確認する方策を講ずる必要がある。具体的には、「大学における教員養成」の原則や、我が国の教員免許制度等との関係を考慮すると、教職課程の中に新たな必修科目を設ける方向で検討することが適当であると考える。
「教職実践演習(仮称)」(1単位)。
教職課程の履修全体を通じて身に付けるべき最小限必要な資質能力を最終的に形成し、その確認を行うための総合実践を行う演習科目。
当該科目には、教員として求められる以下の事項を含むものとする。(別紙参照)
内容の検討に当たっては、最新の教育に関する動向等を踏まえつつ、以下の点に留意する。
上記のような科目の創設とともに、今後は、学生が教職についての理解を深め、将来教職に就くことについて多角的に考察する過程を援助し、動機付けを図るような指導(教職指導)を充実することが重要である。
教職指導の重要性は、教養審第一次答申等でも指摘されてきたが、個々の大学や学生の取組に委ねられている部分が多く、課程認定大学全体としての取組は必ずしも十分ではなかった。このため、教職課程全体を通じた教職指導の実施を、法令上も明確にすることが必要である。
具体的な実施については、各課程認定大学の判断に委ねられるが、教職課程の履修対象者に対して、早い段階から、例えば学校現場や教育関連施設を体験する機会や子どもたちとの触れ合いの機会、現職教員との交流の機会等を提供するなど、課外における活動も含め、体系的・計画的な教職指導の実施を検討することが期待される。また、例えば個々の学生について履修履歴を確認しながら、各学年の修了毎に必要な教職指導を行うなど、柔軟な指導の工夫や、それに応じた体制整備を図ることも考えられる。
以上のような改革を実現する上で、教養審第一次答申等において提言された「教員養成カリキュラム委員会」の設置は大きな意義を有する。同委員会は、今後、教職課程における授業科目間の整合性・連続性の確保等のほか、上記の新設科目や教職指導の企画立案・実施を行う上で中心的な役割が期待されるところであり、課程認定大学における設置と機能の充実・強化を促進する必要がある。
含めることが必要な事項 | 実施に当たっての着眼点(例) |
---|---|
1.教員として求められる使命感や責任感、教育的愛情等に関する事項 |
|
2.教員として求められる社会性や対人関係能力に関する事項 |
|
3.教員として求められる幼児児童生徒理解に関する事項 |
|
4.教員として求められる教科等の指導力に関する事項 |
|
※ 右欄に掲げる着眼点(例)とは、当該科目の実施を通じて、教員として必要な資質能力の全体を確認するためには、どのような点に着目して授業を展開することが考えられるのかを例示として示したものであり、具体的な授業内容や履修の到達目標を示すものではない。
(大学での養成による場合)
普通免許状の取得には,以下の基礎資格と単位修得が必要。
免許状の種類 | 所要資格 | 最低修得単位数 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
基礎資格 | 教科に関する科目 | 教職に関する科目 | 教科又は教職に関する科目 | 特殊教育に関する科目 | その他(注1) | 合計 | ||
小学校教諭 | 専修免許状 | 修士の学位 | 8 | 41 | 34 | 8 | 91 | |
一種免許状 | 学士の学位 | 8 | 41 | 10 | 8 | 67 | ||
二種免許状 | 準学士の称号等 | 4 | 31 | 2 | 8 | 45 | ||
中学校教諭 | 専修免許状 | 修士の学位 | 20 | 31 | 32 | 8 | 91 | |
一種免許状 | 学士の学位 | 20 | 31 | 8 | 8 | 67 | ||
二種免許状 | 準学士の称号等 | 10 | 21 | 4 | 8 | 43 | ||
高等学校教諭 | 専修免許状 | 修士の学位 | 20 | 23 | 40 | 8 | ||
91 | ||||||||
一種免許状 | 学士の学位 | 20 | 23 | 16 | 8 | 67 | ||
盲学校 聾学校 養護学校教諭 |
専修免許状 | 修士の学位及び小・中・高・幼の教諭の免許状 | 47 | 47 | ||||
一種免許状 | 学士の学位及び小・中・高・幼の教諭の免許状 | 23 | 23 | |||||
二種免許状 | 小・中・高・幼の教諭の免許状 | 13 | 13 | |||||
幼稚園教諭 | 専修免許状 | 修士の学位 | 6 | 35 | 34 | 8 | 83 | |
一種免許状 | 学士の学位 | 6 | 35 | 10 | 8 | 59 | ||
二種免許状 | 準学士の称号等 | 4 | 27 | 8 | 39 |
区分 | 細目 |
---|---|
教科に関する科目 右記の科目についてそれぞれ1単位以上合計20単位以上修得 |
|
教職に関する科目 右記の科目について合計31単位以上修得 |
|
教科又は教職に関する科目 上記の教科に関する科目又は教職に関する科目について8単位以上修得 |
|
その他の科目 右記の科目について各2単位以上修得 |
|
介護等体験 | 小学校又は中学校の免許状を取得するためには社会福祉施設等における7日間以上の介護等の体験が必要 |
初等中等教育局教職員課