2.これからの社会と教員に求められる資質能力

(1)これからの社会と国民の求める学校像

  • 変化の激しいこれからの社会において、子どもたちが人生を有意義に送るためには、一人一人が自らの頭で考え、行動していくことのできる自立した個人として成長し、心豊かに、たくましく生き抜いていくことが重要となる。そのような資質を教育を通じて養う必要性が一段と高まっている。
  • これからの社会は、文化・政治・社会・経済を支える人材、情報・知的社会を支える人材によって経済社会の在り方が決定される社会であり、教育の質がいっそう問われることとなる。少子化に伴う人口減少社会において、生産性の高い知識集約型の産業構造に転換し、国際的な競争力を維持していくため、既存知の継承だけでなく未来知を創造していくことのできる高い資質能力を有する人材育成がこれまで以上に必要である。我が国が、今後とも活力を持って競争力を維持するため、また、高い知性の国民が形成する文化国家として発展するためには、そのような国家・社会を担う優れた人材を育成することが重要である。
  • 知・徳・体のバランスの取れた質の高い教育が全国どこでも提供され、安心し、信頼して子どもを託すことができる学校を求める保護者や国民のニーズが高まっている。これからの学校は、保護者や地域住民の意向を十分に反映する、信頼される学校でなければならず、教育を提供する側からの発想だけではなく、教育を受ける側からの発想に基づいた検討が必要とされている。
  • このような社会の進展や国民が求める学校像を展望しつつ、国際的に質の高い教育を実現するためには、教育活動に直接携わる教員に対する揺るぎない信頼を確立し、国際的にも教員の質が高いものとなるようにすることが極めて重要である。

(2)教員に求められる資質能力

  • 教員に求められる資質能力については、平成9年の教育職員養成審議会(以下「教養審」という。)第一次答申等において、以下のように示されている。
    1. いつの時代にも求められる資質能力
       教育者としての使命感、人間の成長・発達についての深い理解、幼児・児童・生徒に対する教育的愛情、教科等に関する専門的知識、広く豊かな教養、これらを基盤とした実践的指導力等
    2. 今後特に求められる資質能力
       地球的視野に立って行動するための資質能力(地球、国家、人間等に関する適切な理解、豊かな人間性、国際社会で必要とされる基本的資質能力)、変化の時代を生きる社会人に求められる資質能力(課題探求能力等に関わるもの、人間関係に関わるもの、社会の変化に適応するための知識及び技術)、教員の職務から必然的に求められる資質能力(幼児・児童・生徒や教育の在り方に関する適切な理解、教職に対する愛着、誇り、一体感、教科指導、生徒指導等のための知識、技能及び態度)
  • また、本年5月の中央教育審議会(以下「中教審」という。)義務教育特別部会の審議経過報告においては、優れた教師の条件について、以下の3つの要素が重要であるとされている。
    1. 教職に対する強い情熱
       教師の仕事に対する使命感や誇り、子どもに対する愛情や責任感など
    2. 教育の専門家としての確かな力量
       子ども理解力、児童・生徒指導力、集団指導の力、学級作りの力、学習指導・授業作りの力、教材解釈の力など
    3. 総合的な人間力
       豊かな人間性や社会性、常識と教養、礼儀作法をはじめ対人関係能力、コミュニケーション能力などの人格的資質、教職員全体と同僚として協力していくこと
  • 義務教育特別部会の審議経過報告は、教員が尊敬され、信頼される存在となるために特に必要な資質能力を、主として幼児児童生徒や保護者など需要サイドの視点から3つの要素にまとめたものであり、教員としての適格性に関わる資質能力に、より重点を置いている。その意味で、この報告は、教養審第一次答申を補完するものであり、両者が全体として、これからの教員に求められる資質能力を示しているものと言える。
  • 教員を取り巻く状況や、これからの社会の進展、国民の学校教育に対する期待等を考慮に入れても、これらの答申等で示された基本的な考え方は、今後とも尊重していくことが適当である。むしろ、変化の激しい時代だからこそ、これらの資質能力を確実に身に付けることが重要である。
  • また、教員に限らず、いかなる専門的職業においても、新たな知識や技術を補完していくことは重要な課題であるが、とりわけ教員は、日々変化する子どもの教育に携わり、子どもの可能性を開く創造的な職業であり、常に研究と修養に努め、専門性の向上を図っていくことが求められている。教員を取り巻く社会状況が変化し、学校教育が抱える課題も複雑・多様化する現在、教員には、不断に最新の専門的知識や指導技術等を身に付けていくことが不可欠であり、「学の精神」がこれまで以上に強く求められているものと考える。

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