3.共通科目(基本科目)部分

 近年の少子化の進展による、1学校、1学年、教科毎の教員数の減少の中で、複数の教員がお互いに指導力を向上させ、教員全体としての指導力の維持・向上を図るためには、学校内のみならず広く地域単位で中核的な役割を担う教員が求められている。
 また、これまでの学級単位における各教科の指導から、グループ指導、少人数指導や習熟度別指導などクラスの枠を超えて多様な学習集団に対応した指導方法の理解が必要となっており、また総合的な学習の時間の実施や選択教科の拡充など、教科の枠を超えた教科指導の理解が必要になっている。このため、従来の教科や学級の枠を超えて、多様な指導形態・指導方法を円滑かつ効果的に実践できる教員が求められている。

 このような教員に対する社会的要請に対応するため、専門職大学院においては、上記1で述べたとおり、高度な専門性を有する教員の養成、特に現職教員については、学校現場における中核的・指導的な教員に必要な資質・能力を育成するため、当該学生がどのようなコース・選択をとる場合においても履修する基本的要素を共通的に定めておく必要がある。

 この、制度的に定める、共通的・基本的内容は、大きく区分すると以下のようになる。

  1. 教科等の実践的な指導方法に関する内容
    (具体的内容例)
    • 教材研究・授業計画
    • 指導方法(授業構成・授業形態の工夫を含む。)
    • 指導と評価 など
  2. 教育課程の編成・実施に関する内容
    (具体的内容例)
    • 学習指導要領と教育課程の編成実施
    • 個に応じた指導の充実
    • 指導と評価の一体化、教育課程の自己点検・自己評価
    • 総合的な学習の時間の全体計画の内容と取扱い(各教科・道徳・特別活動との関連、学年間や学校段階間の指導との関連への配慮を含む。) など
  3. 生徒指導、教育相談に関する内容
    (具体的内容例)
    • 児童生徒理解の内容と方法
    • ガイダンスの機能と教育相談の充実
    • 問題行動等に関する事例研究
    • 学校における生徒指導体制、家庭・地域や関係機関との連携 など
  4. 学級経営、学校経営に関する内容
    (具体的内容例)
    • 学級経営の内容と果たす役割
    • 学級経営と学年経営(学年経営案、学年会、学年行事など)
    • 保護者と連携を図った学級経営
    • 学校組織、公務分掌とその機能
    • 校内研修の意義・形態・方法
    • 開かれた学校づくり(家庭や地域社会との連携、学校間交流の推進、学校運営と学校評議員、情報公開と説明責任) など
    • 学級・学校運営と評価
  • (※)上記学校組織論・経営論などの内容の中で「マネジメント」「リーダーシップ」など(教育分野以外も含めた)一般的内容との関係をどのように整理する必要があるか。(項目として別にするのか、それぞれの内容にこれら視点が含まれるべきものか。)

 また、学校現場における実践力・応用力など教職としての高度な専門性の育成の観点、特に、地域における指導的教員等としては、教員相互、又は地域の保護者や関係機関との人間関係の形成・維持の重要性の観点から、

  1. 対人関係能力の育成に関する内容
    (具体的内容例)
    • 人間関係論
    • コミュニケーション論(対生徒、保護者、同僚、学校外(関係機関、広く社会))
    • 教職倫理・学校倫理
    • 教職員の徳育
    を含める必要がある
  • (※)5について、この場合の人間関係や倫理的内容は、社会人(一般)としての内容か、教師として(特有)の内容か。
  • (※)5について、このような内容を教員に義務付ける趣旨から鑑みて、科目として設定することが適切か、又は特に1 3 4の科目の中で内容として含めることとすることが適当か。
  • (※)1~5を通じて、「具体的内容例」の側から記述することが適切か、「具体的科目例」「具体的学問分野(論)」の側から記述することが適切か。

 これら共通的・基本的内容は、現職教員学生と学部新卒者とが共に履修することが適切な科目、別々に履修することが適切な科目があり得るが、いずれの内容についても履修する必要があることには差異はない。

 これら共通的・基本的内容について、各専門職大学院に共通する基本的要素として、設置基準上明らかにしておく必要がある。

 なお、教育課程の基準における小・中学校教員の別について、小・中学校に関する諸制度全般について義務教育に関する改革を一体的に進めていることを踏まえ、また、小学校における教科専門の深化が求められている一方、中学校においても、小学校と同様きめ細かい生徒理解や指導の改善が求められていることを踏まえ、特に小・中学校の差は制度上設けないこととしている。このため、小・中学校に係る特に必要な内容は、各大学院において各科目郡の中に必要な科目を設けることとする。

 このほか、各専門職大学院の特色や指導目標等により、大学独自の共通・必修科目を設定することはあり得る。
 (具体的内容例)

  • 特別支援教育に関する内容

 なお、これら共通科目(基本科目)の履修に当たっては、コース(分野)別選択内容の基礎となる理論の修得とともに、その理論が単なる理論のための理論ではなく、学校における教員の実践を裏打ちするとともに、様々な事例を構造的・体系的に捉えるためのものとする必要がある。(上記1.参照)

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