資料4 教員免許状の授与の仕組みの見直しについて(補足資料)

  【案1】教員養成を行う大学が適格性を判定 【案2】都道府県教育委員会が適格性を判定
1.具体的な制度設計 【共通】
  • 大学の教職課程において所要単位を修得し、学士等の学位を取得し、教員としての適格性に問題がない者に対して、都道府県教育委員会が免許状を授与する。この際、教員としての適格性の判定は、以下の案1~3のいずれかの方法により、大学が行った結果に基づき、都道府県教育委員会が決定する。
【案1】
  • 教育実習(小・中4単位、高2単位)について、実習先の学校長等の評価に、教員としての適格性に関する項目を加えて評価を行うとともに、大学において、その評価結果を基に、最終的に適格性を確認する。
【案2】
  • 教員としての適格性に関する科目(例:2単位)を新たに設け、当該科目の履修を通じて、適格性を確認する。
【案3】
  • 教職課程の履修全体を通じて身に付けた資質能力を総合的に評価する仕組みを新たに設けて、適格性を確認する。
    (例:教職課程の全単位を修得した者について、各大学が設置する教職課程委員会(仮称)が面接や論文、模擬授業等により教員としての適格性を含む全体的な資質能力を確認する。当該審査に合格した者には教職課程修了認定証(仮称)を交付し、これを免許状の申請の際に提出する。)
  • 大学の教職課程において所要単位を修得し、学士等の学位を取得した者について、都道府県教育委員会は新たな免許状(正規の免許状に至る暫定的な免許状(以下、「暫定免許状」という。))を授与する。
    (暫定免許状は、教職課程の履修を通じて、教員として必要な資質能力を身に付けていることを期待して授与されるものの、授与権者として、適格性を確認できていない免許状である。)
  • 暫定免許状を取得後、一定の勤務経験を積み、当該期間の勤務実績を評価した結果、適格性に問題がないと判定された場合に、都道府県教育委員会は正規の免許状を授与する。
  • 勤務実績の評価については、所属する学校長の評価等を基に、免許状の授与権者である都道府県教育委員会(以下、単に「授与権者」という。)が行う。
2.制度上のメリット 【共通】
  • 基本的に大学の教職課程における所要単位の修得及び学士の学位の取得で免許状が授与されるため、「大学における教員養成」の原則が維持できる。
  • 大学として、教職課程の履修者が、教員としての適格性を有していることを保証することが求められるため、各大学の意識改革及び教員養成の改善充実が期待できる。
  • 更新制の導入により、ペーパーティーチャーや中途退職者で一旦免許状が失効した者が再度教員を目指す場合、申請すれば正規の免許状が授与されることから、多様な人材登用の機会がより確保される。
【案1】
  • 教育実習の内容・方法、指導体制、大学と受入れ校との関係等について、改善・充実が期待できる(一方で、この方式によらない場合でも、教育実習の改善・充実を図ることは重要)。
【案2】
  • 科目の履修及び、それに対する単位付与という形で、他の教職科目と同様の基準及び手続きに基づき、適格性の確認を行うことが可能となる。
【案3】
  • 現行制度では、各科目の単位の積み上げで免許状が授与されるため、教職課程を通じて身に付けた全体的な資質能力を確認できないが、このような仕組みを設けることで、履修者の適格性を含めた教員としての資質能力全体を総合的に確認することが可能となる。
  • 教員としての適格性は、本来、教員の職務を実践していく中で確認できるものであり、一定期間の勤務実績の評価により、適格性を確実に確認することが可能となる。
  • 授与権者の責任において、一定の基準に基づいた適格性の判定が行われることから、資格制度としての公平性、安定性、信頼性の確保が図られる(大学による適格性の判定と比べ、個々の履修者の適格性の判定に差異が生じる可能性が少ない)。
  • 授与権者が適格性の判定を適切に行うことにより、大学における教員養成の改善・充実を促進することが期待できる(一方で、この点については、下記のように、デメリットとなる可能性もある)。
3.制度上の課題 【共通】
  • 免許制度の抜本的な改革とはならず、教員としての適格性を確実に判定していると、社会的に理解されるか(特に【案1】について)。
  • 大学における養成段階の評価のみで、教員としての適格性を適切に確認することが現実に可能か。
  • 一定の基準のもとに判定を行うものの、実際には各大学により、適格性の判定に差異が生じる可能性が高い。
  • 科目の設置や評価の実施など、教員養成を行う大学に対して、新たな負担を課すことになる(特に【案】、【案3】は、負担が大きい)。
  • 更新制を導入する場合、免許状の授与時と更新時とで、実質的に適格性の判定主体が異なることになる(授与時の実質的な判定権者は大学、更新時は授与権者)。
  • 更新制により適格性に問題があり免許状が失効した者についても、一定期間が経過すれば、再授与の申請により、正規の免許状が授与されることとなる(但し、再授与の際の審査を厳格に行うかどうかは別途検討する必要がある)。
【案1】
  • 実習校の学校長等による評価がそのまま大学による適格性の判定になる可能性もあり、実効性を伴うものとなるか。
  • 教育実習の評価のみで、教員としての適格性を含む全体的な資質能力を十分に判定することができるか。
【案2】
  • 現行の教職課程でも、同様の趣旨の科目(教職の意義等に関する科目(2単位))が設けられており、新たな科目を設ける必要性及び現行科目との違いを明確にする必要がある。
  • 特定の科目の履修のみで、適格性を含めた教員としての全体的な資質能力を判断することができるか。
  • 全教職課程の再課程認定が必要となる。
【案3】
  • 各科目の履修とは別に、このような新たな仕組みを設けることで、具体的にどのような資質能力を、どのような方法・基準で評価するのか検討する必要がある。
  • 全教職課程について、適切な仕組みが導入されたかどうか確認する必要がある(再課程認定に準ずる作業が必要となる)。
  • 免許状の授与の要件に、授与権者による適格性の判定が加わることで、「大学における教員養成」の原則の変更につながり、大学側の反対が予想される。
  • 教員養成が大学段階では完結しないことから、大学による教員養成の自主的な改善が期待できない可能性がある。
  • 新たに暫定免許状が創設されることにより、免許制度がより一層複雑になり、教員や授与権者に混乱を招くおそれがある。
  • 教職課程を修了しても、正規の免許状を取得できなくなることから、教員に優れた人材を確保することができるか。
  • 更新制により、免許状が失効した者が再授与の申請をした場合に授与される免許状が暫定免許状となる場合、正規の免許状となるためには、再度、一定の勤務実績が必要となることから、再チャレンジの機会を実質的に狭めることにならないか(この点は制度設計次第で、直ちに正規の免許状を再授与することも可能か)。
  • 暫定免許状の位置づけ(正規の免許状と職務内容に差がないとすれば、別途の免許状を設ける必要性は何か等)を明確にすることができるか。また、暫定免許状を保有する教員に対して、児童生徒や保護者の不安を招く可能性がある。
  • 授与権者や学校長等の事務負担の増加及び複雑化が見込まれる(暫定免許状の授与、勤務実績の評価、適格性の判定、正規の免許状の授与等に係る事務)。また、これに伴う財政負担も見込まれる。

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