3.教員養成・免許制度の現状

  • 我が国の教員養成は、これまで、「大学における教員養成」と「開放制の教員養成」を原則として行われてきた。この原則は、幅広い視野と高度の専門的知識を兼ね備えた人材を広く教育界に求めることを目的としたものであり、これにより、質の高い教員が育成され、我が国の学校教育の普及・充実や、戦後の社会の発展に大きな貢献をしてきた。また、この原則の下、教職課程を置く大学においても、学校現場のニーズに応える教員の養成を目指して、教育内容や方法等に係る様々な改善・工夫が行われてきた。
  • このように、我が国の教員養成がこれまで果たしてきた役割については、適切に評価する必要があるが、その一方で、時代の変化に伴い、社会全体の高学歴化が進み、教員養成を行う大学の数も飛躍的に増加する中で、現在、大学における教員養成や開放制の原則が、必ずしも当初のねらい通りには機能しなくなってきており、例えば、以下のような課題が生じている。
    • 一般大学・学部のみならず教員養成系大学・学部においても、教員養成に対する明確な理念(養成する教員像)が十分確立しておらず、教職課程の履修を通じて、学生に身に付けさせるべき最小限必要な資質能力についての理解が必ずしも十分でないこと
    • 実際の科目の設定に当たり、免許法に定める教科や教職に関する科目の趣旨が十分理解されていなかったり、シラバスの作成も十分でないなど、大学の教職課程の組織編成やカリキュラム編成が、必ずしも系統的に整備されていないこと
    • 教職課程の科目が理論中心であり、学校現場が抱える課題に必ずしも十分対応していないこと。また、指導方法が講義中心で、演習や実験、実習等が十分ではないほか、教職経験を有する者が授業に当たっている例が少ないなど、実践面での指導力の育成が必ずしも十分でないこと
  • 我が国の教員養成が大学の教員養成の機能に期待して行われている以上、各大学は教員養成を自らの主要な任務として強く自覚する必要があり、教員として必要な資質能力を身に付けた学生を送り出すべく、質の高い教育活動を責任を持って行うことは、大学としての当然の責務であると言える。
  • また、教員には、豊かな人間性や社会性、対人関係能力、コミュニケーション能力、常識や教養などの基礎的素養を備えていることが求められるが、変化の激しい社会状況や子どもの多様化等を考慮すると、教員養成を行う大学には、哲学、倫理学、歴史学等の人文科学や、基礎科学等を幅広く履修し、広く豊かな教養を身に付けた人材を育成することが、これまで以上に強く求められている。
  • 一方、教員免許制度についても、これまで学校教育や社会状況の変化等に対応するため、免許状の種類の見直しや教職に関する科目の充実など、逐次、改善・充実が図られてきたところである。
  • しかしながら、諮問理由説明でも指摘されたように、教員免許状が教科等の指導力や適格性等を含めた教員としての全体的な資質能力を保証するものとして必ずしも評価されていないことや、免許状取得者数の飛躍的な増加等に伴い、教員免許状の社会的評価が相対的に低下していること、さらには専修免許状の取得や、免許状の上進制度による上級免許状の取得が、学校現場で必ずしも十分評価されていないこと等、様々な制度的課題が出てきている。
  • これらの課題の中には、これまでも教育職員養成審議会の答申等において指摘されてきたものもあり、教員養成を担当する大学関係者の意識改革と主体的な取組みにより改善できるものについては、引き続き各大学の積極的な取組みを促していく必要があるが、同時に、教員養成・免許制度の改革を図ることにより、こうした動きを一層促進することも検討する必要がある。

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