資料5 改革の具体的方策(議論のたたき台と検討の視点例)

(下線部分は、第3回ワーキンググループにおいて出された意見を踏まえて追加・修正した部分)

 児童生徒や保護者はもとより、広く国民や社会から尊敬と信頼を得られる質の高い教員を養成・確保するため、教員免許制度の改革、とりわけ教員免許更新制の導入に当たっては、教員としての適格性の確保に留意しつつ、教員が教職生活の全体を通じて、専門性の絶えざる向上を図ることができるようにする点に主眼を置いて、例えば、以下のような方策を検討してはどうか。

1.教員免許状の授与の仕組みについて

  • 教員免許状が、教科等の指導力や適格性等を含めた教員としての全体的な資質能力を確実に保証するものとなるようにするためには、現行の免許状の授与の仕組みを見直すことが必要ではないか。
    • 【案1】
      • 教職課程の中で、教員としての適格性を適切に確認するため、例えば教育実習の評価を通じて、あるいは、教員としての基本的な資質や適格性に関する科目を新たに設け、その履修を通じて、適格性を適切に確認することとする。
    • 【案2】
      • 一定の勤務実績により、教員としての適格性を適切に確認した上で、免許状を授与する仕組みに改める。
      • 具体的には、大学で学士等の学位を取得し、教職課程を履修した者に対して授与する新たな免許状(一定の有効期限があり、更新不可)を創設し、その取得後、一定の勤務経験を積み、当該期間の勤務実績を評価した結果、適格性に問題がないと判定された場合に、正規の免許状を授与する。
    • 【案3】
      • 案2に加えて、教職課程の履修状況を適切に確認した上で、免許状を授与する仕組みに改めるため、新たに教職課程の履修者を対象とする試験を実施する。

【案1】について

  • 大学における養成や、現行の免許制度の基本を維持できるという点で意義があるが、教育実習については、まずは教員として必要な資質能力を身に付けた者に単位を付与するなど、適切な評価を行うよう改善を図ることが必要ではないか。また、指導体制の充実や学校側の負担軽減等についても検討する必要があるのではないか。
    また、今後の教員養成を考えた場合、養成段階で適格性を育てていくことは重要であり、この面で、適格性に関する科目を新たに設け、必修とすることは意義があるのではないか。
    他方、教員としての適格性は、教職についた後、教科指導や生徒指導、学級経営等を実践していく中で確認できるものであり、この役割を大学における授業科目の単位認定という仕組みの下で、教職課程に期待することが適当かどうか、また現実的に可能かどうか検討する必要があるのではないか。

【案2】について

  • 一定の勤務実績を評価して、教員としての適格性を判定することは、教科指導や生徒指導、学級経営等の教員の職務全体を通じて、より確実な判定を可能にするという点で、意義があるのではないか。
    他方、大学における養成の原則との関係や、適格性の判定権者、判定基準・方法等について、検討する必要があるのではないか。

【案3】について

  • 教職課程の履修者を対象とする試験の実施は、教員志願者の専門性を確実に保証するとともに、大学の教職課程を学校現場のニーズに対応したものに改善する上で意義があるのではないか。
     他方、大学の教職課程の位置づけ、教員志願者や大学の教員養成教育への影響、教員採用選考試験との関係等、検討すべき課題も多いのではないか。

2.教員免許更新制について

(1)教員免許更新制についての基本的な考え方

1.更新制の基本的な在り方

  • 教員免許更新制については、基本的にどのような制度として考えるかにより、その意義が異なることから、まず、更新制の基本的な在り方を検討することが必要ではないか。
    • 【案1】
      • 免許状の有効期限の満了時に、特段の問題(例えば、教員としての適格性に欠ける、専門性に欠ける、教職の信頼を損なう等)がなければ、免許状が更新されるような制度として、更新制を考える。
    • 【案2】
      • 更新毎に一定の具体的基準(例えば、専門性について一定のレベル向上を求める等)を設け、有効期限の満了時に、その基準(前回更新時より高い基準)に達していなければ、免許状が更新されないような制度として、更新制を考える。
【案1】について
  • 教員として最低限必要な適格性や専門性を確実に保証することができる。また、大方の教員は免許状が更新されることとなるため、排除の性格が弱まり、教員の身分を不安定にしたり、負担感を与えることは避けられるという意義があるのではないか。
    他方、免許状が更新されない者はごく少数と見込まれ、また、専門性向上の面では、更新制導入の政策効果が薄いことから、他の制度(例えば、上進制度や現職研修)と連動させるなど、専門性の向上を促す別途の方策を講ずる必要があるのではないか。
  • 現在、教育公務員については、条件附採用期間や分限制度により、教員としての適格性を判定する仕組みがある中で、新たにこのような更新制を導入することの意義を整理する必要があるのではないか。
    この点については、例えば、次のような点で意義が考えられる。
    • 現行の分限制度は、法律又は条例の定める事由に該当する場合に限り適用されるため、何らかの問題が生じた後に、その適用が検討されることが一般的であるが、更新制を導入した場合、全ての免許状保有者について、一定期間ごとに一律に適格性を判定することが可能となることから、問題の早期発見と拡大防止につながることが期待できる。
    他方、このような更新制を導入する場合、以下のような課題についても検討する必要がある。
    • 適格性に問題があるという基準をどのように設定するのか。また、適格性の判定を公正中立に行うためには、どのような判定方法等とすることが必要か。
    • 分限処分の対象である地方公務員法上の適格性を欠く場合等との関係をどのように整理するのか。
【案2】について
  • 教員としての最低限必要な適格性や専門性の確保はもとより、教職生活を通じて、教員全体のレベルアップを確実に図ることができるという点で、意義があるのではないか。
    他方、免許状が更新されない者も少なくないと見込まれることから、排除の性格が強まり、教員の身分を不安定にしたり、過剰な負担感を与え、教職の魅力を低下させることにつながる等の課題があるのではないか。
  • 現在、上進制度や現職研修など、教職生活を通じて教員としての専門性が向上していくという仕組みがある中で、新たにこのような更新制を導入することの意義を整理する必要があるのではないか。
    この点については、例えば、次のような点で意義が考えられる。
    • 教員自身に常に緊張感を持たせ、日常的に自己研鑽に励むことを促すこととなり、更新を経るにしたがい、教員一人ひとりの専門性はもとより、教員全体の専門性が確実に向上することが期待できる。
    • 研修機会(講習の受講機会)の拡充等により、上進制度を活用した上級免許状の取得が格段に進むとともに、更新制と連動させることにより、現職研修の活性化等の効果が期待できる。
    他方、このような更新制を導入する場合、以下のような課題についても検討する必要がある。
    • 学部卒業者が教員採用者の中心である現状において、大学4年間では教員として十分な資質能力を身に付けることは難しいとの前提に立つことは、児童生徒や保護者はもとより、広く社会に対して不安や不信感を与えないか。
    • 一定期間内に到達することが期待される専門性のレベルについて、具体的な基準を設定することができるか。また、専門性の判定を公正中立に行うためには、どのような判定方法等とすることが必要か。
    • 更新により再授与される免許状が同一免許状である場合、更新回数に応じて、免許状が保証する専門性が異なることとなるが、資格制度として妥当か。

2.更新制の位置づけ

  • 更新制の基本的な在り方を検討するに当たっては、現行の上進制度や現職研修、評価、処遇等、教員に関する他の制度や施策との関係をどのように捉えるのかを、あわせて検討することが必要ではないか。
    • 【案1】
      • 更新制を教員免許制度上の制度として限定的に捉え、上進制度とは制度として連動させるものの、現職研修や評価、処遇等とは、制度として切り離したものとして考える。
    • 【案2】
      • 更新制を上進制度のほか、現職研修や評価、処遇等との関係でも積極的に捉え、例えば、免許状が更新された者に新たな資格を付与したり、処遇を改善するなど、更新制と現職研修や評価、処遇等を制度として完全に連動させたものとして考える。
    • 【案3】
      • 更新制を上進制度のほか、現職研修と制度として部分的に連動させたものとして考える。
【案1】について
  • 教員免許状のみに着目した制度設計が可能となる。また、例えば有効期限内における講習の受講等を上級免許状の取得の際に評価すれば、更新制と上進制度の連動により、上級免許状の取得が促進されることが期待できる(この点は、【案2】、【案3】も同様)。
    他方、更新制と現職研修を制度として完全に切り離した場合、更新制が専門性向上のためのインセンティブとして十分機能するのかどうかという点で課題があるのではないか。
【案2】について
  • 教員の専門性向上のためのインセンティブとしての機能が十分期待できる。
    他方、更新制と評価や処遇等を制度として完全に連動させた場合、教員の負担感を増大させるとともに、評価や処遇における任命権者等の判断や裁量を拘束することになるのではないか。また、更新時の評価に差異を設ける場合、同一の免許状であるにもかかわらず、免許状が保証する専門性が異なることとなるが、資格制度として妥当か。
【案3】について
  • 例えば、現職研修の一部について、上進制度における講習と同様に評価した場合、全体として研修の機会(講習の受講機会)が拡充するとともに、現職研修の活性化の効果も期待できるなど、専門性向上のためのインセンティブとなるのではないか。

(2)教員免許更新制の制度設計

1.更新の要件(更新制の制度設計の基本)

  • 【案1】
    • 更新の要件は、有効期限内における一定以上の勤務実績、適格性の判定及び専門性向上の確認の3つとする。
    • 適格性の判定は、有効期限内における勤務実績を評価することにより行う
    • 専門性向上の確認は、有効期限内における一定の講習の受講状況や自己研鑽の状況を評価することにより行う。
  • 【案2】
    • 更新の要件は、有効期限内における一定以上の勤務実績及び適格性の判定の2つとする(内容は案1と同様)。
    • 更新の要件とはしないものの、免許状保有者は有効期限内に一定の講習の受講に努めなければならないこととする。また、更新時に、有効期限内における一定の講習の受講状況や自己研鑽の状況を通して、専門性向上の確認を行う(その評価に応じて、所定の単位を付与する(後述の4参照))。
  • 【案3】
    • 免許状の種類や更新回数等に応じて、更新の要件に差異を設けることとする(例えば、専修免許状については、専門性向上の確認は行わない等)。

2.免許状の有効期限

  • 【案1】
    • 免許状の有効期限は、全ての免許状について、一律に5~10年程度とする。
  • 【案2】
    • 免許状の有効期限は、免許状の種類(専修免許状、一種免許状等)により差異を設ける(例えば、専修免許状は10年、一種免許状は5年等)。
  • 【案3】
    • 免許状の有効期限は、更新回数により、差異を設ける(例えば、最初の更新時までは5年、2回目以降は10年等)。
  • 教員の資質能力は養成・採用・研修の各段階を通じて向上していくものであり、免許状の有効期限や更新制の在り方を考える場合も、教員のライフステージの区切りを考慮する必要があるのではないか。
  • 現行では、専修、一種、二種免許状の保有者の間で、資質能力に大きな違いはなく、免許状の種類に応じて有効期限に差異を設けることは、教員の間に混乱をもたらすのではないか。

3.適格性や専門性向上等の判定基準・方法

  • 適格性の判定は、免許状保有者に共通に求められる最小限必要な資質能力を有しているかどうかを基準として行うこととしてはどうか。
  • 専門性向上の確認は、有効期限内における一定の講習の受講状況や自己研鑽の状況を基準として行うこととしてはどうか。
  • この場合、適格性の判定及び専門性向上の確認のそれぞれについて、具体的な判定基準・方法を定めておくことが必要ではないか。
  • 一定以上の勤務実績については、少なくとも有効期限の半分以上の期間についての勤務実績が必要ではないか。

4.更新制と上進制度等との関係

  • 教員は教職経験を積むことで専門性が向上するという現行の上進制度の理念を踏襲し、例えば、有効期限内における一定の講習の受講や自己研鑽の状況の評価に応じて所定の単位を付与することとするなど、更新制と連動して上級免許状の取得が促進されるような仕組みを設けることとしてはどうか。
  • この場合、一定の講習としては、大学等が開設する講習のほか、現職研修(初任者研修、10年経験者研修等)についても、免許制度上の評価において専門性向上が期待できるものは対象とすることにより、更新制と現職研修とが相まって、専門性の一層の向上(上級免許状の取得)が促進されることとしてはどうか。
  • 同様に、教員の自己研鑽についても、免許制度上の評価において専門性向上が期待できるものについては、上級免許状の取得につながる単位付与の対象に含めてはどうか。
  • 更新制と上進制度を連動させる場合、一定の講習については、都道府県の教育センター等が開設する講習のほか、大学や民間が開設する講習等も考えられるが、これらが上級免許状を授与する上で、適切かどうかのチェックが必要ではないか。

5.免許状の失効の効果

  • 免許状が失効した場合、引き続き教職にとどまることはできなくなるが、その場合の教員の身分上の取り扱いについては、任命権者(私立学校の場合は雇用主)の判断によるものとして、免許状の失効とは切り離してはどうか

6.免許状の失効後の再授与の在り方

  • 【案1】
    • 免許状が失効した場合、どのような理由であっても、一定の要件(例えば講習の受講等)を満たすことで、免許状の再授与の申請を可能とする。
  • 【案2】
    • 一定以上の勤務実績がないため、免許状が失効した者等については、案1と同様とする。
    • ただし、適格性の判定により失効した者については、一定期間(例えば、3~5年程度)を経過するまでは、再授与の申請は認めないこととする。

7.免許状の種類ごとの更新制の取扱い

  • 【案1】
    • 更新制は、全ての普通免許状について同等に適用する。
    • 特別免許状も更新制の対象とし、有効期限等を見直す。
    • 臨時免許状は、現行と同様の取扱いとする(有効期限3年)。
  • 【案2】
    • 更新制のうち、適格性の判定については、全ての普通免許状について、同等に適用する。
    • 一方、専門性向上の確認は、免許状の種類に応じて差異を設ける(例えば専修免許状については、適用の対象外とする等)。
    • 特別免許状及び臨時免許状の取扱いは案1と同様とする。

8.いわゆるペーパーティーチャーを含む一定以上の勤務実績がない者の取扱い(再掲)

  • 有効期限内に、一定以上の勤務実績がない者については、免許状が失効することとする。
  • ただし、一定の要件(例えば、講習の受講等)を満たすことで、免許状の再授与の申請を可能とする。
  • 一定以上の勤務実績の評価にあたっては、長期間、非常勤講師として勤務した後、正規採用される者が少なくない現状を考慮する必要があるのではないか。

9.複数の免許状を保有する者の取扱い

  • 複数の免許状を保有する者については、更新制の導入により、過重な負担が生じないよう、例えば、適格性の判定は同じ勤務実績を基に行うこととするなど、更新要件等において工夫を講じることとしてはどうか。

10.現に免許状を有する者(特に現職教員)の取扱い

  • 【案1】
    • 更新制の適用の対象外とする。
  • 【案2】
    • 更新制の適用の対象外とするが、現職教員について、一定期間ごとに適格性や専門性向上の確認を行うような仕組みを設けることについて検討する。

3.教員免許状の種類の在り方について

(1)二種免許状の取扱い

  • 質の高い教員を養成・確保するという改革の趣旨及び近年の教員採用の動向等に鑑みると、一部の学校種における二種免許状の在り方について、検討する必要があるのではないか。

(2)専門職大学院の修了者に授与する免許状

  • 教員養成の専門職大学院が設置された場合、修了者に授与する免許状として、新たに専門職免許状(仮称)を創設する必要があるのではないか。この場合、現行の専修免許状との関係について整理(専門職大学院の教育課程の内容を踏まえて整理)することが必要ではないか。

4.教職課程の改善・充実について

  • 大学の教職課程のカリキュラムについて、教員として必要な資質能力を確実に身につけることができるよう、引き続き教育内容・方法等の改善・充実を図っていくことが必要ではないか。
  • 教育実習については、指導体制の充実、事前・事後指導の徹底、学校側の負担軽減、単位付与の際の適切な評価等の点で、改善・充実を図っていくことが必要ではないか。
  • 各大学において、教員養成・免許制度の改革の理念を踏まえた教員養成が行われるようにするため、教職課程の認定に係る審査(審査基準・手続き等)の在り方を見直すことが必要ではないか。
  • 大学の教職課程を評価する新たな仕組み(例えば、外部評価機関の設置)を検討する必要があるか。
  • 教職課程として認定された課程が、認定基準に違反すると認められる等の場合には、例えば勧告・取り消し等の措置を行うことを検討する必要があるか。

5.その他

  • 校長や教頭等について、基本的に専修免許状(又は専門職免許状(仮称))を有することを資格要件とするか。
  • 義務教育の在り方や教育課程の基準全体の見直しに係る検討に対応して、教員養成・免許制度の改革の検討が必要になるのではないか。

お問合せ先

初等中等教育局教職員課

Get ADOBE READER

PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要な場合があります。
Adobe Acrobat Readerは開発元のWebページにて、無償でダウンロード可能です。