参考資料3 10年経験者研修の主な成果と課題

 ※ 10年経験者研修の実施状況について複数の自治体に意見聴取した結果、おおむね以下の様な成果と課題が見られた

1.全体を通じて

成果

  • 10年を経過すると授業のスタイルが確立してくるとともに、忙しさから授業研究等の機会はなくなるが、10年経験者研修が刺激となって資質能力の向上を図ることができる。

課題

  • 10年経験者は学校では若手として教科指導、生徒指導等、最前線で児童生徒に関わっており、学校への負担が大きい。
  • 研修内容によって、教科指導など集中的に行った方が良いものと、研究授業など長期間継続的に行った方が良いものとがある。研修内容によっては期間を限定せず、例えば2~3年の間に行うこととした方が効果的ではないか。

2.事前評価と研修計画の作成

成果

  • 事前評価を行い、課題意識を持たせた上で、研修に臨むという10年経験者研修の特徴により、他の悉皆研修に比べて受講者のモチベーションが高い。
  • 県担当者や校長にとっては、改めて人材育成の観点で教員を評価する機会となるとともに、本人のみならず、学校全体の資質向上への意識啓発となっている。
  • これまで中堅教員が校長と自らの評価について話し合う機会がなかったが10年経験者研修により、そのような機会を確保できた。

課題

  • 事前評価と研修計画が適切なものとなるかは、校長の力量によることが大きく、校長の力量を向上する機会をどのようにして提供するかが課題。

3.能力・適性等に応じた多様な研修メニューの設定

成果

  • 当初は、自主的に行うべきものをなぜ法制化したかという疑問があったが自ら進んでは受けないような研修を受けることで、教員としての視野が広がった。
  • 社会体験研修により、社会の常識を学ぶことができ、また教員に対する社会の目を実感することができた。

課題

  • 高度な研修内容を求める受講者に応えるような研修が十分に用意できない
  • 課題研修や演習を、できるかぎり取り入れているが、個別指導的な研修を実現するには限界がある。

4.研修成果の事後への活用

成果

  • 事前評価と事後評価を比べると教員の資質は伸びている。「忙しかったが効果はあった」との報告も受けている。また本人だけではなく、学校の他の教員にも刺激を与える効果がある。

課題

  • 研修終了後に、受講者に1年間の研修を振り返った報告書を書かせているが、内容は感想文に留まっており、その後の指導にどのように生かすのかは校長及び研修受講者に委ねられている。
     研修終了後、管理職以外の道を選択する教員がキャリアデザインを明確に描けるような実効性ある教職の複線化が課題である。

10年経験者研修のイメージ案(中学校・高等学校)

(一学期)

能力・適性等の評価・研修計画書の作成
  • 校長は、研修教員の教科指導・生徒指導等の状況等を基に評価を行う。
     (教頭、主任、ベテラン教員を活用して、また、指導主事の協力を得つつ実施。)
  • 校長は、各研修教員ごとに、評価案及び個々の能力や適性等に応じた研修計画書案を作成し、教育委員会に提出(作成に当たり、研修教員から自己評価や研修への意見・希望を聴取)
  • 教育委員会は、校長から提出された評価案及び研修計画書案を調整し、決定。1
 ※1 なお、県費負担教職員については、評価及び研修計画書の作成は、都道府県教育委員会ではなく、市町村教育委員会が行う。

(夏季・冬季休業期間中)

 ※2 任命権者において、特に、教育センターや学校内においては実施できないような専門的な内容の研修を受講させることが適切であると判断した場合等には、大学、大学院等の授業参加を研修と位置付けることや、民間組織等が開設する研修コース等を活用することも考えられる。

休業期間中における研修の実施(教育センター等※2・20日程度)
第1日 共通研修
  • 学校評価、情報提供、学校運営等に関する基礎・基本的な研修
第2日

第15日
教科指導等研修
(9日間)
  • 各教科ごとの少人数形式により、模擬授業、教材研究等を通じた研修
    (人数によっては重点的に修得すべき事項ごとのコース分けもあり得る)
  • 個々の研修教員の評価結果を基にして個別に指導助言
  • 指導主事、指導力の優れたベテラン教員を講師とする。
生徒指導等研修
(5日間)
  • 重点的に修得すべき事項ごとにコースに分け、少人数形式により、ケース・ スタディ等を通じた研修
  • 個々の研修教員の評価結果を基にして個別に指導助言
  • 指導主事、指導力の優れたベテラン教員を講師とする。
第16日

第20日
選択研修
(5日間)
(例)
  • 社会体験研修(介護体験研修、企業体験研修等)
  • 他校種との連携に関する研修
  • 情報教育、環境教育、産業教育、道徳教育等に関する研修
  • 学習障害等に関する研修
  • 特殊教育に関する研修
  • カウンセリングに関する研修
  • 学校運営に関する研修(発展的なもの) 等

(二・三学期)

 ※2 任命権者において、特に、教育センターや学校内においては実施できないような専門的な内容の研修を受講させることが適切であると判断した場合等には、大学、大学院等の授業参加を研修と位置付けることや、民間組織等が開設する研修コース等を活用することも考えられる。

課業期間中における研修の実施(主として校内※2・20日程度)
  • 学校内において研究授業、教材研究等を通じた研修を実施
     (研修教員が実際に授業等を実施し、校長、教頭、教務主任等が指導助言を行う)
  • 指導方法や教材に関する特定課題研究
     (特定のテーマについて、各研修教員が研究を行い、年度末に発表、校長等が指導助言を行う)

(年度末)

研修成果の評価

校長は、研修教員の教科指導・生徒指導等の状況等を基に評価を行い、その結果等を教育委員会に 報告
 ↓
 (教育委員会は、評価結果を、研修教員の今後の指導や研修に活用していく

10年経験者研修の実施状況

1.調査時期

 平成16年1月

2.調査対象

 95都道府県市(47都道府県、13政令指定都市、35中核市)

3.調査結果の概要

1.10年経験者研修対象者数:16,141人

校種 人数
小学校 6,861人
中学校 4,711人
高等学校 3,454人
特殊教育諸学校 1,115人
16,141人

2.研修の平均日数

【研修全体の平均日数】
  長期休業期間中 課業期間中
平均日数 15.5日 18.5日
【研修テーマ別の平均日数】
研修テーマ 長期休業期間中 課業期間中
教科等の指導 4.8日 8.2日
生徒指導・カウンセリング 2.9日 3.7日
道徳教育 1.7日 2.7日
学級経営・学校運営 1.6日 2.8日
社会体験 3.9日

3.事前評価及び研修計画、事後評価の充実

 ※ 研修受講者の能力・適性を評価するための基準の作成、研修対象教員の自己評価及び研修計画の作成にあたっての希望の聴取など、研修対象者一人一人の能力・適性等に応じた研修を実施

調査内容 実施数(実施率)
事前評価 校長だけでなく教頭、教務主任等を活用し評価案を作成 70県市(73.7%)
研修対象教員の能力・適性について事前評価を行うための評価基準を作成 95県市(100%)
研修対象教員による自己評価を実施 90県市(94.7%)
研修計画 研修対象教員の研修からの希望を聴取 95県市(100%)
事後評価 研修教員に対する評価を実施 90県市(94.7%)
研修教員に対するアンケート調査を実施 74県市(79.6%)

4.多様な内容の研修の実施

 ※ 大学・民間機関と連携し、多様な研修内容を設定するとともに、指導主事・外部講師等を指導者とするなど、専門的な研修を実施

(大学・民間機関との連携状況)
連携先 実施数(実施率)
大学 35県市(36.8%)
民間機関 23県市(24.2%)
(主な研修内容と指導者(長期休業期間中))
研修内容 実施数(実施率) 指導者
指導主事 外部講師
教科指導 94(98.9%) 84 49
カウンセリング 91(95.8%) 77 58
学級運営・学校経営 55(57.9%) 39 24
社会体験 73(76.8%) 12 22

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初等中等教育局教職員課