小・中学校の設置・運営の在り方等に関する作業部会(第11回) 議事録

1.日時

平成21年3月16日(月曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省3階 1特別会議室

3.議題

  1. 1.学校の適正配置について 2.コミュニティ・スクールについて 3.学校選択制について
  2. その他

4.議事録

【小川主査】
 今、ご予定の中西さんがお見えになりましたので、早速始めていきたいと思います。あと、加藤委員は所用で少し遅れるというご連絡がありました。荒瀬委員は、ご出席なんですけれども、今ちょっと所用で席を外していますので、今日は出席というお返事をいただいている委員、皆さん出席ということになりますので、5分ぐらい遅れましたけれども、始めさせていただきたいと思います。
 第11回小・中学校の設置・運営の在り方等に関する作業部会を開催させていただきたいと思います。お忙しい中、ご出席いただきましてありがとうございました。
 まず最初に、審議の前に、今日の審議にかかわる配付資料の確認を、事務局のほうからお願いします。

【佐藤教育制度改革室長】
 1枚目の議事次第をお目通しくださいませ。そこの4番目に、本日の配付資料を書いてございます。
 資料1から資料5まででございますけれども、資料1が委員の名簿でございます。資料2から4までが、それぞれ本日ご議論いただくに当たっての中心の資料となると思いますけれども、まず、資料2として、適正配置の関係のこれまでの主な意見をまとめたものでございます。資料3といたしまして、コミュニティ・スクールに関して、これまでの主な意見をまとめたものでございます。資料4といたしまして、学校選択制につきまして、これまでの主な意見をまとめたものでございます。資料5でございますが、本日はご欠席でございますけれども、松川委員のほうから、ご意見ということで提出いただいております資料を参考に入れさせていただいてございますので、お目通しくださいませ。
 過不足等ございましたら、事務局のほうまでご連絡ください。よろしくお願い申し上げます。

【小川主査】
 ありがとうございました。資料の不足などがありましたら事務局までお申し出いただければと思います。
 では、これから審議に入りたいと思います。
 作業部会については、これまで10回にわたって議論してきました。ただ、前回の第10回目が確か12月19日ということで、今日までおよそ3か月ぐらい、この作業部会を開催できなかったわけですけれども、これにつきましては、皆さんもご承知のとおり、2月に中央教育審議会の委員の切替えがありまして、総会、初等中等教育分科会とも委員に異動等がありました。そういう第4期から第5期への中教審の委員の改選ということもありまして、この作業部会の審議日程に3か月ほど時間があくことになりましたので、その点についてはおわび申し上げます。
 ただ、初等中等教育分科会の下に設置された、この作業部会の当初の課題や位置づけについては全く変更はありませんので、引き続き審議を進めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 第10回の作業部会においては、9回まで出された意見等々を踏まえて、まず、第1段目の総括的、包括的な議論を進めてきました。今日は、10回の作業部会で出た意見を踏まえて、さらに学校の適正配置、コミュニティ・スクール、学校選択制の3つのテーマ、それぞれについて、この作業部会としてさらに整理を進めていきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
 今日、机上配付されている資料を見てわかるとおり、これまでこの3つのテーマについて、各テーマごとに主要な論点になりそうなポイントをまず整理して、そして同趣旨の意見、これまで10回の作業部会で出された主要な意見をさらに整理して、各検討の課題ごとに整理しているレジュメを準備しております。今日は、資料2、資料3、資料4に則して、議論をさらに深めていっていただければと思います。
 大体、学校の適正配置については、事務局からの説明を含めて約50分程度、コミュニティ・スクール、学校選択制についてはそれぞれ30分ずつ時間をとって議論していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず最初に、学校の適正配置にかかわって、佐藤教育制度改革室長のほうからご説明をいただき、その後、50分ほど意見交換をさせていただきたいと思います。
 では、佐藤さん、よろしくお願いします。

【佐藤教育制度改革室長】
 そうしましたら、私のほうから、資料2、資料3、資料4を中心にご説明をさせていただきたいと存じますけれども、まず、今回の適正配置の問題からご説明させていただきたいと思います。
 まず、本日、資料としてお配りさせていただきましたものでございますけれども、基本的には、前回までにいただいたご意見、それから、前回、國定委員のほうから配付資料として提出いただいたものもございました。こういったものを踏まえまして、主な意見等を修正したものでございます。
 まず、構成といたしましては、1番から5番まで大きな項目を立ててございました。ここについては大きな変更点はございません。ちょっと確認しておきますと、1番目が、現在、適正配置を検討する背景・意義をどのように考えるかという点、2点目が、適正規模・通学に関する現在の標準についてどのように考えるかという点、3点目が、小規模の学校において、教育条件の向上を図る観点から、特に克服が求められる課題は何かという点、4点目といたしまして、小規模校において、適正配置を進めることが困難な状況として、どのような場合が考えられるか。その場合、どのように取り組むべきかといった点、5番目といたしまして、上記のほか、適正配置の検討に当たり積極的に進めるべきことや、留意すべきことは何かといった点、大きく分けて、この5つで整理をしてございました。
 今回、本日お配りさせていただいている資料については、実は4番目と5番目の項目の間に、新たに5番目として1つ柱を立ててございます。中身といたしましては、後ほど詳しくご説明させていただきますが、小・中学校の適正配置に向けた市町村の取組に対して、国や都道府県はどのように関与したらよいかといった点でございます。この点につきましては、前回までのご意見等を踏まえまして、新たに立てたものでございますが、既にご意見の中で出てございましたけれども、最終的には、この適正配置の問題は、市町村の権限と責任によって主体的にご判断いただくということではございますけれども、そうしたご判断を行っていくに当たって、国や都道府県といったものの役割とはどうあるべきかといった点を、改めて1つ項目を立てて整理してございます。
 この点につきましては、既に前回の各小項目等の中では入っていたところでございましたけれども、そういったご意見について、委員の皆様方からも多くご意見を頂戴しましたので、新たな項目として立てたところでございます。例えば具体的には、指導・助言といったものとか支援といった観点からどうかといった点について、ご意見を頂戴したところを新たな項目の中で整理してございます。
 もう一つ、構成面で若干変更点がございますが、これは適正配置のみならずコミュニティ・スクール、それから学校選択制、すべて共通でございますけれども、それぞれの柱立てと具体的な記述の間に、先ほど小川座長のほうから既にお話がございましたけれども、四角で囲んで、その項目に関する要点やポイントという形で要約、整理を試みてみました。こういった点も変更点としてございます。
 それでは、まず適正配置につきまして、そういった全体の構成なども含めて、少しお時間を頂戴してご説明をさせていただければと思います。資料2をご参照くださいませ。
 まず、1つ目の柱立てでございますが、現在、適正配置を検討する背景・意義をどのように考えるかという点でございます。この点につきまして、要点として、新たに四角の枠囲みで6つの柱立て、小さいものを入れてございます。
 ご説明をさせていただきますと、1つ目が、今後、少子化がさらに進むことが予想される中、子どもが「生きる力」を培うことができる学校教育を将来にわたり保障する観点から、学校の適正配置について検討することが必要。
 公立小・中学校の設置主体は市町村であり、適正配置の進め方については、最終的には市町村が教育的な観点から判断をしなければならないものである。本作業部会は、教育的な観点から、適正配置を進める際の考え方、考慮すべき要素、留意点等を提示する。
 適正配置について検討するに当たっては、施設の老朽化や交通環境の整備、市町村合併の進展、地域により人口動態が大きく異なることなど、昭和31年当時とは学校を取り巻く社会状況が変わってきていることも踏まえることが必要。
 学校の統合は、子どもの教育条件をよりよいものにするということを前提に行われるべきであり、統合後の学校における教育環境の整備が十分に図られる必要がある。
 国は、適正配置を進める際の拠り所となる考え方、考慮すべき要素、留意点等を提示し、これを踏まえて市町村に対する支援策を講じることが考えられる。
 ある程度地域の特性に配慮できる立場である都道府県教育委員会が、一定の方針に基づく支援策を講じることにより、市町村の取組を行いやすくするということが考えられる。
 こういった項目を主なものとして要点整理してございます。そして、それ以下の具体的な記述の中で若干加えましたところ等を触れさせていただきますと、2ページに行きまして、下から、その項目3つについて少しご修正をさせていただきます。
 いずれも国や都道府県の役割という点での修正でございますけれども、まず、市町村としては様々な事情の中で、地域のしがらみや財政問題の中で身動きがとれなくなってきているところがある。そのような市町村に対し、都道府県教育委員会が、当該都道府県の事情を踏まえた適正配置の指針等を示したり、それに基づく支援策や指導・助言をしていくことなどが、適正配置を進めようとする市町村の後押しとなるのではないか。
 次でございます。国は、ナショナルミニマムとしての義務教育の質の維持や向上の観点から、適正配置を進める際の拠り所となる考え方、考慮すべき要素、留意点等を提示し、それに基づく支援策等を講じたり、指導・助言等を行うことにより、都道府県や市町村における検討を進めやすくすることが必要である。
 最後でございますが、ある程度地域の特性に配慮できる立場である都道府県教育委員会が、一定の方針に基づく支援策を講じることにより、市町村の取組を行いやすくすることが考えられる。
 前回にいただきましたご意見、それから、國定委員からご提出いただきました配付資料等に基づいて、こういった点を加えてございます。
 次でございます。同じページの下でございますが、大きく分けて2つ目の大きな柱立てで、適正規模・通学に関する現在の標準についてどのように考えるかといったところでございます。
 1つ目が、学校の規模の標準について。
 学校の標準規模を12~18学級とすることは、子どもの多様な活動、社会性の涵養という観点や教員組織の観点、実際の市町村の学校規模についての考え方等から考えて、現在においてもおおむね妥当な標準であると考えられるのではないか。
 設置者が学校の適正配置を考えるに当たっては、標準規模を下回ることによるデメリットを具体的にどのようにして克服していくかという点から検討を進めるべきである。
 こういった点を大きな柱立てとしてございます。具体的な記述内容について、ここの部分は大きな変更点はございませんが、おめくりいただきまして、4ページの通学距離の直前の「〇」の下から3つ目でございますけれども、岡上委員からいただいたご意見などでここを入れてございます。
 都市部、郡部と基準を分けるよりも、基本となる基準を参考にしつつ、市町村ごとに判断できるようにすることが適当ではないか。各設置主体が地域の実情を踏まえて判断するようにという観点からご意見を頂戴した部分をここに入れてございます。
 次でございますが、2番目として、通学距離についてといったところでございます。
 小学校4キロ、中学校6キロを通学距離の上限とすることについて、児童生徒の心身に与える影響という観点からは、現在においても、その負担が明らかに大きいというデータはないが、スクールバスなどの通学手段や通学の安全確保などの観点からは、距離の基準だけでは実態に合わない面があるのではないか。
 地域によっては、学校規模を大きくするために、通学距離・時間が過大にならざるを得ない場合がある。学校規模と通学距離・時間のどちらをより優先すべきということは、一概にはいえない問題である。
 通学については、子どもの発達段階、通学の安全確保、交通手段などを総合的に勘案して、各地域の事情を踏まえて市町村において適切な在り方を検討すべきである。
 その際、例えばバスの場合にはおおむね1時間程度を上限とし、徒歩の場合にはおおむね30分から1時間程度を上限とするなど、距離だけでなく時間を基準に定めることも考えられる。
 こういった点を柱立てとしてございます。細かい記述内容につきましては、こちらも大きな変更点はございません。
 おめくりいただきまして、6ページに参りまして、大きく分けて3番目の柱立てでございます。小規模の学校において、教育条件の向上を図る観点から、特に克服が求められる課題は何かといったところでございます。
 小学校、中学校について、それぞれ整理を試みましたけれども、小学校において、標準規模(12学級)に満たない場合には、マル1、1学年1学級が常態化するため、クラス替えができず人間関係が固定化しやすい、マル2、教員数が限られるため、習熟度別指導、教科担任制等多様な指導方法をとることが困難、マル3、行事の幅が狭くなるなど、教育上のデメリットがある。
 さらに、学級規模が小規模化した場合には、マル4、授業の中で児童から多様な発言が引き出しにくく、授業の組み立てが難しくなる、マル5、男女の偏りが生じやすい、という問題も生じる。
 特に、マル6、1学年1学級を維持できず、複式学級となる場合のデメリットは大きい。
 それから、中学校でございますが、標準規模(12学級)に満たない場合には、マル1、各教科に複数の教員を配置することが困難となりやすく、習熟度別指導等を円滑に行いにくい、マル2、教員数や生徒数が限られるため、部活動の種類が限られるなどのデメリットがある。
 さらに、6学級に満たない場合には、マル3、1学年1学級が常態化するため、クラス替えができず人間関係が固定化しやすい、マル4、免許外担任が発生しやすくなるというデメリットがある。
 さらに、学級規模が小規模化した場合には、前述の小学校の場合と同様、マル5、授業の組み立てが難しくなる、マル6、男女比に偏りが生じやすいという問題が生じる。
 特に、マル7、1学年1学級を維持できず、複式学級となる場合のデメリットは大きい。
 それから、小学校、中学校に共通して、学校規模が小さくなるに従って教職員数が少なくなるため、マル1、教職員一人当たりの校務の負担が重くなり、マル2、授業研究など校内研修の時間が確保できないことがあるなどの問題がある。
 以上のように、標準規模を維持できない場合、学校規模が小さくなるに従って多くのデメリットが生じてくるため、将来的にもこのような状況が不可避である場合には、子どもの教育環境のため、早期に適正配置の検討を行うことが望まれる。
 こういった点を整理してございます。そして、この部分につきましては若干記述内容を加えてございます。7ページに行きまして、上から7つ目の「〇」、それから8つ目の「〇」について、いずれも学級規模の観点からの記述内容を、前回いただきましたご意見、それから小規模校の状態をきめ細かに考える際の観点の一つとして、前回6番目に入れておりました留意事項から、この3番目の特に克服すべき課題のほうに移動してきたものでございます。
 まず1つ目が、少人数指導等を実施している現状を踏まえると、学校の規模を考える際には、1学級当たりの人数についても留意することが必要。それから、学級の人数を引き下げると、学級内で切磋琢磨する環境ができなかったり、学校行事が盛り上がらなかったりする場合がある。活力ある学校をどうつくっていくのかという観点から、一定程度の人数を確保していくことは必要。そういった点を入れてございます。
 それから1つ飛びまして、次は学校行事や校務分掌といった観点から、少し加えてございます。これも、これまで2番目の適正規模の標準に入れてございましたところから、今回、克服すべき課題のほうに入れてございます。
 学校行事の数は大規模校でも小規模校でもおおむね同じである。小規模校で一定の教員数がいない場合、特別活動などにおける役割分担が十分にできず、役割が集中した教員は、教材研究などに十分な時間が割けないことがある。こういった点を新たに加えてございます。
 おめくりいただきまして、8ページに参りまして、大きな柱立ての4番目でございます。小規模校において、適正配置を進めることが困難な状況として、どのような場合が考えられるか。その場合、どのように取り組むべきか。
 まず、1番目といたしまして、適正配置を進めることが困難な状況とその対応として、3つ柱立てを入れてございます。
 まず1つ目でございますが、同一市町村内において、既に小学校もしくは中学校が1つしかない場合には、複数の市町村で学校を共同設置すること、あるいは、ある市町村から他の市町村へ境を越えて通学させるという方法も考えられる。
 特に離島や山間部等の場合、また、豪雪地帯の場合等には、バス通学等であっても、他の学校まで、安定して安全に通学を続けることが困難な場合もある。そのような場合、統合ができない小規模の学校をどのように支援していくかということについても考えることが必要である。
 小・中学校は、地域の精神的支柱とも言うべき側面も持つが、子どもの学習の場としての機能を高めていくという教育論を第一に考えていかなければならない。その際、跡地利用を検討するに当たり、学校に代わる新たな地域コミュニティのための施設として活用することも検討すべきである。
 ということで整理してございます。そして、1つ目の同一市町村内に1校しかない場合ということで、こちらは2つ目の「〇」のところでございますが、各市町村間の調整というものに都道府県がコーディネート役のようなことを果たせないかという点で、前回、國定委員や山重委員等からいただいたご意見を入れてございます。
 通学の関係で難しい場合もあるが、事務委託等により、他の市町村内にある学校へ、市町村の境を越えて通学するということも考えられる。また、複数の市町村で協力して学校を設置するということも考えられるのではないか。都道府県としても、適宜、後押しすることも考えられるのではないか。という形にしてございます。
 次のページに参りまして、9ページでございますが、1つ飛びまして、項目の中に、地理上・気象上、安定して通学可能な範囲に他の学校がない場合ということにしておりましたけれども、ご意見を頂戴している中で、安全面というのも今日的に非常に大きなウエートがあるということから、「安定して安全に通学可能な範囲に他の学校がない場合」ということで、「安全に」という表現を新たに加えてございます。
 それから、そこのページの一番下でございますが、統合に必要な施設、費用等が不足している場合の2つ目の「〇」のところに、これもいただいたご意見の中で、統合に伴う国の補助制度の活用などについてもご言及いただきましたので、既存の校舎を活用した統合の場合には費用面での負担は比較的小さいが、増改築を伴う場合には市町村の財政上の負担が大きい。統合に伴う改築にかかる国の施設整備補助の活用などが必要であるといった点を入れてございます。
 それから、10ページは特段変更点はございませんが、11ページで、跡地利用の中から、1つ目の「〇」でございますけれども、首長部局、市長部局との連携ということから、地域づくりの観点からも、首長部局と教育委員会の連携が重要ではないかといった意見を入れてございます。
 次に、(2)特に取り組むべきこととして、中身についてご説明させていただきますと、2つほど整理をしました。
 まず、学校の設置者である市町村は、適正配置を円滑に進めるため、保護者や地域住民に対し、財政論だけではなく、マル1、今後の子どもの減少見込みなども示しつつ、学校の実情をよく説明し、小規模校が子どもの教育にとってよいのかどうか問題提起すること、マル2、通学の条件整備や跡地利用、地域とのつながりの確保を含め、統合後の学校をどのような学校としていくのか等の具体的な計画を十分に説明することなどが必要である。
 小規模校で機会が不足しがちな、社会性の涵養や、様々な体験を積ませるという観点から、学校同士の交流活動や学校と地域との交流を進めるべきである。複式学級での指導の充実のための工夫も望まれる、という形で整理をしてございます。
 おめくりいただきまして、具体的な記述内容は特に変更はございませんので、新たに加えました、12ページ、5番目の項目について、ご説明をさせていただきます。
 項目といたしましては、小・中学校の適正配置に向けた市町村の取組に対し、国、都道府県はどのように関与したらよいかといった点でございます。
 まず、3つほど柱立てを整理してございます。
 市町村が教育的観点から適正配置を進めようとすることに対し、国や都道府県が、具体的な支援策を講じたり指導・助言を行うべきである。
 学校統合を進めることにより教育投資を減らすという発想ではなく、次世代を担う子どもたちをどのように育てていくかという観点から、財政面も含めて教育条件の向上を進めていくべきである。
 都道府県教育委員会と市町村教育委員会が十分に相談して、新しい学校づくりのために必要な教員の配置等について手厚い配慮が行われるようにすべきである。
 こういった点を柱としておりますけれども、具体的な記述内容については、1つ目が、既に先ほどの総論、1番目の具体的な記述と、再掲という形で、同じ内容になってございます。
 市町村としては様々な事情の中で、地域のしがらみや財政問題の中で身動きがとれなくなってきているところがある。そのような市町村に対し、都道府県教育委員会が、当該都道府県の事情を踏まえた適正配置の指針等を示したり、それに基づく支援策や指導・助言をしていくことなどが、適正配置を進めようとする市町村の後押しとなるのではないかといった点。
 次の、国は、ナショナルミニマムとしての義務教育の質の維持や向上の観点から、適正配置を進める際の拠り所となる考え方、考慮すべき要素、留意点等を提示し、それに基づく支援策を講じたり、指導・助言等を行うことにより、都道府県や市町村における検討を進めやすくすることが必要である。これも再掲となっております。
 それから、当部会として、適正配置を財政論で進めることをどう考えるか。これも前回いただいたご意見などを踏まえて入れてございます。
 適正配置を考えるのは、次世代を担う子どもたちをどのように育てていくかという教育論で考えるべき。一方、子どもたちの教育をよくしていく上で、財政は現実の制約として存在しているのも事実である。
 市町村の小中学校の教員の任命権者は都道府県教育委員会である。統合前と統合後の教員配置について、都道府県教育委員会と市町村教育委員会が連携して、新たな学校づくりを進めることができるような人事上の配慮を行うことが求められる。これは前回、6番目として、その他の留意事項の中に入れたものをここに記述してございます。
 小規模校の教員の中には大規模校での指導に慣れていない場合もあるため、統合後の人事配置に配慮が必要。これも留意事項から移動したものでございます。
 新たな学校づくりを進めるための支援として、統合直後の児童生徒の環境が急激に変わらないよう配慮した手厚い人事配置を行うことが必要。同じくこれも、留意事項からこちらのほうに入れてございます。
 こういった点を新たに記述内容として加えました。
 それから最後でございますが、6番目といたしまして、上記のほか、適正配置の検討に当たり積極的に進めるべきことや、留意すべきことは何かといったところでございます。
 これは2つほど柱立てを入れてございますが、小・中学校それぞれの規模を確保するための「横」の統合だけではなく、義務教育の9年間全体を見通して、小学校と中学校の連携・接続を改善することで、一定の集団規模を確保し、教育効果を高める「縦」の統合を進めることも一つの方策である。
 適正配置の検討に当たり、大規模校をどう調整するかといったことや、特別支援学級、高等学校との連携・接続等についても考慮すべきである。
 という形で整理してございます。従前ここの中に入ってございました、人事の配置、学級規模等につきましては、それぞれこれより前の部分に記述を加えましたので、ここからは割愛してございます。
 最後でございますが、以上が本体でございますけれども、松川委員から本日いただいた資料について、若干ご紹介をさせていただければと思いますので、関係する箇所につきまして、資料5の提出資料をお目通しいただければと思います。
 まず、適正配置の部分につきましては、1ページの「適正配置を推進することについて」という項目のうち、(2)都道府県の支援、特に、松川委員は都道府県の教育長でいらっしゃいますので、都道府県の立場という観点から、こういった記述を幾つか入れていただいてございます。
 ちょっとご紹介をさせていただきますと、県としての指針の策定ということから、市町村の適正配置を促進するために、都道府県が学校の適正配置についての指針を策定する。
 2つ目でございますが、市町村間の連携の後押し、支援や情報提供、これは既に先ほどの記述の中でも触れましたけれども、学校の適正配置について、都道府県が市町村間の連携を図ったり情報提供を行ったりして支援を行う。
 1つ事例として、3つ目の項目でございますが、入れていただいているのは、統合の前後での教職員配置の面での配慮ということで、こちらは、学校統合等の適正配置に伴う教職員配置に配慮するといったことから、従前の加配教員を統合前後において配置をした例につきまして、若干具体的な記述を入れていただいてございます。
 次のページに参りまして、2つ目として、学校の適正規模について記述をいただいてございます。適正規模の基準と通学距離、いずれもそうでございますけれども、こちらにつきましては、国が改めて定めるというよりも、各都道府県で実情に応じて独自に定めたほうが支障がないのではないかといったことで、例えば適正規模につきましては、都道府県が地域の実情に応じて独自に策定する、それから通学距離につきましても、通学距離等の基準につきましては、都道府県が地域の実情に応じて独自に定めるといったことの記述をいただいてございます。
 3つ目でございますが、適正配置が困難な場合の対応として、複式学級の解消というものを最重要にすべきであるということと、それに伴いまして、1つご提案をいただいているのは、市町村への学校の適正配置に関する調査研究事業の創設、こういった事業を新たにやってみてはどうかといったことで、それは市町村への支援方策の一つになるのではないかというようなご提案もいただいてございます。
 走り走りでございますけれども、以上、適正配置の関係で、本日お配りしております資料、それから、松川委員からご提出いただいた意見等につきましてご説明をさせていただきました。よろしくお願い申し上げます。

【小川主査】
 ありがとうございました。残り30分ほどしかないんですけれども、また委員のご意見の動向を見て、必要であれば延ばして、第1の適正配置のテーマを深めていきたいと思います。
 今、10回までの意見を踏まえて、基本的な論点と、それに付随する、さらなる各委員からの意見をご説明いただきました。今のものをベースにして、今後さらに整理すべき論点はないのか。また、書きぶり等も含めて、もう少し議論を、こういう点で深める必要があるんじゃないかということも含めて、各委員からご意見をいただければと思います。
 それと、特に前回ご欠席された方は、できる限り積極的にご発言いただければと思います。どなたからでも、どうぞご自由にご意見をください。
 角田委員。

【角田副主査】
 この適正配置の問題は、設置者が市町村ですから、それが中心になるわけですけれども、その上にある都道府県であるとか、国であるとかといったようなものがかなり大きな影響を持っているんじゃないかと思います。今、ご説明をいただいて、5のところに新しく、国との関わりというふうなことが出てきているわけですけれども、もう少し、現在の状態で国の財政的な支援であるとか、あるいは人的な支援だとか、そういったことがどういうふうに行われているのか、あるいは来年度予算のことも踏まえて、今後、どういうふうに国としては適正配置に向けて支援をしようと考えているのか。ただ指導・助言というだけではなしに、もう少し具体的に、国としての方針を入れていただけるとありがたいなと思うんですが、ご説明いただければありがたいと思います。

【小川主査】
 そういうふうなご質問がありましたけれども、答えられる範囲もいろいろあると思いますけれども、よろしくお願いいたします。

【佐藤教育制度改革室長】
 頂戴した意見を踏まえまして、記述内容について、もう少し我々として検討してみますけれども、現段階での制度の仕掛けのようなものは、当然これはご説明として、いろいろな参考資料のようなものとして考えてみたいと思いますし、あと、今後の話について、どこまで具体的に今の段階で書けるかというのは、またいろいろと検討しなければいけないところがございますので、その辺りについては、我々も内部で検討いたしまして、次回以降、どの程度書けるかにつきまして検討させていただきたいと思います。

【小川主査】
 前川審議官、よろしくお願いします。

【前川審議官】
 学校の統合の支援策として、国が今、持っているものというのは、施設について、施設を統合する場合、一定の基準を満たしている場合には、施設の補助金のかさ上げをするというようなことがございます。
 それから、遠距離通学が生じる場合に、これは僻地教育振興という観点から、遠距離通学の補助をする。スクールバスもございますし、それからスクールバスを使わない場合の遠距離通学、公共交通を使わない場合の経費を市町村が補助する場合に、それに対して国が補助する。
 それから、定数、教職員の配置の問題については、市町村合併に伴う場合にだけ激変緩和的な配慮をしている。これだけですね。ですから、定数上はあまりきちんとした学校統合に対しての支援策と言えるようなものは、今はないと言っていいと思うんですね。
 その辺をどれだけ充実させられるかというあたりがポイントになるかなと思っています。

【小川主査】
 角田委員、今のお答えでよろしいでしょうか。

【角田副主査】
 今の段階では、はい。

【小川主査】
 では、次回以降に、もしも可能であれば、また……。
 では、山重委員、その後、柳沢委員ですね。よろしくお願いします。

【山重委員】
 囲みのところを非常にうまく整理していただいて、納得しているところがたくさんあるので、ぜひこの方向でまとめていただければと感じました。
 2点だけ、小さなコメントなんですけれども、まず、松川委員のコメントの、最後にご紹介いただいた、国が市町村に学校の適正配置にかかわる調査研究事業を委嘱するというお話は、私もとてもいいなと思っているんですが、その一方で、小さな市町村だと適正配置の問題を調査することはなかなか難しいので、むしろ都道府県にも委嘱するという可能性も残していただいて、市町村あるいは都道府県にということでお進めいただけるとありがたいなと感じております。
 それから、2点目なんですけれども、これはちょっと大きな話なんですが、資料の6ページあたりで、学校規模に関して、これはもう既に議論があったことですけれども、標準規模を、人数ではなくてクラスで、例えば12学級ということで定めると、どうしても1学級の人数がかなめになってくるということだと思うんですね。例えば1学年35、6人だと、今までだと1クラスだと思うんですけれども、これを12学級にするためにはどうしたらいいかというと、30人にすれば自然に2クラスになるという状況になるので、12学級を確保するためには、学級のクラスの人数を減らせばいいじゃないかという話になるんだと思うんですね。
 そういう意味では、クラスの規模をどうするかということが、実は、学級の規模をどうするかということが非常に大きな問題になるんだと思っています。その点に関して、ここでの記述が、囲みの中の「小学校において、」のところでは、2つ目ですけれども、さらに、学級規模が小規模化した場合には、マル4、マル5ということで、2つのデメリットが紹介されているんですが、個人的には、学級規模はもう少し小さいほうがいいと思っていて、逆に言うと、このマル4とかマル5に関して、あまり説得されないところが多いなと思っております。
 具体的には、学級の人数が多いと、むしろ意見が出にくい。多様な意見が子どもたちから出てこないという可能性もあると思うんですね。もう少し小さい規模であると、先生がいろいろな意見を引き出せるというような関係もあると思いますし、それから、男女の偏りの問題もあるのかもしれませんけれども、これがそんなに大事な問題かどうかというのは、個人的にもよくわからないと思っています。
 特にこの点に関して、理由は幾つかあり得るんですけれども、具体的に、今後、40人というサイズを小さくしていくということは、12学級を確保する上で重要になってくると思うんですが、この点についてはどのように考えておられるか、少しお話を伺えればと思っております。

【小川主査】
 山重委員、今のお伺いというのは、文科省のほうでよろしいですか。

【山重委員】
 とりあえず、お伺いできれば。

【小川主査】
 では、前川審議官、よろしいですか。

【前川審議官】
 ご承知のとおり、今の標準法は40人学級でできているわけですけれども、第7次改善計画は、40人学級を前提にしながら、教科によっては学習集団を少人数化するという考え方で、少人数指導の推進ということで定数をつけてきたという経緯がございますけれども、一方で、都道府県単位あるいは市町村単位で、40人を下回る学級編制をしたいという考え方が非常に強くなってまいりまして、平成13年に標準法の改正をしたときに、特に必要がある場合には40人を下回る学級編制も認めるという規定を設けたんですけれども、現実はそれを超えて少人数学級が一般化してきているという状態が、地方においてはございます。東京都を除く46道府県では、何らかの形で、特に小学校の低学年を中心に少人数学級の基準を設けているというところが増えていますし、市町村レベルで少人数学級をやっているところもある。
 これに対して、国としては、少人数指導のために、つまり習熟度別に学習集団を小さくするために使うことが想定されている定数を、少人数学級のために振り向けてもいいという弾力化を既にやっていますので、国の加配も使った形で、少人数学級が現実に行われているということは事実なんですね。これをこの後どうするかというのはまだわかりません。
 ただ現実に、標準法上は40人学級だけれども、30人学級なり35人学級という少人数学級がかなり広がってきているという実態があることは間違いなくて、どこかの時点で、それを国のレベルの仕組みとして引き上げていかなければいけないんじゃないかなという気持ちは持っていますけれども、まだこれは何とも言えないところでございます。

【小川主査】
 どうぞ、何かあれば。

【山重委員】
 最後に。多分、この作業部会でも、12学級ということを確保するために少人数クラスにする、学級規模を小さくすることが必要であるということが声として出てくるような気がするので、それにどう答えるかということも検討していく必要があるのかなと思いました。

【小川主査】
 非常に悩ましいんですけれども、非常に重要な指摘だと思いますので、検討させていただきたいと思います。
 どうぞ。

【柳澤委員】
 何回か欠席しておりましたので、まだ議論についていけていないところがあるんですけれども、とりあえず新しい論点というところではなくて、整理という意味で、1点だけお話しさせていただきたいと思います。
 12ページの5のところでございますけれども、「〇」の中に、ちょっと層の異なる2つの質のものが入っているのかなと思いました。それを分けたのも一つの論点の整理になるのかなと思います。例えば1番目のほう、最初の「○」でいいますと、これはある意味で適正配置に向かっていくのかどうなのかという、その前の段階、最初の検討の段階だと思うんですけれども、最後のほうの論点になりますと、適正配置をある程度決めた後の支援の仕方というお話になるのかなと思うんですが、12ページの一番下の論点あたりは、統合後に云々という、支援の中でもちょっと異なる2層あるのかなと思いましたので、そのあたりを整理して、2つのグループに分けるみたいなこともわかりやすくなるのかなと思います。
 とりあえず以上です。

【小川主査】
 わかりました。ほかにどうでしょうか。
 葉養さん、どうぞ。

【葉養国立教育政策研究所部長】
 2つお願いしたいと思うんですが、1つは、言葉の整理の問題なんですけれども、小規模校という概念があるんですけれども、実際に自治体で適正配置問題をやると、小規模校という概念の定義が非常に問題になるんですね。私も今、ちょっと関与しているところがあって、ですから、もう少し言葉を整理したほうが混乱が生じないのではないかという、これは意見です。
 それからもう一つ、12ページのところに財政面の記述があるんですけれども、「財政面も含めて教育条件の向上を進めていくべきである」と、つまり財政面だけで考えるべきじゃないとあるんですけれども、ただ、アメリカの統合関係の文献を今かなり読んでいるんですけれども、財政効率性が統合によって担保されるというのは本当なのかという議論をしている論文って、相当あるんですね。
 つまり経済学の、山重先生が専門なんですけれども、ソーシャルコストの問題とか、直接費用だけじゃなく間接費用とか、副次的な費用までカウントをしていく論文というのがアメリカなんかはあって、ですから、何となく統合すれば財政効率が高いというふうに思いがちなんだけれども、それ自体が本当にそうなのかという辺りのこともあるので、もちろん学校の建て替えとか、あるいは教職員数が、統合すれば3分の1減るとか4分の1減るという、だから教職員給与の面で削減できることはだれが考えてもそうなんだけれども、だから、財政効率性が統合すれば直線的に高まるということ自体も、少し検討しながら臨むという、つまり社会的コストの面を少し記述として入れておいたほうがいいんじゃないかなという、これも意見です。

【小川主査】
 わかりました。ほかにどうでしょうか。
 加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】
 大変よく思い出しながら整理された文章を見ているんですけれども、義務教育の質の向上というくくりで表現されていますけれども、もう少し踏み込んで言えば、これは学力の評価をもう少し踏み込まなければ、例えば統廃合の手法が見当たらないような地方の非常に小さいようなケースのお子さんであっても、日本の中の全体の自分たちの学力の立ち位置がどの程度なのかというのがわからないと、なかなか難しいものもあるんじゃないのかなと思うんです。
 統廃合の手法が見当たらない、時間がどんどん過ぎていく、その中で育っていく自分たちの学力の評価はいかがなものなんでしょうかというものをもう少し踏み込まないと、全国学力調査の公表については、あれだけ日本中で沸騰しましたけれども、それもやはり、公立の学校でありながらあまりにも置かれた立場に差があり過ぎると、そういうのが統廃合の適正な規模の配置ですとか、そういうものの改革に保護者なり地域が熱心だということだと思うので、そこをもう少し踏み込めればなというふうな感想を持っています。

【小川主査】
 ほかにどうでしょうか。よろしいですか。
 池田委員、どうぞ。

【池田委員】
 今の加藤さんと同じような考え方を持っているんですけれども、ある面では、教育的配慮という部分で考えてみると、さまざまな、通学だとか、外的な諸条件というのがすごく整うようにまとめられてきていると思うんですけれども、その中において、教育課程の実施状況等にかかわってのものというのは、意外に表現として出ていないというような部分があるかなと思っています。
 結局、国としてどういうふうに取り組んでいくのかということなんですけれども、公教育というものを進めるに当たって、地方分権と国の役割の分担の問題というのは、かなり大きい問題があるんですけれども、それが、学力調査にしてもそうですけれども、すべての面において格差が生じている部分も見られる。例えば外国語学習の活動についても、内容的な面で、地方自治体の財政局の違いによって、かなりの部分が、差が出てきているというようなことがあったりしていますので、どこの範囲までを適正規模の、基準性を示すにしても、どの範囲の部分についてはこういう方向性がいいですよというようなことをするのか。しないと、どうも地方分権ということでいってしまうと、どこまでも基準性があいまいになっていくという部分があったりして、非常に取り組みにくい状況が生まれてくるんじゃないのかなということがあるんですね。
 ですから、あまりにも地方自治体の持っている特性に応じて考えてくださいよというようなことだけでは、公教育としての役割というのは十分果たせないんじゃないかなという危惧を持っているので、そのあたりの何かが少し入ってくれるとありがたいかなと思います。以上です。

【小川主査】
 わかりました。
 西川委員、どうぞ。

【西川委員】
 先ほどの葉養先生のご発言とその後を絡めまして、2点意見を申し上げます。
 私自身も、財政論の面からも考える必要があるのではないかという発言をしましたが、その趣旨は、まさに統廃合を進めることによって財政的なメリット、余裕が生まれるという観点であれば、そのようなデータも出せる。また、ほとんど財政的には変わらないんだという観点であれば、そのようなデータも出せる。それが私のこれまでの経験でございます。最も客観的なデータであるべき財政的な指標は、どういう方向で取り組むかによってデータも出せるということが現実なので、ソーシャルファクターも入れていけば、おそらく統廃合してもあまり変わらないという意見が出るでしょうし、単純に市費で雇っている職員が要らなくなるんだから、その分、財政的に余裕が出るという見解が出るし、要するにもし示すのであれば、その場合の学校の財政というのは、管理運営費でこういう基準で、人件費はこういう基準でという基準を示すことが大事で、それがなければ、財政論はどちらでも使われているということを申し上げたのです。
 2点目は、本当に丁寧に書かれているこの文章なんですが、本当に申しわけない、僕は、12ページの5番目以外はあまり斬新な観点はなかったのではないかと思っています。これまでいろいろな場所で、皆さん学校統廃合の委員会にかかわっておられますが、その中ですべてクリアになっていることばかりだったと僕は思っています。
 ただ、5番目で、都道府県教育委員会が市町村と連携しながら、後押しをしたりいろいろな支援をするということは非常に新しい視点だと思っていますが、例えば13ページに、「手厚い人事配置を行うことが必要」と書いていますが、これはどういう意味なのか。要するに定数法を超えてやってもいいんだと。Aという小学校が10人で1学級、Bという小学校が10人で1学級、統合すれば20人1クラスできる。教員1人浮くじゃないかと。その都道府県は1名採用を減らせるじゃないかという議論をどうやって超えるかということですね。
 この「手厚い人事配置」というのはどういうイメージなのか、ここで共通理解をさせていただきたいんですが、僕はちょっと意味がつかめないんです。この「手厚い人事配置」というのはどういうことなんでしょうか。定数法にこだわらなくていいということなんでしょうか。質問になっていますが、2点お伺いします。

【小川主査】
 そのこと自体も、この作業部会でいろいろな意見を出していただくことかと思いますけれども、今の質問は……。

【西川委員】
 皆様にも、もし共通理解があれば、ここはどう共通理解すればいいのかということです、文章になっているわけですから。

【小川主査】
 その辺も含めて、皆さんのご意見をいただければと思います。

【関財務課長】
 混乱しないように。内容についてどういうイメージを持つかはここでご議論いただければと思いますけれども、基本的には、今、定数法というお話がございましたが、義務標準法で定めておりますのは、都道府県の教職員の総数についての標準でございますので、具体的に学校にどのように配置をするか、これは都道府県の判断でございます。具体的には配当基準などを定めて、その中で、市町村教育委員会ともやりとりをしながら具体の配置をしていく。ですから、県によっては、今の制度の中でも、統合後の学校について、全体の定数の中でやりくりをする中で、配置をしている場合もございます。これは定数のほうについてです。今の制度についてお話をしております。
 それから、人事配置という意味では、定数以外にも具体の人員の、どういった人を配置していくかというところでも、人事上の問題ということもあるのではないかと思います。

【小川主査】
 髙岡委員、どうぞ。

【髙岡委員】
 今の西川委員から提起された問題にちゃんとつながっているかどうか、あまりよくわかっていないのかもしれませんが、私は、松川委員から出された今日の提案書、意見提出というのが、非常に議論を先へ進めるきっかけになるんじゃないかなというふうに読ませていただいたんです。そのことが今の議論とのかかわりで、まさに、例えば国が標準法を超えて何ができるかということについて、何かの指針を出すというようなこと、これはなかなか難しいんじゃないかという印象があります。それは、財政的裏づけ、つまり標準法を裏打ちしている、いわば教職員定数に対する財政の問題、このことを全部整理した上で、やるとかやらないとかという話は、議論が先にあって予算要求でしょうし、予算がつかないと議論が先へ進まないという関係になっているんじゃないかと思うんですね。
 そういう意味で、事態を打開する議論としては、松川委員から提出されたご意見は、やはり都道府県を預かっておられる方の非常な現実感のあるご意見だというふうに読ませていただいたんです。先ほどのご説明もそういうふうになって、つまり、ここらで具体的に学校の運営にかかわっている市町村と国の標準法の間に、県がしっかり入っていこうじゃないかという提案じゃないかと思うんですね。しかも、その先に複式学級というものを、例えば思い切ってこれを解消する。これは法律改正ももちろん要るんだと思うんですが、そのようなご提案になっています。そういうことを含めて、この作業部会が何か1つでも、県と市町村の関係、ここに方向を見せられるような提案ができるといいなと、何か光明が見えてきたような気がします。
 それから、私なりに、松川委員のお話とは別に、前々回でしたか、角田委員からご提案があったというか、考え方として、もうちょっと小・中学校、6年、3年というふうに考えて、小学校だけ統合を横でやるとか何とかという話よりも、もうちょっと弾力的に学校というものを運営できないかということが常々気になっておりました。
 そこで、例えば小学校の中学年ぐらいまでは、小さい学校でも維持していく、これは角田先生、確かそのようにおっしゃっていたので、私、非常に印象に残っていたんですが、分校の形ででも小さい学校を残しながら、あるところから統合していくという、まさに縦の統合を、市町村が、アイデアが出せるような指導を県がやる。あるいはそこに国がバックアップをするということが見えてくると、本当に小さい学校を抱えている都道府県や市町村、あるいはそこに住んでいる子どもや親が、学校というものをもう一回、自分たちで新しい組織づくりができるんだ、自分のところの子どもが、あるいはこの地域の子どもがこういう育ち方ができるんだという、何か方向が見えてくるような気がしまして、長くなりましたけれども、松川委員のご提案の本旨が大事だと思うし、さらに加えて、市町村が提案する内容として、考える内容として、そういうこともあるんじゃないかと思いました。

【小川主査】
 ありがとうございました。
 大嶺委員、どうぞ。

【大嶺委員】
 学校現場からの意見ということでお願いいたします。
 適正配置については、さまざまな条件整備、主に財政面を整えていかなければいけない、これは当然だなと思うんですけれども、教育現場としては、本当に1ページの1番の一番最初の「●」、やっぱり「生きる力」、これに尽きるだろうなと。「生きる力」を子どもたちにつけていくためには、一体どの程度の規模の学校が適正なんだろうかなと。ここではないかなと思っております。
 やはりこれからの時代を担っていく子どもたちを育成していくために、学校というのが一体どういう役割を果たしていかなければいけないんだろうかといったときに、大きく2つあるかなと思います。
 まず1点目は、当然ですけれども、学力の部分で、基礎基本というのを本当にしっかり、その学年で身につけるべきことをしっかりと身につけさせていくという、この基礎基本の部分、それからもう一つは、人としていかに生きるべきかといった部分で、人と人とのかかわり方、人間関係を形成していくためにどういう力というものをつけていったらいいのか、あるいは自分自身が将来どんなふうな人間として生きていきたいのか、将来を設計していく力とか、そういう様々な力をつけられるのは義務教育の部分だろうなと思っています。
 その基礎基本を身につけないまんまと言うと失礼ですけれども、不十分なまんま、その先に進んでいったときに、果たして別の集団、例えば大学とか社会において、人と人とのかかわりはこうなんだよということを周りの人たちが果たして教えてくれるだろうか。これは教えてくれないですね。社会に出ていったときには、あの人は人と接するときにこういう言葉遣いをするのか、だめだな、それで終わってしまうわけですよ。やっぱりそういう基礎的なことをしっかり身につけていける場というのは義務教育の場だろうなと思います。
 それを考えていったときに、私は、ここに書かれているような標準の学級数は、少なくともきちんと確保していって、子どもたちがお互いにぶつかり合ったり、あつれきを生じていく中で、人と人とはどうあったらいいのかなと考えられるような条件を、学校できっちりとつけさせていくということが大事ではないかなと考えます。以上です。

【小川主査】
 ありがとうございました。残りも、時間がないんですけれども、あとご意見のある方はどなたでしょうか。
 壷内委員と、ほかにどうですか。よろしいですか。
 では、壷内委員、どうぞ。

【壷内委員】
 大変よくご意見等がまとめられていると思います。私が読んでいて、小規模校、大規模校、適正配置ということで、子どもたちの目線を非常に大切にしたいなというのが私の意見なんですね。今お話がいろいろ出てまいりましたけれども、やはり学習面と生活面、じゃ、小規模校、適正配置を考える、どのように考えているか、あるいは大規模校で適正配置、今、12学級と仮に出たとしまして、先ほど学力問題も出てまいりました。それから横の問題も出てまいりましたね。それから、生活面では一体どうなんだろうか。規範意識の低下とか、いろいろあるわけですね。自己中心主義とかいろいろなことがあるんですが、そういう子どもたちの目線、学習面、生活面についてどうであろうかという観点もまた、ぜひまとめが必要なのかなと考えております。
 説得力というのか、そういう面から、統廃合は、現実に学校で説明会を開いたときにいろいろな問題が出てきます。地域の問題は当然あるんですが、そういう面からの必要と、それから、先ほど人事配置云々と出てまいりましたけれども、やはり適正規模となりますと、複数教員が当然これから必要ですが、一人教科って、今でも結構いるんですね、実際のところ。そうすると、やっぱり研修を深める機会というのは少ないです。やっぱり最低、教員が3人、三人寄れば文殊の知恵じゃありませんけれども、少なくとも2人以上といいますか、その配置をぜひこれから考えていかないと、教育的配慮に基づいた適正配置はなかなか難しいだろうと考えておりますので、ぜひご検討願えればと思います。

【小川主査】
 最後、西川委員ということで。

【西川委員】
 私の理解が本当についていけなくて申しわけありません、くどくなりますが、12ページ、13ページの記述の中で、「人事上の配慮」という言葉があります。先ほど手厚い人事配置のことで質問しましたが、それは数の問題だけではないということもありましたが、手厚い人事配置ということはやっぱり数だと思います。その上の人事上の配慮ということは、例えば松川委員の、これは私案ですからいいですが、「優秀な教員」という言葉もありますが、そういう力のある教員を配置するというのは人事上の配慮かもしれませんが、手厚い人事配置といえば、やっぱり数を増やすというふうに理解します。
 先ほど関課長のほうからご説明がありましたけれども、我々の理解では、やっぱり教員は学級数の数において配置されるという理解をしております。そうしますと、単級の学校を2つずつ統合しても、結局単級クラスしかできなかった場合、我々は、先生は減るという印象を持っております。それを、積極的に手厚い人事配置を行うことが必要ということは、もっと先生をたくさん入れていっていいという理解なのかどうかということです。それが市町村の中で、県教育委員会からの配慮でできるのかということです。

【関財務課長】
 できるのか、できないのかということでいいますと、先ほども申し上げましたように、標準法で定めておりますのは、都道府県の教職員の総数についてのものでございますので、その総数の中で、具体的に、これは標準を定めているわけですから、実際には都道府県で、条例で定数を定めております。その定数を具体的にどう市町村に配分するか、配当していくかという中で、県によっては、その中で統合後の学校について急激な変化に対応するということで、一部加配をしたりというような形で対応しているところもございまして、制度の上で申し上げますと、今の制度のもとでも、できる、できないという話でいきますと、それは都道府県のご判断ということになります。

【小川主査】
 義務標準法の問題については、やっぱり統廃合にかかわる国や都道府県の果たすべき支援、援助の中に大きなテーマとして入ってきますので、おそらくもう少し踏み込んで書くことも考えてもいいのかもしれません。それは、今日と次回の審議でもう少しもみながら、その辺のところを整理していきたいと思いますけれども、今の問題にかかわってでしょうか、池田委員。

【池田委員】
 ここの手厚い人事配置という論議が出てきたのは、おそらく和歌山県のご発表をベースにして出てきたと思います。それで和歌山県のときに、学校を統合していくステップの中で、人的な環境があまりにも変わってしまっては、子どもたちに対する教育的配慮というものが不十分ではないかというようなことで、その部分について、人的な配置、つまりこれまでA校とB校が統合するのであれば、A校の先生も何人か残し、B校の先生も何人か残して新たな学校をつくっていくというような形で、子どもたちとの接点というものを非常に大事にした人事配置を考えていく。その一つの方向として、言葉として「手厚い」というものが出てきたのではなかったかなというふうに私は認識しているんです。

【小川主査】
 よろしいでしょうか。当初予定していたよりも時間をオーバーしてしまいましたけれども、ほかにコミュニティ・スクールと学校選択の議論もありますので、適正配置の今日の意見交換はこの程度にさせてください。
 今日は三、四十分の意見交換でしたけれども、統廃合にかかわるコストという問題をどうとらえるかとか、学校の適正規模と学級規模との関係、これは義務標準法とも絡めて議論をもう少し整理する必要があるんじゃないかとか、あと、最後いろいろ出ました、国や都道府県の市区町村への支援の中の一つとして、人事、定数というのは非常に大きな問題ですので、これも、今日の話の内容を伺うと、その辺はもう少し整理し、必要に応じて少し踏み込んだ問題整理も必要なのかなということを感じました。
 今日の意見交換を踏まえて、次回、可能なところでそれは整理して、また皆さんの議論に付したいと思います。そういうことで、適正配置の件はこれで済まさせていただきます。よろしいでしょうか。
 次に、コミュニティ・スクールの議論に入っていきたいと思います。よろしくお願いします。

【佐藤教育制度改革室長】
 それでは、お時間の関係もございますので、簡単にご説明をさせていただきます。
 資料3をお目通しいただければと思いますけれども、コミュニティ・スクールの関係は、これは前回いただいたご意見などを踏まえたもので、大きな変更点はございません。
 それで、1番目から3番目まで、ちょっと読み上げますと、まず1番目が、学校運営協議会制度(いわゆる「コミュニティ・スクール」)の意義や成果をどのように考えるか。それから2つ目が、学校運営協議会制度の課題と今後の方向性をどのように考えるか。3番目として、学校運営協議会制度と他の制度等との関係についてどう考えるか。(学校支援地域本部や学校関係者評価等)といった点がございます。
 この中で、2番目の大きな項目としては変更点はございませんけれども、前回いただきましたご意見の中で、学校運営協議会をより一層機能させていくという観点から、コミュニティ・スクールを指定する主体である教育委員会の役割をどう考えるかといった点のご意見を多くいただいたところでございました。小項目の中に教育委員会の役割を1つ追加してございます。そこを中心にご説明させていただきますけれども、資料3の1つ目でございますが、意義や成果をどう考えるかという点では、これも2つほど柱立てを入れてございます。
 学校運営協議会制度の成果として、学校が地域に情報提供を積極的に行うようになった/特色ある学校づくりが進んだ/地域が協力的になった/学校が活性化した等の成果が挙げられている。
 学校運営協議会制度(いわゆる「コミュニティ・スクール」)は、保護者や地域住民が一定の責任を持って主体的に学校運営に参画する仕組みとして、これまでの成果を踏まえ、その積極的な導入の促進を図るべきではないか。
 1枚おめくりいただきまして、2ページの上でございますけれども、これは次のテーマの学校選択制との関係の整理という点で、記述内容を少し修正してございます。
 地域によっては、学校選択制で学校改善を図ろうとする地域もあれば、コミュニティ・スクールで地域力を活用していく地域もあり、どのような選択をするかは、あくまでもそれぞれの自治体の権限に属するものである。前回、貞広委員、それから岡上委員からいただいたご意見等を踏まえて、この辺りを修正してございます。
 次でございますが、導入地域に偏りがあるといった点で、これは大嶺委員からいただいたご意見で、ここに記述してございます。
 現状として学校運営協議会を取り入れているのが特定の地域に偏っているため、取り入れていない地域の理由を分析することによって、制度の性格を明らかにすることができるのではないか。こういった点を加えてございます。
 それから、おめくりいただきまして3ページ、大きく分けて2つ目の、学校運営協議会制度の課題と今後の方向性をどのように考えるかといった点でございます。4つほど柱立てを入れてございます。
 学校運営協議会を置くメリットが学校側に理解されていないという意見もあり、積極的な情報発信を行っていくことが必要である。
 学校運営協議会の法律上の権限(学校運営方針の承認、教職員の任用に関する意見の申出等)が十分に活用されていない場合がある。学校運営協議会の役割として、法律上の権限を活用し、保護者や地域住民の意見の反映を図るという機能をもっと積極的に打ち出していくべきである。
 教職員の任用に関する意見の申出については、特定の教職員を排除するための仕組みとして誤解されているために、活用されていない面もあると考えられる。効果的な活用例を示していくべきである。
 学校運営協議会の運営を継続し発展させるための工夫(教職員の人事、活動資金の調達・運用、教育委員会の支援等)について、先進的な取組例を見極めつつ、さらに具体的な検討を行うべきである。
 こういった点を入れてございます。
 おめくりいただきまして、4ページの上から4つ目の「〇」でございますが、こちらも教職員の任用に関する意見について、これは中西委員からいただいたご意見でございました。
 学校運営協議会が「教職員の任用に関する意見」を述べることができるという点をアピールし、活用しなければ、制度自体の目的を達成できないのではないか。
 次でございますけれども、これはガバナンスに関していろいろと頂戴したご意見をこのような形で整理いたしましたけれども、地域との連携であれば、学校運営協議会制度をとらずとも可能である。学校運営協議会の役割を、学校運営に保護者や地域住民の意見を反映させるという機能を強調した上で各地域へ広めていくべきではないか。こういった点で記述を修正してございます。
 おめくりいただきまして、5ページに行きまして、先ほどご説明させていただきましたけれども、前回、第10回の作業部会で各委員からも意見がございましたので、新たに教育委員会の役割を小項目として立ててございます。
 コミュニティ・スクールにおける教育委員会の役割を明確にするべきである。
 (このような記述に関連して、教育委員会の役割が環境整備、支援ということであれば)児童・生徒数に応じて予算が配分され、費目を学校で決めることができるなど、学校が予算の裁量権を持つことができるようにするべきである。
 行政は、学校では対応できない予算の獲得など、条件整備の役割を担うべきである。
 コミュニティ・スクールにおいて、教育委員会の役割として、学校への財政的支援、人的措置、人材登用への助言等が考えられる一方で、行政の視点からすると、個別の学校にコミュニティを中心とした自立した経営を任せることは、実際は非常に難しいものである。そこにコミュニティ・スクールの運営の難しさがあるのではないか。
 学校・家庭・地域・行政が一体となって進めるということはもちろんだが、色々な制度が重なり、プレーヤーがどんどん増えていく状況にあり、各々がコンセンサスを持って取り組む必要がある。
 各委員からいただいた意見をこのような形で入れてございます。
 次に3番目、最後でございますが、柱として、学校運営協議会制度と他の制度等との関係についてどう考えるか。(学校支援地域本部や学校関係者評価等との関係)でございます。
 学校評議員制度、学校評価など、地域住民等の声を学校運営に反映させるための他の仕組みとの関係では、それぞれの制度趣旨を整理しつつ、地域の実態に応じて導入することを基本として考えるべき。
 学校運営協議会自体は学校運営に保護者等の意見を反映するものであるということを基本的な考え方とする。その上で、地域住民の力を学校運営の支援に活用する機能を、学校運営協議会が付加的に果たしていくことも、学校運営への参画をより効果的にする。
 教育委員会から校長への権限移譲を進め、そこに学校運営協議会を絡めていくことで、より学校運営に対して保護者や地域住民の声が反映できる幅を広げていくべきである。また、各教育委員会における取組状況を踏まえながら、今後、学校運営協議会に付与すべき新たな権限や役割はあるかという点について、国は継続的に検討していくことが望まれる。
 こういった点を入れてございます。
 一番最後でございますが、7ページの一番下の「〇」のところを加えてございます。学校運営協議会、学校支援地域本部の相互の関係についてのご意見でございますけれども、学校運営協議会や学校支援地域本部の定義を制度的な問題として提示するよりも、地域と学校の関わり方について選択の幅を広げることにより、その時々によって市町村が自ら主体的に決めていけるような仕組みとして提示することが、成果を上げる上では重要ではないか。これは、髙岡委員から前回いただいたご意見をこのような形で整理させていただきました。
 それから、松川委員の資料の関係で、ご紹介させていただきますと、3ページに、学校運営協議会制度についてもご指摘をいただいてございます。その意義につきましては、ここにございますとおり、学校教育に対する考え方として、一般的に「教育は学校がするもの」で、学校に任せておけばよいとか、学校でしっかりとするべきものであり、その中で少しでも良い学校や教師に教えてもらおうとする傾向がある。学校運営協議会制度はそうした意識を「教育は自分たちがかかわり創っていくもの」という主体的な意識に高め、国や地方公共団体、学校だけでなく保護者や地域住民が子どもの教育に責任を持つという自覚を広く形成するところに意義があると考える。こういったご記述をいただいてございます。
 それから、下の成果でございますが、統合後の小学校で有効なツールとして機能している実例として、岐阜市立岐阜小学校の例を入れてくださっております。学校統合に伴う2つの地区が、この学校運営協議会制度によって地域との連携・協働教育プログラムをつくっていくことができたといった実例を入れていただいてございます。
 おめくりいただきまして、課題と今後の方向ということでございますが、特に広く啓発の必要性というのをご記述いただいておりますのと、3番目、学校運営協議会制度の充実といたしまして、予算措置や人的支援の必要性、それから学校運営協議会委員への研修の実施でございますとか、そういったものへの支援といったことについてもご提案をいただいてございます。
 簡単でございますが、以上でございます。

【小川主査】
 ありがとうございました。申しわけないんですけれども、終わりのほうの時間を守りたいので、大体このテーマについては20分から25分ぐらい、意見交換をさせてください。
 では、どうぞご自由に。どうでしょうか。
 葉養さん、どうぞ。

【葉養国立教育政策研究所部長】
 学校運営協議会で一番重要なのは、結局、学校運営協議会の成果というか、関係者のエネルギーを相当使うんですね。ですから、それだけエネルギーを割いて、結局何になるのかという辺りの確信がなかなか得られにくい。ただ、ソーシャルキャピタル論ですとか、ハーバード大学のパットナムの概念が有名ですけれども、そのソーシャルキャピタル論みたいな人間関係資本的な面を強めていくことによって、学校の成果は高まるという、アメリカなんかだとかなりデータがあるんですね。
 だから、そういう研究開発みたいなものを着実に進めていくということが、学校運営協議会制度を全国に広げていく上で大きな力になるのではないかと。そこのところが、まだデータが、日本の場合は不足しているんですけれども、少しずつ出てきているんですね。ソーシャルキャピタルと不登校率との間に相関関係があるという論文はありますし、幾つか出てきている。あるいは問題行動とソーシャルキャピタルとの間に相関関係があるというデータも出てきている。
 だから、学校の子どもの学力水準とか、学ぶ意欲とか、そういう面についてどうなのかという辺りの研究開発をしていくということが、迂遠なようでいて一番早道ではないかという、そういう辺りを入れ込んでいただけるといいんじゃないかと思うんです。

【小川主査】
 ありがとうございました。ほかにどうでしょうか。
 池田委員、どうぞ。

【池田委員】
 今の話と重なるかもしれませんけれども、私たち学校という中で仕事をしていますと、保護者の関係だとか、地域の関係だとか、かなりあれはあるわけですけれども、学校が問題になるところというのは、参加してくる親は全然問題ないです。地域も、参加してくれる地域の人というのは問題があまりないんですよ。ところが、学校とのかかわりを持たない人たちの在り方というのが非常に問題になるわけですね。
 例えば保護者が、授業参観があったとしてもまるっきり来ないとか、先生との会話、対話が成り立たないとか、とにかく学校に来たがらない親というのもいるわけですから、そういうところとの関係というのは、変えていかない限りにおいては、全然質的な高まりというものを期待できないわけですね。ですから、参加してくれる、参加意識の高い人たちの集まりになってしまった場合には、底上げができるかということになると、そんな底上げの役割には、果たしていないんじゃないかという思いがあるんですね。
 ですから、民主化というのはいいんですけれども、参加するということもいいんですけれども、一人一人の子どもたちに対して、どういう手厚い教育をやっていくのかということに結びついていかなかったら意味がないわけなんだと思うんですね。
 そのときに、かかわらない親、かかわらない地域とか、そういう部分をどこまでできるのかという策が出せたら一番いいのかなという思いがあります。以上です。

【小川主査】
 ありがとうございました。ほかにどうでしょうか。
 加藤委員、西川委員ということで、よろしくお願いします。

【加藤委員】
 私は、日本PTAから参加していますので、非常に興味深く聞くんですけれども、やはりPTA、インフラとしてのしっかりしたものとして、我々は非常に評価しているんですけれども、どうしても首都圏ですとか、PTAがないとか、あっても組織されないというような、インフラが失われてしまったときに、学校の現場はどうしましょうというときに、コミュニティ・スクールですとかに非常に可能性を見出す。実践も非常にあるんですけれども、地方に行くと、学校支援地域本部ですとかがイコールPTAであったりするような現状もあるんです。
 やっぱりインフラの評価というのが、もう少ししっかりあるものだというふうにしてもいいんじゃないのかなというのが私の実感ではあるんですけれども、例えばPTAですから、声の大きい人がいると遠巻きにするという性格があるんです。ですから、何らかの志を持って学校に乗り込んで大きい声を上げる人がいらっしゃると、それをさらに遠巻きにするという性質のものでもありますので、そうすると、なかなか全体の意見、真ん中の議論ができるのかという不安が、常にこういう新しい事業のときには出てくる危険もあると思うんですけれども、もう少し弁が立たなくても、自分の子どものことをきちんと思って、参加は鈍いんですけれども、非常に思いが高いという人たちの声なき声というのももう少し拾い上げるような、すくえるような、それが学校評価に反映されるような方向だといいなと思っていますけれども、まだまだインフラとして、日本中に組織されているPTA、歴史も重ねていますから、そんなに捨てたものではないなというのが、私なんかは実感なんです。

【小川主査】
 ありがとうございました。
 西川委員、どうぞ。

【西川委員】
 簡単に申し上げます。2つ目、学校運営協議会制度の課題と今後の方向性をどのように考えるかのところで、「学校運営協議会を置くメリットが学校側に理解されていないという意見も」というふうに書いてありますが、私自身、学校運営協議会制度が広まっていきにくい最大のハードルは、むしろ教育委員会だろうというふうに思っています。ですから、ここは、やはり教育委員会や学校関係者というふうに書くべきではないかと思っていますが、いかがでしょうか。

【小川主査】
 わかりました。そのほかどうでしょうか。よろしいですか。
 何点か検討すべき問題も指摘されましたので、それは次回の審議の際に反映させて、また皆さん意見をお伺いするということにしたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。もしもなければ、次の学校選択制のほうに移っていきたいんですが、よろしいですか。
 では、コミュニティ・スクールの件はこれで終えて、次の学校選択制のほうに移ります。よろしくお願いします。

【佐藤教育制度改革室長】
 そうしましたら、資料4でございますけれども、学校選択制の資料をご参照くださいませ。
 こちらにつきましても、前回までいただいたご意見をつけ加えて修正するという形で、大きな変更点はございません。2つ柱立てをしてございました。1点目が、学校選択制の実態やメリット・デメリットをどのように考えるか。2点目が、学校選択制の課題や留意点についてどう考えるかといった点でございます。
 この点につきまして整理した内容を、ほかと同じように要点、ポイントのような形で入れてみましたので、ご紹介をさせていただきたいと存じます。
 まず1つ目、学校選択制の実態やメリット・デメリットをどのように考えるか。
 基本的な考え方として、学校選択制は地域によって様々な事情があり、全国一律に推進すべきというものではない。メリットとデメリットを十分に考慮した上で設置者が導入を判断すべきものである。本作業部会では、教育的な観点から、学校選択制を行う際に考慮すべき要素、留意点等を提示する必要がある。
 学校選択制は教職員の意識改革を図る一つの方法といえる。ただし、教職員が学校選択制の下で学校改革に前向きに取り組める条件整備を同時に図ることが前提。
 保護者が消費者の感覚で学校を選び、後は学校に任せるという意識があり、学校の活動への参画意識が高くないという問題が指摘されている。
 地域と学校のつながりが希薄になり、自分たちの生活拠点に密着した題材を扱う学習指導を行うことに支障を生じたり、地域住民が通学の安全確保に協力してくれることなどが行いにくくなる。
 学校選択制を導入することに教育的なメリットがあると考えられる場合においても、児童生徒の通学上の安全との関係については十分な検討が行われるべきである。
 こういった点を整理してございます。
 総論といたしまして、まず2つ目の「〇」でございますが、若干の修正をしてございます。
 地域が抱えている課題によっては、学校に変化をもたらす一つのツールとして学校選択制を導入することも有効な選択の一つであると考えられる。
 それから、4つ目の「○」でございますけれども、小学校と中学校にそれぞれ違いがあって、きめ細かな対応が必要であるということで、角田副主査からいただいたご意見でございました。
 学校選択制を考えるに当たっては、地域とのつながりや安全確保の観点から、小学校と中学校の違いをきめ細かく考える必要があるのではないか。こういったご意見を入れてございます。
 それから、おめくりいただきまして1つ目の一番上の「○」でございますけれども、選択されなかった学校への支援について、これも同じく角田副主査からいただいたご意見でございました。
 メリット・デメリットの両側面を持つ学校選択制を導入する場合は、導入によるデメリットを克服し、どの学校でも豊かな教育が行われるよう、教育委員会が選択されなかった学校を重点的に支援することが重要である。こういったご意見を入れてございます。
 それから、以下2ページ、3ページは、特に変更点はございません。4ページに参りまして、大きく分けて2つ目の柱立てでございます。学校選択制の課題や留意点についてどう考えるかといった点でございます。
 まず1つ目は、保護者が子どもの教育のためによりよい学校選択を行うことができ、かつ入学後に学校の活動への参加を促すような情報提供が必要である。
 学校を選択する権利には、選択した学校の約束事を守ったりすることや、積極的にその学校の活動に参加することが期待されているものであるということも、保護者に伝えることが望まれる。
 選択されなかった学校(児童生徒数が減った学校)について、支援をどのようにして行い、そこで豊かな教育を行わせるのかが重要である。学校選択制と関連して、「児童生徒の人数に応じて学校に予算を配分する」という考え方もあるが、義務教育である以上、何らかの教育的な課題があることにより、ある学校が選択されないという状況があれば、その課題を克服できるよう行政が支援するという観点も必要である。
 就学校の指定変更についても同様の点に留意していくべきである。
 こういった形で整理をしてございます。以上、あと細かい修正点はございませんので、あとは松川委員のご提出いただいた資料のうち、学校選択制部分についてご紹介をさせていただければ。一番最後の5ページでございます。テーマ3、学校選択制についてということでございます。
 基本的な考え方の意義のところは割愛させていただければと思いますが、2番目のところで、学校選択制の課題と今後の方向ということで、大きく分けて課題と今後の方向を1つずつご指摘をいただいてございます。
 特に、まず課題のほうでございますが、学校選択制について保護者や地域住民に十分な理解がなく啓発が必要である。特にこれは、国や都道府県が保護者等に対して学校選択制についての啓発を行い関心を高めることで、市町村における検討を促す必要があるのではないかというご指摘をいただいてございます。
 2点目、今後の方向でございますが、これは市町村の立場でということでございます。市町村は学校選択制導入について広く意見を聞いて検討すべきである。特に、市町村はその事例等をもとに保護者や地域住民の意見を聞くなどして、地域の実情に即した検討をすべき時期にきているといったご指摘をいただいてございます。
 簡単でございますが、以上でございます。

【小川主査】
 ありがとうございました。これも20分から25分ぐらい時間をとって意見交換をしていきたいと思います。これもどなたからでも、どうぞご自由に。
 山重委員、どうぞ。

【山重委員】
 今回もうまくまとめていただいたなという強い印象を持っております。ただ、総論のところ、1のところが重要だと思っているんですが、どっちの議論も踏まえると、学校選択制のメリットの一つは、前もちょっと申し上げたと思うんですけれども、それを通じてシグナルが出てくるというところではないかと思っています。それが教職員の意識改革を促すシグナルになるということも1つですけれども、教育委員会が、どこが、ある意味で問題を抱えている学校かということを知る機会にもなるという意味で、教育委員会の意識改革にもつながっていくのではないかと思っていますし、そのシグナルを通じて、支援をすべき学校というのを見出していくということも一つのメリットではないかと思っています。
 そういう意味では、1の総論の中に、その点も少し入れていただけるといいなと。つまり、例えばですけれども、学校選択制というのは教職員の意識改革を図る一つの方法であるということ、そのとおりだと思うんですけれども、それに加えて、地域の学校の問題というのを教育委員会が把握し、改善に向けた取組のきっかけになるというようなこともメリットではないかと思いますので、後半の議論も少し入れていただけるといいなというふうに感じました。

【小川主査】
 よろしいですか。ほかにはどうでしょうか。
 池田委員、どうぞ。

【池田委員】
 今の意見、ちょっと私は、教職員の意識改革だけを問題にされると、現場としては非常につらいんですね。やはり小学校の先生って、それは皆さんから言わせれば、いろいろ課題もあったり、批判もあったりするのかもしれないですけれども、やっぱり先生って、まじめにやっていると思っているんですよ、はっきり言って。すごく頑張ってくれていると思っているので、それは質をどう高めるかということとか、そういう問題は、ある面では研修なり、処遇の改善なり、様々な部分で必要な部分はあるだろうと思います。だけれども、学校選択制の問題と教員だけをストレートに結びつけてほしくはないんですね。はっきり言って。
 というのは、例えば行政が、私は港区ですから、港区の場合に、小規模化した学校をどのような形で、1学級をより大きな規模にしていくのかというようなときに、2人担任制という制度をとった例があるんですね。1年生も2年生も3年生も、全部担任を2人にしたわけです。区の財政的な援助でですね。そうすると、2人担任ということがものすごくメリットですね。子どもたちにとっては、多くの先生、少ない子どもの中で2人も担任がいて、手厚い教育が行われるというようなところに、人はだれでもそれは望んでいくわけですから、そうすれば、増えていったわけですね。
 そうすると、周りの学校はみんな影響を受けているわけですよ。教育条件が全く違ってくるわけですね。2人担任制というのと1人でやっていかなきゃならないという。そのところをあえて教育委員会がやったわけですね。案の定、2人担任のところはどーんと増えましたね。今、定数を超えていますからね。
 そういうような、財政的な、要するに教育委員会の施策の在り方によっても変わるということもあるわけだから、教育委員会の働きかけというのはどうあればいいのかというような視点はものすごく大事だと思うんですけれども、教員の資質だけの問題としては扱ってほしくないというのが私の意見です。

【小川主査】
 山重委員の意見もまさにそうで、上から2番目の「●」で、これは学校選択の意義とか問題というのを教員の意識改革だけに焦点化して話をしているけれども、先ほど山重委員もあったように、学校の多様な問題を考えていく上でのシグナルとしてあるんだという、もう少し広い文脈で考えてほしいというようなご指摘だったと思いますので、お二人の意見を大体そういうふうにまとめることができると思いますので、その辺は表現を含めて考えてみたいと思います。
 ほか、どうでしょうか。どうぞ。

【髙岡委員】
 私は、最初からこの学校選択制という問題は難しい問題だなと思っておりまして、あまり自分でこの問題について本格的にしっかり考えるということができなかったことなんですね。だんだん皆さんの議論を聞いていく中で、なるほどなと思いながらわかってきたこともあるんですが、事例のご発表等もありましたし、今、非常にうまくいっている、機能しているんだという例示と同時に、もうやめたというところも一方でありました。
 そういう中で、少し際立ってきたのは、学校選択制が一つの学校改革のツールだという言い方ですね。つまり、選択制を導入することで、教員や教育委員会、あるいは保護者やそういう人たちの教育にかかわってくるかかわり方に、今までとは違った視点でかかわってほしいという思いがあって、そのことを具体的にある経路を踏んで、まさに学校改善というところへつないでいく仕組みとして、ツールとして、これを使うんだということのように聞こえてきたんですね。
 それは、そういう手当てをする仕組みを我々が持つということは非常に重要なことだろうという気は一方でするんですが、同時に、今日また松川先生が書いておられますけれども、本来、公教育、義務教育では、選択制を必要としない学校づくりや教職員配置をやってきているんだという、その自負の問題ですね。それは建前と本音という話かもしれないし、それが本当にそうかということをチェックするために学校選択制ということがあるんだというふうに、事実は先に進んでいるんだというふうに言えばそうなのかもしれませんけれども、実は学校選択制の導入によって、導入していない市町村で何が足りないか、何ができないかということが見えてくるという、ある種の影の部分が動かしている、学校選択制というものが動いていく、その情報が、学校選択制を導入していようが、していなかろうが、市町村行政や学校を変えていっているという側面があるような気がするんですね。
 そうだとすると、学校選択制にかかわって、この作業部会が最終的に整理できる中身というのは、何かメリット・デメリットというレベルでとどまってしまうというより、とどまってもいいような感じがして、したがって、各市町村がしっかり考えて導入するかどうかは、今後それぞれで検討してもらうということにおさまるような気がしているんですね。それで議論したことになるのかどうかということも、一方では危惧を持ちながらですけれども。

【小川主査】
 わかりました。ほか、どうでしょうか。よろしいでしょうか。
 もしも学校選択制についてご意見が、これでよろしいということであれば、今までの適正配置、コミュニティ・スクール、学校選択制、この3つを全体として通して、何か皆さんからご意見があれば、残りの時間、10分、15分ぐらいありますので、お伺いしたいと思うんですけれども、前の作業部会でも、この3つのテーマをどういうふうな問題意識でブリッジするかと、その辺の全体の総論的なところももう少しきちんと報告書に書くべきじゃないかというご意見もあったと思うんですけれども、おそらくこれは後で事務局のほうでもいろいろ議論して、次回以降あたりにはその辺のところも出てくると思うんですけれども、今まで個別に3つのテーマで意見交換してきたんですけれども、時間が少し余裕がありますので、個別のテーマでも構いませんし、また、この3つを通して、これまでなかなか議論できなかった問題があれば出していただければと思います。当然、学校選択制というふうな個別のテーマでも構いませんので、どうぞ、総論的なものも含めて。
 どうぞ、壷内委員。

【壷内委員】
 学校選択制と適正配置という関係に、最終的にはなっていくのかなと思うんですが、例えば学校選択制、メリットの部分で、非常に学校が活性化しているという部分は当然あります。しかしながら、やはり規模がますます小さくなっていくという学校もあって、どうなっていくのかなと、将来大きな課題なんですが、1つは、廃止になっている学校も当然あるし、それから、嫌でもリンクされていくという統廃合の道、それから、小・中一貫校へ向かっていく学校、おそらくこの多様化のほうに分かれていくのかなという、現にそういうことを政策として考えている市町村も当然全国であろうかと思いますね。
 このあたりの課題をどのようにクリアしていけばいいのかなという、市町村がそれぞれの考え自体持っているだろうと思いますが、この作業部会としても大きな課題なのかと思っております。

【小川主査】
 ほかにどうでしょうか。
 角田委員。

【角田副主査】
 なかなかうまくまとめられないんですが、学校選択制の問題にしても、適正配置の問題にしても、コミュニティ・スクールの問題にしても、いろいろなところでいろいろ絡み合ってきている問題なんだろうと思うんですね。そして、変な言い方ですけれども、行政がこういう方向で進めようというときに、この中の文言から都合のいいところだけをぽんぽんとピックアップして、改革を進めていこうというようなことになってはいけないんじゃないかという感じがしてしようがないんです。
 さりとて、これは検討したわけですから、出さないわけにはいかないんですけれども、何かもう少し、きめ細かにというんでしょうか、例えば先ほど意見の中で、例えば学校選択制を考えるに当たっては、地域とのつながりや安全確保の観点から、小学校、中学校との違いをきめ細かく考える必要があるというふうなことが、一つの意見として出ているんだけれども、実はそれは大前提として、すべてのこういう改革をしていくときに、その辺をもっとしっかりと、地方自治体なり、あるいは地域住民の方たちがよく理解していかないと、うまく利用されてしまうための材料になってしまっては、やった意味がなくなってしまうんじゃないかと思って、その辺をどういうふうな形で集約をして提言を出していったらいいのかというのが非常に悩ましい問題だなと思っています。
 今、そういった背景には結局、ものすごい過疎地の場合と大きな大都市の場合の適正配置の場合、あるいはコミュニティ・スクールの場合、学校選択の場合と、みんな一緒くたになってきているんですが、実はそれぞれみんな違うんだと思うんですね。この辺のところを、違いを出していってまとめるということは難しいだろうと思いながら、その辺のところに違和感、しっくりしないものがあって仕方がないんです。
 例えば今、学校選択制の問題で、特別支援教育の問題が非常に大きなことになっていて、あるいは行動に問題のあるお子さんが幼稚園から小学校に入ってくる。それによって学級の数だとか子どもの数ががらっと変わってしまうというような傾向がある。こういうことは現実の問題として起こっていて、学校がものすごい苦労をしているわけですね。だけど、これを学校だけの責任としてやっていいのかどうかということで、この問題はほかのところにもみんなつながってくるような問題だという感じがしてしようがないんです。
 ですから、やっぱり学校、子どもを本当によくしていくためにきめ細かく検討して、先のことを見通しながら、あるいはいろいろな事例を見ながら導入していく必要があるんじゃないかなと。そういう意味では、この作業部会でもいろいろな方たちのヒアリングをしたわけですけれども、そういうところの、例えば選択制を今、廃止しようとしていますよというところの事例だとかそういうふうなものを、成功事例ばかりじゃなくて失敗事例も含めて載せていただいて、それを自治体や地域の方たちが判断できる材料にするようなことが、一つの救済の方策としてあるのかなということを感じて、なかなかうまくまとめられませんけれども、ぜひそんなことも考えていただければと思います。以上です。

【小川主査】
 どうぞ。

【池田委員】
 私、学校現場は特にそうなんですけれども、木を見て森を見ないという、1本の木を見るけれども全体を見ないというのがあるのかなということを感じていることが多いんです。学習指導要領しかりなんですけれども。私どもは法に基づいて仕事をしているわけでして、新しい教育基本法というものが策定されて、その教育基本法の理念のもとに、私どもはまた踏み出しているわけだと思うんですね。そこには、理念を実現していくためには変えなきゃならないものはたくさんあるんだろうと思うんです。
 例えば2条で目的が変わったとかいう側面もあるでしょうけれども、学校教育について言えば、第6条第2項の中に、子どもたちの知的好奇心等に意を用いて教育していかなきゃならないとか、学校生活においては、決まりをきちっと守った形での学校の運営をしていかなきゃいけないということが教育基本法の中に書かれているわけですね。それとか、それに基づいて、例えば生涯学習があったり、家庭の教育が入ってきたり、家庭、地域の連携といったような側面も条文化されてきたわけですね。そうすると、体系的な面で教育の在り方というものを考えよう、そこについているのが、「生きる力」なり、そういうもので表現されてきているわけだと思うんですね。
 そのような子どもたちの生活基盤に、生活というか、子どもたちの教育というものを考えた上での、どうあればいいかというところの中に、例えば学校選択制の問題もあったり、統廃合の問題があったり、適正規模の問題があたったり、様々だと思うんですね。ですから、それは地域も変わったし、世の中変わってきて方向性も変わってきているから、当然変えなきゃいけないというような議論が意外にあまりないのかなという感じですね。
 ですから、そういうことはまずあるし、それから学校教育法だって、30条第2項というところに確かな学力という側面での記述ができてきているというようなことから考えれば、そちらの辺りとの関連も持って、少し薄っぺらくなっちゃうかもしれないんですけれども、そこも入れていただけるといいのかなという感じはします。

【小川主査】
 壷内委員、角田委員、池田委員から出された意見は、まさに先ほどちょっとお話しした、この3つのテーマをどういうふうに意味づけて、関係づけるかということと、さらにそれを今日の社会的な課題ないしは教育的な課題にどういうふうに位置づけて論ずるかという、総論的なところが必要だというふうな趣旨かと思いますので、それはおそらく事務局のほうでも、この3つのテーマの前段で、それをどう意味づけて論じていくかというところは考えていると思いますので、それは次回以降、可能なところから材料を出していただければなと思っていますけれども、何かご意見ありますか。

【大嶺委員】
 前回の第10回のときの作業部会でも発言させていただいたんですけれども、適正配置とコミュニティ・スクール、それから学校選択制、つなぐ輪っかは何かなと考えていったときに、これはもう私は、地域だろうなというふうに思っております。これまで教育というのは、学校にすべてお任せという状態から、主権者である国民が共にかかわっていこうという形で、本当にシフトしてきているという事態になってきているんだぞということをしっかり押さえていきたいなと思います。
 適正配置に関しても、学校が統廃合されることによって、これまで地域のカルチャーセンターというか、文化の一つの拠点であった学校がなくなったり、あるいは新しい学校として生まれていく。そういうときに、地域がどういうふうに学校に対してかかわっていくのか。
 コミュニティ・スクールそのものですよね。地域の方たちと共に学校教育をつくり上げていこうと。
 それから、学校選択制に関しては、地域との距離がどういうふうになっていくのか。濃くなるのか、あるいは薄くなっていくのか。そういうところで、地域と学校の在り方というものを考えていくという、この視点を決して忘れてはいけないんだろうなと思っております。
 それからもう1点、先ほど葉養先生のほうから出されました、コミュニティ・スクールに関して具体的にどのような成果が上がってきているのかというのが、まだなかなか出てきていないということだったんですけれども、私のところは、コミュニティ・スクール、学校運営協議会が設置されて、これで2年目になっておりますけれども、設置される前の段階から、地域と結構密接にかかわりを持ちながら、教育活動を進めてまいりました。
 本格的に学校運営協議会が設置されることによって、やはり教師が変わってきます。それから子どもが本当に大きく変わってくる。そして地域の方たちが変わる。特に、地域が変わるんですけれども、その中で、保護者が、これまで非常に熱心に学校教育に協力をしてくださった方は、これまでも同様にかかわってくださっているんですけれども、周辺部にいた保護者の方々、かかわっていいのかな、どうなのかなという迷いを抱いていた方々が、学校運営協議会が設置されることによって一歩踏み出すことができるようになってきている。ですから、輪が広がってきているなという感じがいたします。
 そういったところで、さまざまな成果がぼつぼつ出始めてきている。文科省のほうからコミュニティ・スクールの事例集を出されましたけれども、それにさらに今度は成果等をまとめたようなものも出していくと、さらに広がっていくのではないかなということを期待しております。以上です。

【小川主査】
 ありがとうございました。
 山重委員、どうぞ。

【山重委員】
 今、地域というのがキーワードということで、私もそう思うんですけれども、もう一つのキーワードは構造変化だと思うんですね。どこか資料の中にもあったと思うんですけれども、日本の社会も変わってきているというところが背景としてあって、例えば少子化、あるいは人口減少、それから財政が厳しくなってきている状況、あるいは地域のかかわりというのがだんだん薄くなってきている状況、それからもう一つは、少子化に伴って、親が一人一人の子どもの教育に関心を強く持ち始めて、例えば私立を選択するというような選択肢も非常に大きくなってきて、そういう構造変化の中で、義務教育の姿というのをどう変えていかなきゃいけないかというのが一つのテーマで、その中で、3つぐらいの具体的な改革というか、取組というのが浮き上がってきたのかな。その背景のところも少し書いていただけるといいなというのを感じました。

【小川主査】
 ありがとうございました。今、後半部分はちょっと総論的なお話のほうに行っていますけれども、ほかにどうでしょうか。今日、全体を通じて何か言い残したことがありましたら、また、総論的なことについても、何かご意見がありましたら。
 では、最後ということで、よろしくお願いします。

【葉養国立教育政策研究所部長】
 度々すみません。私も、教育振興基本計画とか、それに基づいて自治体の基本計画づくりに参加したりしているんですけれども、一番のポイントは、信頼される学校づくりというか、公立学校像なんですね。公立学校の姿を考える場合に、山重委員がおっしゃったように、私学流出の問題もあるし、現実問題として、100年に1度の金融恐慌というような事態になっても、やはり私学流出というのは厳しいんですね。私学流出と信頼されていないというのがイコールかどうかということはあるけれども、結局、現実に、ある意味で出ちゃっているわけですね。
 そうすると、何とか魅力づくりを進めたい。そうすると何がキーワードになるだろうかと考えていくと、やはり人々がこの学校に寄せる期待とか信頼って何だろうかと。信頼される学校づくりというベースの中で、適正配置問題も、あるいは学校選択制の問題も、コミュニティ・スクールの問題、あるいは学校支援地域本部とか、いろいろな問題を考えていくのが筋道ではないかという感じがして、もう少し信頼という、社会科学なんかでも、信頼って、トラストという概念がかなりキーワードがありますけれども、もう少し信頼という言葉を、公立学校づくりの場合の信頼とは何かという辺りをまくら言葉にしながら、つないでいくようなこともあり得るのではないかという意見です。

【小川主査】
 ありがとうございました。よろしいでしょうか。最後のほうは、3つのテーマをまとめていく総論的なご意見が相次ぎましたけれども、それも踏まえまして、次回以降、その辺もたたき台を出していければなと思っています。
 では、時間も残り少ないので、今日の審議はこれで終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 次回以降の会議と、スケジュール等を含めて、事務局のほうからよろしくお願いします。

【佐藤教育制度改革室長】
 次回の作業部会につきましては、来週の金曜日、3月27日、15時から17時ということで、場所は、ちょっと離れていて恐縮でございますが、三田の共用会議所でございます。そちらのほうで予定をしておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 詳細につきましては、また改めてご連絡、開催通知申し上げます。ありがとうございました。以上でございます。

【小川主査】
 では、これで終わります。ありがとうございました。

― 了 ―

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