中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会高等学校理科専門部会（第4期第1回（第9回））議事録・配付資料［資料12］

　小学校の理科教育の現状は、ペーパーテストによる学力は落ちていないが、できるけれど好きではない子どもが少なからずいる。
　小学生の理科離れの実感はあまりないが、小学校教員に理科離れがあるのではないか。
　データに対して自分の考えを述べることが大切だが、単に表現したり発表したりするのではなく、科学的な視点に基づいてデータを検討し、考察し、科学的に表現することが必要である。
　国際調査の結果から読解力の低下が大きく取り上げられているが、読解力だけでなく、読み解いてそれを表現するというところに大きな問題がある。
　授業後、知的好奇心を持って、教員に社会現象や自然現象のことで質問をしてくる生徒も少なからずいる。
　生徒に理科は面白い、日常生活に役立つ、将来のために研究したいと思わせるような努力が必要である。
　現在の高校生は、教師の指導の仕方にもよるが、観察、実験を行っても教員の指示どおり行うのが精一杯で、ただ操作しているだけにとどまっており、観察、実験が意欲や関心の喚起にうまく結び付かないこともある。
　県独自の学力調査でも理科に関して、特に目立った低下はないという結果が出ていたが、観察、実験の軽視になっているのではないかという懸念がある。
　社会に出てきた人材に、気象関係の講義をすると、日常生活で使えるような基礎的なことを知らない。高等な偏微分の計算などは得意であっても、日常に関することができないというのが現状ではないかと思う。
　教員の指導力について検討するときは、例えば、小学校の授業では、大学時代に理科を専攻していた教員より、他教科を専攻していた教員の方が、理科の授業を工夫し、また、子どもたちにも理解されやすい授業を行っている場合が少なからずあることも考慮すべきである。
　理科の専門家でない方がよい理科教育ができるという意見があるが、理科の内容に誤解があるのではないか。理科の内容がよく分かった教師の教育力を高める方向が重要である。
　特に小学校の教員は、中学校の学習につながる系統的な理科教育ができるように十分サポートを受けることが必要であろう。
　人間形成をも通したいわゆる科学技術者も養成し得るし、ある面では嫌いな子も人間形成もするんだという側面をきちっと残しながら、日本の独自の理科教育、アメリカとかイギリスとかほかの国々にある面ではまねない独自の文化としての理科教育は保持しておく必要がある。
　理科教育は自然という手本があって、これに従って教える中で進歩していくため興味・関心、知的好奇心が培われる。理科教育が難しいと言われているのは、社会的な通念の中で、厳密にものを考えるといったことへの自覚が薄れているせいではないか。

（理科教育を考える上での課題）

　これから新しい時代に向けて、どうしたら知的好奇心、知離れ、理科離れを防ぐことができるかということや、社会の状況の変化に対応した教育内容や教育方法の在り方について、検討すべきではないか。
　理科においても、「生きる力」の理念は共感できるところであり重要であることから、「生きる力」を児童生徒に育成するためには、指導者の育成、教材の整備、指導法の開発などに加え、広く国民の方々に理解いただけるような普及方策が必要である。
　従来、学習指導要領に書かれた目標とそれを達成するための方策との間に乖離があるのではないか。目標が多義的に解釈されない工夫が必要かと思う。
　学習指導要領の理念は大変立派であるので、実際に授業を行う教員にどのように伝えていくかのプロセスを工夫すべきである。
　昭和52年以降の学習指導要領は大綱化されており、人によって解釈が異なる恐れがあることから、どのような理由により文言化を行ったのか、具体的にわかるようにすべきではないか。
　「理科」を何のために学習するのかを明確にするとともに、保護者や子どもたち自身に、理科教育の目的、学校段階での目標等についてしっかりと説明することにより、子どもたちの学習の動機付けを図り、保護者が分かつべき教育上の責任を認識することができるのはないか。
　理科教育の立場で言うと、技術の基礎であるばかりでなくて、人間がつくってきた文化の1つであるというところも大事なので、そこはものづくりの基礎ばかりでなくて、文化としての科学という観点も考え方として大事である。
　成人を対象とした調査などによれば、我が国では、小学校から成人に至るまでの間に「科学に対する興味」が希薄化しており、「科学に対する興味」が持続できるようにする必要がある。
　成人の科学リテラシーが低いし、成人の科学離れが大きな問題である。これは、社会の科学教育力の低下を示しており、このことが学校における児童生徒の理科の学習に影響を及ぼしている。そして学校での理科学習が、また成人になってからの科学学習に影響する。このような再生産のサイクルに配慮する必要がある。
　成人を対象とした調査の理解の定着度が先進国で一番低いのは、社会に出る前に最後に理科を学習する場となる高等学校教育での基礎基本の定着度が低いことに起因している可能性がある。
　学力に関する継続的なデータをとることは、学力の推移をみる上で非常に有効であり、引き続き継続的に調査を実施することが大切である。

2．今後重視すべき理科教育のねらいと育てたい力等

（基本的な考え方）

　学習内容を上の学年や学校に上げていくのではなく、例えば小学校の6年間で子どもに何を教えるのかといったように、学校段階や発達段階に応じて、何を指導するのかといった点に立ち返り、教えるべきことは教えていく必要があるのではないか。
　生徒の興味・関心にあまりにも意識が向きすぎて、基礎・基本となる重要なことは嫌でも教え、たたき込むという姿勢が現在の教育に欠けているのではないか。
　国際調査の結果をみると既習事項についてはできるが、学んだことのない事項についてはほとんど解答できていない。そのため、必要な事項は必要な学年できちっと教えておく必要がある。
　PISA、TIMSS、教育課程実施状況調査の3つの調査から言えることは、これからの子どもたちに必要なことは、能力を基盤にして、内容をうまく組織し、習っていないいろいろな問題でもある程度解ける、考えられるようにすることではないか。
　学んだことしか答えられないので教えるべきということではなく、学んでないこと、見たことのないものを想像する力が大切。そのためには、科学的な読み物を読んだり、環境への視点を持つことにより、論じる力が育成されるのではないか。理科の時間を増やすとしても、論理をつくったり、科学的視点から表現することを重視すべき。
　小・中・高等学校の各校種に応じて育てるべき人間像を明確にする必要があり、その上で理科がどのような役割を果たすのか考えるべきではないか。
　自然に対する興味や探究心を高めるとか、科学的に探究する能力や態度を育成するなどの場合、どの学年や学校段階で、どの程度まで高め、育成するのかを明確にすべきではないか。
　理科において科学的思考力や論理的思考力などを育成しようというとき、理科だけでなく、全教科を通じてどのように育成するのか、教育課程全体の中で考える必要がある。
　定量的に扱うことが減ってしまったため、思考力とか論理性を育成しにくくしていはいないか。
　学校で、正しい理科の知識に基づいて見通す、そういう訓練をしていることが、家庭やマスコミを通じて、聞いたことを正しいかどうか自分でクリティカルに判定して、また次の判定をしていくという発展的に思考できる能力につながる。
　基礎・基本の確実な定着を考えた場合、厳選すればするほど、十分な時間をかけて基礎・基本を教えることが必要。
　目標を各学校種ごとに分けて考えることは、ともすると自然科学の本来の在り方からずれてしまう可能性がある。
　目標を一貫して考えることは大事であるが、現実的には分けざるをえないということもあり、どこに重点を置くかが大事なのではないか。
　現在、学年ごとに評価が行われているが、小・中・高等学校を通じた12年間の中でどの程度到達しているかという目標分析と評価が必要ではないか。
　子どもたちに付けたい力を考える際には、評価の面とセットで考える必要があるが、科学的な思考と観察・実験の技能・表現の観点が明確に分かれていないことが、付けたい力を不明確にしているのではないか。
　理科教育の目標や内容を考えるとき、子どもたちの体験が不足しているなど子ども自体が変化していることを念頭におく必要がある。
　子どもたち一人一人は、それぞれがとてもよい発想を持っているが、発表が下手である。良い発想を持っていても発表が下手なばかりに分かってもらえない。広い意味での国語教育が理科教育のベースとして必要なのではないか。
　家庭の教育力を高める意味でも、生活の中の科学的な事象に目を向けさせ、家庭でも科学を楽しみながら学べるカリキュラム開発を行うべきである。

（理科教育のねらいと育てたい力）

　理科教育で重視すべき点は、実験等を通じて興味・関心を持たせること、興味・関心を持たせた上で、知的好奇心を高めること、知的好奇心を高めるとともに、理論付けを行う論理的思考力を育成すること、の三点である。また、は小学校、は中学校、は高等学校で重点を置いて指導するなど、発達段階に応じて考えることもできるのではないか。
　科学的な根拠や事実をもとにしながら考える、筋道立てて論理的に考えるといった科学的な見方や考え方ができる力をつける必要がある。
　科学的な見方や考え方については、子どもの言葉でどう表現したら科学的なのかということを明確にする必要がある。
　問題を見いだし、予想を立て、それに基づいて条件を制御しながら実験をして、結論を得るという問題解決能力を小・中学校一貫させた形で身に付ける必要がある。
　小学校6年で付けさせたい力として学習指導要領に示されている総合的なものの見方や考え方を養うという部分がわかりにくい。中学校でも同じような文言が出てくるので、整理・統合してはどうか。
　小学校の「見通しをもって」、中学校の「目的意識をもって」、高等学校の「探究心を高め」という目標の文言は、今後も継続して重視していくべきである。
　理科を暗記科目にすることなく、実験や観察で得られた結果をどう伝えるか、同じ事象を見ても、見る視点が違っていることなど、子どもたち同士の事象に対する価値付けや感性が違っていることを楽しみ、意見し合うことの面白さを感じさせる理科教育が必要である。
　単に一つの答えを求める理科教育から、多面的な考え方を学ぶ理科教育へと変えていく必要がある。
　教え込むような授業の場合、子どもたちの好奇心がつぶされかねない。もっと子どもたちの自己表現を大切にすべきである。
　自分で考える力を育成するためには、体験することが重要だが、最近の学生はそのための国語力や判断力が乏しい。ものを書く習慣と文章で自分の考えを表現する力が理科においても重要である。
　学校教育においては、教わったことに基づいて類推したり意見を組み立てたりしたくなるように、まず基礎・基本の知識や技能を系統的に教えることが大切である。
　例えば地球の環境ということを考えると、環境の諸要素が非常に複雑に絡み合っている。お互いに相互作用を持っている。相互関係を適切に教えるということが必要である。
　理科について、実際の社会でどのように役に立っているのかということや、なぜそうなるのかという論理や考え方などが必要である。
　理科を勉強する目的が科学技術の基礎だから勉強するんだということを明示することが非常に重要である。
　物・化・生・地の一つの体系として、子どもたちに身に付けさせないと、新しい問題を解くことはできない。また、大人になったときに理科は大切なものであるという意識が生まれないし、何か物事を解決する上で理科が役に立っている、社会生活に役立っているというようなことが伝わらない。
　学習指導要領の目標には、自然観や真理の探究などはあるが、科学技術の目的である産業化を通しての福祉の観点がない。我が国が科学技術創造立国を目指す以上、理科教育が科学技術の基盤であり、科学技術の発展がなければ、いわゆる産業はすべて成り立たないとの認識のもとに、ものづくりの基礎が理科にあることを特に強調すべきではないか。
　理科と日常生活との関連を考えることは大切であるが、科学技術が進歩しブラックボックス化している状況を踏まえると、日常生活とのかかわりや実感を伴うといった「日常生活での経験を踏まえて」ぐらいが妥当ではないか。
　目標には、自然への親しみや関心を高めるだけではなく、科学への関心というところが今非常に問題になっているとすれば、科学への関心を高めるといったものも必要ではないか。
　理科教育においてものづくりの視点を重視することは大切であるが、科学技術の発展などにより、世の中が何の仕組みも知らなくとも生活できるといったブラックボックス化している現在の状況を踏まえると、知的好奇心を鼓舞する仕組みが必要ではないか。
　理科が役に立つとか、大切だということは教えるものではなく、日常の学習で学んだことが問題解決の役に立ったという経験を通じて、結果的に理科が役に立つ、大切だということが分かることを重視すべきである。
　小・中学校の理科は「万人のための理科」を目指す必要があり、高等学校以上では「万人のための理科」をもとに、職業や「科学者育成」という視点で科目を選択し、「職業や科学者育成のための理科」が行われるようにすることも考えられる。
　科学的な論述文の論述力をつけることによって、スパイラルな学習を実際の授業の中で繰り返し実践でき、子どもの中で学習内容が系統化していくことから、学習指導要領の目標の中に、科学的論述力を育成するという観点を入れてほしい。
　表現力といっても問題になっているのは書けないということなので、記述力とか科学的な論述力、特にライティングというところを意識することが必要である。
　科学的思考力と論理的思考力の育成が、理科教育の大きな目標ではないか。
　国際調査では科学的論述能力が低いので、実験や観察で現象を感性的知覚的にとらえることは大切であるが、そればかりでなく、現象の観察や理解を科学的に論述するなど、科学的に考えたりする力、科学的論述能力を高めるというような点も必要ではないか。
　小学生は知的好奇心はあるが、体験の機会が減少しており、実感を伴った理解ができにくいことや、科学的な方法、処理の仕方が十分身に付いておらず、感覚的に発言したりすることがあり、事実に即した科学的な見方や考え方を育成することを一層大切にすべきではないか。
　自分に必要なことを知的好奇心をもって追究していく姿勢を、受験に関係あるなしにかかわらず、理科教育を通して育てる必要がある。
　これまで、理科の目標には、生涯学習としての科学学習の基礎を形成する、という視点が明示されていなかった。理科の学習の大切さというものを意識させたり、理解させることが大切で、生涯にわたって知的なものに関心を持って、科学を学び続けるような力を学校教育の中で身に付けさせるような視点が必要ではないか。
　資質、能力ということを入れていくことは大変大事だと思う。小学校は段階ごとになっているが、中学校がもし学年ごとにいれるのが難しいのであれば、まとめた形で示すのはどうか。
　自然観を養って、その中で法則性を見つける、その中でさらに自然観と連動しておもしろさ、楽しさを将来の理科教育発展に結びつけられればよい。
　生徒が自分で計画を立て、身体を使って観察、栽培、実験などを体験することが重要である。
　試行錯誤して考える時間と自然や公園などの空間、考えを醸成させる家庭環境の下で、自然体験や科学体験を通じて、自然愛護の心を育成することや論理をつくる楽しさを味わわせるような思考力の育成が重要ではないか。

3．理科の教育内容の系統性及び適時性等

（基本的な考え方）

　教育内容の系統性を検討する場合、現行制度の枠内で内容を検討するのか、制度改革を含んで（例えば、時間数を増加した場合で）検討するのかによって、異なることに留意すべきである。
　ある学年の学習が上の学年の、そして、小学校の学習が中学校の、中学校の学習が高等学校の学習の準備となるような知識面や思考面での系統性を検討すべきではないか。
　内容の系統性を考える場合、学問の系統の側面だけでは不十分であり、今回の学力調査の結果からも、内容が比較的系統的であり、かつ専門的な知識を持つ教員が指導している高等学校の状況が、一番課題があったことを踏まえると、もう少し多様な観点から内容の系統性を考えていく必要がある。
　小・中・高等学校と進むにつれて理科が好きな児童生徒の割合が減少する一つの要因として、小学校では、例えば「重さ」という日常生活で使用する言語を用いるが、中学校以上になると「質量」という理論言語に変わることが考えられ、こうした点についても必然性などの十分な検討が必要である。
　高等学校の生徒は学習履歴等も多様であるとともに、基礎・基本、最低レベルも時代とともに変化するものであることを考えると、学校だけですべて基礎的なことを教えるのは難しく、学校を出ても理科を学び続けていく必要があることを伝える必要がある。
　小・中・高等学校を通じた系統性は大切であるが、子どもの発達を踏まえた各学校種ごとの違いも考慮しながら検討する必要があるのではないか。
　小・中学校段階では、経験で確認できる法則と粒子性の考え方を中心においてはどうか。
　理科は繰り返し学習することで、理解が深まるので、スパイラルな指導を導入すべきである。他方、じっくり時間と手間をかけて観察や思考することができる環境を理科にも構築すべきである。
　これだけは定着させるんだというときに、学習指導要領にそれだけしか書かないということではなくて、基本的な部分にもう少し何かを付け加えることで定着させたいことが本当に定着するので、学習指導要領の書き方に工夫を要する。
　子どもの学年の知識能力、理解力の範囲での系統性を楽しむのが理科の楽しみであり、将来系統的に学ぶときの基本となる。子どもの理解に配慮した系統的な内容の再配列が必要。
　知識・技能の中核としては、物理、化学、生物、地学それぞれの分野に普遍的な法則があるので、きちんと身に付けさせる必要がある。また、自ら考える手がかりとなる科学の基礎概念と基礎知識についても同様にきちんと身に付けさせるべきである。
　観察、実験については教える内容を明確にするというのが第一で、小・中・高・大を見通して、教える内容と密接に結びついた楽しく、理解が深まるような観察、実験というのを厳選する必要がある。
　実験を中心に内容を再編成できないか。例えば中学校第一分野では、核になる実験を3年間で6～7つ程度に絞り、そこから論理を構築するといった展開ができないか。
　内容を検討していく上で、何回も同じような内容が出てくるスパイラルな内容構成というものを、時間数との兼ね合いも踏まえながら考えていくべきではないか。
　小学校低学年から6年生までの間は、日常での繰り返しや各教科間での繰り返しが大事ではないか。
　小学校では体を使って自分が体験したことを学んでいくというプロセスを大事にしながら、内容的には小・中学校の連携と生活に密着した視点というものが重要ではないか。
　繰り返し学ぶことの重要性の論拠として、高等学校教育課程実施状況調査では、中学校で既に幾らかなりとも学習している事項については、通過率が高いという実績がある。難しいから中学校から排除して高等学校へ、小学校から中学校へと移行するのはよくない。
　小学校では定性的に扱い、中学校では定量的に扱うなど、統合してスパイラルをなくすのではなく、発達段階、学校段階によって扱いが変わるという発想で内容を考える必要がある。
　中学校においては、スパイラルの指導は大切であり、概念的、発展的に捉えたりするなど見方を変えることで、概念が定着するのではないか。また、こうすることで高等学校との円滑な接続が図れるのではないか。
　内容のスパイラルを考える場合、社会や大学が要求している科学のレベルから逆に高・中・小学校のスパイラルを考え、段階を追い、目標に持っていくことは考えられないか。
　全体的な平均を上げ、理解を深めるという意味で、スパイラルな学習は有効であるが、先へ学習を進めたい子や既に学習内容が身に付いている子の意欲をそぐことのないように、スパイラルに学ぶことの効果を生徒が感じられる内容にする必要がある。
　指導をスパイラルにする内容についての吟味が必要である。スパイラルが有効なのは、主に自然科学の分野で、学年相応に学習内容が高度になり、庭先の自然から宇宙科学へとつながる内容の広がりを意識した指導内容を構築しておくのが望ましい。
　あの雲が出てきたら天気が崩れるといった昔からある自然に対する知恵など、系統立てて知識を積み上げ到達するものとは別に、自然に触れ合うことで得るものなども忘れてはいけないのではないか。
　ミクロの内容については、マクロのことをきちんと勉強することでミクロの学習の準備ができており、特に身近なことには結び付きにくいことから、いつ指導するのがよいか、十分検討する必要がある。
　実感を伴った理解を促すためには、生活との結びつきという視点と論理性の明確なものという視点を重視すべきである。
　現象自体は理解できるが理由は難しい現象は、理由を切り離してその現象を最も適切な時期に学習させ、理由はそれが理解できるようになってから説明することも考えてよい。
　中学校の先生方はよく実験をやるようになった。これは教育課程実施状況調査の中の意識調査の中でも明らかである。学習指導要領の記述が、「観察、実験を行い」と以前よりも踏み込んだためであるが、一方で、内容の取扱いのところで、何種類に限定されるなど、制限が随所に見られるので、緩和する必要もある。
　観点別学習状況を重視している評価の考え方からみた内容の検討を行うことも必要ではないか。また、教師は子どもたちに理科がどのように重要で、ねらいは何で、何を教えたいかということをきちんと伝える必要がある。
　科学技術の進歩や情報化などへの対応のためには、従来の教育内容の厳選を改め、基準性を明確化しながら、時間数も含めて拡充すべきである。
　科学技術創造立国を目指す日本としては、理科の時間数の確保は必要で、世界平均より少し上くらいの時間数に戻すため、総合的な学習の時間や中学校の選択教科の時間を整理して、理科の授業時数の増加に充ててはどうか。
　内容の厳選に当たっては、内容が子どもに難しいとか、繰り返しであることを理由として減らすことは疑問であるし、中身の配列の仕方、毎時間の教え方を工夫することなど減らした内容をどう教えるかを十分検討すべきであったのではないか。
　小学校における項目選択、中学校における選択教科の時間、高等学校における選択履修、項目選択などの選択制については、生徒によって指導内容が異なり、系統的な内容として相当むだが起きることから、時間を確保する観点からも廃止してはどうか。
　小学校で基礎基本を教えることを考えれば、項目選択ではなく全部教えるべきではないか。
　小学校における項目選択については、項目選択を推進するシステムが大切で、ティームティーチングをい導入するなど条件を整えることを合わせて考える必要がある。
　理科を国民のリテラシーとして身に付けるには、物理、化学、生物、地学のように理科を縦割りにして、教えることには無理があり、高校1年くらいまでは総合的な理科として、教育することはできないか。
　自然を見る見方は様々であるが、物理、化学、生物、地学と分けてみることによって、科学がここまで発展してきた現実を重く認識すべきではないか。

（小学校）

　小学校段階においては、自然事象に直接触れる体験を通じて、自分の言葉で語り、論述する体験を積むような学習が必要である。中学校段階においては、体験から例を引いて、比較し類推することが十分行われる必要がある。高等学校段階では、自然科学的なものの見方や考え方をベースとしたコース別学習を行うことが望ましい。
　例えば、小学校第3学年の「豆電球と乾電池」、4学年の「乾電池と光電池」、6学年の「電磁石」のように、スパイラルに繰り返し扱えるような内容構成も必要である。
　子どもたちの成長という視点から、小・中・高等学校の発達段階に応じた内容の重点化が必要ではないか。その際、小学校の理科においては、熱や温まり方など、生活に密着した素材をもっと重視していく必要がある。
　小学校では理科への興味・関心を高めることが重要であり、その観点からは、現状の小学校の理科のカリキュラムで十分である。
　日本は北から南まで様々な自然の特性があることから、特に「地球と宇宙」の領域など、地域の特色を生かした内容や生活と密着した内容などについては、独自のカリキュラムを編成できるよう、学習指導要領には少し幅のある書き方を工夫できないか。
　物の三態、固体、液体、気体の学習は小学校において必要であり、中学校でもう一度繰り返していくことが重要。
　小学校においても酸素と窒素など何種類かの気体を教えてほしい。
　溶解は中学校の学習の基礎となるので、遊びの中で物を溶かしたり、ある程度までいくと溶かそうと思っても溶けないことなどを学習してほしい。
　小学校においても、正しい理科の知識を学び、それを使って考えるという視点が重要である。
　小学校第1、2学年の理科を復活すべきである。イギリスなども低学年から導入をした。それが難しい場合には、生活科に理科の観点を入れることで、小学校第3学年以降の理科教育との接続を図るべきではないか。
　小学校生活科については、自分なりのものの見方を持ったり、自分の言葉で語ろうとしたりする子どもたちが現れており、有効であると考えられる。
　小学校に生活科があることで、理科の観点、すなわち自然科学的な観点から学習することは多い。このため、感性を増やす言葉を獲得することや比較してみることなど論理のもとになる資質は生活科の中で十分育成可能だと思われる。
　生活科は現在の子どもたちの体験不足をかなり補っている。また、主体的に自然の事物、現象を見る機会になっている。生活科は今の子どもの変化に対応していく位置付けにあり、1，2年生の段階は体験を通じて成長していくことを大切にすべきである。
　生活科において、もちろんよい実践もあるのだが、現場で話を聞くと、時間やお金の制約もあって難しいと答える先生も多い。生活科を指導する教員の資質を高めることが急務である。
　生活科については県や学校によってその取組に温度差があると聞く。理科の観点から見たときにうまく運用されているかどうかのデータや情報が必要ではないか。
　理科だけではなく、他教科との関連を重視して学校全体で科学教育を行うことができるように指導内容を精選すべきである。科学には、理科だけでなく、社会科、生活科、家庭科、体育科などがあり、広く科学的という見地での議論が必要である。生活科においては、現行でも自然認識に関する内容はあるので、解説書で明確に述べておくことが大切である。
　自分で新しいものを構築していこうとする場合、多面的な見方が必要であり、生活科などの自然の中で学んだことが、高度な理科を学習する際に、自分なりの論理や見方を構築することができると考えられる。
　小学校の場合、子どもの成長の視点が大切であり、生活科についても、指導法の工夫・改善によって、有効なものになると考える。
　日常生活と関連を図り、小学校に環境や科学の視点を入れることで、子どもたちの興味関心を持続させることができるのではないか。
　各学年ごとに評価規準が示されているが、小学校第5学年までと異なり、第6学年で総合的・多面的になっている。中学校との接続も考慮した示し方の工夫が必要ではないか。

（中学校）

　現在の理科教育の充実を図るためには、中学校の理科教育を是正する必要があり、知的好奇心をかりたてる、もっと生活に密着し、生活に役立つといった観点から、積極的にカリキュラムを考えていく必要がある。
　中学校において、内容を考えるときに授業時間数とセットで考える必要がある。今の時間数でも示された内容を指導することはできるが、内容の深まりを求めることは難しいため、全体の時間数を増やしてもよいのではないか。
　最低限の基礎基本を学習してからでないと科学のおもしろさは伝わらない。エネルギー、粒子、イオン、生命、時間的・空間的概念がそれに当たる。
　小学校のときは見える世界の学習が多いが、義務教育終了段階である中学校までには直接見えない世界の学習、見えないことを考えたり深めたりする段階と位置付けるべきではないか。こうした見えない世界の学習を中学校で行うことにより、高校、大学での本格的な学習が可能となる。
　例えば光や音の単元でカリキュラムを作ると小学校と中学校で似たようなものが出来てしまう。中学校で学習した方が適切な内容を工夫してまで小学校に入れる必要はない。むしろ中学校での学習が楽しくなるための基礎をしっかり教える必要がある。
　物理では仕事の概念をきちんと学習しないとエネルギー概念が暗記物になってしまう。化学ではイオンの視点、生物では進化と遺伝と発生が中学校段階では必要。
　内容の系統性が大事であり、特に浮力や水圧については、現在中学校では取り上げられていないが、アルキメデスの原理とかパスカルの原理などリテラシーとして素朴な形で、高等学校から中学校に戻して指導すべきではないか。
　物は粒子から出来ているという教え方は直接観察できないので、暗記になってしまう。化学反応が理解できたり、イオンが理解できる意味での粒子概念はきちんと学習し高校へ進む必要がある。
　質量保存の概念の定着を図るには、物質が粒子でできているということを中学校1年や小学校でも取り上げたりするような工夫をしてはどうか。
　質量保存の概念の定着のため、重さと体積の学習を算数ばかりでなく理科においても、子どもたちが理解できる段階で学習する必要がある。こうしたことが密度を学習するときにも必要となる
　知識は、類似物の中の相違を知る、違うようにみえるものの中の類似点を学ぶことで身に付く。例えば、金属の学習は、鉄をはじめとする物の多様性の学習の出発として、電気との関係で絶縁体との違いや、磁気との関係で磁石につくものとつかないものという特殊性の学習として重要。
　天球の概念や空間の概念は比較的難しいので、中学校1年でやるよりも中学校3年でやる方が理解しやすいが、現在、小学校3、4年で1回天文を習って、中学校3年までずっと教わらない。小学校6年とは限らないが、小学校と中学校で学習指導要領の工夫をして、天文の単元をもっと増やしてはどうか。
　電圧と電流、融点、沸点、酸化、還元、物体の運動など、科学の学習にとってグラフ処理というのは大切な思考法だということを内容の取扱いなどに盛り込むべきである。
　イオンが難しかったのは、濃さの違う酸性の容液とか、アルカリ性の溶液をどんな量で組み合わせるとちょうど中和するかといった量的な問題で、酸性の溶液やアルカリ性の溶液はこういうものだとか、それを混ぜるとどうなるかというような定性的なものは、むしろイオンで取り扱った方が子どもたちの理解が進む。
　象徴的な運動である自由落下運動や仕事を含めての量的なエネルギーの扱い、物質の粒子概念やモデル化の観点からのイオンの取り扱い、、ベクトル量の考え方を含めた力の合成・分解、ニュートンと合わせて重力〔g重〕の扱いなどが減ってしまったことによって思考力や論理性などを身に付けにくくなっているのではないか。
　化学反応を学習してから光合成を学習すると、その逆の場合に比べて定着度が違うので学習の順序性にも配慮すべき。
　花が咲かない植物については、中学校で基礎・基本の定着のために内容を減らしたが、花の咲く植物と花の咲かない植物の両方を学習することで、より理解が深まる。
　岩石については、火山岩と深成岩についてはそれぞれ1種類のみ扱うことという学習指導要領の制限があり、指導が本当にしにくいので、もっといろいろな種類の岩石を取り扱えるような変え方がある。
　生活に結びつけた理科という観点から、自然災害への対応力という視点を取り入れたらどうか。
　中学校の内容は、学問体系が崩れた部分があるが、単に従前の内容をそのまま復活すればいいということではなく、今の子どもたちが置かれた状況とか社会の状況を考慮した組み立てが必要ではないか。
　観察・実験や自然の発想からは出てこないもの、例えば伝導率の逆数である抵抗といった内容などを、きちんと教えるべきではないか。
　今、中学に足りないのが継続的な観察あるいは観測のようなものであるので、それを盛り込んでいく必要がある。

（高等学校）

　高等学校の理科教育は、現在、研究者や技術者の育成、あるいは受験のための理科という面が非常に強く、その道に進む生徒以外の生徒に理科嫌いや理科への無関心を起こしている面がある。このような生徒に、将来、科学に関心を持ち続ける態度、科学リテラシーを身に付けさせていくことが重要である。
　高等学校では、理科を必要とする分野に進む生徒は数多くのことを学習していく必要があるが、一般の高校生は、社会で必要とされる理科的なセンスをしっかりと身に付けることができるよう、指導項目の厳選も必要ではないか。
　高等学校では、生徒を二つのタイプで考える必要がある。一つは高校の理科を基本的に学んで、その後理科について学ぶ機会がない生徒。こうした生徒には基本的な最低限の知識をしっかりと教える必要がある。もう一つは大学等に進学して、さらに理科の知識を深める生徒。こうした生徒には体系的な知識をしっかり教えなければならない。この場合、両者に共通するのは知識ではなく問題解決能力などではないか。
　高校の教育課程では、物理、化学、生物、地学の4分野にまたがるような理科に共通する科学の基礎知識を明確にし、確実に定着させることが必要ではないか。
　現在、理科関係の学会や協会では高校1年生での必修理科のモデルとして、4単位を前提として、社会に出ても役に立つ、理科の専門家として将来育つために役に立つような、従来の科目を越えた基礎理科に相当する内容で構成する科目を検討している。
　中学校までの理科の中に国民に必要とされる内容をしっかりと盛り込むことが必要。そのうえで、高等学校の必修理科については、これに付加するというつくりにしてはどうか。同時にその付加する内容は、物・化・生・地それぞれの学問の一番の基礎、理系に進学する生徒にとっては2，3年で学ぶことの基礎となる内容とするなどの工夫をする必要がある。
　高等学校における必修理科の内容を物理分野で考えれば、力学である。力学を学習することで物理の基礎とある種の数学的テクニックを身に付けさせることにより、熱力学や電磁気学などの学習に広げることができる。こうすることにより、将来成人になってから広がる可能性がある。
　今後の理科教育の充実を図る上で、高等学校の科目の編成は次の三つに分けて考えることができるのではないか。内容の関連に十分留意し、現行の物理・化学・生物・地学の基本構成を維持する。第1学年で例えば「科学基礎」という科目を設け、最低限必要となる共通の基礎的内容を必修とし、第2学年以降は、必要に応じ物理・化学・生物・地学を履修し、深めていく。これからの科学技術に対応した理科教育の在り方を踏まえ、物理・化学・生物・地学という枠組みをなくし、高等学校で新しい理科の科目を導入する。
　高等学校の科目間の連携は大切であるが、それぞれの科目に無理が生じることは避けるべきであり、最低限の関係をはっきりさせるしか事実上できないのではないか。また、高校3年間という期間を考えた場合、物理・化学・生物・地学の膨大な学習内容をどのように配置するかを十分検討し、科学の基礎となる部分を最低限教える必修科目を設置することは賛成である。
　高等学校の教育内容を考える場合、生徒の多様化を念頭に置き、最低限の科学的リテラシーを身に付けさせるという観点から、「科学基礎」のような科目の導入は賛成できる。その内容については、現代的な新しい概念を理解するためにも、基礎的・基本的な内容を中心としてはどうか。
　高等学校では、物理・化学・生物・地学をきちんと教えるべきであり、第1学年に旧「理科」や「科学基礎」のような科目を設置することは良い。何もかもごちゃまぜにした総合理科ということではなく、第2、3学年以降につながるような基礎学力をきちんと身に付けさせる内容を指導すべきではないか。
　高等学校の必修科目の内容については、旧「理科」のような物理・化学・生物・地学の枠の中で、緩やかな形でその特徴を生かしながらいくつか項目を挙げてみてはどうか。
　高等学校において、物理・化学・生物・地学をとりまとめた科目を設け必修とすることは、大学での学習を考えた場合にも効果的である。また、例えば、自然災害の多い日本では、地震や火山についての相当程度の基礎的な知識を有していることが必要であり、基礎的な内容を一通り入れた必修科目を設定することは価値がある。
　高等学校で必修にしようとする「科学基礎」のような新しい科目は、物理・化学・生物・地学の共通の科目であるからという理由で4分の1ずつ内容を出し合う必要はなく、科学の基礎として何が必要かという科目哲学のようなものをきちんと議論した上で、旧「理科」とは異なり科目の領域を超えた内容を検討すべきである。
　「科学基礎」という科目名が一人歩きしているようであるが、名称については、慎重に考える必要がある。そもそも名前を変えて新しい発想を盛り込むというこれまでのやり方も問題があり、「理科」を「科学」に変えると、ますます「理科」とは異なる内容を盛り込んでいいような錯覚に陥る危険性がある。
　平成元年の必履修科目の構成のうち、Aを廃止して、Aの内容を総合理科に入れて横に立て、B科目2科目か総合理科1科目をとるという形が実は一番現実に合っている。
　高等学校第1学年で基礎的な科学を行うことは良いことであるが、それぞれの立場で内容の受け止め方に差があり、本当にサイエンスの基礎、科学の理論の基礎である物理を中心として、内容をよく検討していく必要がある。
　高等学校における物理・化学・生物・地学の枠組みはこれでよいが、大学の文系、理系を問わず、物理・化学・生物・地学全てに共通した理科の試験問題を必須で受けさせる環境が必要であり、それに基づいたカリキュラムを高等学校で組み立てていく必要がある。また、社会人となるに際して、最低限必要な理科の内容を組み立て、身に付けておくことも大切である。
　高等学校では2科目が必修となっているが、3科目はきちんと教えて欲しい。その際、教員もきちんと確保する必要がある。また、科目内で、例えば生物の進化と生態のように選択項目があり、抜けてしまう内容もある。教えるべきものはしっかり教えるという姿勢を学習指導要領の中に入れていただきたい。
　高等学校における基礎基本の定着度を上げるためにも、3科目を教えるというより4科目の内容を必要なものにしっかり厳選して定着を図ることが必要である。
　高等学校の科目に抜けている内容があるからといって、3年間で物理・化学・生物・地学の・を付した科目全てを履修することは不可能である。そのため、物理・化学・生物・地学の中でどうしても必要な内容から構成する基礎理科に相当する科目が必要である。
　学習指導要領では、平均的な生徒を対象として記述されていると思うが、もう少し学習を進めたい生徒やもう少しゆっくり勉強したい生徒など多様な生徒への配慮を内容の取扱いで示すべきではないか。
　高校の化学では、化学式や反応式との関連付けが十分なされていないことやものづくりの観点が欠けているところが問題ではないか。
　生物分野については、遺伝子組み換えなど新しい技術に対応するなど化学に近い要素が導入されてきており、そうした点が生物を教えにくくしている場合もあるのではないか。
　最近の生物学の進歩を考慮すると生物の内容は見直すべきではないか。また、現行の理科総合A・Bの区分けについては、生物と化学、物理と地学に分けた方が良いのではないか。
　生物分野に関わる産業界や学問分野のニーズに十分応えるためには、生物の教科書を見直す必要がないか。
　地球や太陽系のことを深く知ることや、自然災害への対応力や動植物を思う心情を養うことは、社会人として必須の項目ではないか。

（他教科との関連等）

　科学と技術の関連については、例えば、直流モーターについて、電気を流して磁場が起こるのが科学、整流子の工夫があることに気付くのが技術であり、技術は科学の基礎の中にあることから、発達段階に応じて、技術的な要素が理解できる時期を検討する必要がある。
　他教科との関連を考える場合、例えば、技術では、物理で学ぶ法則や規則性を違った側面から見ている面がある。同じキーワード、同じ言葉を使っている場合でも、違った意味を付与していることに気付く必要があり、単につなぎ合わせてもうまくいくものでないことも配慮する必要がある。
　科学技術というが技術がすべてである。日常生活の中で、科学技術を直接実感することは少なく、科学は技術の背後にあり、技術を実現する理論にとどまる。
　力学を構成する際、重力や摩擦といった現実をみながら内容を構成することにより、技術的なことを考えるときの基礎となるような内容を構成することができるのではないか。
　他教科との関連については、一番大きな課題は「環境」である。現状では理科と社会科とで「環境」の扱いに違いがあることから、学校教育の中で「環境」をどう教えていくのか、関係教科間の連携というものを十分に考えていく必要がある。
　「環境」については、学校教育の中で今後どのように扱ったらよいか、特に理科の中でどのように取り入れていくか、改めて議論する必要がある。
　他教科との関連を考える場合、英語科や国語科との関係についても検討していく必要があり、例えば、教科書を作成する段階で、関連教科でお互いに意見交換をする場を設定してみてはどうか。
　子どもたちに論理的思考力を身に付けるためには国語力も必要であり、比べたり、抽出したり、関連付けたりすることの力を付けることは、理科でも、国語でも、算数でも必要となる。
　総合的な学習の時間については、科学とか環境とかいった視点を入れて、目標と内容をはっきりさせた方がよい。具体的には例えば理科や国語、社会の学習の拡充の時間として充てることも許容するが、ねらいは論理的思考力の育成とするなど明確にさせてはどうか。
　総合的な学習の時間において、科学的な処理、思考、あるいは観察、実験といったものをもう少し弾力的に、理科の授業の延長的なものでできるようにしてはどうか。
　総合的な学習の時間と教科の関係について、教科の基礎の上に教科横断的な総合的な学習を行うというより、教科の基礎の上に教科としての発展がある。このため、総合的な学習の時間を特設するよりも各教科が連携し教科の中で横断的に取り扱った方がよい。
　学習指導要領の不断の見直しの一環として、高等学校の理科の必履修科目については、理科基礎、理科総合A、理科総合B、物理、化学、生物、地学のを付した科目の中から、2科目4単位の選択必修に変えることを検討してはどうか。

4．理科の指導方法の工夫・改善と指導力の向上等

（基本的な考え方）

　資料で示されているような改善の具体例など進んだ取組を広く周知、活用して指導の改善を図ることが大切ではないか。
　理科の好き嫌いやペーパーテストができるかどうかなど、いくつかの場合に分けて、指導法を検討してはどうか。
　一人の教員が全教科を幅広く担当する小学校においては、教員を支援して理科教育を充実する仕組みが必要ではないか。
　小学校では現在理科教師の数が減ってきているが、理科専科に高学年の指導が任されてきたことも一つの原因と考えられ、教員の資質向上の観点からは、理科の専科ではない教員にいかに理科の指導方法の工夫改善等に取り組ませるかを考えていく必要がある。
　理科教育で重要なことは、単にペーパテストの選択肢が選べるということではなく、話し方とか論理を展開する方法などをしっかり身に付けさせる必要があることから、国語や算数、社会などの指導力も持った教員が指導する方がよいのではないか。
　現在の社会の状況の変化等を考えた場合、一人の教員が全てを教えることが難しくなってきている小学校の現状を踏まえ、また、子どもたちの疑問に答える場合にも、理科を専門とする先生の場合の方が、いろいろなことを提示できて、いろいろなことを考えさせることができることを踏まえると、小学校でも理科専科を導入すべきではないか。
　教育の問題を考える場合、専門的に優れた人が、必ずしも教え方が上手であるとは限らないということも考えておく必要がある。
　言葉で表現し、論理的に表現したりすることは、すべての学問の基礎であることから、理科だけでなく全部の教科で行うべきではないか。
　子どもの自発的な意見を引き出すことは大事であるが、授業後には、正しい科学的知識を持った専門家が、客観的に正しいとされている内容をきちんと定着させ、これに基づいて、子どもが次の考察をできるようにすべきではないか。
　大学時代に理科を専攻していない小学校教員に対しても、理科の趣旨や内容をきちんと伝えることができるような工夫をする必要がある。
　高等学校の教員は、子どもたちが理科をどのように学んできたかをしっかりととらえる必要があるため、小・中学校の教員との交流が大切である。

（指導方法の工夫・改善と指導力の向上等）

　「ゆとり」を本当に具現化するような教科書の構成や実験結果が定められた結論に導くための誘導的な処理を行うような単なる検証実験にとどまらない実験の展開の仕方を開発する必要がある。
　実験は、本当は検証実験しかすることができず、それから法則を導くことはできない。実験の内容を精選して大事な基礎・基本を確実に定着させるために使いたい。確実な知識に結び付いた実験は生徒たちに試行錯誤をしたい気持ちをかき立てる。
　子どもたちが具体的に操作をしたり、体験をしたりすることを重視する指導が大切。また、生活に結びつけられる、生活と密着した指導も検討すべき。これらに加え、小・中学校、義務教育における系統性を見通した指導を考える必要がある。
　学校においては、ともすると子どもたちになるべく早く結論を求める指導に陥りがちであるが、小学校から中学校にかけては、じっくり観察・実験に取り組ませ、じっくり考える楽しさを大切にすべきではないか。
　周期律を覚えたりかけ算九九を覚えるといった暗記もあるが、理科は暗記だけではすまず、一つ一つの内容を子どもなりに理解できる論理性をもって教えることが重要
　授業を考えるとき、実験操作には必然性があり、これを意識した指導方法の改善、すなわち指導方法を改善した場合、どんな力が子どもたちに育成されるのかといった点に留意し、指導方法改善のモデルを提示していく必要がある。
　地学分野は教室に入りきらない素材を対象としているので、今後とも野外観察を重視することが大切である。例えば天気について、天気予報を見て判断するのではなく、実際に自分の目で空を見て判断するといったような、日常の現象を注意深く見る目を持つような指導の工夫が必要である。
　グラフ指導等、観察、実験の技能の指導については、単なるスキルとして行うのではなく、探究の過程や全体の流れの中で位置付けないと習得率が悪い。
　座学と実験、ITなども活用して論理的に思考したり、考えるプロセスのトレーニングを行う必要があるのではないか。
　理科や生活科、総合的な学習の時間の中で、子どもたち自身に考えさせ、自分の言葉で語らせ、実生活の中で活用することによって、基礎的な学力や学習したことが定着するが、そのための時間が不足しているのではないか。
　高等学校においては、従来の板書スタイルの授業から、討論や議論をさせるような生徒の変化に対応した新しい指導法が必要ではないか。
　優れた指導力を持つ教員の授業を観察することなどを通して、授業の組み方、実験の仕方等を学び取るような、教員の指導力を向上させる機会が必要である。
　テスト問題を作るため、わざわざ実験を組むのではなく、もっと身近にある題材を活用した方が生徒の興味を引くのではないか。
　理科では、興味・関心を高めるため、実際に観察・実験を行ったり、見てみたりすることが重要であり、そのための環境を整えることが大切である。また、観察・実験を行うことが難しい場合、コンピュータなどを有効に活用したシミュレーションやモデリングを行うことも大切である。
　コンピュータは大事な道具ではあるが、コンピュータがなくともいろいろなことができるのも事実であり、例えば、論理的な考え方を子どもに身に付けさせるときなどは、コンピュータをどのように活用するのかということに留意すべきである。
　コンピュータの利用については、勉強することの基本が身に付いていない場合、思考能力の発達といった点で問題もあると考えられるので、中学校段階以降の導入で十分と考えられる。
　教科書をはじめとする教材の充実を図ることは、児童生徒に対してだけでなく教師にとっても指導の充実につながるのではないか。
　教科書については、読んで面白く、論理的に考えられるような積み重ねのある教科書やストーリー性のある教科書を作成すべきである。
　多様な教科書があってもよいし、正規の教科書で難しい場合は、副読本のようなものを工夫し、生徒が興味を持って自分で学習に取り組めるようにしてはどうか。
　諸外国のように教科書の量を増やし、その中に論理的な流れを作り、学校で取捨選択しながら教えていくつくりにできないか。
　中学校では、観点別学習状況の評価に関して、保護者には必ずしも十分理解されていない面もあるが、教員は授業改善等を行う場合に観点を意識して取り上げるようになっている。
　目標に準拠した評価（いわゆる絶対評価）は、大学評価などに使われているが、大学自体が日常的に努力している事項の高度化を目標とする達成度評価なので、可能になっている。日々新しいことを学ぶ学生に目標を立てさせて評価をするようなことはしていない。初等中等課程の生徒に目標を立てさせても、極端に低い内容になるか、言われるまま書いた本人のものでない目標にならざるを得ず、目標に準拠した生徒評価は疑問である。勉強、スポーツは相対評価し、意欲や友達と仲良くできるかというような観点はそれとは別に、言葉で励ますようにしたい。

（教員養成及び教員研修の在り方等）

　理科の授業の充実を図るため、教員養成の在り方や教員採用試験における工夫、教員研修に工夫が必要ではないか。
　教員養成において、教科教育の履修単位数の在り方や介護実習も含めた教育実習の在り方を見直す必要があるのではないか。
　教員養成のカリキュラムを考えた場合、現状では4年間では困難な面もあり、6年制といったことも検討すべきではないか。
　小学校では大学時代に理科を専攻した教員が少ないことから、小学校教員に対する支援策や環境整備が必要。
　小学校の教員となる学生に対して、教員養成の中で、一人一人に実験や観察を個別的に行わせるような取組を行うことが現実的で効果的である。
　小学校の場合、初任者が理科を指導することが難しい場合があり、初任者研修の在り方についても検討が必要ではないか。
　研修については、受講しない教員に問題があり、受講できる対象教員数を増やすとともに、全員が受講できるような仕組みとして、希望制から受講を義務付けるようなシステムに変えてはどうか。
　学問体系を子どもたちに教えることは非常に難しいので、教育原理だけでなく自然の認識の仕方などの自然観を教員が身に付けられるよう国を挙げて教員の人材育成をすべきではないか。
　教員の資質向上が求められる背景には、理科教員の人材不足が言われている。短期的には、管理職の研修を長期的には管理職養成教員の資質向上が望まれる。特に、現在の管理職には、最先端テクノロジーやバイオ技術など、日本の未来を担う児童生徒の育成を担っているのだという認識を高めさせることが急務である。
　一般の教員については、教育センターなどの校外研修よりも、日々の授業づくりや単元構成、事前実験や教材研究など、校内研修を充実することが望ましい。「理科大好きスクール」では、このように校内研修が充実して教員がやる気をもって向上している現実がある。
　地域の教育資源等を活用できるように教員のマネジメント能力の育成も必要ではないか。
　研修内容について、最近では、理科等の教科の指導法等に関する研修の割合が減少しているのではないか。
　理科におけるコンピュータの活用については、教員の力量による温度差があるので、活用技術を高めるための研修が必要である。
　教育用のデジタル教材や理科ネットワークの教材は、活用の仕方を工夫することにより、効果が上がることから、教員研修等で取り上げ、広く普及していくことが大切である。
　観察・実験を充実したものとするためにも、特に安全性の面に留意する必要があり、こうした点も含めて研修が必要ではないか。
　最近では、大学や学会等でも教員に役立つ研修の企画が増えており、そのような場に教員が余裕をもって参加できるようにする必要がある。
　高等学校の理科教員について、新たな視点で新しい目標に向かって改善する意欲やエネルギーが必要で、企業等において研修を行ってみてはどうか。
　熱心な教員を1、2年間程度、大学へ留学させたり、インターンシップを経験させる制度があってもよいのではないか。
　高等学校では、意欲のある教員は、大学院留学制度を活用して、最新の知識の獲得に取り組んでいる。
　今後教員が大量に退職することから、良い教員を採用する仕組みを検討すべきである。その際、大学院を出た人でも小・中学校の教員になれる道を開いて欲しい。
　理数系の多様な人材に教職への道を開く観点から、2年間の修士課程で教職の資格を取得できる専門職大学院の設置を検討してはどうか。

（支援策）

　理科教育の充実を図るためには、よい取組を行っている学校や教員を評価、表彰し、支援していくような施策を行うべきではないか。いいところはどんどん取り上げるような方向に持っていっていくべきではないか。
　日本化学会で実施している出前授業は、学校から非常に好評であり、今後は教育委員会等ともうまく連携を図りながら、取組を進めていくことを考える必要がある。
　教員の指導力、資質・能力の向上に理科教育センターの存在が大きな意味を持っていたことから、その復活を考えてみてもよいのではないか。
　観察・実験を充実して行うためにも、十分な時間を確保したり、少人数で取り組めるような環境を整えたり、例えばティーム・ティーチングのような複数で指導できるような体制を整備したりすることが重要ではないか。
　学校における備品等の購入予算は厳しい現状にあり、理科教育振興法による予算補助を増額するなど、学校で十分な教育ができる環境を整備するための予算の増加が必要である。
　授業で活用できるデジタルコンテンツは増えてきているので、これらを有効に活用できるよう理科室等の環境の整備・充実が必要である。
　小学校の場合、保護者の科学的なリテラシーが大切で、子どもと大人が一緒に学べる科学のいろいろな施設があるとよい。
　学習指導要領を充実させていくだけでなく、家庭でも家族と一緒にできる実験やそれを補足するような副読本などが、役に立つのではないか。
　SSH（スーパーサイエンスハイスクール）や理科大好きスクール等の重点化事業は評価できるので、もう少し数を増やす方向で検討し、裾野の拡大を図るべきではないか。
　SPP（サイエンス・パートナーシップ・プログラム）については、生徒に良い刺激を与えるとともに、学校の教員が熱心に取り組むなど指導法の改善にもつながっており、近隣の学校にも刺激を与えるなどその評価は非常に高い。
　SSH、SPPなどの各種支援策は中・長期的に行ったり、継続的に行うことで教育課程にしっかりと位置付けた取り組みが期待できるのではないか。
　SPPについては、特に金額の規制などなく、ある意味で学校をエンカレッジする役割を果たしており、応募が増加することが期待される。一方、SSHは3年間の研究期間に一定の成果を出すことが求められており、継続的に行うものとは性格が違うものであるが、より良い取組については、継続を考える必要がある。
　特別な予算的な措置をすることなく、大学教員に子どもと保護者に指導していただく機会を設けたところ、勉強する先に何があるのかがよく分かるという評価であった。
　現在の「理科大好きスクール」等各種施策で成果の上がった学校に重点を置き、成果主義で裾野を広げていく方策が望まれる。

理科専門部会（第3期第1回～第8回）における主な意見（論点ごとに整理）

1．理科教育の現状についての認識と課題

（理科教育の現状）

（理科教育を考える上での課題）

2．今後重視すべき理科教育のねらいと育てたい力等

（基本的な考え方）

（理科教育のねらいと育てたい力）

3．理科の教育内容の系統性及び適時性等

（基本的な考え方）

（小学校）

（中学校）

（高等学校）

（他教科との関連等）

4．理科の指導方法の工夫・改善と指導力の向上等

（基本的な考え方）

（指導方法の工夫・改善と指導力の向上等）

（教員養成及び教員研修の在り方等）

（支援策）