資料4 教職大学院における「実務家教員」の在り方について(案)

 専門職大学院においては、理論と実務の架橋を図り、実践的な教育を行う観点から、実務家教員を専任教員のうち3割以上置くことを義務付けている。特に、教職大学院においては、学校教育に関する理論と実践の融合を図るため、専任教員のうち4割以上を教職等としての実践経験を有する実務家教員とすることとされている。
 実務家教員の範囲等については、既に専門職大学院設置基準等により規定されているが、教職大学院における教育を、その制度創設の趣旨からも充実したものとなるためには、その適切な運用が不可欠である。このため、教職大学院制度の在り方を検討した本専門職大学院ワーキンググループとして、教職大学院における実務家教員の在り方について、とりまとめたものである。

1.実務家教員の在り方・役割

 教職大学院におけるカリキュラムにおいては、学校教育に関する理論と実践との融合を意識した指導方法・内容である必要があり、このため、実務経験を通じた具体的事例等を基とした内容を展開することのできる、実務家教員の役割が重要となる。

 しかしながら、このような実務家教員に求められる役割は、単に事例についての知識の豊富さだけではない。教職大学院における指導内容が、実践の構造化、臨床的な実証研究の構築であることから、実務家教員には、事例や事例知識等をコーディネートしていく役割とともに、理論と実践の架橋を体現する者として、研究的省察を行い、リードする役割が求められる。

 また、教職大学院におけるカリキュラム全体から鑑みた場合、特定の科目のみにおいて実践事例が扱われ実践性が意識されるものではない。このため、教職大学院においては、実践的な内容は実務家教員のみにより分担・分業されるべきものとの考えをとるべきではない。実務経験を有する実務家教員といわゆる研究者教員とがともに協働しつつ、全体として実践的内容を意識した教育が展開される必要がある。

2.実務家教員の範囲

 専任教員に含まれるべき実務家教員の範囲については、専門職大学院設置基準等により、担当する専攻分野に関する、(1)高度の実務能力、(2)高度の教育指導上の能力、(3)実務の経験、の3つの観点から定められている。

(1)専攻分野に関する高度の実務能力

 高度の実務能力に関しては、専門職大学院設置基準等上、「専攻分野における、高度の実務の能力を有する者」、「専攻分野について、高度の技術・技能を有する者」等と定められている。

 この高度の実務能力の範囲については、教員等学校教育関係者の場合のほか、学校教育関係者以外の者であっても、幅広く想定され得るが、いずれの場合であっても、担当科目に対応した内容について評価する必要がある。

(2)担当する専門分野に関する高度の教育上の指導能力

 高度の教育指導上の能力に関しては、専門職大学院設置基準等上、「その担当する専門分野に関し高度の教育上の指導能力があると認められる」者と定められている。

教員等学校教育関係者の場合について

 実務家教員においては、実務経験から来る実務の経験知・識見を単に有するのではなく、知見を理論化し一般化した上で適切に教授できるなど、担当する専門分野に関し、高度の教育上の指導能力を有する者である必要がある。

 この評価方法として、従来の研究者教員の場合と同様の研究論文を求められるものではないが、例えば、大学や教員研修センター等での指導や研究会等での研究発表等、校内研修での実践発表等などの実践的・実証的研究成果の発表記録や著作等から、担当する専門分野に関する高度の教育上の指導能力を有すると認められる者であることが適当である。

 また、特に、理論と実践の融合を目指す教職大学院における授業においては、実務家教員には、実践知と理論との架橋や、実践経験の研究的省察をリードすることが求められる。このため、上記研究成果の指導や発表等に係る記録や著作等においては、理論や実践の一般化に係る内容が包含されている必要がある。

教員等以外の者の場合について

 教員等学校教育関係者以外の者の場合、多様な経歴を有する者が想定されるため、一概に考え方を示すことが難しいが、学校教育関係者の場合と同様に、実践的・実証的研究成果の発表記録や著作等から、担当する専門分野に関する高度の教育上の指導能力を有すると認められる者であることが適当である。

(3)専攻分野における実務の経験

 実務経験に関しては、専門職大学院設置基準等上、「専攻分野におけるおおむね5年以上の実務の経験を有する」者と定められている。

教員等学校教育関係者の場合について

 教職大学院における教育は、特に現職教員学生に関しては、一定の実務経験のある者を対象に学校教育において広く見通しのとれるスクールリーダーに必要な知識・技能を修得させるものである。この観点から鑑みれば、指導にあたる大学教員は実務家として学生に対し適切な指導を行い得る、一定の幅の広さを持つ経験を有する者である必要がある。

 この観点からいえば、例えば教諭の場合、標準的な勤務経験(担任サイクル、主任等の経験)を考えれば、概ね20年程度の経験が必要である。

 他方、教諭としての経験の後、校長・教頭等の管理職、指導主事等の経験を有する場合、その職務の性質の相違を勘案しつつ、教諭としての経験期間よりも長く評価することにより、全体として同等以上と評価し得る期間である必要がある。

 上記の期間の換算にあたっては、学校内での教員以外の勤務経験や、幅広い教育関連行政における勤務経験、教育関連業務への従事経験等はこれに含めることができるものとすることが適当である。

 現在、大学の専任教員等となっているいわゆる「元実務家」の場合、実務家教員として認定するためには、実務経験の期間と実務から離れてからの期間とを勘案して評価することが必要である。概ねの目安としては、実務をやめてから5~10年以内であることが標準である。この場合、実務をやめる前の実務経験の長さを考慮する必要がある。

教員等学校教育関係者以外の者の場合について

 教員等学校教育関係者以外の者の場合、担当科目と実務の経験との関連が認められる限り、専攻分野における実務経験として評価され得る。

 教員等学校教育関係者以外の者の場合、多様な経歴を有する者が想定されるため、一概に考え方を示すことが難しいが、それぞれの分野における特性に鑑みつつ、学校教育関係者の場合と同等以上と評価し得る経験を有する者であることが適当である。

 いわゆる「元実務家」の場合の考え方についても、一律な基準を示すことは難しいが、それぞれの分野の特性を考慮に入れつつ、教員等学校教育関係者と同様の観点から評価されることが適当である。

3.実務家教員の構成について

 実務家教員については、担当科目との関連が認められる限り、その実務経験は幅広く評価し得るが、全体としては、学校教育に関する実務経験者を中心として構成されることが適当である。
 このため、必要専任教員数の3割以上は、教員等学校教育関係者とすることが適当である。

お問合せ先

高等教育局専門教育課教員養成企画室

(高等教育局専門教育課教員養成企画室)