2.基本的考え方・実習の設定に当たっての留意点

  1. 教職大学院における実習は、学部段階での教育実習とは質及び量の両面において明確に違ったものとなるよう、テーマ・目的、あるいは内容・方法が明確に計画された実習である必要がある。
  2. 学校現場の現代的課題と具体的に関わることのできる実践的資質能力を育成する観点から、教育理論との融合を視野に入れたものになる必要がある。このため、実習の内容は、「基本科目(共通科目)」部分又は「コース(分野)別選択科目」部分における履修・修得内容との連続性・体系性のあるものとする必要がある。
  3. 特に学部新卒学生等の実習については、現在行われている初任者研修の内容との整合性・関連性に留意したものとなる必要がある。また、学部段階における教育実習生の指導を担当させるなどの工夫により、自らの知識・技能の定着を図るとともに、他の教員に対する指導・助言に関する力量の育成を図る契機とし、これを通じて即戦力としての力量の形成を図ることも重要である。
  4. 学部段階における実習においては、観察が比較的大きな割合を占めている。これがややもすると実習生の傍観者的態度を生んできた。教職大学院における実習においては、指導教員の指導・助言の下、特定の問題・課題の解決策を立案し、それを実地に検証することを通じて、主体的に教育計画の立案とその実施、学校運営に関わる活動など幅広く学校教育活動に参画し、実習校の責任ある当事者の一員として参加できるようにする必要がある。このため、当該大学院生の行う実習としての業務を校務分掌や年間計画に組み込むことなど具体的な在り方を含め、教職大学院と実習校との間で十分な実習計画を立てることが必要である。
  5. 実習は、学校種、規模、立地地域等タイプの異なる複数の学校で履修することも望ましい。
  6. 実習を行う学生個々の指導力の向上はもとより、広く学校教育を改革する方向性を目指すものである必要がある。このことから、実習の計画においては、学生個々の指導力の向上のみならず、実習校全体又は地域の学校全体の教育力の充実につながる視点が組み込まれていることが望ましい。
  7. 実習においては、実習校に過重な負担となることのないよう実習校に対する適切な配慮が必要である。また、教職大学院内部においても特定教員のみに過重な負担がかかるようなものであってはならない。しかし一方で、学部段階における実習とは異なり、免許状を持った者が一定期間計画的・継続的に学校教育活動に参加するものであり、当該学校における教育活動を支える一員として寄与することが期待される。
  8. 実習が実習校における教育研究活動にとっても成果をもたらすものとなるよう、実習計画の立案に当たっては実習校との間で十分な計画の調整が図られる必要がある。

 なお、実習が学生の資質能力の向上に資するものになることは当然であるが、他方教職大学院における実習は、教職大学院と実習校との密接な連携のもと、学校現場における現状を前提として明確化されたテーマ・目的等に向けて計画され実施されるものであることから、その実施を通して、大学における教育・研究の展開にとっても意味のあるものになることが期待される。

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