資料4 (補論)専門職大学院におけるカリキュラムについて(案)

1.全体構造

  • 専門職大学院における教育課程・教育内容は、大きく分けて、すべての学生が共通的に履修する「共通科目(基本科目)部分」と、「学校における実習」部分、各コースや専攻分野により選択される「コース(分野)別選択科目部分」に分けられる。
    全体構造
  • これまで、実践に関する内容が教育実習にのみ負わされており、理論に関する科目と、実践に関する内容が区々になっていた。このため、理論と実践の統合は双方の受講という形で学生にのみ負わされていた。
  • 専門職大学院において、学校現場における実践力・応用力など教職としての高度な専門性を育成するためには、学校教育における理論と実践との融合を強く意識した体系的な教育課程を編成することが重要である。
  • このため、「理論と実践の融合」の観点から、それぞれを人・科目が役割分担するのではなく、同じ人・科目が実践と理論を架橋する発想に立つ必要がある。
  • 具体的には、1授業観察・分析や現地調査(フィールドワーク)など学校における活動自体に特化した科目を取り入れるとともに、2個々の科目においても、ケーススタディ、授業観察・分析、シミュレーション授業、現地調査等を含めたものとするなどの工夫が必要である。
  • また、実践的な指導力の強化を図る観点から、学部段階における教育実習をさらに充実・発展する観点から、「学校における実習」を含めるものとする。具体的には、例えば10単位程度を下限とする。
     この場合、現職教員の学生については、入学前の教職経験を考慮し、一定の範囲内で、教職経験をもって専門職大学院における実習とみなすような配慮が必要である。具体的には、例えば15単位程度を上限とする。

2.「共通科目(基本科目)部分」

  • 専門職大学院において、学校現場における中核的・指導的な教員に必要な資質・能力を育成するためには、当該学生がどのようなコース・選択をとる場合においても履修する基本的要素を共通的に定めておく必要がある。
  • この共通的・基本的内容は、大きく区分すると以下のようになる。
    1. 教科の実践的な指導方法に関する内容
       (学習指導要領・教科書編成の現状に関する俯瞰、カリキュラム編成の課題、 比較教科教育論、など)
    2. 学校経営・学級経営に関する内容
       (学級経営論、教育組織、学校と家庭・地域の関係、など)
    3. 生徒指導、教育相談に関する内容
       (生徒指導論、教育心理学、学校カウンセリング、など)
  • また、特に、学校現場における実践力・応用力など教職としての高度な専門性の養成の観点から、
    1. 対人関係能力の育成に関する内容
    を含める必要がある。
  • これら共通的・基本的内容は、現職教員学生と学部新卒者とが共に履修することが適切な科目、別々に履修することが適切な科目があり得るが、いずれの内容についても履修する必要があることには差異はない。
  • これら共通的・基本的内容について、各専門職大学院に共通する基本的要素として、設置基準上明らかにしておく必要がある。
  • なお、これら共通科目(基本科目)の履修に当たっては、コース(分野)別選択内容の基礎となる理論の修得とともに、その理論が単なる理論のための理論ではなく、学校における教員の実践を裏打ちするものとするとともに、様々な事例を構造的・体系的に捉えるためのものとなるため、ケーススタディ、授業観察・分析、シミュレーション授業、現地調査等を含めたものとするなどの工夫が必要である。

3.「コース(分野)別選択部分」

(1)コース(分野)の設定の考え方

  • 各学生は、共通科目(基本科目)を確かな土台とした上で、各コース、学生の専攻分野、研究テーマ等に応じた科目を履修することとなる。
  • コース(分野)設定においては、
    1. 一般教授学、心理学、教科教育法学など、個別学問体系を基礎とする科目群を、コースや専攻分野として構成する場合や、
    2. 「教科カリキュラム研究科目群」「教育組織マネジメント研究科目群」「教育臨床研究科目群」など、各学生の関心領域に応じた科目群を、コース・専攻分野とする場合、
    3. 教育現場における今日的課題を設定し、その解決の研究に必要な、学問分野の枠を超えた科目群の履修(例えば「学力定着のための教材開発」における、教科教育法、認知心理学、学習集団論、など)
    など、その設定方法は各専門職大学院の特色や得意領域、指導目標等により様々な方法があり得る。
  • このため、各専門職大学院が、その特色や得意領域等を考慮し特色ある教育課程を柔軟に編成できるよう、弾力的・大綱的な基準とする必要があるのではないか。

(2)フィールドワーク的な内容のとらえ方

  • 学校現場における実践力・応用力など教職として高度な専門性を備えた教員を育成する観点から、事例に関する知識とそれを構造的・体系的に捉える知見を踏まえつつ、現場の課題に実際に取り組むことのできる力量の育成が必要である。このことから、特にコース(分野)により選択する内容において、現地調査(フィールドワーク)や実務実習的な内容が含まれることが重要である。
  • この現地調査(フィールドワーク)や実務実習的な内容の実施の仕方としては、
    1. 設定したテーマにおける課題演習・研究に関する科目の中で、必要な授業・講義、事例研究・分析、授業計画作成等とともに、現地調査(フィールドワーク)や現地活動(例えば研究授業実施など)を含める場合のほか、
    2. 各学生の課題に応じた、学校での実務実習(例えば、教科カリキュラム編成・運営実務、教育組織マネジメント実務の実習など)を課す場合、
    など、その実施方法は、各専門職大学院の特色や得意領域、指導目標等により様々な方法があり得る。
  • いずれの場合においても、その実施に当たっては、大学の指導教員と調査・実習校の指導教員との間で、指導計画、実習指導、事後分析指導等に当たって、密接な連携・協力が必要である。

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