3.教員養成分野において専門職大学院に期待される主な目的・機能

 近年の少子化の進展により、一部都市部を除く各地域で各学校が小規模化し、一学年1学級の学校も珍しくなくなっている。このため、学年主任などが他の教員を指導する機能が低下しており、また同じ教科を専門とする教員も同一学校内に少なくなっている。このような中で、複数の教員がお互いに指導力を向上させ、教員全体としての指導力の維持・向上を図るためには、学校内のみならず広く地域単位で中核的な教員が求められている。

 また、教育指導体制に関連し、現在の教員の年齢構成を見ると、大量採用期の40歳代から50歳代前半の層が多く、今後この世代が退職期を迎えるとともに、逆にいわゆる中堅層が少なくなっていることから、今後、量及び質の両面から、優れた教員を養成・確保することが極めて重要になっている。

 さらに、教科等における指導力を見ても、これまでの学級単位における各教科の指導から、グループ指導、少人数指導や習熟度別指導などクラスの枠を超えて多様な学習集団に対応した指導方法の理解が必要となっており、また総合的な学習の時間の実施や選択教科の拡充など、教科の枠を超えた教科指導の理解が必要になっている。
 このため、従来の教科や学級の枠を超えて、多様な指導形態・指導方法を円滑かつ効果的に実践できる教員が求められている。

 このような教員への社会的要請を踏まえると、「開放制の原則」の下での教員養成システムを前提に、新たに専門職大学院制度を活用する場合、教員養成における今日的な課題への早急な対応の必要性や、各大学における大学院レベルでの取組みの実績等を考慮すると、当面、教員養成分野における専門職大学院については、

  • ア)現場での一定の教職経験を有する小・中・高等学校等の現職教員を対象に、地域における指導的教員や、将来、指導主事、さらには学校の管理者となる上で不可欠な確かな指導理論と優れた実践力・応用力を備えた「スクール・リーダー」の養成、
  • イ)学部段階で教員としての基礎的・基本的な資質能力を修得した学生の中から、さらにより実践的な指導力を備えた「即戦力としての新人教員」の養成、

 の目的・機能が特に期待される。

 また、こうした機能の一環として、教員免許状を持たないまま大学を卒業し、様々な社会経験等を経た者が、改めて教職を目指す場合の一つの有力な養成機関としての機能についても、学部の機能を活用しつつ各大学の判断・工夫により対応することが期待される。
 このため、現時点においては、こうした機能も視野に入れつつ、ア)及びイ)の目的・機能を担う専門職大学院に共通的に必要な要件等を検討する必要がある。

 一方、上記の目的・機能のほか、隣接するものとして、例えば、

  • ウ)小・中・高等学校等の管理者等に必要な高度なマネジメント能力に特化した養成機能、
  • エ)大学等高等教育機関の管理者や高等教育政策担当者の養成機能、
  • オ)国際的な開発教育協力の専門家など幅広い教育分野の高度専門職業人の養成機能、

 等が考えられ、今後、その重要性が高まることも予想される。
 こうした機能・目的については、当面、社会的な要請を踏まえた個別大学の主体的な検討により、一般の専門職大学院として設置することも含め、先導的で、意欲的な取組みが多様に展開され、一定の実績が蓄積されることがまず重要であり、今後、そうした実績の蓄積を見ながら、必要に応じて共通的に必要な要件等を整理することが適当である。

お問合せ先

初等中等教育局教職員課