保育総合施設に関する意見書
○ | 総合施設問題に臨む基本的な考え方 総合施設の創設は、昨年6月、幼保一元化問題と一般財源化問題の中から急浮上したものであることから、保育所現場では不安・懸念の声が強い。現在の政治の流れの中では、新しい「総合施設」が現行の保育所の基準を下回る託児施設となり、保育の質を下げ保育制度を大きく崩す危険性も大きい。そうならぬことを強く願い、この問題を通して現状よりもより良い方向に向かうことができるように積極的に考えていきたい。この問題を考えるとき必要なことは、子どもと子育てをめぐる現状を原点のところから見つめ、そこから出発することである。 家庭・地域の子育て力の著しい低下から、我が国の子どもの育ちは、かなり危機的な状況に置かれている。少子化が大きな問題となっているが、子どもの育ちの質が実はもっと心配な状況である。 一方、保育施設も、質の低下の危機にさらされている。保育所はこれまで「児童家庭福祉」の考え方の下で「養護と教育が一体となったもの」として保育の質を高めてきたが、近年「親の就労保障のための託児施設」としての社会的要請に効率的に応えようとする規制改革の流れによって著しく荒らされようとしている。 また、幼稚園は「幼児教育施設」としての評価を得て来たが、とくに私立幼稚園の場合、厳しい市場競争にさらされ、「託児施設」としての機能を合わせ持ち始めている。 「児童家庭福祉」の視点を欠いたままでの「託児施設」への傾斜は危険である。 こうした危機的な状況から道を拓くためには、福祉と教育という、これまで分立して来た二つの分野が、近い将来の統合も視野に入れて共に「次世代育成支援」に当たるという考え方を思いきって打ち出すべき時に来ているのではないか。「保育総合施設」を、この考え方に沿った試みの一歩として位置づけてはどうか。 もう一点、これまで社会的な支援が立ち遅れていた、家庭で育てられている0〜2歳児とその家庭への支援の強化が緊急に必要である。この分野では、この年齢の子どもの保育について蓄積のある保育所が力を発揮することが求められているが、とくに、新たに創設される「保育総合施設」は、こうした機能も併せ持つ施設となる必要がある。 |
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○ | 「保育総合施設」の具体的な在り方 上記に述べた基本的な考え方が重要であり、具体的な問題は比較的柔軟に考える必要があるが、具体的な在り方について、私たちの考えを以下に示してみたい。 (「新しい第3の施設」として求められる三つの機能)1.既存の保育所、幼稚園と並立する新しい第3の施設として創設し、下記の三つの機能をあわせ持つ総合施設とする
(現行の保育所、幼稚園の基準の高い方の基準を適用) 2.保育総合施設を、質の高い施設とするために、職員の配置、施設等の最低基準は、原則として、現行の保育所、幼稚園の基準の高い方の基準を適用すべきである。調理室必置の基準は、保育総合施設においても保持すべきである。保育者の資格については、全ての保育者が保幼両資格を持つことは要求されないが、3歳未満児の保育に当たる保育者は保育士の資格を持つ必要がある。 (地域に密着した小規模な施設が可能なように) (要保育認定による入所と自由な入所決定による入所の共存) (保育費用は国が決める最低の基準に基づいて市町村で決定する) (在宅子育て支援として備えるべき必須機能) (ソーシャルワーカーを配置するための基本的費用の必要) (設置主体は市町村、社会福祉法人、学校法人の三者に限定するべき) (「保育に欠ける」規定の在り方について) (保育総合施設と保育所、幼稚園の条件等のバランスを保つ必要性) (地域の状況に対応できる柔軟な制度の必要性) (既存施設との共存の必要性) |
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○ | 引き続き検討すべき課題 (教育、養護、保育、幼児教育等の概念の整理見直しについて) (保育費用の一元化への検討について) (次世代育成支援への社会的資金投入拡大について) |
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