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総合施設について(中間とりまとめ)

平成16年5月13日
社会福祉法人 日本保育協会


 骨太の方針2003で決定された「就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設」について、政府及び与党のそれぞれの場において検討されています。具体的な方向性はまだ明確ではありませんが、現時点における当協会の基本的意見は、次のとおりです。
 なお、今後具体的な議論が進んだ段階で、更に意見を述べることにします。


1. 理念を明確に
 保育所、幼稚園は、それぞれ固有の役割・機能が明確になっています。新たな構想の施設は、全ての子どもを対象とした子育て支援施策として考えられていますが、「教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設」とは、どういう方向を目指すのか理念を明確にすべきです。

2. 現行制度との違いを明確に
 検討されている施設の3つの機能(1次世代育成支援・幼児教育のための施設、2地域の子育てニーズに応えるための施設、3待機児童の解消に資する施設)は、一部の地域(特に過疎地)においては、有効に活用されると思われますが、地域によっては必ずしも必要とされません。
 また、保育所の役割として、特に民間保育所においては、これらの課題に既に取り組んでいるところであり、屋上屋を架すような制度であってはなりません。

3. 制度一元化の危惧
 幼保一体型総合施設(という名称は適当ではなく、例えば子育て中核施設等)は、全ての子どもの健全な育ちを保障するような仕組み、子育て中の親を支えるような仕組み(福祉施設なのでしょう)になるように願っていますが、保育所と幼稚園は、役割・機能が違い、また、それぞれが使命を果している中で、新たな施設が将来、両制度の一元化を進めるようなことは避けなければなりません。

4. 子どもの福祉の視点を
 保育所、幼稚園の既存制度のほかに、就学前児童のための子育て支援施設として、選択肢が増えることでは、意義あるものと言えますが、子どもの福祉の視点、子どもの幸せを中心に議論されるべきです。
 子どもの育ちの視点から考えると、1日8時間以上過ごす場として、ふさわしい処遇が行われるよう、新たな施設の職員配置や調理室等の設備・運営の基準は必要です。国や市町村の財政状況や施設経営の効率性重視の観点からではなく、次代を担う子どもの健やかな育ちを中心に置き検討されるべきであります。

5. 0歳から一貫した子どもの保育の重要性
 0歳児から就学前の子どもの発達の連続性を重視した視点から検討されるべきであります。
 子どもの発達段階等を踏まえ、3歳未満児は保育で、3歳以上児は教育に重点を置く、とするいわゆる「年齢輪切り論」も−部にありますが、一貫性のある保育を実現するためには、このような考え方は適当ではありません。
 なお、骨太方針2003の「一貫した総合施設」とは、年齢を通じた一貫した保育の重要性を意味するものと考えています。
 また、保育所での教育は不十分であるという意見もあります。しかし、保育所においては、幼稚園児と同年齢の子どもの教育は、幼稚園教育要領に準じた内容で実施しています。更に保育所では、低年齢児からの子どもの生活と遊びを通じてきめ細かな「人間関係」を基本とした教育を行っており、こころと身体を総合的に育む保育所保育こそが「人間教育」であると考えています。単なる知識の積み重ねではなく、健全なこころと身体を育む教育が重要です。

6. 国の責任と市町村の関与
 新たな施設の運営など子育て支援のための費用の仕組みは、国策として国が責任をもって行うべきものであり、現行の保育所制度に準じ、市町村の関与に基づく責任体制を確立することが重要です。
 新たな施設は、エンゼルプラン、次世代育成支援行動計画との連携が重要であり、従来から総合的な子育て支援を推進している住民に身近な市町村の窓口が引き続き担っていくことが必要です。
 また、子育て支援の観点からは、働き方の見直しを図るとともに、社会で子育てを支えていくために、市町村のみならず、国や都道府県・企業等を含めて幅広く財源を分かち合うべきです。

7. 保育士の資格制度と資質向上
 保育士は平成15年から国家資格となりました。今後とも保育士の専門的能力が十分に発揮できるよう、様々な専門性を高めるための方策として、専門資格制度のあり方や研修の機会が与えられるよう研修の充実等も併せて検討すべきです。




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