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平成16年6月25日

「総合施設(仮称〉」の在り方についての意見

全日本教職員連盟


 就学前の教育・保育を一体として捉えた総合施設の創設は、地域によって幼児教育の機会が偏在している、親の就労等によって幼稚園教育を受けられない、保育所の待機児童が増加しているといった現状を見ると、幼児教育における量の拡大ならびに質の向上を促すために必要になってきている。しかし、真に子供のためになる制度の在り方を考えると、18年度実施までには、その内容について十分に検討をするべきである。
 全日教連は、小学校就学前の重要な幼児期のよりよい教育の確立という観点から、今後の検討に対して以下のことを強く望む。


 子供たちの健全な成長を第一に考えた新しい制度の確立

 幼稚園と保育所は、今まで文部科学省と厚生労働省という違った監督官庁のもと教育及び保育が実施されてきた。そのため、総合施設の設置にあたっては、対象年齢や教育・保育内容及び時間、国及び地方公共団体の費用負担の問題等、摺り合わせが必要なことが数多くある。新制度の創設にあたっては、常に子供たちの健全な成長を第一に考える視点を持ち、施設の充実・円滑な運営のために所掌する監督官庁の一元化が必要である。
 また、円滑な連携による幼児教育から小学校教育への一貫した教育の流れをつくることや、子供のたちが生涯に亘って親や地域の人とよりよい人間閑係を形成していくために重要な時期であることに十分に配慮して、論議をすべきである。


 家庭と地域の教育力との回復

 現在、子育てに自信を持てず過保護や無関心になりがちな家庭が見られたり、核家族の増加に伴い他人からの干渉を避ける家庭が見られたりするという傾向がある。そして、このような傾向が、家庭や地域の教育力の低下として大きな問題になっている。
 このような状況を鑑み、総合施設が安易に長時間子供を預ける場所になることのないようにすることが大切である。基本的意義及び役割の中にも含まれているが、親同士のふれ合い、親と教師(保育士)や専門家との関わりの場を設けるなどして、総合施設に子育て支援のセンター的な役割を持たせることが必要である。そのためには、親の責任を明確にした上での具体的な計画が必要であり、育児休暇が取りやすい環境の整備も重要になってくる。
 また、総合施設が地域に根ざした施設になるために、教育委員会が主体性を発揮するべきである。具体的には、地域のボランティアを導入したり、地域の小学校と親も含めて交流したりすることを積極的に進めるべきである。このような活動を通し、子供も親も地域社会の中で生活していることを実感し、地域の連帯感が増し、子育てが充実したものになると考える。


 就学前に必要な教育の充実

 幼児期は、就学前の非常に重要な時期であり、この時期に適切な教育を受けることは、子供の人格形成の上でも大きな意味を持つ。親の立場としても、4・5歳の幼稚園の就園率が6割近いことや、幼稚園に行かせたくても就労の関係でそれが叶っていない家庭の存在を考えると、幼児期に適切な教育を受けることを願っている。
 現在、児童生徒の大きな課題である、学習意欲の低下の問題からみても、幼児期に学ぶことの楽しさを親子共に感じることは非常に重要である。
 このような点から考えて、総合施設で1日8時間子供を預かった場合、幼稚園教育要領にしたがい1日4時間程度の教育時間を確保することは総合施設となっても必要だと考える。ただし、子供たちの豊かな心の育成の面から考えた時、一概に午前中4時間は教育、午後4時間は保育と分けてしまうのではなく、一週間、一月という長いサイクルも含め、家庭的な雰囲気の中で総合的に教育内容が盛り込まれることが大切である。
 そのためにも、具体的な教育・保育の計画が、各施設において柔軟に行える制度の確立が必要である。




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