これからの乳幼児教育と総合施設に関する考え方
2004年6月17日 |
日本教職員組合 中央執行委員長森越康雄 |
現在、就学前の乳幼児は、行政上違う管轄で展開される教育と福祉、実態としては幼稚園と保育所との区分の中で生活している。乳幼児期の子どもが保護者の生活時間、都合で違う場所で育つという二元体制は、地域の小学校に入る前期の子どもの育ちにとって、問題があると考えてきた。私たちは、子どもの閑わりを育て、地域のおとなが子どもの育ちを見守る地域の教育体制をつくることが必要であると考える。就学前の子どもにふさわしい保育と教育の場が等 しく保障されることは、子どもの権利であり、私たちの願いである。現代の子どもや保護者の抱える問題を克服するにふさわしい総合施設を地域に作り出すことに私たちは賛成である。そのためには、下記のことが最低限必要と考える。
1. | 幼稚園教育要領と保育所保育指針を合わせた保育と教育をひとしく0歳から就学前までの子どもに保障できる保育内容を作ることが必要である。 小学校での教科教育を乳幼児期におろすことや、短時間の幼稚園教育をそのまま長時間化することや、年齢を0歳までおろすといった安易な方法は問題である。これまで保育所で培われた0歳から2歳までの一人ひとりに丁寧に対応した乳幼児教育を土台に、3歳以上の仲間との楽しい遊びをとおした幼児教育を積み上げた新しい保育内容を作り出さねばならない。 現在各自治体立幼稚園は再編統合、廃止が急速に進んでいる。これまで100年以上続けられてきた公立幼稚園のとりくみが消えて行くことは教育界全体の損失である。地域の施設を有効に活用し、地域の創意工夫によって、乳幼児期の子育てに苦しみ悩む保護者に、幼稚園で積み重ねられてきた、自ら関わり遊ぶことを通じて学ぶ幼稚園教育を有効な方法で提供する必要がある。 |
2. | こうした内容を実現するには幼稚園設置基準と児童福祉施設最低基準に照らして、より高い基準を設定する必要がある。 |
3. | 在園時間に長短あり、また多様な家庭環境を背負う子どもを相手にする総合施設は、複数の担当者が子どもにかかわることになる。その内容を充実したものにするためには、保育者の打ち合わせ時間を十分に取ること、また翌日の保育準備時間を勤務時間内に保障できる体制が必要である。これまでの幼稚園と保育所の一体化事業から、成功のためにはこのことが必要な条件であることが明らかになっている。 |
4. | 資格・免許については、幼稚園か保育所に勤務し、いずれかの資格・免許を持っている人には一定の研修を保障して,両方の資格・免許を取得することができるような配慮が必要である。 |
5. | 幼稚園教諭に義務付けられている研修制度は重要である。総合施設では特に日常的な研修が重要になる。すでに一体化施設では必要であることが実感され、現在、幼稚園で実施されている以上の研修が、数年にわたって行われていることなどから、総合施設における研修は、今後十分な検討が必要である。 |
6. | 公立幼稚園を有効活用して,0歳からの子どもの育つ場を新しく提供する可能性を総合施設で模索することには大きな期待をしている。 |
7. | 総合施設の運営を含めて、幼稚園と保育所など地域にある乳幼児施設の保育内容の向上を促し、一元的に運営・支援していくための行政部署を、国や自治体に作る必要がある。 |
8. | 地域における多様な施設を適切に保護者が選択するために、情報公開が重要になる。 |
9. | 総合施設は、小学校との連携を十分におこない、相互に協力して子どもの育ちが円滑に行われるよう努力・運営することが必要である。 |
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