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資料4
「特別支援学校(仮称)」の制度に関する意見のまとめ

1. 障害種別を超えた学校制度について

(1)制度設計の方向性について
 今後、障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行う「特別支援教育」の考えを進めていくうえで、現在の盲・聾・養護学校の制度を総合化し、特別支援学校(仮称)とすることについて。

 特別支援学校(仮称)は、各都道府県教育委員会において、それぞれの地域の実情に応じて柔軟に対応できるような仕組みとすることについて。
 《主な意見》
 「特別支援学校(仮称)」についての「最終報告」の提言は、課題はあるが、理念・方向性としては賛同しうるもの。
  各都道府県教育委員会では、盲・聾・養護学校の配置も含め、既に、それぞれの地域の事情によって、知的障害・肢体不自由併置の養護学校などの取組みを様々に進めているところであり、こうした実態も考慮しつつ、できるだけ地域の実情に応じて柔軟に対応できるような制度にすべき。
 「特別支援学校」の通学区域については、それぞれの障害種ごとの教育の歴史による蓄積やこれに基づく専門性を踏まえつつ、当該地域の事情や通学区域の広さなども考え合わせ、都道府県教育委員会等において判断していく必要がある。
 個々の児童生徒のニーズを踏まえて、個別の教育的支援を行っていくという視点が必要。
 地域と密着した学校が可能となるようにすべき。
 現行制度を弾力化するだけでなく、国としての一定の理念を示すべきではないか。


(2)障害種別の考え方について
 現在の知的障害と肢体不自由を併置する養護学校の状況を踏まえ、特別支援学校(仮称)において、児童生徒の障害に応じた適切な教育課程・指導方法による教育を行う観点から、法令上の組織として「教育部門」を置くことのメリット・デメリットについて。

 障害種ごとのこれまでの専門的指導の蓄積等にも考慮しつつ、主として特定の障害に対応する特別支援学校(仮称)も引き続き置くことができるようにすることについて。
 この場合、引き続き「盲学校」「聾学校」「養護学校」と名乗ることができるよう、必要な制度的な検討を行うことについて。

 現行の5障害種以外に、自閉症等の新たな障害種に対応できるようにするための制度上の課題について。
 《主な意見》
 障害種ごとに小学部、中学部、高等部を置くような仕組みであると、学校運営が複雑になる。
 「教育部門」を総合化する考え方、別に置く考え方を整理するに当たっては、できること、できないことを明確にしておく必要がある。
   
現在の知肢併置の養護学校では、
 
・障害種ごとに教員、児童生徒、教育課程を区分する方式
・障害種ごとに区分せずに、状態が似た子どもたちのグループで対応していく方式
・これらの中間的な方式
など、様々な学校組織が採られている。
   
 障害種ごとのこれまでの専門的指導の蓄積にも考慮し、単一の「教育部門」のみの「特別支援学校」も認めるべき。
 「最終報告」においても単一の「教育部門」のみの「特別支援学校」も想定されており、これを議論の前提とすべき。
 単一の「教育部門」のみの「特別支援学校」が、引き続き「盲学校」「聾学校」と名乗れるようにすべき。
  できるだけ地域から離れないで学校に通うことができるような地域と密着した学校を可能とする観点からは、多くの障害種に対応できる総合化された「特別支援学校」が多く設けられることが望ましい。
 一方、障害によっては、集団としてのアイデンティティも必要であり、一定の集団を確保するためには、小・中学部レベルでは1県に1校は現在の盲学校、聾学校に対応する学校の存在が必要。外国でも盲学校、聾学校が独立して設けられている例は多い。
 「教育部門」の障害種は、「主たる障害種」というような位置づけにし、特定の「教育部門」のみの「特別支援学校」であっても、他の障害の児童生徒を受け入れることも可能とすべきではないか。
 すべての「特別支援学校」があらゆる障害種に対応していくのは難しい。
 複数の障害種に対応する「特別支援学校」においては教育活動が多様になるので、一定の学校規模を確保することも必要となってくる。
 発達障害など今までの5障害(盲・聾・知・肢・病)以外の障害にも柔軟に対応できる「特別支援学校」を設けられるようにすべき。
 軽度発達障害のある児童生徒は、養護学校だけでなく、盲学校、聾学校にも在籍していることから、軽度発達障害については「特別支援学校」全体で対応していくこととし、これを前提に、小・中学校や幼稚園、高等学校への支援についての「特別支援学校」の役割を考えていくべき。
 教職員の配置など条件整備面での考慮が必要ではないか。


(3)専門性、教育課程等について
 特別支援学校(仮称)であっても、個々の教員が障害種ごとのニーズに応じた教育について、優れた専門性が求められることについて。

 多くの特別支援学校(仮称)において多様な児童生徒を受け入れることや、そのセンター的な機能により小・中学校における様々な障害のある児童生徒への対応も求められることを踏まえ、教員が様々な障害に関する基礎的な知識を広く有する必要性について。

 特別支援学校(仮称)に対応した教員免許制度の在り方について。(本委員会の議論を踏まえ、教員養成部会のワーキンググループにおいてさらに詳細に議論がなされることを期待。)
 《主な意見》
 障害種ごとの教育の「専門性」と、障害種を超えて取り組む「総合性」の意義とのバランスを図る必要がある。
 障害を越えて共通に学ぶことができる内容もあるはずであり、専門的な教育が必要な部分と分けて対応すべき。
  例えば、重複障害のある児童生徒に対しては、それぞれの障害の専門性の高い教員によってそれぞれの蓄積された専門性を活かした対応が行えるようにするなど、「総合的な特別支援学校」ではあっても障害種に応じた「専門性」は重要
 個々の児童生徒のニーズに合わせることも重要だが、一定のグループ(集団)の子どもごとに到達目標を示していくことが必要ではないか。
 教育の目標・内容・方法に変化が生じることになるので、学習指導要領の見直しが必要。
   
 親元から離れて寄宿舎に長期間入らなければならないような事例をできるだけなくしていくべき。
 高等部等の生徒については、生徒同士のやり取りを通じて育っていくことが期待できるなど、寄宿舎の教育的な意義も認められる。


2. 地域の特別支援教育のセンター的機能を有する学校について

(1)センター的機能の内容について
 今後、地域における特別支援教育を推進する体制を整備していくうえで、特別支援学校(仮称)が中核的な役割(通常学級に在籍するLD、ADHD等の軽度発達障害の児童生徒への対応を含む。)を担うべきことについて。

 特別支援学校(仮称)の機能として、小・中学校に対する支援などのセンター的機能を明確に位置づけることについて。

 今後、特別支援学校(仮称)に求められるセンター的機能について。
 小・中学校等への支援機能
 特別支援教育等に関する相談・情報提供機能
 障害のある児童生徒等への指導機能
 特別支援教育に関わる様々な機関との調整機能
 小・中学校等の教職員に対する研修協力機能
 地域の障害のある児童生徒への施設設備の提供機能
   
 《主な意見》
 現在、学習指導要領において「努力義務」として位置づけられているセンター的機能に関する根拠規定を見直し、格上げしていく必要がある。
 盲・聾・養護学校で従来から行われてきた取り組みにとどまらず、今後、特別支援教育の中で障害のある児童生徒にどのように対応していくか、その際、「特別支援学校」がどのようなセンター的機能を持つべきかについて、積極的に示していく必要がある。
 現在、障害のある児童生徒に対する対応では、盲・聾・養護学校と小・中学校ではどうしても大きな差があることから、盲・聾・養護学校における様々な資源を小・中学校において可能な限り活用できるようにしながら、「特別支援学校」が小・中学校における特別支援教育に様々に関わっていけるようにすべき。
 特別支援教育の実施に伴う指導内容・方法の変化を十分考慮した上で、これを支える制度改正とすることが必要。
 センター的機能としては、教育相談、個別の指導計画(個別の教育支援計画)の作成に関する支援、巡回による指導の3つの要素が重要。
 センター的機能のうち、小・中学校の教員への支援と、保護者に対する相談の充実を図る必要がある。
 LD、ADHD等に限らず、小・中学校における障害のある児童生徒全てについて、「特別支援学校」から小・中学校に対して支援を行えるような仕組みが必要。
 小・中学校の特別支援教育の推進体制における「専門家チーム」や「巡回相談」について、その全てを「特別支援学校」に期待するのは難しいが、これらの一部には関わっていく必要があり、センター的機能の重要な内容となる。
 センター的機能としては、医療、福祉、保健、労働との連携や、これに基づき、「そこに行けばすべての相談ができる」といった支援も重要。
 特別支援教育の担当のみならず、全ての小・中学校の教員は障害のある児童生徒についての一定の指導上の知識を有するべきであり、これを支援していく必要。
 盲・聾・養護学校による就学に関する相談については、本来的なセンター的機能には含まれないものかもしれないが、各教育委員会における教育相談の機能において、非常に重要な役割を占めるものである。
   
 「最終報告」では、主に、以下の機能について記述されている。
 
 地域の小・中学校等に在籍する児童生徒や保護者からの相談
 個々の児童生徒に対する計画的な指導のための教員からの個別の専門的・技術的な相談
 地域の研修会等の企画や支援を通じた指導上の知識や技能の小・中学校への普及
   
 全国特殊学校長会調べによる主なセンター的機能の例
 
 障害のある児童生徒への発達相談、就学相談
 幼稚園・保育園への教育相談
 地域の小・中学校への指導方法、教材開発等に関する相談
 講習会の開催
 教材教具の貸出など、専門の施設・設備を使用した対応。


(2)センター的機能の在り方について
 当面は、各学校の専門性を活かしながら、地域の小・中学校に対する支援等を行うことについて。

 特別支援学校(仮称)同士あるいは関連の医療・福祉機関とのネットワークを活用することについて。

 各地域の実情に応じた支援のための地域を定め、当該地域において広域的な地域支援を行うためのネットワークを形成することについて。

 特別支援学校(仮称)が地域の小・中学校を支援する際の都道府県教育委員会と市町村教育委員会との間の密接な連携協力について。

 特別支援学校(仮称)がセンター的機能を担っていくための教員の資質能力について。(本委員会の議論を踏まえ、教員養成部会のワーキンググループにおいてさらに詳細に議論がなされることを期待。)
《主な意見》
 センター的機能を担うためには、それぞれの障害種ごとのより高い専門性が必要となる。
 小・中学校への巡回指導等に対応するためには、「特別支援学校」には、軽度発達障害を含めそれぞれの障害について専門性の高い教員が置かれるべき。
 コアとなる専門性の確保を前提としつつ、地域の小・中学校だけでなく、例えば、重複障害のある児童生徒への支援などについては、他の「特別支援学校」への支援も必要
 「特別支援学校」が十分なセンター的機能を果たすためには、専門性の高い「特別支援学校」同士で連携しつつ、医療機関等も含めて、ネットワークをつくって対応していくことが必要。このようなネットワークづくりのためにも特別支援教育コーディネーターの役割は重要
 すべての「特別支援学校」があらゆるセンター的機能を担うのは困難。
 現在の盲学校・聾学校が移行する「特別支援学校」と、養護学校が移行する「特別支援学校」でセンター的機能などに違いがあっても良いのではないか。
 まずは、現在の各学校の障害種別に応じたセンター的機能でスタートし、徐々に広げていくべき。
 「特別支援学校」においては、小・中学校や保護者等の支援のための組織を設けるなど、校内の組織体制を明確にすることが望ましい。
 小・中学校を支援する「特別支援学校」の教員には、特別支援教育に関する専門性のみならず、小・中学校の教育課程等の状況に関する知識・ノウハウも求められる。
 センター的機能を発揮する前提として、広域的な地域支援のためのネットワークの形成が不可欠。
 センター的機能について、「特別支援学校」の教員だけで担うのではなく、小・中学校の一部の教員の力も活用していくようなことも考える必要がある。
 センター的機能を発揮するための支援地域として、障害保健福祉圏域との関係を考える必要。
 小・中学校の側からすると、あまり大きな地域も支援を受けにくいのではないか。市町村の単位でのセンター的機能による支援も考えられて良い。
 センター的機能を発揮するためには、多くの「特別支援学校」の設置者である都道府県教育委員会と、多くの小・中学校の設置者である市町村教育委員会のカベを乗り越えていくことが重要。
 センター的機能を発揮するためには、都道府県と政令市との連携も必要。
 センター的機能と同時に、地域の実態に応じ、「特別支援学校」と小・中学校等との交流・共同学習の推進を具体的に進めていくことが必要。
 教職員、施設など条件整備面での考慮が必要ではないか。


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