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資料5

学習指導要領改訂の考え方の変遷

教育課程審議会答申「小学校・中学校教育課程の改善について」(抄)
昭和33年3月15日

 小学校教育課程の改訂方針
(二) 理科
1  目標をいっそう明確にするとともに、学年の児童発達段階に応じ、他教科との関連をじゅうぶんに考慮して、その内容をいっそう精選し基礎的なものを学習させるようにすること。
2  観察・実験の指導をいっそう重視し、科学的な見方、考え方をつちかうよう、特に留意すること。
3  低学年においては、特に自然観察を重んじ、自然現象や製作物に対する児童の興味や関心を養い、また、自然愛護の態度を養成するよういっそうくふうすること。
4  高学年においては、児童の発達段階に応じ、自然現象についての原理的理解を与えるとともに、科学的態度や能力の基礎をつちかうこと。
5  理科の学習指導にあたっては、特別教育活動や地域的事情との関連についてもじゅうぶん考慮を払うこと。
6  教員については理科の全領域にわたって、その学力の向上を図ること。
7  施設・設備の整備充実と、その適切な運営を図ること。

 中学校教育課程の改訂方針
(二) 理科
1  内容を精選し、基本的事項がじゅうぶん指導できるようにするとともに実験、観察の指導をいっそう重視し、科学技術振興の基礎となる知識、技能、態度を身につけるようにすること。
2  内容に系統性をもたせ、2分野、たとえば「物理、化学的内容を主とするもの」と「生物、地学的内容を主とするもの」を設け、物理、化学的内容の学習に今までより重点をおくこと。



教育課程審議会答申「高等学校教育課程の改善について」(抄)
昭和35年3月31日

(4) 理科
 科目間のむだな重複を省き、内容を再検討し、基本的事項をじゅうぶん身につけさせるようにすること。
 生徒の自然科学的な教養の片寄りを少なくし、かつ能力、適性、進路等に応じて理科を履修しうるようにするため、下記のようにすること。
(ア)  科目は、「物理A」、「物理B」、「化学A」、「化学B」、「生物」および「地学」の6科目とすること。
(イ)  「物理A」および「化学A」は、基本的事項をできるだけ平易に取り扱うものとし、生活や産業との関連を特に考慮して組織するものとすること。
(ウ)  「物理B」および「化学B」は、基本的事項をやや深く取り扱うものとし、系統的に組織するものとすること。
(エ)  「生物」は、現行の3単位および5単位の内容を一体化し、基本的事項を取り扱い、生活や産業との関連にじゅうぶん留意すること。
(オ)  「地学」は、特に内容の精選につとめ、内容を2部に分けて示すこと。
「地学」の履修については、独立の科目として履修させる方法と、その内容のうち第1部を「生物」と、第2部を「物理A」または「物理B」とあわせて履修させる方法を認めること。後段の場合、「地学」の科目を履修したものとすること。
(カ)  以上のいずれの科目においても、実験・観察等をいっそう重視すること。
(キ)  普通課程においては、原則として、「物理A」または「物理B」、「化学A」または「化学B」、「生物」および「地学」の4科目を、職業に関する課程においては、これらの科目のうち2科目以上をすべての生徒に履修させるものとすること。



教育課程審議会答申「小学校の教育課程の改善について」(秒)
昭和42年10月30日

(4) 理科
目標)
 目標については,具体的な事物や現象についての直接的な経験を深め,自然認識の基礎になる科学的な物の見方や考え方などを育成するものであることを明確にすること。
 児童の発達段階の特質を考慮して,児童に自然の具体的な事物や現象を観察させたり,それらを実験によって確かめさせたり,また,それらを関係づけたり,組織づけたり,さらに,観点や立場を変えて検討させたりすることによって,自然認識の基礎になる科学的な物の見方や考え方,扱い方などを育成することが理科の目標の中核であることを明確に表現するようにする。

内容の精選)
 内容については,基本的事項を精選して,その集約化を図るとともに,基礎的なことについていっそう発展的,系統的な学習ができるようにすること。
(1)  科学的な物の見方や考え方,さらに進んでは創造力の育成がじゅうぶんなされるように,児童の自然認識の基礎になる経験や自然科学的な事実や考え方を中軸にして内容を精選,集約し,学習が発展的,系統的に行なわれるようにするとともに,児童が興味をもって学習できるようにする。
(2)  児童の学習の対象となる具体的な事物や現象については,次のような区分にまとめて整理するとともに,それら区分相互の密接な関連を図る。
 生物とその環境
 物質および状態や性質の変化,物質相互の関係,および現象における変化の様子など
 宇宙(地球,太陽と月・地球との関係,星と星の集まり,およびこれら相互の関係など)
(3)  低学年における理科の学習に関しては,低学年の児童の著しい特徴である全体的,直覚的な物の見方や考え方が,中,高学年の学習の基礎になるものであることを重視する。したがって,低学年においては児童がみずから身近な事物や現象にはたらきかけることを尊重し,児童が対象を比較したり,関係づけたりするなどの経験を豊富にするような内容に改善する。

他教科との関連)
 他教科とくに体育,家庭,算数との関連についてじゅうぶんに配慮し,理科においては自然の理解に重点をおくこととすること。
(1)  体育や家庭でも扱う人体については,理科においては生物としての生命現象の理解を深めることを主にする。また,保健や衣,食,住については,家庭および体育との関連を配慮する。
(2)  自然の事物や現象のはあくにおいて必要となる関数的な見方や考え方については,理科においては現象と具体的な事物の変化のはあくを主とする。



教育課程審議会答申「中学校の教育課程の改善について」(抄)
昭和43年6月6日

(4) 理科
 目標について
 目標については,現代における自然科学や科学教育の発展を考慮して,自然の事象に対する科学的な見方・考え方を育成し,基本的な科学概念を理解させるようにすることを明確にすること。その際,実験・観察と理論との結びつきをじゅうぶん図り,ものごとを科学的に判断したり処理したりする能力や科学的な探究心を高め,さらに創造力を育成するようにすることをじゅうぶん考慮すること。
 内容について
(1)  内容については,時代の進展や生徒の実態に応じ,質的な改善を図るとともに,いっそう系統的な学習ができるように,基本的事項を精選し,内容を再構成すること。
 科学的な見方・考え方,方法および基本的な科学概念を中心として内容を構成すること。その際,取り上げる内容の程度や指導方法については,生徒の理解に無理のないようじゅうぶん配慮すること。
 基本的な原理・法則などを導き出すまでの過程をいっそう重視するようにし,特に直感的に問題を解決する見通しをつけたり,予想された規則性を実験・観察を通して確かめたり,それらの規則性を論証によって相互に関連づけたりする能力や態度を養うようにすること。そのため,実験・観察の種類や方法などをいっそう適切なものとし,じゅうぶん時間をかけて行なえるようにすること。
 内容を精選するにあたっては,小学校,高等学校との関連を密にして,中学校において発展性の少ない内容や理解の困難な内容は整理するとともに,基本的な科学概念と関連の少ない断片的な知識は縮減すること。
(2)  現行の2分野(理科の内容は,主として理物・化学的領域から成る第1分野と主として生物・地学的領域から成る第2分野との二つの分野から構成されている。)についての考え方はこれを残し,内容を系統的に組織したり,生徒に系統的な理解を得させたりするなどの長所を生かすとともに,内容の分け方や運営のしかたについては,さらに改善するようにすること。
(3)  生徒の能力差に応じた指導ができるように配慮すること。



教育課程審議会答申「高等学校教育課程の改善について」(抄)
昭和44年9月30日

(4) 理科
 現代における自然科学の発展や科学教育の趨勢を考慮して,自然の探究の過程を通して科学の方法や自然科学における基本的な概念の理解を深め,科学的な見方や考え方がいっそう育成されるようにすること。
 科目については,生徒の能力・適性・進路等に応じて履修することができるようにするため,下記のようにすること。
(ア)  科目は,「基礎理科」,「物理1」,「物理2」,「化学1」,「化学2」,「生物1」,「生物2」,「地学1」および「地学2」の9科目とすること。
(イ)  「基礎理科」1科目,または「物理1」,「化学1」,「生物1」および「地学1」のうち2科目のいずれかをすべての生徒に履修させるものとすること。なお,理科について6単位で学習が終わる場合は,「基礎理科」を履修させることが望ましいこと。
(ウ)  「基礎理科」は,自然科学における基本的な概念のいくつかを理解させ,科学の方法の習得を図り科学的な考え方を養うように内容を構成し,かつ平易に扱うものとすること。
(エ)  「物理1」,「化学1」,「生物1」および「地学1」については,それぞれに対応する2を付した科目よりも基礎的で,かつ平易な内容により構成すること。
(オ)  「物理2」,「化学2」,「生物2」および「地学2」は,それぞれに対応する1を付した科目を履修したのちに履修させることを原則とするものであり,その内容は,1を付した科目の内容よりさらに発展した学習ができるようなものとすること。



教育課程審議会答申「小学校,中学校及び高等学校の教育課程の基準について」(抄)
昭和51年12月18日

4  理科
 改善の基本方針
 小学校,中学校及び高等学校を通じて,自然を探究する能力及び態度の育成や自然科学の基礎的・基本的な概念の形成が無理なく行われるようにするため,特に児童生徒の心身の発達を考慮して内容を基礎的・基本的な事項に精選する。
 その際,小学校においては,自然の事物・現象についての直接経験を重視し,自然を愛する豊かな心情を培うこと,中学校においては,自然環境についての基礎的な理解を得させ,自然と人間とのかかわりについての認識を深めること,高等学校においては,総合的な自然観の育成を図り,自然を尊重する態度を養うことを重視する。
 改善の具体的事項
小学校)
(ア)  低学年の内容については,自然の事物・現象について,見たり,探したり,作ったり,育てたりする具体的な活動を通して,基礎的な知識・技能の習得や自然を調べる能力及び態度の育成が図れるようにする。内容の構成に当たっては,実際の指導において他の教科との合科的な指導が従来以上に行われやすいように配慮する。
(イ)  中学年及び高学年の内容は,現行どおり「生物とその環境」,「物質とエネルギー」及び「地球と宇宙」で構成するが,それぞれ次の諸点に留意して改める。
ア  「生物とその環境」の内容は,自然のままの生物や飼育・栽培の下での生物の活動,成長及びふえ方の観察を通して,生物の共通の特徴や生物と環境との関係などを理解させることに重点をおいて構成する。内容の構成に当たっては,現行の内容のうち,程度の高い実験を伴うものや取扱いが高度になりがちなもの,例えば細胞と核,キノコの成長,樹相,トリの卵などは集約し,又は削除する。
イ  「物質とエネルギー」の内容は,自然の事物・現象についての直接経験や模型,器具などの製作活動を通して,物質の性質,物質間の相互作用及びそれに伴う変化を理解することに重点を置いて構成する。内容の構成に当たっては,現行の内容のうち,程度の高い抽象的な説明を要するもの,例えば水溶液の電気伝導,まさつ,打撃による熱の発生等は削除する。
ウ  「地球と宇宙」の内容は,大気や地表の変化及び天体の動きを調べることを通して,時間や空間についての意識を深め,変化の規則性をとらえることに重点を置いて構成する。内容の構成に当たっては,現行の内容のうち,実際の観察や取扱いが困難なもの,例えば,火山活動,地球の自転などは削除する。
エ  2個学年以上にわたって繰り返し発展的に取り扱っている内容のうち,例えば,こん虫の変態や星の動きなどについては,学年相互の関連を考慮して内容を集約する。

中学校)
(ア)  第1分野及び第2分野の内容については,おおむね現行どおり探究の過程を重視し,自然を探究する能力及び態度の育成や理科に関する基礎的・基本的な概念の形成を目指して構成するが,その構成に当たっては,特に自然の事物・現象に直接触れる学習が従来以上に行われるように配慮する。
(イ)  現行の内容のうち,実際の指導においてその取扱いが高度になりがちなものや抽象度の高いもの,例えば運動の第2法則,イオンの反応,天体の形状と距離の一部,動植物の分布,遷移などは削除する。また,化学変化の量的関係,原子の構造,地かくの変化と地表の歴史などは,高等学校の内容との関連を考慮して軽減する。
(ウ)  自然と人間とのかかわりについての認識を一層深めるため,例えばエネルギーの変換と利用,身近で基礎的な物質とその反応,自然界における生産,消費及び分解の意義などに関する内容は,充実させる。
(エ)  両分野の履修の方法については,現行の並行履修の考え方を引き継ぐが,弾力的な運用ができるようにする。

高等学校)
(ア)
ア  高等学校段階における理科の基礎的・基本的な内容についての理解を深め,自然を総合的にみることができるようにするために新しい科目(「理科1」)を設け,これを低学年において全員に履修させる。
イ  「理科1」は,この段階において共通に必要とされる理科に関する基礎的な内容を各領域の特徴を生かしながら習得させること,自然の探究を通して分析する能力や総合的な見方・考え方の育成を図ること及び自然環境についての理解を得させることなどをねらいとする。その内容は,中学校の理科との関連を考慮し,例えば「力とエネルギー」,「物質の構成」,「進化」,「自然の平衡」などによって代表されるような性格のものから構成する。
 なお,この科目の履修方法や内容の具体的な取扱い等については,各学校の実態,学科の特性などに応じた弾力的な措置がとれるよう配慮する。
(イ)
ア  「理科1」を履修した後,生徒の興味・関心や能力・適性・進路等に応じて選択履修ができるようにするため,選択科目として「理科2」,「物理」,「化学」,「生物」及び「地学」の各科目を設ける。
イ  「理科2」の内客は,「理科1」との関連を考慮し,自然科学の基礎的な理解を深める内容のいくつかを取り上げ,例えば,特定の事象についての実験,自然環境についての課題研究,科学の歴史的な事例などの学習が十分行えるように構成する。
 なお,この科目は,「理科1」を履修した後,一層広い自然科学的な教養を身につけることを希望する生徒を対象にしたものとして設ける。
ウ  「物理」,「化学」,「生物」及び「地学」の各科目の内容は,それぞれに対応する現行の各科目12の内容を基礎にし,「理科1」との関連や内容の程度及び範囲に十分配慮して構成する。



教育課程審議会答申「幼稚園、小学校、中学校及び高等学校の教育課程の基準の改善について」(抄)
昭和62年12月24日

4  理科
 改善の基本方針
 小学校、中学校及び高等学校を通じて、科学技術の進歩、またそれに伴う情報化などの社会の変化や学習の実態などを考慮し、自然に親しむことや観察・実験などを一層重視して、問題解決能力を培い、自然に対する科学的な見方や考え方及び関心や態度を育成する指導が充実するよう、内容の改善を図る。
 その際、小学校においては、観察・実験など自然の事物・現象についての直接経験を重視し、それらの活動を通して問題解決の意欲や能力を育てるとともに、生活科との関連に配慮して中学年及び高学年の内容の再構成を行う。
 中学校においては、観察・実験などを一層重視し、それらの活動を通して自然を探究する能力や態度を育てるとともに、日常生活とのかかわりなどに配慮して内容の構成を改善する。
 高等学校においては、自然の事物・現象に対する主体的な探究活動を通して科学の方法を習得させ、科学的な思考力や判断力を育てることを重視するとともに、生徒の能力・適性や進路等に応じて、適切な選択履修が可能となるよう多様な科目を設ける。
 なお、児童生徒の発達段階に応じコンピュータ等にかかわる指導が適切に行われるよう配慮する。
 改善の具体的事項
小学校)
(ア)  観察・実験などを通して問題解決の能力を培い、自然に対する科学的な見方や考え方を育てる観点から、次の諸点に留意して内容を改善する。
ア  生活科との関連を考慮して、中学年及び高学年に日常生活に関係の深い自然の事物・現象や人体の成長やはたらきなどの内容を取り上げ、観察・実験、製作などの活動や体験が一層充実するようにする。また、現行の低学年の内容のうち、生活科の学習活動になじみにくいものについては、中学年及び高学年の内容に統合し、自然に対する科学的な見方や考え方が深まるよう見直しを行う。
イ  「生物とその環境」の内容は、人体及び動植物の成長に伴う諸現象を観察・実験を通して追究し、生物としての特性や環境とのかかわりに気付かせることに重点を置いて構成する。
 その際、現行の内容のうち、例えば、花のつくり(第3学年)、植物の成長と養分(第4学年)などについては、内容の程度や相互の関連性を考慮し、精選・集約を行う。
ウ  「物質とエネルギー」の内容は、物質の状態や性質の変化を観察・実験を通して追究し、物質の性質について理解するとともに、変化にかかわる要因をとらえていくことに重点を置いて構成する。
 その際、現行の内容のうち、例えば、風車のはたらき(第3学年)、水溶液の濃さと重さ(第5学年)などについては、内容の程度や発展性を考慮して精選・集約を行う。
エ  「地球と宇宙」の内容は、地表、大気圏及び天体に見られる諸現象の観察などに基づいて、それらの規則性をとらえることや、時間的・空間的な現象の見方や考え方を育てることに重点を置いて構成する。
 その際、現行の内容のうち、例えば、太陽と季節(第6学年)など取扱いが抽象的になりがちな内容について精選を行う。
(イ)  学習の対象とする自然の事物・現象については、地域の実情に即し、地域の自然を生かした指導が行われるよう内容の示し方を改める。
(ウ)  「生物とその環境」、「物質とエネルギー」及び「地球と宇宙」の内容については、児童の主体的な問題解決活動により応用的、発展的な学習を進める観点から、日常生活における科学にかかわる内容を含めるようにする。

中学校)
(ア)  第1分野及び第2分野の内容については、現行どおり自然科学に関する基本的な概念の形成を目指して構成するが、その際、内容の一層の精選を図るとともに具体的な事物・現象や日常生活にかかわる事項などを取り上げるよう配慮し、次のように改善する。
ア  第1分野については、その取扱いが高度になりがちな内容、例えば、化学反応と熱などについて削除又は軽減を図るとともに、力のはたらき及び運動などについては、それらを有機的に結び付けて効果的な指導ができるよう内容を統合する。また、情報化の進展や日常生活との関連を考慮し、科学の進歩と人間生活とのかかわりに関する内容や、光学現象に関する内容等を加える。
イ  第2分野については、その取扱いが高度になりがちな内容、例えば、恒星の明るさや色などについて削減又は軽減を図る。また、高等学校との関連を考慮し、例えば、遺伝と進化などに関する内容を加える。
(イ)  観察・実験を一層重視するとともに、主体的な探究活動が十分行えるようにするため、内容の示し方を改める。
(ウ)  第3学年における授業時数の弾力的運用については、教科の内容を一層定着させるため、各分野の内容について補充や深化を行うことなどにより学習の充実を図るようにする。
(エ)  第3学年における選択教科としての「理科」においては、生徒の特性等に応じ、課題研究的な学習、野外観察・実験など発展的、応用的な学習活動等が多様に展開できるようにする。
(オ)  各分野の指導に当たっては、コンピュータ等を活用することについて配慮する。

高等学校)
(ア)  生徒の能力・適性、進路等に応じた指導を一層重視し、適切な選択履修が可能となるよう、自然環境について総合的に理解させる内容を中心とした科目として「総合理科」、応用的な科学や日常生活とのかかわりに関する内容を中心とした科目として「物理1A」、「化学1A」、「生物1A」及び「地学1A」、自然科学の基本的な概念の形成を図る内容を中心にした科目として「物理1B」、「物理2」、「化学1B」、「化学2」、「生物1B」、「生物2」、「地学1B」及び「地学2」を設ける。
 その際、観察・実験を一層重視するとともに、自然の事物・現象に対する主体的な探究活動を通して、科学的な思考力や判断力を育てるよう配慮する。
(イ)  「総合理科」については、自然についての総合的な見方や考え方を育成し、自然環境についての理解が一層深められるようにするとともに、特定の事物・現象についての観察・実験や自然環境についての調査などを行うための課題研究を加えて内容を構成する。
(ウ)  「物理1A」、「化学1A」、「生物1A」及び「地学1A」の各科目は、主として日常生活、科学技術の進歩や応用などにかかわる事項を取り上げ、科学的な見方や考え方を育成する内容で構成する。その際、特に「物理1A」においてコンピュータなどにかかわる内容を取り上げるようにする。
(エ)  「物理1B」、「化学1B」、「生物1B」及び「地学1B」の各科目は、それぞれに対応する現行「理科1」の内容と現行の科目の内容をもとにして内容を構成する。
(オ)  「物理2」、「化学2」、「生物2」及び「地学2」の各科目は、それぞれに対応する現行の科目の内容の一部とし、新しく設けるIBを付した科目の内容の上に更に発展させた内容で構成する。
 これらの科目については、原則として、それぞれに対応するIBを付した科目を履修した後に履修させるものとする。
(カ)  各科目の指導に当たっては、コンピュータ等を活用することについて配慮する。



教育課程審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について」(抄)
平成10年7月29日

4  理科
 改善の基本方針
(ア)  小学校、中学校、高等学校を通じて、児童生徒が知的好奇心や探究心をもって、自然に親しみ、目的意識をもった観察、実験を行うことにより、科学的に調べる能力や態度を育てるとともに、科学的な見方や考え方を養うことができるようにする。
(イ)  そのため、自然体験や日常生活との関連を図った学習及び自然環境と人間とのかかわりなどの学習を一層重視するとともに、児童生徒がゆとりをもって観察、実験に取り組み、問題解決能力や多面的・総合的な見方を培うことを重視して内容の改善を図る。
 改善の具体的事項
小学校)
 身近な自然について児童が自ら問題を見いだし、見通しをもった観察、実験を通して、問題解決の能力を育てるとともに、学習内容を日常生活と一層関連付けて実感を伴った理解を図り、自然を愛する心情と科学的な見方や考え方を養うことを重視して、次のような改善を図る。
 領域構成については、現行どおり「生物とその環境」、「物質とエネルギー」及び「地球と宇宙」とする。
(ア)  児童が事象を比べたり、変化にかかわる要因を抽出したり、計画的に観察、実験を行ったり多面的に考察したりするなどの問題解決の能力を育成するとともに、ものづくりや自然災害など日常生活と関係の深い内容などを充実するため、次のような改善を図る。
a  「生物とその環境」については、児童が動植物の生活の実際や成長に関する諸現象を観察、実験を通して追究することについての指導に重点を置いて内容を構成する。
 その際、例えば、動植物の運動や成長と天気や時刻の関係などは削除するとともに、卵生と胎生、植物体の水の蒸散などは中学校へ移行統合する。また、男女の体の特徴などは他教科の指導で取り上げられることを考慮して削除する。
b  「物質とエネルギー」については、児童が物質の性質や状態の変化について観察、実験を通して追究したり、物質の性質などを活用してものづくりをしたりすることについての指導に重点を置いて内容を構成する。
 その際、例えば、植物体の乾留などは削除するとともに、ものの性質と音、重さとかさ、水溶液の蒸発による物質の分離、中和、金属の燃焼などは中学校へ移行統合する。
c  「地球と宇宙」については、児童が地表、大気圏及び天体に見られる諸現象について観察したり、地表や大気圏の諸現象を自然災害などの視点と関連付けて追究したりすることについての指導に重点を置いて内容を構成する。
 その際、例えば、石と土などは削除するとともに、空気中の水蒸気の変化、太陽の表面の様子、北天や南天及び全天の星の動き、堆積岩と火成岩などは中学校へ移行統合する。
(イ)  児童の興味・関心に基づいた学習を一層充実したり、地域の実態に即して地域にある事物や現象を生かした指導ができるようにするため、特に、高学年において課題選択を導入する。

中学校)
 身近な自然の事物・現象について生徒が自ら問題を見いだし解決する観察、実験などを一層重視し、自然を探究する能力や態度を育成するとともに、日常生活と関連付けた理解を図り、科学的な見方や考え方、自然に対する総合的なものの見方を育てることを重視して、次のような改善を図る。
(ア)  第1分野(物理的領域及び化学的領域)、第2分野(生物的領域及び地学的領域)という現行の基本的枠組みは維持しつつ、内容については、科学的思考力や問題解決能力の育成及び科学に関する基本的概念の形成を目指して、学年進行に応じて、直接的な体験・観察に基づく学習から、分析的、総合的なものの見方を育てる学習へ発展するよう次のような改善を行う。
a  第1分野については、光や音など感覚を通して直接体験できる現象についての学習から、学年が進むにつれて化学変化、電流、運動の現象など自然の規則性を見つけて考察する学習、さらにエネルギー、科学技術と人間など総合的な見方を育てる学習になるよう内容を構成する。
 その際、例えば、溶質による水溶液の違いについては削除するとともに、比熱、電力量、イオン、中和反応の量的関係、力の合成と分解、仕事などを高等学校に移行統合する。
 また、情報手段の発展に関する内容は、他教科の指導で取り上げられることを考慮して削除する。
b  第2分野については、植物や動物、大地の変化など直接観察を重視した学習から、学年が進むにつれて生物の殖え方、天体など規則性を見つけて考察する学習、さらには、環境、自然災害など総合的なものの見方を育てる学習になるよう内容を構成する。
 その際、例えば、天気図の作成については削除するとともに、大地の変化の一部、月の表面の様子、日本の天気の特徴、遺伝の規則性や生物の進化などを高等学校に移行統合する。
(イ)  生徒の興味・関心に基づき問題解決能力を育成するため、野外観察を一層充実するとともに生徒自ら観察や実験の方法を工夫したりして課題解決のために探究する活動を行うこととする。

高等学校)
 探究的な学習をより一層重視し、自然を探究する能力や態度を育成するとともに、生徒一人一人の能力・適性、興味・関心、進路希望等に応じて豊かな科学的素養を養うことができるよう、科目の構成及び内容等を次のように改善する。
(ア)  科学が、これまで自然の謎の探究・解明にいかに挑戦し文明の発展に寄与してきたかを知るとともに、過去の実験を再現したり、課題を解決する過程や、科学が直面している問題や科学と人間生活とのかかわりについて学び、科学的なものの見方や考え方を養う新たな科目「理科基礎」を設ける。
(イ)  現行の「IAを付した科目」と「総合理科」の内容の一部を統合し、新たな科目「理科総合A」及び「理科総合B」を設ける。
 「理科総合A」については、「科学技術と人間とのかかわり」を中心に、物質やエネルギーなど日常生活と関係の深い自然の事象を探究する学習を行い、自然を総合的に見る見方や自然を探究する能力と態度を養う。
 「理科総合B」については、「生物とそれを取り巻く環境」を中心に、生命現象や地球環境にかかわる自然の事象を探究する学習を行い、自然を総合的に見る見方や自然を探究する能力と態度を養う。
(ウ)  現行の「IBを付した科目」「2を付した科目」のうち、より基本的な内容で構成し、観察、実験、探究活動などを行い、基本的な概念や探究方法を学習する科目として「物理1」、「化学1」、「生物1」、「地学1」を設ける。
(エ)  上記(ウ)で述べた科目の内容を基礎に、観察、実験や課題研究などを行い、より発展的な概念や探究方法を学習する科目「物理2」、「化学2」、「生物2」、「地学2」を設ける。これらの科目については、生徒の能力・適性、興味・関心等に応じてその内容を部分的に選択して履修させるようにする。
(オ)  「2を付した科目」は「1を付した科目」を履修した後に履修させるようにする。



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