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Home > 政策・施策 > 審議会情報 > 中央教育審議会初等中等教育分科会 > 教育課程部会 算数・数学専門部会(第4回) > 資料3−2


資料3−2

教育課程実施状況調査を踏まえた学習指導の改善例(中学校)


(1) 平成13年度小中学校教育課程実施状況調査結果の概要
   
  【中学校】
 
<調査結果の特色>
 いずれの学年でも、設定通過率との比較では、上回る又は同程度と考えられるものが半数以上。同一問題での比較では、第1、2学年で前回を有意に下回るものが過半数。
 記述式の問題、長い文章の問題等で設定通過率を下回ると考えられる状況。
また、計算問題や数学的な考え方を見る問題で前回を有意に下回る状況。
 「問題の解き方が分からないとき、あきらめずに考えようとしてますか」等の質問に肯定的な解答が多く、生徒が数学の学習に比較的前向きな姿勢を持っている状況。
<指導上の改善点>
 生徒の学習状況をよく見ながら、問題文の記述量や生徒に記述させる量を少しずつ増やしていく工夫を図るなど、指導法の改善が必要。
 かけ算、わり算を先に行うなどの計算の約束ごとを確実に理解し計算しているかどうかに配慮しつつ、計算指導を折りに触れて行うことが必要。その際、計算で用いられる操作の意味の指導についても留意することが必要。
 結果を導く根拠や手順、既習の知識の生かし方などについて、自分の考えを説明したり振り返って考えたりする活動を充実させることが必要。
 生徒の数学の学習への比較的前向きな姿勢を生かすため、図形を3次元から2次元へ置き換えるなど、問題解決に有効な考え方を意識付けるための指導法の改善が必要。
   
(2) 学習指導の改善
 
(2) 「文字を用いた式の値」
  【C3】
 
しかく3  一郎さんの学級では,文字を使った式に数を代入して,式の値がどうなるかを調べています。そして,一郎さんは,次のように言っています。
次の式のαにどんな数を代入しても,その結果は正の数になる。
プラスα
   一郎さんの考えは正しいですか。下のア,イ,ウの中から1つ選んで,しかくの中の記号をまるで囲みなさい。また、その理由をしかくの中に書きなさい。

  ア 正しい
  イ 正しくない
  ウ どちらともいえない

 
1
出題のねらい   「文字に値を代入することで文字式を具体的に考察することができる」
学習指導要領の内容   「数と式(2)ア」
主な評価の観点   「数学への関心・意欲・態度」
「数学的な考え方」
   
2 解答類型とその反応率(◎は正答,○は準正答)
 
            全体
      アを選択して「5プラス正の数イコール正の数」のように,正の数の範囲で解答しているもの   2.6%
      アを選択して上記1以外の解答(理由の無回答を含む)   9.6%
正答     イを選択して「αにマイナス5より小さい数を代入すると負の数になる」のように解答しているもの   21.3%
正答     イを選択して具体的な数を代入して,負の数になる場合を示しているもの(反例を示す)   18.2%
      イを選択して理由が書いてあるが正しくないもの   22.3%
      イを選択して理由なし   4.1%
      ウを選択して正の数と負の数になる場合を示し,どちらでもない理由としているもの   7.5%
      ウを選択して上記7以外の解答(理由の無解答を含む)   7.0%
      上記以外の回答   0.9%
      無解答   6.5%
通過率   39.5%
   
3  解答についての考察
 
 この間題は,文字に数を代入して文字式の値を考察することができるかどうかをみるものである。この間題の解決には,マイナス5よりも小さい適当な数を代入して式の値を求めることに気付かなければならない。この間題の通過率は39.5%(設定通過率60%)である。
式5プラスαの値が正の数にも負の数にもなり得るという理解が十分でないことなど,文字を用いた式の意味を適切に理解できていないことによることが原因であると思われる。
Bしかく8(2)はyイコールaxでaの値が負のときでもxの値が増加するとyの値も増加するかどうか判断する問題で,通過率は23.5%(設定通過率50%)だった。ここでは、aを負の数と考えることができないことが影響していると考えられるaのとる値が負の数もあり得るという理解が大切である。
   
4  学習指導上の留意点
 
 文字を用いた式の意味や式の値を求めることの意味を考えるように指導することが大切である。例えば式5プラスaに含まれている意味を理解するためには,5プラスaのaに様々な数値を代入して式の値を確かめる経験が大切である。そうすれば文字aを変数としてとらえたり,式5プラスaが定数ととらえるだけではいけないことを理解するようになると考えられる。その際,あてはまる数が正の数に偏っていることも考えられるので,当てはまる数は正の数・負の数の全体にわたることを意識できることが大切である。
   
   上記の指摘を受け,授業展開された実践例
   
 
学習のねらいと発問 学習活動 評価・配慮事項
1 課題の把握
数の大小,文字式の大小を比較する
問題1
  2と3はどちらが大きいか?
   2小なり3である

問題2
   2aと3aはどちらが大きいか?

多くの生徒が 2a小なり3a と答える
 
 2a小なり3a となるのはなぜか。
2より3の方が大きいから。
aが2つより,aが3つの方が大きいから。
すべての場合にこのようになる。
2a小なりa にならないときもある。

aイコールマイナス2だと,2a大なり3a となる。
 生徒の多くは,正の数を考えているものと思われる。その考えをどのようにして,0や負の数に拡げるかについて配慮して指導する。
2 解決の見通し
2a小なり3a にならないときとはどのようなときか。
 aがどのような数であるかが分からないので,2a ,3a のままでは,大小を比較することができない。aはどんな数であるかを考えることが必要である。 【数学への関心・意欲・態度】
今まで,当たり前と思っていたこと以外の結果があることに関心を示したか。

中学校で新たに学習した数について想起させる。
その数も,正の数の場合と同じ結果になるかについて,確認する。
3 問題の解決
aをどのような数と考えることが必要か。


大小を比較するとは,何を比較することか。


文字aに具体的な数値を代入することにより2aと3aの大小が判別できる。
aイコール2の場合
2aイコール2かけるaイコール2かける2イコール4
3aイコール3かけるaイコール3かける2イコール6
aイコール2の場合は, 4小なり6となるので,2a小なり3a である。

aイコールマイナス2の場合
2aイコール2かけるaイコール2かけるかっこマイナス2イコールマイナス4
3aイコール3かけるaイコール3かけるかっこマイナス2イコールマイナス6
aイコール2の場合は,マイナス4小なりマイナス6となるので,2a小なり3a である。

aイコール0の場合
2aイコール2かけるaイコール2かける0イコール0
3aイコール3かけるaイコール3かける0イコール0
aイコール0の場合は, 0イコール0となるので,2aイコール3a である。

【数学的な見方や考え方】
どのような場合分けが必要であるかを考えることができるか。

大小を考えるとき,数を場合分けをすることが必要であることを指導する。
正の数,負の数の場合1つの例しか計算していないが,それ以外でもいえるのかについて,生徒に考えさせる。









4 解決方法の検討
これまでに計算したことが数学的にどのような意味を持つか考える。
数は正の数,0,負の数の場合がある。それぞれの場合によって結果が違ってくる。
文字はいろいろな数になることがある。これらの場合について,考えることが必要である。
文字をある数に置き換えて,計算した結果を比較することが必要である。
文字をある数に置き換えることを代入するという。また,代入して計算した結果を式の値という。を考えることが必要である。
 今まで,行った活動は,数学的にはどのような意味があるかを確認する。
5 まとめ
代入,式の値という用語を使って,2aと3a がどちらが大きいかを比較するときの方法を説明する。
 文字式の文字にある数を代入して,式の値を求め,その式の値によって,大小を比較する。
代入する数は,正の数,0,負の数の場合を考えることが必要である。
 数学の用語を学習した後に,その用語を使って学習したことを説明する。
   
  折り紙(正方形)、A4サイズのコピー用紙を使って、平方根について考察することを目的に行った数学的活動の実践例
 
(1)  一辺の長さが10cmの折り紙を折って、折った部分の長さが10ルート2cmになるようにしたいと思います。どのように折ればよいでしょうか。折り紙を折って考えなさい。
   
  折り紙の図
   
(2)  この折り紙を半分の大きさの長方形に折って5cmの長さをつくれば、それをもとに5ルート5cmの長さの辺をつくることもできます。5ルート5cmの長さの辺をつくるためには、折り紙をどのように折ればよいですか。折り紙を折って5ルート5を作りなさい。また、その折り方で5ルート5cmの長さができている理由を考えなさい。
   
  折り紙の図
   
(3) A4判のコピー用紙は、縦の辺を一辺とする正方形の対角線と横の辺とがぴったり重なるようになっています。このことを実際に折って確かめなさい。
   
 
図1   図2
 
     
図3   図4
 
     
図5    
   
   
   下の図は、A4判のコピー用紙を上のように折る途中の様子(3番目の写真)を表した図です。上のように折ってみたことから、A4判のコピー用紙の縦の長さと横の長さの比は1対ルート2であることがわかります。その理由を、図の記号を用いて説明しなさい。いて説明しなさい。
   
  図

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