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資料5
学習指導要領改訂の考え方の変遷

教育課程審議会答申「小学校・中学校教育課程の改善について」(抄)
昭和33年3月15日

2  小学校教育課程の改訂方針
(ハ)  算数料
1  算数の基礎能力をいっそう向上させるために、小数・分数の四則を小学校で一応完成するなど、その内容の充実整備を図り、また、その基礎的な知識・技能の習熟、概 念・原理の理解についても、じゅうぶんな指導が行われるようにすること、そのため、 算数科の指導時間数を現行よりも増加すること。
2  生活経験や他教科との関連を考慮するとともに、各学年における目標を明確にし、かつ、内容の系統化を図ること。
3  特に、計量や図形については、実測その他具体的な操作による指導を強化し、数量や図形についての具体的理解をいっそう深めるようにすること。

3  中学校教育課程の改訂方針
(ハ)  数学科
1  小学校算数科の内容の再編成の上に立っていっそう系統性をもたせ、内容の充実をはかること。
2  基本的理解や技能がじゅうぶんに身につくようにするとともに実測、実習等を重視し、実践的な活用の能力を高めること。
3  生徒の能力の特性に応ずる学習および高学年においては生徒の進路の差に応ずる学習ができるようにすること。

教育課程審議会答申「高等学校教育課程の改善について」(抄)
昭和35年3月31日

(3)  数学
 内容を精選充実し、基本的な事項をじゅうぶん身につけさせるようにすること。この際、生徒の負担過重にならないようにじゅうぶんに配慮すること。
 生徒の能力、適性、進路等に応じて、数学を履修することができるようにするため、下記のようにすること。
(ア)  科目は、「数学1」、「数学2A」、「数学2B」、「数学3」および「応用数学」の5科目とすること。
(イ)  「数学1」は、すべての生徒に共通に履修させる科目とし、基本的なものを内容とすること。
(ウ)  「数学1」を履修したのち、原則として、すべての生徒に「数学2A」、「数学2B」または「応用数学」のうちいずれか1科目を履修させるものとすること。
(エ)  「数学2A」は、実用的で平易であるように考慮すること。
(オ)  「数学2B」は、引き続いて「数学3」を履修することをたてまえとして内容を構成するが、必要によっては「数学2B」だけを履修して終わることができるもの>とすること。
 なお、「数学3」の内容は、おおむね現行の数学3の範囲を限界とすること。

教育課程審議会答申「小学校の教育課程の改善について」(抄)
昭和42年10月30日

(3)  算数
(目標)
 目標については,数量や図形に関する基礎的な処理力を育成することは,現行どおり重視すべき基本的なことであるが,現行の数学教育の発展を考慮して,数学的な考え方がいっそう育成されるようにすること。
(1)  目標については,大きく改める必要はないが,現在,諸外国で進められている「数学教育の現代化」の動向をも考慮し,数学的な考え方がいっそう育成されるようにする。
(2)  数学的な考え方の育成は,現行でも重要なねらいとしているものであるが,「2内容」でのべる新しい概念の導入ともあいまって,このことがいっそう徹底するようにする。

(内容)
 内容については,基本的事項を精選して,数量や図形に関する概念や原理の指導がいっそう徹底するようにすること。
 この場合,新しい概念を導入することも必要であるが,小学校の段階として無理のないように配慮すること。
(1)  内容については,基本的事項を精選して指導の徹底が図れるようにする。その際,技能的な内容の一部,たとえば,「けた数の多い数についての四則計算」や,「帯分数をまじえた分数の計算」などについて,その軽減を図る。
(2)  新しく導入する概念としては,たとえば,集合,関数,確率などが考えられる。これらについては,単に形式的に内容として加えることをさけ,数量や図形の概念の理解,数量関係の考察等に際して,それらの観点に着目した指導が行なわれるような方向を考慮する。

(学年配当の調整および中学校との関連)
 児童の実態や指導の能率を考慮し,内容の一部について,その学年配当を調整するとともに,中学校との関連を図ること。
(1)  最近の児童の実態や指導の能率を考えて,内容の一部について,その学年配当を改め る。たとえば,
 乗法九九は,いちおう,第2学年でまとめて指導することとする。
 正方形,長方形などの基本的な図形の指導を低学年からはじめるようにする。
(2)  中学校との関連については,同じ系統の内容についての指導がいっそう適切に行なわれるようにする。このため,たとえば,「分数の四則計算についての小学校でのまとめ方」などについて,その取り扱いを考える。

教育課程審議会答申「中学校の教育課程の改善について」(抄)
昭和43年6月6日

(3)  数学
 目標について
 目標については,現代における数学や数学教育の発展を考慮して,数量,図形などに関する基礎的な概念や原理・法則をじゅうぶんに理解できるようにし,数学的な考え方がいっそう育成されるようにするとともに,それが積極的に活用されるように明確にすること。

2  内容について
(1)  内容については,時代の進展や生徒の実態に即応して,新しい概念を取り入れ,また,新しい見方にたつなどして質的な改善を図ること。
 新しく取り入れる概念としては,たとえば,集合,確率,不等式などが考えられるが,これらを取り入れるにあたっては,生徒の理解に無理のないようにするとともに,単に形式的な内容の指導に陥らないようにすること。また,関数の概念についても,いっそう明確にして指導ができるようにすること。
(2)  基本的事項について,いっそう系統的な学習ができるように精選,集約化を図ること。たとえば,現行の計量の内容については,精選するとともに,他の内容との関連で整理,統合すること。また,式の計算については,中学校における学習に必要な最小限にとどめ,その習熟を図るようにすること。
(3)  生徒の発達段階や小学校との一貫性および高等学校との関連を考慮して,内容の学年配当について,いっそうの合理化を図ること。
 たとえば,第1,第2学年における一元一次方程式は第1学年で指導できるようにし, 第2,第3学年における連立二元一次方程式はそのいずれかの学年の内容とすること。また,図形の内容については,生徒がいっそうよく理解できるように学年配当を考慮すること。
(4)  生徒の能力差に応じた指導ができるように配慮すること。

教育課程審議会答申「高等学校教育課程の改善について」(抄)
昭和44年9月30日

(3)  数学
 現代における数学の発展と社会で果たす数学の役割を考慮して,新しい観点から内容を質的に改善し,基本的な概念がじゅうぶん理解され,数学的な見方や考え方がいっそう育成されるようにすること。
 科目については,生徒の能力・適性・進路等に応じて履修することができるようにするため,下記のようにすること。
(ア)  科目は,「数学一般」,「数学1」,「数学2A」,「数学2B」,「数学3」および「応用数学」の6科目とすること。
(イ)  「数学一般」および「数学1」は,すべての生徒にそのいずれか1科目を履修させるものとすること。そのうち,「数学1」については,その内容は,数学の基礎的事項とし,また,「数学一般」については,その科目で数学の学習が終わることを前提とし,その内容は基本的事項について平易に構成すること。
(ウ)  「数学2A」および「数学2B」は,いずれも「数学1」を履修したのちに履修させるものとし,「数学2A」の内容は「数学2B」に比べて比較的平易なものとすること。(エ)「数学3」は,「数学2B」を履修したのちに履修させるものとし,その内容は,「数学2B」の内容の上にさらに発展した学習ができるようなものとすること。
(オ)  「応用数学」は,職業教育において必要とする数学の内容を取り扱い,「数学1」を履修したのちに履修させるものとすること。
 なお,現行どおりその内容の一部を「数学1」と併修させることができるものとすること。

教育課程審議会答申「小学校,中学校及び高等学校の教育課程の基準について」(抄)
昭和51年12月18日

3  算数,数学
 改善の基本方針
 小学校,中学校及び高等学校相互の関連や児童生徒の発達段階を考慮し,内容の程 度,分量及び取扱いが一層適切になるよう基本的な事項に精選する。なお,新しく取 り入れられた内容については,その指導の経験にかんがみ,本来の趣旨が達成される よう個々の内容のねらいや取扱いの程度を明確にし,また,小学校,中学校及び高等 学校を通じて繰り返し発展的に取り扱われている内容については,不必要な重複や深 入りを避け,指導の効果が上がるように改善する。
 その際,小学校及び中学校においては,基礎的な知識の習得や基礎的な技能の習熟 を重視し,併せて数学的な考え方や処理のしかたを生み出す能力と態度の育成が,児 童生徒の発達段階に応じてより効果的に行われるようにする。また,高等学校におい ては,基本的な概念が十分に理解され,数学的な見方や考え方が一層育成されるよう にする。

 改善の具体的事項
(小学校)
(ア)  領域区分については現行どおりとするが,「数量関係」の領域の内容については,関数,式表示及び統計に細分しないようにする。
(イ)  低学年の内容については,指導の効果を一層高めるため,次のように改める。
 基礎的な計算が一層確実にできるようにするため,数や量の概念を理解させる上に必要な内容を重視する。
 図形の概念を理解させるために,具体物から図形を抽象する過程を重視し,図形に対する関心と親しみをもたせるような操作的な活動が一層充実して行われるようにする。
(ウ)  現行の第4学年の内容の取扱いにおいて示されている集合に関する用語及び記号は,削除する。なお,小学校における集合については,実際の指導において形式的に取り扱われた傾向があるので,数量や図形のもつ意味を明確にする際に,集合に着目させるなどして,集合の観点に立った見方や考え方が児童の発達に即して無理なく育成し得るように配慮する。
(エ)  現行の内容のうち,小学校及び中学校相互に関連しているものについては,その一貫性を図り,指導体系を考慮して,次のように改める。
 「数と計算」の内容のうち,「結合,交換,分配法則がなりたつことを調べること」は削除し,「負の数」は取り扱わない。
 「図形」の内容のうち,図形の包摂関係については,相互関係を扱う程度に改め,立体図形の計量及び回転体に関する内容は,削除する。
 「数量関係」の内容のうち,「場合の数」と関連させて取り扱う「確からしさ」は,削除する。
(オ)  用語及び記号については,内容の改善に関連して整理し,児童の負担過重にならないようにする。

(中学校)
(ア)  現行の5領域のうち,「集合・論理」は領域として設けないで,この領域の内容は,他の領域のいろいろな内容と関連して適宜取り扱うこととする。
(イ)  現行の内容のうち,中学校段階で発展性や応用場面が考えられないもの,実際の指導において内容の取扱いが行き過ぎがちなもの,また,中学校及び高等学校にまたがる内容で,高等学校において集約して指導する方が適切なものなどは削除又は軽減する。
 「数の集合のもつ構造」については,「正の数・負の数」など数の拡張や計算と関連して取り扱う必要のあるものだけにとどめる。また,「不等式」は第2学年から取り扱い,「連立二元一次不等式」は削除する。
 「関数の意味」についての一般的な取扱いは,第1学年から第3学年に移し,第1学年では比例・反比例など身近にある具体的な関数を,第2学年では一次関数を,第3学年では簡単な二次関数を中心に取り扱う。なお,「ワイ イコール エイ エックス 三乗」及び「逆関数」は,削除する。
 「図形」の領域の内容については,小学校,中学校及び高等学校相互の関連を十分考慮して整理する.
 その際,第1学年では,操作的な活動や直感的な取扱いを中心とし,その内容は「空間図形」を主として,それに小学校から移される立体図形に関する内容をも含める。第2学年及び第3学年では,論証的な取扱いを中心とし,「三角形の合同,相似」や「三平方の定理」を主な内容とする。また,「合同変換,相似変換の意味」や「図形の位相的な見方」は削除し,これらの内容のねらいである図形の見方に関する基本的な考えは,それぞれ関連する図形の内容の中に含める。
 「確率・統計」の領域の内容については,現行の第1学年から第3学年までの内容を,第2学年及び第3学年に集約する。その際,「順列と組み合わせの考え方」や「期待値の意味」は削除し,「散布度」や「相関の見方」は,その程度や取扱いを平易にし,「標準偏差」は取り扱わない。また,「標本調査」については,統計的な見方を育成するということをねらいとしてその取扱いを改める。
(ウ)  用語及び記号については,小学校と同様の趣旨により,改める。

(高等学校)
(ア)  高等学校における数学の基礎的・基本的な内容についての理解を深めるとともに,更に発展した内容を学習するための基礎を培うために新しい科目(「数学1」)を設け,これを低学年において全員に履修させる。
 この科目の内容は,中学校の数学の内容との関連をふまえ,現行の「数学1」の内容を整理したものを基礎にして,「数と式」,「方程式と不等式」,「関数」及び「平面図形と式」によって構成する。
(イ) 「数学1」を履修した後,生徒の興味・関心や能力・適性・進路等に応じて選択履修ができるようにするため,選択科目として,「数学2」,「代数・幾何」,「基礎解析」,「微分・積分」及び「確率・統計」の各科目を設け,まとまりと成就感のある学習がなされるように配慮する。
 「数学2」は,他の選択科目を履修しない生徒が一層広い数学的な教養を身につけることを希望する場合の選択科目として設ける。その内容は「数学1」の内容を発展させ,他の選択科目の内容の基礎的なものや,数学が実際に利用される場面の理解を深める内容を中心に構成する。
 なお,この科目の履修に際しては,生徒の実態に応じ,内容を適宜選択して取り扱うことができるようにする。
 「代数・幾何」,「基礎解析」,「微分・積分」及び「確率・統計」の各科目の内容は,現行の「数学1」,「数学2B」及び「数学3」の内容を中心として領域別に再構成する。この内容の再構成に当たっては,これらの科目間の内容相互の関連を図り,予想される履修学年に応じて内容の分量,程度及び系統面から適切なものになるよう配慮する。

教育課程審議会答申「幼稚園、小学校、中学校及び高等学校の教育課程の基準の改善について」(抄)
昭和62年12月24日

3  算数、数学
 改善の基本方針
 小学校、中学校及び高等学校を通じて、情報化などの社会の変化に対応し、論理的な思 考力や直観力の育成を重視する観点から、様々な事象を考察する際に、見通しをもち、筋道を立てて考え、数理的に処理する能力と態度の育成を一層充実するようにする。また、基本的な概念及び原理・法則の理解と基礎的な技能の習熟を図るとともに、その過程を通して、それらを十分に活用できるようにし、事象の考察に有用であることが分かるようにする。そのため、各学校段階相互の関連を考慮し、内容の程度や分量が一層適切になるよう内容を配分するなど内容の構成を改善する。特に、高等学校においては生徒の能力・適性や進路等に応じて、適切な選択履修が可能となるよう科目の再構成を行う。
 その際、思考の過程を一層重視するために児童生徒の発達段階に応じた具体的な操作や 思考実験などの活動ができるようにするとともに、数理的な考察処理の簡潔さ、明瞭さ、的確さなどの良さが分かるようにし、算数、数学を意欲的に学習しようとする態度を育てるよう配慮する。
 なお、児童生徒の発達段階に応じ、コンピュータ等にかかわる指導が適切に行われるよ う配慮する。

 改善の具体的事項
(小学校)(算数)
(ア)  数量や図形については、およその大きさや形をとらえ、それらに基づいて適切な判断ができるようにするため、次のように改善する。
 数量や図形についての具体的な操作や実験・実測などの活動を一層重視し、それらに対する感覚を豊かにする。
 数量や図形についての適切な見積りができるようにする。その際、概数、概算、概測などに関する内容との関連に配慮する。
(イ)  低学年については、基礎的な内容の理解の徹底を図り、数量や図形に親しみをもたせるようにするため、次のように改善する。
 日常生活における様々な経験との関連を十分配慮するとともに、具体物やその操作から数量や図形を抽象する過程を一層重視する。
 「量と測定」及び「図形」の領域では、指導の重点を一層明確にする。
 数や計算については、その範囲の示し方を一層明確にする,
(ウ)  各領域の内容については、一層の集約を図り、学年間の配分を適正にするため、次のように改善する。
 「数と計算」の領域では、第5学年及び第6学年にわたる分数の乗除に関する内容を第6学年にまとめる。
 「量と測定」の領域では、第1学年から第3学年にわたる時刻及び時間に関する内容を再編成する。
 「図形」の領域では、第2学年及び第4学年で扱われているものの位置を表す内容を第4学年に集約する。
 「数量関係」の領域では、数量の関係を式に表すこと及び式の意味やはたらきについての理解を一層深めるよう、式の表示に関する内容を再構成する。
(エ)  中学校との指導の一貫性を一層図るため、次のように改善する。
 整数については、最小公倍数及び最大公約数を加える。
 体積については、円柱、円すいなど簡単な立体図形を加える。
 比例及び反比例については、その内容を軽減するとともに、取り扱う程度を明確にする。
 四則計算の可能性及び数が不確定な事象の起こる程度を表す内容は、中学校へ移す。

(中学校)(数学)
(ア)  思考力の育成を一層重視する観点から、現行の4領域のうち、「関数」と「確率・統計」を統合して「数量関係」に改め、3領域(数と式、図形、数量関係)で構成する。
各領域の内容については、一層の精選・集約を図るため、次のように改善する。
 「数と式」の領域では、整数の性質及び連立不等式については軽減し、文字を用いた式については充実する。
 「図形」の領域では、図形の計量については軽減し、論証については充実する。
 「数量関係」の領域では、2乗に反比例する関数、集合と関数及び標本における平均値や比率については軽減し、数学的な考え方を特に重視する。
(イ)  小学校との指導の一貫性を一層図るため、次のように改善する。
 最小公倍数及び最大公約数については軽減し、円柱、円すいなどの立体図形については軽減するとともに集約する。
 正の数・負の数及び確率については内容を充実し、比例及び反比例については内容を充実するとともに重点化する。
(ウ)  思考の過程を重視するとともに数学の有用性についての理解を一層深めるため、次のように改善する。
 各領域の内容を総合したり、日常の事象と関連付けたりした適切な課題による学習を通して思考活動が一層活発に行うことができるようにする。
 図形についての操作や作図を重視し、これらを通して図形に対する直観的な見方や考え方と論理的に推論することとの関連付けを図り、論証の意義をより明確に理解できるようにする。
(エ)  数の表現、方程式、関数、統計処理、近似値などの内容に関連付けてコンピュータ等を効果的に用いるとともに、各領域の指導においてコンピュータ等を活用することについて配慮する。
(オ)  第3学年における選択教科としての「数学」においては、生徒の特性等に応じ、課題。

(高等学校)(数学)
(ア)  高等学校における数学の基礎的な内容を一層明確にするとともに、多様化した生徒の実態により的確に対応できるようにするため、現行の科目を再編成し、「数学I」、「数学2」、「数学3」、「数学A」、「数学B」及び「数学C」の科目を設ける。
(イ)  「数学1」、「数学2」及び「数学3」は、その内容をすべて履修させることを原則とし、次のように内容を構成する。
 「数学I」は、中学校の数学の内容との関連を踏まえ、例えば、関数、図形、数列、確率など基礎的な内容で構成する。その際、日常の事象との関連にも配慮する。また、生徒の実態に応じ内容の弾力的な取扱いができるよう配慮する。
 「数学2」は、「数学I」に続く科目で、例えば、関数、図形などのより広い範囲の基礎的な内容で構成する。
 「数学3」は、「数学2」に続く科目で、例えば、微分、積分を中心とした内容で構成する。
(ウ)  「数学A」、「数学B」及び「数学C」は、生徒の能力・適性、興味・関心、進路等にに応じて、その内容を部分的に選択して履修させることを原則とし、次のように内容を構成する。
 「数学A」は、例えば、数と式、平面幾何などで構成する。
 「数学B」は、例えば、数列と級数、複素数平面などで構成する。
 「数学C」は、応用数理の観点に立ち、コンピュータを活用する内容を中心にして構成する。
(エ)  「数学1」は、低学年においてすべての生徒に履修させることとする。また、「数学A」は、「数学1」と並行あるいは「数学1」に続いて履修させることとし、「数学B」及び「数学C」については、「数学I」を履修した後に履修させるようにする。
(オ)  幾何については、中学校の数学の内容との関連に配慮し、論理的な思考力や直観力を養う観点から、論証幾何や複素数平面を取り扱うことができるようにする。確率・統計については、確率の基礎的な内容はすべての生徒に履修させることとし、統計処理の内容はコンピュータと関連付けて取り扱うようにする。
(カ)  各科目の指導に当たってはコンピュータ等を活用することについて配慮する。

教育課程審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾(ろう)学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について」(抄)
平成10年7月29日

3  算数、数学
 改善の基本方針
(ア)  小学校、中学校及び高等学校を通じ、数量や図形についての基礎的・基本的な知識・技能を習得し、それを基にして多面的にものを見る力や論理的に考える力など創造性の基礎を培うとともに、事象を数理的に考察し、処理することのよさを知り、自ら進んでそれらを活用しようとする態度を一層育てるようにする。
(イ)  そのために、実生活における様々な事象との関連を考慮しつつ、ゆとりをもって自ら課題を見つけ、主体的に問題を解決する活動を通して、学ぶことの楽しさや充実感を味わいながら学習を進めることができるようにすることを重視して、内容の改善を図る。

 改善の具体的事項
(小学校(算数))
 教育内容を厳選し、児童がゆとりをもって学ぶことの楽しさを味わいながら数量や図形についての作業的・体験的な活動など算数的活動に取り組み、数量や図形についての意味を理解し、考える力を高め、それらを活用していけるようにする。特に、小学校での教育が以後の学習の基礎となることから、基礎的・基本的な知識と技能については繰り返し学習し確実に身に付けられるようにする。
 領域構成については、現行どおり「数と計算」、「量と測定」、「図形」及び「数量関係」とする。「数と計算」の内容は、小学校算数の中心となるものであり、一層重点を置いて指導するようにする。また、学年配当に当たっては、低学年では特に「数と計算」の内容を重点的に扱い、学年が上がるにつれて次第に「量と測定」、「図形」及び「数量関係」の内容を増やしていくようにする。
(ア)  「数と計算」の領域では、数と計算の意味を理解すること、数の大きさへの感覚を豊かにすること、計算の結果への見通しをもつことについての指導に重点を置き、例えば、桁数の多い整数や小数の計算、帯分数を含む複雑な分数の計算など、計算の内容の範囲や程度を軽減したり、小数や分数の導入を上の学年へ移行したり、不等号の式の内容などを削除したりする。
(イ)  「量と測定」の領域では、量の単位の意味を理解すること、量の大きさへの感覚を豊かにすること、基本的な図形の面積や体積を求めることについての指導に重点を置き、例えば、柱体と錐体の表面積の内容などを中学校へ移行統合したり、台形と多角形の面積、取扱いが行き過ぎになりがちな単位の換算の内容などを削除したりする。
(ウ)  「図形」の領域では、ものの形の特徴をとらえて図形の分類をすること、基本的な図形の作図や構成をすることについての指導に重点を置き、例えば、図形の合同、図形の対称、縮図や拡大図、錐体などの立体図形の内容などを中学校へ移行統合したり、正多角形の内容などを削除したりする。
(エ)  「数量関係」の領域では、目的に応じて資料を分類整理すること、数量の関係を基本的な表やグラフに表現して調べることについての指導に重点を置き、例えば、文字式、比例や反比例の式、物事の起こり得る場合の調べ方の内容などを中学校へ移行統合したり、度数分布の内容、取扱いが行き過ぎになりがちな比の値の内容を削除したりする。

(中学校(数学))
 生徒がゆとりをもって、数量や図形などに関する基礎的・基本的な知識を確実に理解できるようにするとともに、自ら課題を見つけ考える問題解決的な学習を積極的に進めることができるようにする。
 領域構成については、現行どおり「数と式」、「図形」及び「数量関係」とする。
(ア)  「数と式」の領域では、文字を用いて考えることの必要性についての理解を深めたり、式の意味を積極的に読み取り自分なりに説明したりすることなどの基礎的・基本的な能力や態度の育成に重点を置き、例えば、文字を用いた式の計算については軽減を図るとともに、一元一次不等式や二次方程式の解の公式の内容などについては、高等学校へ移行統合する。
(イ)  「図形」の領域では、自ら課題を見いだし、解決するために、根拠を明らかにし、筋道を立てて説明する表現力や論理的な思考力の育成を重視して、図形の証明に関する内容に重点を置く。このため、例えば、証明に関する学習がゆとりをもってできるように、図形の相似の内容を上の学年へ移行したり、複雑な思考を要する接線と弦がつくる角など円の性質に関する内容の一部、また、三角形の重心の内容などについては高等学校へ移行統合したりするとともに、取扱いが行き過ぎになりがちな立方体の切断の内容などを削除する。
(ウ)  「数量関係」の領域では、物事の変化をとらえる手だてや考え方及び不確定な事象の起こる程度について正しく判断できる力などの基本的な知識や能力を身に付けることに重点を置き、例えば、資料の整理に関する内容、いろいろな事象と関数の内容及び標本調査の内容などを高等学校へ移行統合して扱うとともに、2進法など数の表現に関する内容を削除する。
(エ)  生徒が自ら課題を見つけ、主体的に問題を解決していく活動を通して数学的な見方や考え方をさらに深めていくことができるよう、課題学習を一層活発に行うようにする。

(高等学校(数学))
 生徒の能力・適性、興味・関心、進路希望等に応じて多様な選択履修ができるよ う数学学習の系統性と生徒選択の多様性の双方に配慮し、各科目の構成及び内容等 を次のように改善する。
(ア)  科目の構成は、「数学基礎」、「数学1」、「数学2」、「数学3」、「数学A」、「数学B」及び「数学C」とする。
(イ)  「数学基礎」は、数学への興味・関心等を高めるとともに、具体的な事象を通して数学的な見方や考え方のよさを認識することをねらいとして内容を構成する。具体的には、例えば、中学校数学で学習した内容を基礎とした数学史的な話題、日常の事象についての統計処理及び生活における数理的な考察などを扱うこととする。
(ウ)  「数学1」、「数学2」、「数学3」及び「数学A」は、内容を見直し、次のような内容に再構成する。
 「数学1」は、高等学校数学における基礎的・基本的な知識を習得し、活用する能力などを身に付ける科目として、中学校数学の内容との関連を踏まえ、中学校から移行される内容の幾つかをこの科目で扱うとともに、現行の「数学1」の内容の一部を「数学A」に移し、数と式の計算、関数、図形と計量など基礎的な内容で構成する。
 「数学2」は、「数学1」に続く科目であることから、「数学3」への系統性に配慮しつつ、ゆとりある学習ができるように、例えば、関数、図形、式などの広い範囲の内容で構成する。
 「数学3」は、「数学2」に続く科目として、数学を深く学習したい生徒が主に履修することになることを踏まえ、例えば、微分・積分を中心とした内容で構成する。
 「数学A」は、具体的な事象を数学的に処理するための基礎を身に付ける科目として、例えば、平面図形や確率など、これまで中学校で扱われていた内容の一部や現行の「数学1」で扱われている内容の一部で構成する。



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