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資料8−2



平成13年度小中学校教育課程実施状況調査報告書の概要

中学校・社会



1.今回の調査結果の特色

(1) ペーパーテスト調査の概要
 全般的な状況
  第1学年,第2学年及び第3学年について,通過率が設定通過率を上回ると考えられるもの又は同程度と考えられるものの問題数の合計は,それぞれ102問中62問,100問中66問,97問中67問と全体の問題数の半数以上を占めている。
  なお,前回と同一の問題については,第1学年で31問中,通過率が前回を有意に上回るものが7問,前回と有意に差のないものが8問,前回を有意に下回るものが16問,第2学年で27問中,通過率が前回を有意に上回るものが6問,前回と有意に差のないものが3問,前回を有意に下回るものが18問,第3学年で22問中,通過率が前回を有意に上回るものが5問,前回と有意に差のないものが7問,前回を有意に下回るものが10問となっている。第1学年及び第2学年については,前回を有意に下回るものが全体の過半数を占めている。
 内容領域・観点等からみた特色
(ア)  地理的分野
 設定通過率と比較した場合,例えば,「日本の果樹栽培に関して取り組みたい研究課題を考えさせる」という問題や,「その研究課題を追究する方法を考えさせる」という問題など,課題学習の形を取り入れた問題の多くは,設定通過率を上回ると考えられる結果となっている。しかし,その一方で,例えば,「日本の国土面積」や「地形図の特性や活用方法」など,地理的分野の基本的な内容を問う問題の多くは,設定通過率を下回ると考えられる結果となっている。前回と同一の問題については,例えば,「世界の主な国々に関する知識を基に,国土面積が日本より大きいアフリカの国を地図から読み取らせる」という問題や,「自然的条件を踏まえ,フィンランドの森林の特色を推察させる」という問題など,地理的分野の基本的な内容を理解した上でそれを活用することができるかどうかを問う問題が前回を有意に下回る結果となっている。
(イ)  歴史的分野
 設定通過率と比較した場合,学習指導要領の内容項目全体を通しての一定の傾向性は見いだせなかったものの,室町時代の都市,産業,農民の生活の特色や日明貿易など室町時代の基本的な内容や,近代の外交の推移などをはじめ とする近現代史の基本的な内容にかかわる問題の多くが設定通過率を下回っていると考える。また,前回と同一の問題に関し,室町時代や近現代史に関する 問題の多くのものについて,通過率が前回を有意に下回る結果となっている。
(ウ)  公民的分野
 設定通過率と比較した場合,我が国の政治の仕組みや,国際連合に関する問題,貿易といった国際経済に関する問題など,生徒の日常生活と結び付けることが難しい問題の多くが,設定通過率を下回ると考えられる結果となっている。逆に,生徒の身近な生活と結び付きやすい「現代の社会生活」に関する問題の多くは,設定通過率を上回ると考えられる結果となっている。
  前回と同一の問題については,南北問題や外国為替など,政治や経済につい て考えるための基本的な概念が理解されているかどうかを問う問題の多くが,通過率が前回を有意に下回る結果となっている。
(2) 質問紙調査の結果
 生徒質問紙調査の結果からは,3分野それぞれの学習内容の中で「よく分からなかった」と回答した生徒の割合が最も大きかったのは,地理的分野では「交通,貿易,海外援助など日本と世界の結び付きを通して,国際社会における日本の役割を考える学習」,歴史的分野では「幕府政治の移り変わり(享保の改革,田沼の政治,寛政の改革)」,公民的分野では「貿易や円高・円安などの為替についての学習」であることが分かった。

2.今回の調査結果を踏まえた指導上の改善点

(1) 地理的分野
 地理的な学び方や調べ方を身に付けさせる指導の一層の充実を図る必要がある。その際,地理的分野の基本的な内容を問う問題の多くが設定通過率を下回ると考えられる結果となっていることから,身近な地域,都道府県及び世界の国々の地域的特色を追究する学習や,世界的視野及び日本全体の視野から日本の地域的特色を追究する学習の中で,世界と日本の地域構成,自然環境,人口,資源や産業などに関する基本的な内容を活用させ,それらを生きて働く知識として身に付けさせることが大切である。
(2) 歴史的分野
 作業的・体験的学習を通して資料を読み取り多面的・多角的に考察する力を育成することや,考察した過程や結果を適切に表現させる指導の一層の充実を図ることが大切である。また,中世や近現代の基本的な内容についての知識・理解を問う問題の多くが設定通過率を下回ると考えられる結果となっていることから,歴史の大きな流れの中に基本的な知識を位置付けて身に付けさせるような指導の工夫改善が必要である。
(3) 公民的分野
 現代の政治や経済について考えるための基本的な概念を正確に身に付けさせる指導の充実を図る必要がある。社会科では,様々な領域にそれぞれ基本的な概念があり,それを活用して思考を働かすことになるが,その概念は,課題意識をもって思考を働かせることでよりしっかりと身に付くという側面もある。この点も踏まえ,課題解決的な学習や調べたことを発表させる活動を取り入れるなど生徒の主体的な学習活動が行われるよう指導の充実を図ることが大切である。また,同一問題の比較で明らかになったように,ニュース等の内容が通過率の変化に影響を与えたと考えられるものがあることから,学習指導においては,公民的分野の学習進度と対応していない時事的な内容について,年間の授業の中で適宜,学習指導の中に取り入れる工夫を行うことが必要である。



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