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ペーパーテスト調査の概要
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ア |
全般的な状況
第5学年及び第6学年について,通過率が設定通過率を上回ると考えられるもの又は同程度と考えられるものの問題数の合計は,それぞれ75問中50問,81問中71問と全体の問題数の半数以上を占めている。
なお,前回と同一の問題については,第5学年で19問中,通過率が前回を有意に上回るものが2問,前回と有意に差のないものが5問,前回を有意に下回るものが12問,第6学年で28問中,通過率が前回を有意に上回るものが2問,前回と有意に差のないものが10問,前回を有意に下回るものが16問であり,いずれの学年も前回を有意に下回るものが全体の過半数を占めている。 |
イ |
内容領域・観点等からみた特色
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第5学年(我が国の産業と国土)
第5学年の学習内容は大きく4つの内容から構成されているが,通過率が設定通過率を上回ると考えられるもの又は同程度と考えられるものの問題数が半数未満であるのは,工業生産に関する内容のみであり,当該内容で設定通過率を下回ると考えられる問題の多くは「観察・資料活用の技能・表現」と「社会的事象についての知識・理解」の観点にかかわるものである。これらは, 資料を的確に読み取ったり,複数の資料を関連付けて活用し,社会的事象の概要や特色をとらえる学習にかかわるものである。
前回と同一の問題については,出題したいずれの内容においても,通過率が前回を有意に下回るものが過半数を占めている。観点別では,「社会的な思考・判断」と「観察・資料活用の技能・表現」について出題した問題で,通過率が前回を有意に下回るものが過半数を占めている。 |
(イ) |
第6学年(我が国の歴史と政治,国際理解)
第6学年の学習内容は大きく3つの内容から構成されているが,いずれの内容においても,通過率が設定通過率を上回ると考えられるもの又は同程度と考えられるものの問題数が過半数を占めている。このうち,我が国の歴史に関する内容については,通過率が設定通過率を下回っているものが57問中8問であるが,そのうち明治期以降のものについては,16問中6問が設定通過率を下回る結果となっている。原因としては,明治期以降,人物や歴史的事象の取り上げ方が網羅的になりがちとなり, 重点を置くべき部分の理解の定着が不十分となっていることが考えられる。
前回と同一の問題については,我が国の政治に関する内容を除き,通過率が前回を有意に下回るものが過半数を占めている。また,観点別では,「観察・資料活用の技能・表現」,「社会的事象についての知識・理解」の観点にかかわって出題した問題について,通過率が前回を有意に下回るものが過半数を占めている。 |
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(2) |
質問紙調査の結果
学習内容にかかわる質問項目では,児童と教師の回答を比べると,例えば,第5学年の「日本と世界を結ぶ貿易」については,「よく分かった」と回答した児童は47.2%であったのに対し,「児童にとって理解しやすい」と回答した教師は14.4%であり,第6学年の「歌舞伎と浮世絵,国学と蘭学」で,「よく分かった」と回答した児童は47.9%であったのに対し,「児童にとって理解しやすい」と回答し教師は9.9%であるなど,両者の意識の違いが見られた。
また,指導方法の工夫・改善にかかわる質問項目では, 過半数の教師が,調べたことを発表させる活動を取り入れた授業, 課題解決的な学習を取り入れた授業,学校図書館を活用した授業などの工夫・改善に取り組んでいると回答している。 |
(1) |
第5学年
ア |
我が国の主な食料生産物の分布や土地利用の特色,我が国全体の工業生産の現状や特色などをとらえる際地図や統計などの各種の基礎的資料を丹念に読み取ったり,それらを複数関連付けて活用するなどして具体的に調べ,表現する力を育てる指導を充実させることが必要である。 |
イ |
我が国の農業や水産業,工業の盛んな地域の事例を選択して取り上げ学習する際,生産に従事する人々の工夫や努力を具体的に調べ,その意味や目的を考え,表現する指導を充実させることが必要である。 |
ウ |
運輸の働き,貿易の特色や役割については我が国の食料生産や工業生産と関連付けて扱うように学習指導要領が改善された趣旨を十分に踏まえ,それぞれの生産活動と運輸や貿易とを関連付けて一体的に学習できるように単元構成を工夫するとともに,相互の社会的事象を関連付けてとらえたり考えたりできるようにする指導を充実させることが必要である。 |
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(2) |
第6学年
ア |
我が国の歴史に関する内容について人物の働きや代表的な文化遺産を中心とした,歴史学習が一層充実できるように学習指導要領が改善された趣旨を十分に踏まえ,歴史的事象を網羅的に取り上げることのないように留意するとともに取り上げる人物について,歴史的事象との関連でなぜその人物が取り上げられているのかという視点をより明確にした指導の工夫改善を図ることが必要である。 |
イ |
我が国の歴史に関する内容のうち,特に,設定通過率を下回るものが多かった明治維新文明開化大日本帝国憲法の発布,条約改正など明治期以降の歴史的事象を調べて,我が国の近代化国際的地位について理解する学習の際には例えば肖像画(写真)や伝記,エピソード(逸話)などを活用するなどして取り上げる人物に対するイメージを豊かにさせるとともに,その人物の業績を資料に基づいて具体的に調べることができるよう指導を一層充実させることが必要である。 |
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