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資料5-2

平成13年度小中学校教育課程実施状況調査報告書の概要


中学校・理科

1. 今回の調査結果の特色

(1)  ペーパーテスト調査の概要
 全般的な状況
  第3学年について,通過率が設定通過率を上回ると考えられるもの又は同程度と考えられるものの問題数の合計は,123問中90問と全体の問題数の半数以上を占めているが,第1学年及び第2学年については,それぞれ120問中49問,139問中69問と半数に満たない。
  なお,前回と同一の問題については,第1学年で37問中,通過率が前回を有意に上回るものが6問,前回と有意な差のないものが14問,前回を有意に下回るものが17問,第2学年で69問中,通過率が前回を有意に上回るものが15問,前回と有意な差のないものが19問,前回を有意に下回るものが35問,第3学年で42問中,通過率が前回を有意に上回るものが16問,前回と有意な差のないものが12問,前回を有意に下回るものが14問となっており,第2学年では,前回を有意に下回るものが全体の過半数を占めている。
 内容領域・観点等からみた特色
(ア)  内容領域別にみた特色
 第3学年では,「化学変化とイオン」,「運動とエネルギー」,「生物のつながり」,「大地の変化と地球」のすべての区分において,設定通過率を上回ると考えられるもの又は同程度と考えられるものの問題数の合計が該当する問題の半数以上を占めている。
  しかしながら,他の学年では,設定通過率を上回ると考えられるもの又は同程度と考えられるものの問題数の合計が該当する問題の半数以上を占めているのは,第1学年では「身の回りの物理現象」,第2学年では「動物の生活と種類」のみである。
  前回と同一の問題については,第1分野では,第2学年の「化学変化と原子,分子」,「電流」において,前回を有意に下回る問題の割合が比較した問題の約8割を占めており,他の項目より多い。第2分野では,第3学年の「遺伝」や「環境間題」などでは,いずれの問題も前回を有意に上回っているものの,第1学年の「大地の変化と地球」では,前回を有意に下回る問題が過半数を占めている。また,記述式の問いについては,理科全体として,前回の調査と比較して無回答の生徒の割合が増加している。
(イ)  評価の観点別にみた特色
  第3学年では「自然事象への関心・意欲・態度」,「科学的な思考」,「観察・実験の技能・表現」,「自然事象についての知識・理解」の4観点すべてにおいて,通過率が設定通過率を上回ると考えられるもの又は同程度と考えられるものの問題数の合計が全体の問題数の半数以上を占めている。
  第2学年では,通過率が設定通過率を上回ると考えられるもの又は同程度と考えられるものの問題数の合計が全体の問題数の半数以上を占めているのは,「自然事象への関心・意欲・態度」,「観察・実験の技能・表現」,「自然事象についての知識・理解」の3観点であるが,「科学的な思考」では半数未満となっている。
  第1学年については,4観点すべてにおいて,通過率が設定通過率を上回ると考えられるもの又は同程度と考えられるものの問題数の合計が全体の問題数の半数未満となっている。なお,今回の調査結果からは,理科にかかわる日常の体験の不足や,理科の学習と日常生活との関連の意識が希薄になっている状況がうかがえる。
(2)  質問紙調査の結果
  教師用の質問紙調査によれば,「実験を積極的に取り入れた授業を行っていますか。」,「観察を積極的に取り入れた授業を行っていますか。」という質問に対して,いずれも8割から9割程度の教師が,「行っている方だ」又は「どちらかといえば行っている方だ」と回答している。
  一方,生徒は「自分の考えで,予想をして実験や観察をしていますか。」,「理科の勉強で,実験や観察の進め方や考え方がまちがっていないかをふり返って考えようとしていますか。」,「理科の勉強に関することで,分からないことや興味・関心をもったことについて自分から調べようとしていますか。」という質問に対して,いずれも,「そうしている」と答えた生徒は1割を少し超えた程度であり,「そうしている」と「どちらかといえばそうしている」を合わせても約4割であった。
  このような結果からは,多くの教師が観察,実験はよく行っているものの,生徒にとっては,必ずしも「目的意識をもった観察,実験」や「主体的な学習活動」にはなっていないということがうかがえる。

2. 今回の調査結果を踏まえた指導上の改善点

(1)  今回の調査結果から,目的意識をもった観察や実験の視点の明確化が十分でないと考えられる例が見られる。このため,身近な現象や体験と結び付ける指導の工夫・改善を行い,観察,実験の目的をより明確にすることで生徒が目的意識をもって主体的に学習することができるようにすることが求められる。
(2)  また,理科では,直接,観察や実験ができない内容や,実験は行えるものの目には見えない現象を扱う場合もある。調査問題の分析から,このような内容について理解や定着が不十分と考えられるものがあり,このため,モデル実験を行ったり,コンピュータを活用するなど学習指導の工夫が必要である。
(3)  今回の調査結果から,日常の体験の不足,もしくは,日常の体験と理科の学習の関連付けができていないと考えられる例がいくつか示された。このため,理科の学習と日常生活との関連の意識を明確にすることや,野外観察など実際に自然を体験させ実感させることが指導上の改善に向けた視点として求められる。
(4)  前回の調査に比べ,無回答の生徒の割合が増加している。この中には,理解が十分でなく解答しなかった生徒もいると考えられるが,自分の考えを文章や図にまとめ表現する力が不十分である生徒が多いことも考えられる。このため,結果や考察を整理しまとめ,さらに発表したり討論する活動を取り入れることも大切である。



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