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資料5−1

平成13年度小中学校教育課程実施状況調査報告書の概要


小学校・理科

1. 今回の調査結果の特色

(1) ペーパーテスト調査の概要
 全般的な状況
  第5学年及び第6学年について,通過率が設定通過率を上回ると考えられるもの又は同程度と考えられるものの問題数の合計は,それぞれ93問中75問,94問中89問と全体の問題数の半数以上を占めている。
  また,前回と同一の問題については,第5学年で29問中,通過率が前回を有意に上回るものが8問,前回と有意に差のないものが8問,前回を有意に下回るものが13問,第6学年で32問中,通過率が前回を有意に上回るものが17問,前回と有意に差のないものが10問,前回を有意に下回るものが5問であり,第6学年では前回を有意に上回るものが全体の過半数を占めている。
 内容領域・観点等からみた特色
 第5学年,第6学年とも「生物とその環境」,「物質とエネルギー」,「地球と宇宙」の内容領域別,「自然事象への関心・意欲・態度」,「科学的な思考」,「観察・実験の技能・表現」,「自然現象についての知識・理解」の観点別にみた,いずれの場合も設定通過率を上回ると考えられるもの又は同程度と考えられるものの問題数の合計が該当する問題の半数以上を占めている。
  ただし,いくつかの特定の内容については設定通過率を下回ると考えられる結果となった。例えば,
1  第5学年の「てこの釣り合い」の内容において,(力点にかかるおもりの重さ)×(支点から力点までの距離)=(作用点にかかるおもりの重さ)×(支点から作用点までの距離)という,てこが釣り合うときのきまりを適用する問題で通過率が低かった。誤答分析の結果,「おもりの重さ」と「支点からの距離」をかけ合わせるべきところ,両者を足したり,わったりしてしまう例が見られた。てこの釣り合いにおいて,「おもりの重さ」と「支点からの距離」の両者の積が等しくなるいう基本的なきまりを見いだすことができない児童が多く見受けられる。
2  第6学年の「血液の循環」の内容において,肺の中での二酸化炭素と酸素の交換による,肺の周囲を流れる血液中の酸素と二酸化炭素の量の変化を考える問題で,通過率が低かった。誤答を調べてみると,肺に入る血液の酸素や二酸化炭素の量の変化を逆に答えている児童が多く見られた。呼吸により肺に取り入れられた酸素はそこで血液に取り込まれたり,血液中の二酸化炭素は肺の中の空気と一緒に体の外へはき出されたりするしくみを,血液循環や肺の機能と関係付けた理解ができていない児童が多いことがうかがわれる。
(2) 質問紙調査の結果
 指導内容の理解についての意識を尋ねる質問では,すべての内容項目において「よく分かった」と回答した児童の割合が「よく分からなかった」と回答した児童の割合を上回っている。
  一方,学習内容の好き嫌いについての質問では「人は母体内で成長し,生まれること」や「人や動物の体のつくりやはたらき」について,また,学習内容の実生活等における有用性についての質問では,「植物に光が当たるとでんぷんができること」や「いろいろな水溶液の性質やはたらき」についてなど否定的回答が肯定的回答を上回るものもある。また,教師が「児童にとって理解しにくい」あるいは「児童が興味を持ちにくい」と回答している内容項目は「地球と宇宙」に関するものが多い。

2. 今回の調査結果を踏まえた指導上の改善点

(1) 計画的な観察,実験の推進
  理科において観察,実験はきわめて大切なものであるが,その授業への位置付けや指導の仕方には工夫・改善が必要である。指導上の改善点としては,単なる作業的な実験ではなく,児童が自ら予想や仮説をもち,計画的に実験を行うことを大切にする必要がある。さらに,観察や実験が終了した後は,その手続きや方法をふり返り,それらを見直したり,再検討したりすることが必要である。児童が科学的な見方や考え方を養うような指導を充実させることが大切なことである。
(2) 模型やモデルなどの積極的な導入
  理科において観察,実験が行いにくい内容があるが,そのような授業にはとりわけ工夫・改善が必要である。例えば「血液の循環」の学習は,直接観察が難しく,また実験も行いにくい内容であり,図鑑や資料等を活用した調べ学習が中心となりがちである。そこでは,文字や写真,あるいは模式図などにより血液の循環を理解していくことになるが,それは3次元の体内を循環している血液の様子や体内の臓器と関係付けた総合的な理解にはなりにくい。図や模型,モデル,あるいはコンピュータなどを積極的に活用し,児童が総合的に実感を伴った理解が図れるような指導を重視することが大切である。
(3) 複数の観察・実験の結果を比較
  水溶液の性質を調べたり,植物の観察を行う内容においては,1回あるいは1種類の観察,実験ではなく,複数の観察,実験を基に考察を行うような指導の工夫・改善が必要である。児童が意図的に時間を変えて観察したり,条件を変えて実験を行ったりしながら,結果を比較して理解を深めていけるような指導を重視することが大切である。



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