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資料5−2

平成13年度小中学校教育課程実施状況調査報告書の概要

中学校・数学


1. 今回の調査結果の特色

(1) ペーパーテスト調査の概要
全般的な状況
  第1学年,第2学年及び第3学年について,通過率が設定通過率を上回るもの又は同程度と考えられるものの問題数の合計は,それぞれ69問中36問,72問中50問,62問中44問と全体の問題数の半数以上を占めている。
  なお,前回と同一の問題については,第1学年で16問中,通過率が前回と有意に差のないものが1問,前回を有意に下回るものが15問,第2学年で19問中,通過率が前回と有意に差のないものが4問,前回を有意に下回るものが15問,第3学年で20問中,通過率が前回を有意に上回るものが2問,前回と有意に差のないものが9問,前回を有意に下回るものが9問となっており,第1学年及び第2学年では,通過率が前回を有意に下回るものが全体の過半数を占めている。
内容領域・観点等からみた特色
(ア)  内容領域で見た場合,「数と式」,「図形」,「数量関係」の3領域のうち,第1学年の「数量関係」の領域のみ,設定通過率を上回ると考えられるもの又は同程度と考えられるものの問題数の合計が全体の問題数の半数未満である。
(イ)  観点別に見た場合,「数学への関心・意欲・態度」,「数学的な考え方」,「数学的な表現・処理」,「数量,図形などについての知識・理解」の4観点のうち,第1学年の「数学的な考え方」の観点のみ,設定通過率を上回ると考えられるもの又は同程度と考えられるものの問題数の合計が全体の問題数の半数未満である。
(ウ)  「記述式の問題」,「複数の段階を踏んで考えを進め,解答しなければならない問題」,「長い文章の問題」について通過率が,設定通過率を下回ると考えられるものが多くみられた。
  例えば,方程式の学習では,一般に,解を求める問題を思い浮かべることが多いが,今回の調査では「ある方程式と同じ解をもつ別な方程式をさがす」という問題を出題した。この問題では,単に方程式を解くというだけではなく,方程式と解の意味を理解し,「解であるかどうか確かめる」,「別の方程式にその解を代入する」あるいは,「別な方程式を変形し,与えられた方程式と比較する」など,複数の段階を踏んで解決しなければならない。こうした問題について,設定通過率を下回ると考えられるものが多くみられた。
(エ)  同一問題との比較については,第1学年及び第2学年では過半数の問題の通過率が,第3学年では半数近くの問題の通過率が前回を有意に下回っている。特に,「数学的な表現・処理」の観点をみる問題(例えば,計算問題で 9+(+4)×(-5) のように,計算の約束や括弧や負の数などを同時に処理しなければならない問題)と「数学的な考え方」の観点をみる問題で,前回を有意に下回るものが多くみられた。

(2) 質問紙調査の結果
  学習内容の理解に関する生徒と教師の意識については,両者に違いがみられる。
  例えば,教師が「生徒は興味を持ちやすい」と思っていても,生徒が必ずしも「好きだった」と回答していない質問項目が複数ある。例えば,第3学年の「三平方の定理」に関しては,教師の6割が「生徒が興味を持ちやすい」と考えているのに対して,「好き」と答えている生徒は3割に過ぎない。「数学の勉強をすれば,普段の生活や社会に出て役立つ」という質問に対しては,学年進行とともに肯定的な反応が低下している。
 「数学の問題の解き方が分からないとき,あきらめずに考えようとしていますか」という質問に対しては,どの学年も約7割の生徒が肯定的な回答をしており,生徒が意欲をもって学習に取り組んでいることがうかがわれる。

2. 今回の調査結果を踏まえた指導上の改善点

(1)  これからの社会を考えるとき,情報の選択やこれをもとにしての判断,また,自分の考えを説明したりすることを含め,考える力が大切になる。このような視点からみると記述式の問題等に関する生徒の学習状況は必ずしも十分ではない。記述式の問題等に関する状況を改善するためには,生徒の学習状況をよく観察し,徐々に問題文の記述量や,生徒に記述させる量を増やしていくといった取組が必要である。
(2)  「数学的な表現・処理」の観点をみる問題(とりわけ計算問題)に関する状況を改善するため,計算指導は折に触れて行うことが大切である。の際,例えば,計算の過程において「乗除先行」など計算の約束ごとの確実な定着を図るとともに,方程式の移項は等式の性質に基づいて行われるものであることなどの計算の意味の指導にも配慮する必要がある。なお,正しく計算することができることは,的確な判断や考察の基礎となり,自信をもって考えを進める上でも必要なことである。指導に当たっては,そのようなことを生徒が意識できるよう意味の指導を充実させていくことが重要である。
(3)  「数学的な考え方」の観点をみる問題に関する状況を改善するためには,単に,結果を出すだけではなく,何を根拠にどのような手順でその結果を導いたか,その過程で既習の知識をどのように生かしたかなど,自分なりの考えを筋道を立てて説明したり,結果を導く過程を振り返って考えたりする活動を充実することが求められる。
(4)  質問紙調査の結果にみられる生徒の問題解決での前向きな態度を生かす指導の方法について検討する必要がある。例えば,図形における3次元から2次元への置き換えといった「次元を下げる」という問題解決に有効に働く考え方を意識付けることができるような指導の改善を図る必要がある。また,内容項目に関する質問紙調査の結果には生徒と教師の意識の違いが顕著なものがあるため,生徒の意識を的確に把握した指導の在り方について検討する必要がある。


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