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資料5−1

平成13年度小中学校教育課程実施状況調査報告書の概要

小学校・算数

1. 今回の調査結果の特色

(1) ペーパーテスト調査の概要
全般的な状況
  第5学年及び第6学年について,通過率が設定通過率を上回ると考えられるもの又は同程度と考えられるものの問題数の合計は,それぞれ85問中43問,72問中49問と全体の問題数の半数以上を占めている。
  なお,前回と同一の問題については,第5学年で24問中,通過率が前回を有意に上回るものが1問,前回と有意に差のないものが7問,前回を有意に下回るものが16問,第6学年で15問中,通過率が前回を有意に上回るものが1問,前回と有意に差のないものが5問,前回を有意に下回るものが9問であり,いずれの学年も前回を有意に下回るものが全体の過半数を占めている。
内容領域・観点等からみた特色
(ア) 内容領域別にみた問題ごとの設定通過率との比較
  第5学年では,「数と計算」,「量と測定」,「図形」,「数量関係」の4領域のうち,「数と計算」領域のみ,通過率が設定通過率を上回ると考えられるもの又は同程度と考えられるものの問題数の合計が全体の問題数の半数以上を占めている。第6学年では,「数と計算」,「量と測定」,「図形」,「数量関係」のすべての領域で,通過率が設定通過率を上回ると考えられるもの又は同程度と考えられるものの問題数の合計が全体の問題数の半数以上を占めている。
(イ) 評価の観点別にみた問題ごとの設定通過率との比較
  「数学的な考え方」の観点についてみると,通過率が設定通過率を下回ると考えられるものの問題数合計が,第5学年では全体の問題数の丁度半数となっており,第6学年では半数以上を占めている。学習指導要領で重点を置いてきた「思考・判断」について評価する問題において,通過率が設定通過率を下回るものが多いという結果になっている。
(2) 質問紙調査の結果
児童への質問紙調査
  算数の勉強が好きという設問に対して,約5割の児童が「そう思う」,「どちらかと言えばそう思う」と回答をしている。また,算数の勉強は大切だという設問に対して,8割以上の児童が「そう思う」,「どちらかと言えばそう思う」と回答をしている。また,算数の授業の理解度についての設問に対して,約6割の児童が「よく分かる」,「だいたい分かる」と回答している。このような回答をした児童のペーパーテストの得点は高いという傾向がみられる。また,「いろいろな考え方を発表し合うのは楽しい」という設問に対して,「楽しい」,「どちらかといえば楽しい」と回答した児童や,「問題がとけたとき,別なとき方を考えようとする」という設問に対して,「そうしている」,「どちらかといえばそうしている」と回答した児童の得点が高いという傾向がみられる。
教師への質問紙調査
  理解が不十分な児童に対し授業の合間や放課後などに更に指導していると回答した教師の割合は,7割を超えている。発展的な課題を取り入れた授業を行っていると回答した教師の割合は,4割を超えている。なお,「発展的な課題を取り入れた授業を行っていますか」という設問に対し,「行っている方だ」,「どちらかといえば行っている方だ」と回答した教師が指導している児童の得点が高いという傾向がみられる。

2. 今回の調査結果を踏まえた指導上の改善点

(1) 第5学年,第6学年を通しての指導上の改善
  上記の1(1)で述べたように,算数では前回調査と同一の問題の過半数について,通過率が前回を下回っている。調査自体からはその原因について明確なものは見出せなかったが,例えば,
 基礎的・基本的な知識・技能の定着を図る指導が疎かになっていたのではないか
 思考力の育成を目指した指導が不十分な状況であったのではないか
等の点から今後も検証を進めていく必要があると考えられる。
  また,上記の1(2)で述べたように,「いろいろな考え方を発表し合うのは楽しい」,「問題がとけたとき,別なとき方を考えようとする」といった考えや態度をもつ児童を育てることは,学習の実現状況の改善に寄与するものと考えられる。このため,例えば,
 個に応じた指導を進め,基礎・基本の確実な定着を図ったり,発展的な課題に取り組んだりできるようにすること
 数量や図形についての作業的・体験的な活動などの算数的活動や問題解決的な活動を取り入れるなどの指導の改善を図り,児童が様々な考え方を試みたり,話し合ったり,数理的な処理のよさを実感したりできるようにすること
が必要である。

(2) 内容領域別にみた指導上の改善
 「数と計算」領域では,例えば,小数や分数の計算の技能についての問題と比べ,計算の意味理解と,計算の仕方の思考・判断についての問題で,通過率が設定通過率を下回ると考えられるものが多いという状況がみられる。このため,計算の意味理解や計算の仕方の思考・判断にかかわる学習において,計算の意味を実際の場面と結び付けたり,目的に応じて必要な計算を選んだり計算の仕方を工夫したりするなど,計算の意味を実感的にとらえられるようにする指導の工夫が大切である。また,それと並行して,計算の技能を定着させるための学習を一人一人の児童の学習状況に応じて進めるようにする指導が必要である。現行学習指導要領では,各学年の目標において,「計算の意味について理解し,計算の仕方を考え,用いること」を重視しているので,その趣旨を生かした取組が必要である。
 「量と測定」領域では,例えば,三角形や円の面積の問題などで,通過率が前回を有意に下回る結果となっている。このため,面積の公式を児童自らが工夫しつくっていく学習や,身の回りにある様々な図形の面積を求めたり比べたりする学習を充実させて,面積を求める方法の理解を定着させたり,面積の公式を活用できるようにしたりする指導の工夫が大切である。
 「図形」領域では,例えば,円や円周率の知識・理解にかかわる問題などで,通過率が設定通過率を下回る結果となっている。図形や図形の性質についての知識を定着させ理解を深めるためには,積み木や紙など具体物を用いて図形をつくったり,実際に図形の性質を調べたり確かめたりする学習活動を積極的に取り入れる指導の工夫が大切である。現行学習指導要領では,作業的・体験的な活動などの算数的活動を通した学習を重視しているので,その趣旨を生かした取組が必要である。
 「数量関係」領域では,問題となっている場面での数量の関係を式に表したり,式が表している考え方を説明したりする問題などで,通過率が設定通過率を下回ったり,前回を有意に下回ったりする結果となっている。数量の関係を適切にとらえることは,問題解決を進める上での大切な考え方となるものである。そのため,児童の様々な考えを授業の中で発表し合い,それらを式で表したり,考え方を比較したりする学習活動を積極的に取り入れる指導の工夫が大切である。



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