資料 3−3 |
1. | 初等中等教育の教育課程及び指導の充実・改善方策について 昨年4月から新学習指導要領が順次実施され,各学校及び各教育委員会では,そのねらいの実現に向けて創意工夫に満ちた取組がなされています。他方,我が国の子どもの状況については,近年の国際的な調査や平成13年度教育課程実施状況調査等の結果分析からは,学習内容の理解や学習意欲・学ぶ習慣などについての課題が明らかになっています。また,若者の勤労観,職業観についても各方面から課題が指摘されています。 このような状況を踏まえ,中央教育審議会教育課程部会を常設化した趣旨にかんがみ,学習指導要領の実施状況を不断に検証し,教育課程及び指導上の課題を明らかにするとともに,新学習指導要領のねらいの一層の実現を図るため,教育課程及び指導の充実・改善方策について御検討いただきたく,当面,次の事項に関して御審議をお願いしたいと考えております。 まず第一は,各学校における創意工夫に満ちた取組を充実するため,学習指導要領の「基準性」を一層明確にするとともに,必要な学習指導時間を確保することであります。学習指導要領に示された内容は「いずれの学校においても取り扱わなければならない」ものであり,各学校の判断で学習指導要領に「示していない内容を加えて指導することもできる」こととなっています。基礎・基本の確実な定着を図り,個性を生かす教育を充実する観点に立ち,各学校の創意工夫に満ちた教育課程の編成が一層進むよう,このような学習指導要領の「基準性」をより明らかにする必要があると考えております。また,各学校においては,完全学校週5日制の下での各教科等や学校行事等の充実を図るための取組を一層進めることが必要です。このため,年間授業時数が標準授業時数であることを一層明確にするとともに,長期休業日や学期の区分の在り方などを工夫し,年間授業日数を適切なものとすること等が必要であると考えております。以上について,今後改善すべき点がないか御検討いただきたいと考えております。 第二は,「総合的な学習の時間」及び「個に応じた指導」の一層の充実についてであります。「総合的な学習の時間」の取組の中には,それにより身に付けさせようとする力,年間指導計画,評価方法,教科との関連などが不明確であるために成果が十分あがっていない例も指摘されています。このため,各学校において「総合的な学習の時間」の意義が十分理解され,そのねらいを踏まえた学習活動が充実するよう,指導上の留意点等について御検討いただきたいと考えております。 また,各学校においては,子どもの実態や指導の場面に応じ効果的な指導方法を十分工夫するとともに,特に,小・中学校それぞれの特質を踏まえ,子どもの理解の状況や習熟の程度に応じた少人数指導や,補充的な学習,発展的な学習などに積極的に取り組むことが求められています。このような「個に応じた指導」の一層の充実を図る観点から,これらについての学習指導要領上の位置付けに改善すべき点がないか御検討いただきたいと考えております。 第三は,全国的かつ総合的な学力調査に関連する事項についてであります。児童生徒の学習の状況を把握することにより,教育課程の実施状況を不断に検証することは,教育課程の基準の改善について中・長期的に検討するとともに,各学校における指導の工夫改善を進める上で極めて重要です。このような観点から,教育課程の基準の不断の検証を行っていただきたいと考えており,そのため,今後の学力調査の在り方やその結果の活用等,具体的には,来年度に実施を予定している特定の課題に関する調査の実施方法,小・中学校の教育課程実施状況調査の結果分析を踏まえての指導の改善,高等学校の教育課程実施状況調査の結果分析の視点等に関して当面御検討いただきたいと考えております。 |
2. | 義務教育など学校教育に係る諸制度の在り方について 教職員がその能力を十分に発揮し,子どもたち一人一人の個性に応じ,その能力を最大限に伸ばす創意工夫に富んだ教育活動が行われるとともに,教育行政がこれらの取組を適切に支援し,学校に対する保護者や国民の信頼に十分こたえていくため,義務教育など学校教育に係る諸制度の在り方について御検討いただくことが必要であります。 このため,当面,次の事項について御審議をお願いしたいと考えております。 まず第一は,義務教育に係る諸制度の在り方についてであります。義務教育は,憲法の要請により,すべての国民に対し,必要な基礎的資質を培うものであり,義務教育の充実を図ることは極めて重要な課題であります。一方で,物質的な豊かさの中,子どもたちが学ぶ目的や明確な目標を持ちにくい状況や子どもたちのニーズの多様化,学校以外にも多様な学習の機会が提供されている中,学校で学ぶ意義が見出しにくくなっており,また,不登校の児童・生徒に対して,どのように教育の機会を実質的に確保していくかが今日的な課題となっています。中央教育審議会答申においても,制度の在り方について弾力化を図る観点から種々の意見が出され,その諸制度の在り方についての検討が必要である旨提言されています。 このため,改めて,義務教育の今日的な意義・目的と学校の役割,義務教育における国と地方公共団体の役割等について御議論いただきたいと考えております。それを踏まえ,児童・生徒の多様な状況等に対応して弾力化を図る観点から,例えば, ![]() ![]() 第二は,義務教育における教育条件整備の在り方についてであります。義務教育の今日的な意義・目的等についての御検討を踏まえ,今後の義務教育における教育条件整備の在り方について,幅広く御検討いただきたいと考えております。特に,現在進められている教育改革の中で義務教育制度の在り方の一環として,国と地方との適切な役割分担,費用分担の観点から,義務教育費国庫負担制度の意義,役割を踏まえつつ,義務教育費に係る経費負担の在り方について,御検討いただきたいと考えております。 その際,義務教育について,憲法の要請に基づき,無償制のもとですべての国民に対し教育の機会均等を確保するとともに,その水準の維持向上を図る上で国が今後とも果たすべき責任の在り方と,地方公共団体や学校の権限と責任の在り方とを併せて御検討いただく必要があると考えております。 第三は,学校の管理運営の在り方についてであります。学校は公の性質を有するものとして,学校設置の確実性や安定性を担保する観点から,国,地方公共団体,学校法人が設置することができ,設置者が責任をもって学校運営に当たることとされています。一方,近年,株式会社等による学校設置,公立学校の民間委託,地域が学校運営などに参画するいわゆる「コミュニティ・スクール」の導入など様々な指摘がなされています。こうした指摘も含め,公教育としての学校の教育活動の確実な実施と充実を図る観点から,新しい時代にふさわしい学校の管理運営の在り方について御検討いただきたいと考えております。 |