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資料8−1

平成13年度小中学校教育課程実施状況調査報告書の概要

小学校・国語

1.今回の調査結果の特色

(1) ペーパーテスト調査の概要
 全般的な状況
 第5学年及び第6学年について,通過率が設定通過率を上回ると考えられるもの又は同程度と考えられるものの問題数の合計は,それぞれ47問中46問,44問中41問と全体の問題数の半数以上を占めている。
  なお,前回と同一の問題については,第5学年で18問中,通過率が前回を有意に上回るものが6問,前回と有意に差のないものが7問,前回を有意に下回るものが5問,第6学年で21問中,通過率が前回を有意に上回るものが4問,前回と有意に差のないものが10問,前回を有意に下回るものが7問となっている。
 内容領域・観点等からみた特色
(ア)  漢字力については,前回と同一の問題で通過率が前回を有意に上回るものもあり,一般に憂慮されているような低下傾向は見られないものと考えられる。また,漢字を読むことと書くことの設問で22問中,設定通過率を上回っていると考えられるものは4問,同程度と考えられるものが18問であった。
(イ)  記述式の問題については,第5学年で7問,第6学年で8問,あわせて15問出題したが,通過率が設定通過率を上回ると考えられるものが3問,設定通過率と同程度と考えられるものが10問,設定通過率を下回ると考えられるものが2問であった。なお,前回と同一の問題については,第5学年で4問,第6学年で5問,あわせて9問出題したが,通過率が前回を有意に下回るものが4問あり,このうち,前回51.9%→今回39.3%と通過率が大きく低下したものがある。
(ウ)  「理解(文学的な文章・説明的な文章)」については,第5学年で6問,第6学年で9問,あわせて15問出題したが,設定通過率を上回ると考えられるものが5問,設定通過率と同程度と考えられるものが10問であった。
(2) 質問紙調査の結果
 質問紙調査からも,児童は漢字の読み書きに対する関心・意欲が高いと考えられる結果が得られている。国語への関心・意欲・態度を質問した設問中,「新しい漢字の読み方や書き方を身に付けるように努力しようとしていますか」という質問に対して,「そうしている」,「どちらかといえばそうしている」と回答した児童の割合は,第5学年は75.4%,第6学年は72.5%であった。
  児童が「好きだった」とする学習活動について,学習指導要領の内容を16に分けて具体的に質問した場合には,「詩を読むこと」,「みんなで話し合うこと」に次いで,3位に「漢字を読んだり書いたりすること」を挙げている。「正しく整った文字を書くこと」も6位に挙がっている。一方,「文学的な文章を読むこと」については,第5学年で16問中13位,第6学年で16問中11位である。また,「読んだ後に関連した文章を読むこと」や「いくつかの文章を読み比べること」については,16の学習活動に関する質問で下位に位置している。
  児童が「よく分かった」とする学習活動について,16の活動に分けて具体的に質問した場合には,「説明的な文章を読むこと」,「文学的な文章を読むこと」,「いくつかの文章を読み比べること」「読んだ後に関連した文章を読むこと」の4項目はいずれの学年でも11位以下であった。
  質問紙調査の結果で注意を要するのは,指導内容について教師と児童の意識の差が見られることである。例えば,「文学的な文章を読むこと」について,多くの教師は,児童にとって理解しやすく興味を持ちやすいと考えているが,児童は,必ずしもよく理解できないとの意識を持っており,「好きだった」と答える者より「きらいだった」と答える者の方が多い(例:第5学年「文学的な文章を読むこと」について,児童「好きだった」28.6%,教師「児童は興味を持ちやすい」70.7%)。


2.今回の調査結果を踏まえた指導上の改善点

 今回の調査結果によると,記述式の問題について,通過率が設定通過率を上回っていると考えられるもの,及び下回っていると考えられるものには,それぞれ以下のような共通点がある。

設定通過率を上回っていると考えられる問題(6C1三,6A2三,6A2四)
 → 提示された話題や文章について自分の考えをまとめて書くこと
設定通過率を下回っていると考えられる問題(5B2二,6A1三)
 → 相手や目的,意図を踏まえて内容を新たに構成しながら文章を書くこと

 このように,提示された話題や文章に沿って書くことに対して,相手や目的などに応じ,自分の考えを明確にして内容を構成していくという問題について,通過率が設定通過率を下回ると考えられる結果がでている。取り上げる言語活動において,児童個々の考えをまとめることを一層重視し,相互評価などを活用してお互いの考えを高め合うような工夫を行うことにより,児童自身の考えを明確にし構成する力を育成できるような指導の充実が求められる。
  なお,質問紙調査で明らかとなった教師と児童の意識の違いを踏まえ,今後は,児童の実態を十分に見据えた指導の充実が必要である。例えば,文学的な文章を扱う場合には,導入の学習活動に工夫を凝らして,興味・関心を高める,あるいは読解に偏重しないといった配慮が必要である。また,質問紙調査にみられる「読むこと」一般の問題について言えば,児童が読書に親しむよう多彩な文章様式(物語では,ファンタジー,短編と長編,いろいろな作家の作品など,説明的な文章では,記録や報告,解説や科学的な読み物など)に出合わせるようにしたり,現行学習指導要領の言語活動例にも示している読書発表会などの活動を一層充実させたりすることが必要となる。今改訂で示した言語活動例を参考に,多様な言語活動を行うといった指導の改善が求められる。児童の実態や指導内容の実現状況を明確に評価し,指導の改善を図る必要がある。



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